≪中味の濃いオペラ『DON CARLOS』を観る≫
いつの間にかオペラノートの番号が〇で囲めなくなり、いまさら初めの分から直すのも変なのでA型の人間としてはこだわりたいところですが、そのまま順番に書いてゆこうと思います。 というより暑くて熱くてPCに向かう時間が少なくなっているので、それでなくても現実の2014年の同時進行のオペラノートを目指すためにも、もうひと踏ん張りしなければなりません。 そしてきょうはDVDでラモン・ヴァルガスがドン・カルロ役を務め、涙ながらに熱演するのを観て感激したその同じオペラを同じウィーンのオペラ座で観ることができました。
☆2013年4月9日(火) 開演17:00 WIENER STAATSOPER
☆ ヴェルディ 『DON CARLOS』
☆出演 フィッリッポⅡ世: クワンチュル・ヨン(ユンとの表記もあります)
ドン・カルロ: ユンホン・リー(MET引っ越し公演の時に
ピンチヒッターとしてこの役で来日してくれた方です)
ロドリーゴ: George Petern(読み方に自信がないのでそのまま)
大審問官: Alexandru Moisiuc
エリザベッタ: Iano Tamar
エボリ公女: Nadia Krasteva
☆演出 ペーター・コンヴェチュニー(DVDのお蔭で名前が判りました)
☆指揮 Bertrand de Billy
☆ 演奏 Orchester der Wiener Staatsoper
☆オペラ難易度 C (黒田恭一さんの著書『オペラへの招待』によるもの)
ウィーンは音楽の都、というべきところのひとつですが、オペラに関してはいつ行っても観たい、聴きたい音楽が手の届くところにある羨ましい唯一の街ではないかと思います。 この『ドン・カルロ』というオペラは2011年にMETの引っ越し公演で観ようかと思ったものの、タイトルロールが総入れ替えという事態になったことと、DVDで観てもかなりの長さであるところから腰が引けて見ずじまいになったいたものです。 今回のウィーン訪問ではDVDで観たものと同じプロダクションであるのと、韓国系の歌手が揃って名を連ねていたけれど私の好きなバリトンのクワンチュル・ユンさんが出るということで即決してチケットを購入してもらいました。前回は『パルシファル』でのグルネマンツ役がすごい迫力の歌声でした。 同じ年のバイロイト音楽祭でも同じ役を務めていましたね。(あのネズミの大群が出てくる・・・)ドン・カルロ役のユンホン・リーは初めてのウィーンでのオペラ『トスカ』でのカヴァラドッシ役で聴いています。その時は少し落胆したものの、その後力強さに感動してファンになりました。だから、このお二人がタイトル・ロールと知ってすごく嬉しかったです。
※2019年追記:どうして海外の劇場に日本人歌手が出てこ来ないのか、このお二人の歌手の活躍を観て、私は韓国系の歌手のハングリー精神というか心の強さをすごいことだと感じ入るばかりです。
ちなみに今回の旅はLand and Stay という方法で航空券はマイレージで手に入れたので、ホテルと公演のチケットを旅行会社に依頼する、ということが面倒がなくて間違いも少ないということで、『郵船トラベル』にお手伝いいただいて個人旅行にしました。 個人旅行であってもちゃんとItineraryを作ってくれますよ。(この英語覚えたばかり。旅程表のことです)気楽に行動したい旅人にはお奨めの手段かと思います。手数料は多少かかりますが・・・・今回の『ドン・カルロ』は1カテ(ファーストカテゴリーというのだそうな)平土間で€185・プラス手数料はだいたい日本円で¥3000.ぐらいでした。前から5列目、歌手の表情も良く観ることができます。
このオペラは5幕もので休憩が二回あるものです。根性を入れて観ないと(何しろ素人がこのような長いオペラを観るのはテンションの維持が困難なのです)あるいは出演者によって、または演奏によってだれだれになる可能性もあります。DVDでのラモンちゃんの熱演を観ているばかりにそういうことになってしまう恐れもありましたが、そんな心配はすぐに吹き飛んでしまうほどの気持ちの高まりが舞台に集中させてくれました。 好きな歌手がまたは知っている歌手がひとりでも出演しているということほど楽しみなことはありません。 そして、今回のプログラムは見出しに張り付けたようにいつものウィーン国立歌劇場の定番の大きさではなく珍しく大判のもので、ユンさんが表紙に写っているプロダクションの物でしたからあとからこうしてノートを綴るのも判りやすくて助かります。あらすじも日本語で書かれてすこし気が抜けそうになった時に読んでまたオペラに向かえました。
第一幕が始まってから、唯一知っているアリアのドン・カルロとロドリーゴの二重唱を待って待ってそしてそのメロディーが流れると気分はもう最高潮!!すっかり感情移入してもう涙が出そうです。滑らかなそして二人の息もぴったりで歌われたこの『われらの胸に友情を』はこの後も二人の運命を示唆するようにところどころに入り込んできて、長いオペラを引き締めてくれるようです。何しろ、長い、と聞いただけで腰が引けていたぐらいですからドラマティックなアリアね。 それから、2004年版のDVDと変わらぬ美しさと安定した歌唱で切ないぐらい感情移入させてくれるエリザベート役のイアノ・タマールはLiveとDVDで4公演ほど見ましたが、同じ年の2013年の『ザルツブルク音楽祭』でこの役を演じているアニア・ハルテロスと同じぐらい好きなエリザベート役で本当にいい声だと思います。(こちらの『ドン・カルロ』はNHKのBSプレミアムシアターで放映されました)
