Carry on!! ~旅のお供に音楽を~

アラカン過ぎてクラシックやオペラの旅が何よりの楽しみです。旅先で街の人たちと音楽談義をしたり、暮らすように旅したいです。

私のオペラノート63

2016年10月23日 | オペラ

        《本家本元のロシアンオペラ『エフゲニー・オネーギン』を観る》

 2011年4月にミュンヘンのレジデンスで行われた演奏会形式の『エフゲニー・オネーギン』(M・ヤンソンス指揮)を観て聴いてから、あの間奏曲のダイナミックな美しさに惹かれて何度かオペラの公演を観る機会を探しましたが、ウィーンではネトコ様の旅館の女将さんみたいなタチアーナでさえプレミアムがついてチケット代が跳ね上がり断念。そのあとは日本での公演もなくついに2016年を迎えてしまいました。が!!ついにマリインスキー歌劇場で観ることができました!!しかも指揮者はゲルギエフその人です。これを観ずしてロシアンオペラは語れない?(くもないけれど)前回おまけで観られた『ドン・カルロ』と違う期待感でより一層足取りは軽く上野に向かいました。既に買ってあるプログラムにはオペラの師匠たちに見せようと思っているフルラネットやゲルギエフのサインがこれ見よがしにしてあります~!(完璧ミーハー)

 

          ☆2016年10月16日(日) 開演 14:00 上野文化会館大ホール 

          ☆チャイコフスキー 『エフゲニー・オネーギン』

          ☆出演 タチアーナ:エカテリーナ・ゴンチャロワ

              オルガ:ユリア・マトーチュキナ

              エフゲニー・オネーギン:ロマン・ブルデンコ

              レンスキー:ディミトリー・コルチャック

              グレーミン公爵:エドワルド・ツァンガ(ドン・カルロにも出た

                                       ペトレンコがキャンセルのため二日続けてのキャスティング)

          ☆演出 アレクセイ・ステパニュク

          ☆指揮 ワレリー・ゲルギエフ

          ☆演奏 マリインスキー歌劇場管弦楽団&合唱団

          ☆オペラ難易度 D  (音楽評論家・黒田恭一さんの著書

                              『オペラへの招待』によるオペラ鑑賞の際の目安になるものです。

           Dの基準としているのは=オペラをきくことになれていないききてに

                                とっては、きくのにいくぶん苦労するオペラ、としています。

           なるほどね、です。私は少しオペラに慣れてきたので、DよりCかと

           思いました。ですが、黒田さんの示し方は本当に素人に優しいです。

           きくこと、ききて、きく、なれていない、とすべてひらがなで書いて

           あります

           わかりやすく説明してくれていますので、必見の著のひとつです。

 

              

               バレエの舞台のような美しい色彩でした

 今回はなんとも太っ腹な『ぶらあぼ』がいちはやく京都での公演の模様と音楽監督・ゲルギエフのインタビューなどを動画アップしてくれていました。期間限定かもしれませんがこれで引っ越し公演の目玉が『ドン・カルロ』より『エフゲニー・オネーギン』であることがうかがえるかと思います。この動画の間奏曲のほうが当日の演奏より華やかさがあって好きです。というか私は一方的にロシアンオペラのやるロシアモノならば間違いない、と決めていましたからこの動画を見つけた時に確信を持ちました。が、『ドン・カルロ』でもフルラネットやヨンフン・リーの大活躍もありましたからやはりほんまもんは本場もんとか限らない、ということも思い知ったのでありました。https://www.youtube.com/watch?v=uC9BTABo_RM&feature=share

 この日は直前までMET版のDVDでアリアのおさらいをしてから出かけましたが、何しろロシア系の歌手の情報に乏しかったので唯一知っていて、オペラの達人たちがこの日のキャスティングで観たかったという歌手のコルチャックのアリアを探しました。がなかなかみつけられないでいたら、オペラの公演終了直後になんと前のブログにも書いた『ぶらあぼ』がレンスキーの歌声をYou Tubeにアップしてくれていましたのでそのまま拝借することにしました。(いつまで甘えられるかは疑問ですが、とにかく『ぶらあぼ』さんありがとう!!)https://youtu.be/gLZ3vHxoC0I  歌われる順番は第2幕なので、先にタチアーナのをアップしたほうがいいのですが、まずは見どころ、聴きどころを忘れないうちに書いておかねばと思ったのです。

