《本家本元のロシアンオペラ『エフゲニー・オネーギン』を観る》
2011年4月にミュンヘンのレジデンスで行われた演奏会形式の『エフゲニー・オネーギン』(M・ヤンソンス指揮)を観て聴いてから、あの間奏曲のダイナミックな美しさに惹かれて何度かオペラの公演を観る機会を探しましたが、ウィーンではネトコ様の旅館の女将さんみたいなタチアーナでさえプレミアムがついてチケット代が跳ね上がり断念。そのあとは日本での公演もなくついに2016年を迎えてしまいました。が!!ついにマリインスキー歌劇場で観ることができました!!しかも指揮者はゲルギエフその人です。これを観ずしてロシアンオペラは語れない?(くもないけれど)前回おまけで観られた『ドン・カルロ』と違う期待感でより一層足取りは軽く上野に向かいました。既に買ってあるプログラムにはオペラの師匠たちに見せようと思っているフルラネットやゲルギエフのサインがこれ見よがしにしてあります~!(完璧ミーハー)
☆2016年10月16日(日) 開演 14:00 上野文化会館大ホール
☆チャイコフスキー 『エフゲニー・オネーギン』
☆出演 タチアーナ:エカテリーナ・ゴンチャロワ
オルガ:ユリア・マトーチュキナ
エフゲニー・オネーギン:ロマン・ブルデンコ
レンスキー:ディミトリー・コルチャック
グレーミン公爵:エドワルド・ツァンガ(ドン・カルロにも出た
ペトレンコがキャンセルのため二日続けてのキャスティング)
☆演出 アレクセイ・ステパニュク
☆指揮 ワレリー・ゲルギエフ
☆演奏 マリインスキー歌劇場管弦楽団&合唱団
☆オペラ難易度 D (音楽評論家・黒田恭一さんの著書
『オペラへの招待』によるオペラ鑑賞の際の目安になるものです。
Dの基準としているのは=オペラをきくことになれていないききてに
とっては、きくのにいくぶん苦労するオペラ、としています。
なるほどね、です。私は少しオペラに慣れてきたので、DよりCかと
思いました。ですが、黒田さんの示し方は本当に素人に優しいです。
きくこと、ききて、きく、なれていない、とすべてひらがなで書いて
あります。
わかりやすく説明してくれていますので、必見の著のひとつです。
バレエの舞台のような美しい色彩でした
今回はなんとも太っ腹な『ぶらあぼ』がいちはやく京都での公演の模様と音楽監督・ゲルギエフのインタビューなどを動画アップしてくれていました。期間限定かもしれませんがこれで引っ越し公演の目玉が『ドン・カルロ』より『エフゲニー・オネーギン』であることがうかがえるかと思います。この動画の間奏曲のほうが当日の演奏より華やかさがあって好きです。というか私は一方的にロシアンオペラのやるロシアモノならば間違いない、と決めていましたからこの動画を見つけた時に確信を持ちました。が、『ドン・カルロ』でもフルラネットやヨンフン・リーの大活躍もありましたからやはりほんまもんは本場もんとか限らない、ということも思い知ったのでありました。https://www.youtube.com/watch?v=uC9BTABo_RM&feature=share
この日は直前までMET版のDVDでアリアのおさらいをしてから出かけましたが、何しろロシア系の歌手の情報に乏しかったので唯一知っていて、オペラの達人たちがこの日のキャスティングで観たかったという歌手のコルチャックのアリアを探しました。がなかなかみつけられないでいたら、オペラの公演終了直後になんと前のブログにも書いた『ぶらあぼ』がレンスキーの歌声をYou Tubeにアップしてくれていましたのでそのまま拝借することにしました。(いつまで甘えられるかは疑問ですが、とにかく『ぶらあぼ』さんありがとう!!)https://youtu.be/gLZ3vHxoC0I 歌われる順番は第2幕なので、先にタチアーナのをアップしたほうがいいのですが、まずは見どころ、聴きどころを忘れないうちに書いておかねばと思ったのです。
第1幕の「あ、これなら知ってるー!」アリアのタチアーナが歌う『たとえ死んでもいいの』タチアーナは16歳だそうですが、オネーギンに片思いをして手紙を綴るときに歌うのですが、この日のタチアーナ役のエカテリーナは純粋な乙女心を丁寧に歌っていたと思います。まさにど真ん中のキャスティングだと思ったのですが、すこし弱々しいかなとは思いました。 このオペラも実はかつてオペラファンとしてど素人時代には突っ込みどころ満載のオペラでした。何しろ16歳の少女をネトコ様やルネ・フレミングが演じたのをMETのライブビューイングで観ましたし、前記のウィーンではチケットは手に入りませんでしたが、ウィーン国立歌劇場の外でビューイングをしていたところに居合わせたので、地元の年金暮らしの常連のおじいさんと椅子に座ってみることが出来ました。