ラモンちゃんは無視してエリザベート役の
イアノ・タマールにご注目を
肝心のドン・カルロ』役のユンホン・リーは以前にウィーンでの『トスカ』で観て最初は違和感があったものの、後半の歌唱でその実力を認識した歌手ですので、日本で観るときのような「あっ、これ中村さんになっちゃってる・・・」(?)みたいは想いはしなくて済みました。(良く解るような、解らないような説明ですね) トスカの時より少し軽めの声で始まりだんだん声に厚みを持たせるような貫禄も加わってきたように思います。個人的に日本人もそうですが、アジアの出身の歌手に大声援を送りたいので祈るようにその歌声に耳を傾けて聴きました。細く抑えたところの声も美しかったです。
最初の休憩時にも目が離せない演出があって『エボリ公女の妄想』とかでは茶目っ気のある一面も(このシーンはアリアはありません)見せてくれて楽しめました。この演出を要らない、と思う人もいるそうですが、私はおもしろかったです。このほかにも休憩時にまたも趣向を凝らした演出もありますので、これからウィーンで『ドン・カルロ』を観る方のためにお楽しみはとっておこうと思いますが、お手洗いやコーヒーブレイクはお早めに切り上げてお席に着くことをおすすめします。とにかく、男性の声で美しい、という思いはあまりないのですがこの『ドン・カルロ』は強弱がはっきりしている少し難しいけれど見ごたえのあるオペラだと思うので、バージョンアップしたユンホン・リーは声や感情を抑えたところがうまく表現していてとても良かった思っています。・・・でも、出来ればラモン・ヴァルガスのが聴いてみたいです~(しつこいです~!!)
ロドリーゴ役の歌手はほとんど認識がなくウィーンに行く前の事前調査もほとんどできませんでしたが、一番楽しみにしていたアリアが大満足だったことを思うとそれなりの実力者だったのだと思います。(ごめんなさい、どこかで観たお顔なのですが・・・お詫びのしるしに『ウィーン国立歌劇場』での活躍ぶりを紹介しているページからお写真をどうぞ)
George Petern(ロドリーゴ)
エボリ公女はMETのビューイングでドロラ・ザジックが「私は何回この役をやったと思ってるのよ」というような感じでインタビューのルネ・フレミングに食いつきそうに答えていたのが頭をよぎって随分イメージの違うエボリ公女だと(線が細くてビジュアル的にはOKでした)ナディアの後ろにドロラ・ザジックが重なって『妄想大魔王』状態でした。でも、最終的にはかなくて切ない女心をうまく表現していてなかなかいいメゾだと最後は拍手と足踏みです。
できればここでこのキャストでの歌声をと思ったのですが、これから観たいという私の願望を優先してラモン・ヴァルガスとよく『トスカ』でスカルピア役などで活躍しているLudovic Tézier との二重唱がありましたので聴いてほしいと思います。このコンサートでの指揮者も私が大好きな人ですが名前を度忘れしたので、調べてすぐにアップしたいのでしばしお待ちください。 https://www.youtube.com/watch?v=ydmrHG6tphU
休憩二回、その間も早めに戻らないと上記のようにこの演出ではいろいろしかけもありますので詳しくは書きませんが、気を付けましょう。
この時の滞在はオペラ座から歩いて数分の『グランドホテル』を奮発しましたが、いろいろDoesn't work のところがあって、こちらの英語力も足りずに苦情を言いきれなかったので結局何も改善されなかったのが残念でした。こういうところが個人旅行での困った点ではありますが、自由さには代えられないのであとは英語力をブラッシュアップさせて、次回は(と言っても『グランド・ホテル』の朝食のごはんがすかすかのなんちゃってごはんでしたので、もう朝食は洋食にして、現地の食べ物をもっと楽しもうと思いました。あ、和食もどきのメニューを除けば『グランドホテル』の朝食は美味しいです。もと、ANA系のホテル?というところに引かれて選んでしまったのが失敗でしたが、部屋の作りはとてもクラシックで雰囲気がいいのでチャンスがあればもう一度泊まってみたい・・・・かな。(つれ合いは「もう、いい」と言ってます)
最後に今頃気に入って聴きまくっているかつての名ソプラノで亡き黒田恭一さんもとても気に入っていらしたアグネス・パルツァのエリザベッタがこの時のプログラムで紹介されていたのでスキャンして添付してみました。彼女が健在でしたら一度聴いてみたかったですね。
エリザベッタ役のアグネス・パルツァです
☆今までのそれこそなんちゃって『オペラノート』は引っ越し前のブログにも書いています。だいぶ書き進みましたが、あと20本近く書かないと現在の2014年にはたどり着けません。 急げ~!!出ないと熱中症で死んでしまいそう~!!
http://blogs.yahoo.co.jp/borosan14/31660632.html (『私のオペラノート1』という拙いノートです)