 第1幕の「あ、これなら知ってるー!」アリアのタチアーナが歌う『たとえ死んでもいいの』タチアーナは16歳だそうですが、オネーギンに片思いをして手紙を綴るときに歌うのですが、この日のタチアーナ役のエカテリーナは純粋な乙女心を丁寧に歌っていたと思います。まさにど真ん中のキャスティングだと思ったのですが、すこし弱々しいかなとは思いました。 このオペラも実はかつてオペラファンとしてど素人時代には突っ込みどころ満載のオペラでした。何しろ16歳の少女をネトコ様やルネ・フレミングが演じたのをMETのライブビューイングで観ましたし、前記のウィーンではチケットは手に入りませんでしたが、ウィーン国立歌劇場の外でビューイングをしていたところに居合わせたので、地元の年金暮らしの常連のおじいさんと椅子に座ってみることが出来ました。まぁ、そのときはそれで十分満足できましたし、チケット買わなくて良かったと思いましたから。(ネトコ様本人も「この役はもう無理」(年齢的にか体型的にかうかがいしれませんでしたが・・・とか幕間のインタビューで言っていたはず)ちなみにその時の指揮者はA・ネルソンズでオネーギンはホロストフスキー(合ってる?なかなかこの人の名前覚えられません)というロシアを代表するバリトンでイケメンの上に芸達者で世界的な売れっ子歌手ですので、一度は生で聴きたい歌手です。参考までにそのネトコ様のタチアーナの歌声もYou TubeにありますがMETの制限があってURLを貼り付けられませんでした。やはり初々しさというか、少女の声の甘さはなく成熟した大人の声でした。

 だから、タチアーナに戻りますが・・・今回のエカテリーナ・ゴンチャロワはバレリーナのように見た目は華奢ですが本来のタチアーナを彷彿とさせてくれるようで私は、良かったと思って観ていたのです。が、後ろの座席の昨日もこのオペラを観たというお姉さま方の感想がなんとも嫌やなものでした。「このタチアーナ、何にも演技してないじゃない。昨日のほうが良かったわね」ですと。    そういう感想はロビーでしてほしいですね。せめて元首相の小泉さんのように終わった時に「いやー良かったねぇ!!」と座席付近では喜びを共感するぐらいにとどめてほしいものです。私の拙い鑑賞力でもあなた方とはまた違う楽しみ方が出来るんですー!!と度胸があるならば振り返ってひと睨みして「おだまり!!」と言いたかったのですが、そこは素直に受け入れて後で達人たちのブログを観てからいいとこどりすればいいんだ、と思った次第です。この動画のタチアーナはその演技している、と言われていたマリア・バヤンキナの歌声です。https://www.youtube.com/watch?v=SM1HVVDTa_8&feature=share 

 いずれにしてもこのオペラはやはりマリインスキーで観ることが出来て本当に幸せでした。憧れだった『間奏曲』とひそかにそこ?と言われそうな大好きなフランス人老家庭教師トリケがパーティーで歌うアリア、が好きです。ロシア語がきちんと話せる人たちで歌われるのを聴くのは初めてですから、言葉はわかりませんが安心感が違いますよね。全体的にアンサンブルが滑らかで、心地よかったこと。バレエを観ているように優雅な動きをする舞台上の出演者たち。後方を横切るだけの人たちもバレリーナを使っているの?と思うぐらい(そうだったかもしれません)スタイリッシュで美しい動きです。音楽もドン・カルロの時のように突っ走っていなくて歌に添うようにピタッと優しくまとわりついていたと思います。衣装も豪華でらしい、ものでしたが、タチアーナの最初のころの衣装はスリムなゴンチャロワが着るとスリップのような肌着に見えるので、せめて色は変えたほうがいいと、細かいところが右京さんのように妙に気になった私でした。


 演奏についてはゲルギエフは絶対的音楽監督ですから、テンポが速かろうと遅かろうと問答無用で歌わなければいけないのでしょうが、そういう無理やりなところはなかったと思います。特に最初に張り付けてしまったレンスキーの歌声のように青年の浅はかさを切々と歌い上げたコルチャックは胸キュンものでした。ただ、間奏曲だけはヤンソンス指揮で聴いたバイエルンでの演奏会形式のほうが圧倒的にテンポも指揮も感動したことを思い出しました。達人たちは皆さん、この日のマリインスキーは全部よかったと話されていましたから、次回の引っ越し公演ではまた見る目、聴く力を蓄えて観劇したいと思いました。


    ほぼこの顔ぶれで上演されました。至福のひとときというのはこういうことを言うのですね

 

 さあ、これでほぼリアルタイムで書けるようになった『私のオペラノート』今回も書くことが出来ました。次回はニーナ・シュテンメ次第で『ワルキューレ』? リングは生で一度も観たことがありませんからどうなることか・・・

※演奏会形式で観たM・ヤンソンス指揮バイエルン放送交響楽団の『エフゲニー・オネーギン』のブログが見つかりましたので貼り付けておきます。http://blogs.yahoo.co.jp/borosan14/31683477.html


☆と、長いわりに実のないオペラノートよりやさしさにあふれたオペラの達人・草間文彦さんのブログをどうぞ。いち早く感想をアップされていてさすがです。http://provenzailmar.blog18.fc2.com/