まぁ、そのときはそれで十分満足できましたし、チケット買わなくて良かったと思いましたから。(ネトコ様本人も「この役はもう無理」(年齢的にか体型的にかうかがいしれませんでしたが・・・とか幕間のインタビューで言っていたはず)ちなみにその時の指揮者はA・ネルソンズでオネーギンはホロストフスキー(合ってる?なかなかこの人の名前覚えられません)というロシアを代表するバリトンでイケメンの上に芸達者で世界的な売れっ子歌手ですので、一度は生で聴きたい歌手です。参考までにそのネトコ様のタチアーナの歌声もYou TubeにありますがMETの制限があってURLを貼り付けられませんでした。やはり初々しさというか、少女の声の甘さはなく成熟した大人の声でした。
だから、タチアーナに戻りますが・・・今回のエカテリーナ・ゴンチャロワはバレリーナのように見た目は華奢ですが本来のタチアーナを彷彿とさせてくれるようで私は、良かったと思って観ていたのです。が、後ろの座席の昨日もこのオペラを観たというお姉さま方の感想がなんとも嫌やなものでした。「このタチアーナ、何にも演技してないじゃない。昨日のほうが良かったわね」ですと。 そういう感想はロビーでしてほしいですね。せめて元首相の小泉さんのように終わった時に「いやー良かったねぇ!!」と座席付近では喜びを共感するぐらいにとどめてほしいものです。私の拙い鑑賞力でもあなた方とはまた違う楽しみ方が出来るんですー!!と度胸があるならば振り返ってひと睨みして「おだまり!!」と言いたかったのですが、そこは素直に受け入れて後で達人たちのブログを観てからいいとこどりすればいいんだ、と思った次第です。この動画のタチアーナはその演技している、と言われていたマリア・バヤンキナの歌声です。https://www.youtube.com/watch?v=SM1HVVDTa_8&feature=share
いずれにしてもこのオペラはやはりマリインスキーで観ることが出来て本当に幸せでした。憧れだった『間奏曲』とひそかにそこ?と言われそうな大好きなフランス人老家庭教師トリケがパーティーで歌うアリア、が好きです。ロシア語がきちんと話せる人たちで歌われるのを聴くのは初めてですから、言葉はわかりませんが安心感が違いますよね。全体的にアンサンブルが滑らかで、心地よかったこと。バレエを観ているように優雅な動きをする舞台上の出演者たち。後方を横切るだけの人たちもバレリーナを使っているの?と思うぐらい(そうだったかもしれません)スタイリッシュで美しい動きです。音楽もドン・カルロの時のように突っ走っていなくて歌に添うようにピタッと優しくまとわりついていたと思います。衣装も豪華でらしい、ものでしたが、タチアーナの最初のころの衣装はスリムなゴンチャロワが着るとスリップのような肌着に見えるので、せめて色は変えたほうがいいと、細かいところが右京さんのように妙に気になった私でした。
演奏についてはゲルギエフは絶対的音楽監督ですから、テンポが速かろうと遅かろうと問答無用で歌わなければいけないのでしょうが、そういう無理やりなところはなかったと思います。特に最初に張り付けてしまったレンスキーの歌声のように青年の浅はかさを切々と歌い上げたコルチャックは胸キュンものでした。ただ、間奏曲だけはヤンソンス指揮で聴いたバイエルンでの演奏会形式のほうが圧倒的にテンポも指揮も感動したことを思い出しました。達人たちは皆さん、この日のマリインスキーは全部よかったと話されていましたから、次回の引っ越し公演ではまた見る目、聴く力を蓄えて観劇したいと思いました。
ほぼこの顔ぶれで上演されました。至福のひとときというのはこういうことを言うのですね
さあ、これでほぼリアルタイムで書けるようになった『私のオペラノート』今回も書くことが出来ました。次回はニーナ・シュテンメ次第で『ワルキューレ』? リングは生で一度も観たことがありませんからどうなることか・・・
※演奏会形式で観たM・ヤンソンス指揮バイエルン放送交響楽団の『エフゲニー・オネーギン』のブログが見つかりましたので貼り付けておきます。http://blogs.yahoo.co.jp/borosan14/31683477.html
☆と、長いわりに実のないオペラノートよりやさしさにあふれたオペラの達人・草間文彦さんのブログをどうぞ。いち早く感想をアップされていてさすがです。http://provenzailmar.blog18.fc2.com/
☆音楽全般に愛情あふれる情報を発信していらっしゃる音楽評論家・加藤浩子さんのブログはこちらから。http://plaza.rakuten.co.jp/casahiroko/