 

☆音楽全般に愛情あふれる情報を発信していらっしゃる音楽評論家・加藤浩子さんのブログはこちらから。http://plaza.rakuten.co.jp/casahiroko/

  

 

              

              

           


私のオペラノート62

2016年10月15日 | オペラ

       《フルラネットを初めて聴く!!マリインスキーの『ドン・カルロ』を観る》

 さて、ついにリアルタイムでオペラノートを書く、というかつての希望が叶うことになったのですが、予定外の公演を観ることになったのでやや混乱しながらプログラムなどをスキャンしたり整理をしています。というのも、少し前にマリインスキー歌劇場の引っ越し公演『エフゲニー・オネーギン』に行くことにしたばかりだったので、加えてもう一本の『ドン・カルロ』まで観るというのは贅沢すぎるのでは…という気持ちがあったからです。それでも、オペラの師匠たちから『フルラネットの存在を知らされ、思いがけずリーズナブルなチケットを手に入れることが出来ましたので、大好きなテノールヨンフンリーのドン・カルロが聴くことができる!!と喜んで出かけることにしたのです。

 ※後でオペラの先生に確認しましたところ、今回の『ドン・カルロ』はフランス語版ではないので、ウィーンでヨンフン・リーのタイトルロールで私が観たもの(エボリ公女の妄想シーンかバレエのシーンが入ったバージョン)とは違うそうです。どこがカットされているものかも定かではなく・・・

前記のオペラの達人はすでに10日の公演をご覧になったので、その方から「フルラネットは素晴らしい歌手ですよ」と教えていただいたので、すぐにYou Tubeなどで調べると、なんとかつてはホセ・カレーラスのドン・カルロ、フルラネットがロドリーゴという役で動画が出てきたのでその歌声はかなり確かなものであることは素人の私にも理解できました。そのフルラネットが今はフィリッポⅡ世として名を馳せていることはオペラファンなら周知の事実で、知らぬは私だけなのでありました。(MET版で録画していたのにフィリポⅡ世役で出ていたと記憶しているのですが、エリザベッタ役がポプラフスカヤだったかで、DVDのディスクを処分してしまっていました) でも、これで観劇の楽しみが二倍になったのですから、大江戸線の上野御徒町から文化会館までせっせと歩を進めた私でありました。何しろ『ヴェルディビタミン』は最高のエネルギーチャージですから!!

 

       ☆2016年10月12日(水)開演 18:00 上野文化会館大ホール

       ☆ヴェルディ 『ドン・カルロ』

       ☆出演 フィリッポⅡ世:フェルッチ・フルラネット

           ドン・カルロ :ヨンフン・リー

           ロドリーゴ:アレクセイ・マルコフ

           宗教裁判長:ミハイル・ペトレンコ

           エリザベッタ:イリーナ・チュリロワ

           エボリ公女:ユリア・マトーチュキナ

       ☆指揮 ワレリー・ゲルギエフ

       ☆演出 ジョルジオ・バルベリオ・コルセッティ

       ☆演奏 マリインスキー歌劇場管弦楽団&合唱団

       ☆オペラ難易度 C (音楽評論家・黒田恭一さんの著書

                        『オペラへの招待』によるものです。

 

        

         出待ちをしてフルラネット(上部)とゲルギエフからサインをもらいました

 さて、私の最大のお楽しみは唯一わかるこのオペラのアリア、ロドリーゴとの二重唱『われらの胸に友情を』ですが、残念ながらロドリーゴ役マルコフの歌が今一歩ずれているというか、表情も魅力に乏しくヨンフンリーのイタリア語はクリアに響いてくるのですが、淡々としていて何か迫力、気迫に乏しく感じられがっかりしました。何しろ、MET版ではこのロドリーゴ役はキーンリサイドで聴いていますから初めて聴いた時からとても心に残りました。それだけに・・・それなのに・・・あとはどこをたのしみに聴けばいいのよぉ!という思いでした。何しろ私にとってヴェルディはこう歌ってほしい、と思うドミンゴ(カルロ)とレオ・ヌッチ(ロドリーゴ)という天下一品の二重唱が頭に刻み込まれていますから、素人の思い込みに食い入るには相当インパクトがないとね。https://www.youtube.com/watch?v=-KdqWGLLqus (音声のみですがヌッチの若かりし頃のロドリーゴの映像を探して観たいです)

 舞台は全体的にシンプルですが決して嫌いな設定ではありません、でも前記のようにイタリアなテイストがどうしても感じられなくてヨンフン・リー以外は今いちのまま第2幕に入り印象的な合唱のシーンになりました。が、これがまた弱いしやはりテンポがずれているようで心地よくありません。(合唱はやはり、新国立が世界一ですわ)ゲルギエフの勢いについて行けていない?時々音が大袈裟になって歌が聴きにくいところもありました。私の耳のせいなんでしょうか。オペラの達人のブログを参考にしながらこの感想もそれほど間違っていなかったことに、あとでほっとしたりしました。それから、この日のエボリ公女(ユリア・マトーチュキナ)は早とちりしてそのうえ復讐のためにエリザベッタを陥れようとしたり、フィリポⅡ世と間違いをしでかしたりするのですが、そんな勘違い女の哀れさはよく表現していたと思います。直接は開けませんが『ぶらあぼ』が10月10日の公演のエボリ公女の歌声をアップしてくれています。今のうちかもわかりませんので、ぜひコピペしてご覧ください。https://www.youtube.com/watch?v=zXAq5H-6BEY

でも、イタリア語での迫力ある演技となれば、二年前にこの役を二期会公演で歌っていたという、この3月から大ファンになった清水華澄で聴きたかったです。表現力がヴェルディものにぴったりとはまっていますから。このオペラももっとドラマティックなオペラなはずなのに、なんか全体的にさっぱりとしているなぁというのが第2幕時までの感想でした。

 圧巻は何といってもフルラネットでした。パンフレットを観て思い出したのですが衣装を着けるとあのレオ・ヌッチのように誰も寄せ付けないほどの貫禄と演技力、そして歌が舞台から流れ出るようにあふれ出てきて客席を満たします。第3幕目の『彼女は私を愛していない』そして『ひとり寂しく眠ろう』と切々と朗々と歌い上げる声の力は私の胸にも深く印象付けられました。そして、第4幕目の『むごい運命よ』とフルラネットの独壇場は続きました。ヌッチとはまた違うバス歌手の魅力がたっぷりでまさに、フルラネットショーのごとくでした。この歌手の存在を知っただけでもこの公演に来た甲斐があったというものです。教えてくれる人がいる私は本当に幸せで、ありがたいことだったと思っています。もう、この歌手の歌声を次は何時聴くことができるのかわかりませんから、それを考えるとヴェルディのオペラでビタミンチャージを!!と薦めてくださったオペラの師匠たちには感謝のことばしかありません。多少、ロシアンオペラに違和感があったとしても、終わり良ければ総て良しということになるのですね。『ぶらあぼ』がなんとこのフルラネットの歌声までアップしてくれていました!!本当に嬉しいことです。まだ、『ドン・カルロ』をご覧になったことのない方も、これは必見だと達人たちがおっしゃっています。それを了解してくれたフルラネットにも感謝ですね!!https://youtu.be/kYxbZNxfVz4

 


      

         右がフルラネット演ずるところのフィリポⅡ世です(素顔は普通の優し気なおじさまでした)

 

 最終幕については私はやや物足りない演出だと思いました。何しろ舞台がきつい傾斜を使っていろいろな場面を描写するわけなので想像力のない人にとっては?な場面もあったかと思いました。歌で納得させられるヨンフン・リーやフルラネットが出ているところでもドン・カルロの最期のシーンは物足りなかったのではないかと私は思いました。確かMETの演出では先帝と思しき人物に引きずり込まれるように連れ去られる~みたいな感じでしたので、その点はいかにヨンフン・リーがめいっぱい過剰な表情で現わしても伝えきれなかったところかと、私は思いました。

 舞台がはねて夜更けの楽屋口で待っていた私たちファンに、疲れも見せずさわやかな笑顔でサインに応じてくれた素顔のヨンフン・リー。逢えて本当にうれしかったー!でも、プレゼント渡すの忘れてしまったー!!敢えて、この日のプログラムではなく3年前にウィーンで観たプログラムにサインしてもらったのですが、それを見て「おっ、素敵だねぇ」なんてことを言ってくれてました。それでタイムアウトで写真は撮ることが出来なかったことが残念ですが、これでまた「カウフマンの代役」とか韓国出身のとかいちいち言われることなく世界を股にかけるテノールとしてますます活躍が期待できると、そう思って次の日になってから自宅に辿り着いたのでありました。さぁ、次回はいよいよ本場物の『エフゲニー・オネーギン』です!!(ちょっと、心配・・・)

                       

                      
           この表紙にはヨンフン・リーではなくフィリポ役のクワンチョル・ユンが写っています


☆私が幕間にカンニングしながら観劇したオペラの達人、草間文彦さんのブログはこちらから。もっと的確なオペラの感想が綴られています。http://provenzailmar.blog18.fc2.com/

☆学習院生涯学習センターや朝日カルチャーセンターでオペラのいろいろ、わくわくするようなレクチャーをされている

 音楽評論家・加藤浩子さんのブログはこちらから。http://plaza.rakuten.co.jp/casahiroko/