2019年5月21日 弁理士試験 代々木塾 特134条の2の解説
(特許無効審判における訂正の請求)第百三十四条の二
1 特許無効審判の被請求人は、前条第一項若しくは第二項、次条、第百五十三条第二項又は第百六十四条の二第二項の規定により指定された期間内に限り、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正を請求することができる。
ただし、その訂正は、次に掲げる事項を目的とするものに限る。
一 特許請求の範囲の減縮
二 誤記又は誤訳の訂正
三 明瞭でない記載の釈明
四 他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。
2 二以上の請求項に係る願書に添付した特許請求の範囲の訂正をする場合には、請求項ごとに前項の訂正の請求をすることができる。
ただし、特許無効審判が請求項ごとに請求された場合にあつては、請求項ごとに同項の訂正の請求をしなければならない。
3 前項の場合において、当該請求項の中に一群の請求項があるときは、当該一群の請求項ごとに当該請求をしなければならない。
4 審判長は、第一項の訂正の請求書及びこれに添付された訂正した明細書、特許請求の範囲又は図面を受理したときは、これらの副本を請求人に送達しなければならない。
5 審判官は、第一項の訂正の請求が同項ただし書各号に掲げる事項を目的とせず、又は第九項において読み替えて準用する第百二十六条第五項から第七項までの規定に適合しないことについて、当事者又は参加人が申し立てない理由についても、審理することができる。
この場合において、当該理由により訂正の請求を認めないときは、審判長は、審理の結果を当事者及び参加人に通知し、相当の期間を指定して、意見を申し立てる機会を与えなければならない。
6 第一項の訂正の請求がされた場合において、その審判事件において先にした訂正の請求があるときは、当該先の請求は、取り下げられたものとみなす。
7 第一項の訂正の請求は、同項の訂正の請求書に添付された訂正した明細書、特許請求の範囲又は図面について第十七条の五第二項の補正をすることができる期間内に限り、取り下げることができる。
この場合において、第一項の訂正の請求を第二項又は第三項の規定により請求項ごとに又は一群の請求項ごとにしたときは、その全ての請求を取り下げなければならない。
8 第百五十五条第三項の規定により特許無効審判の請求が請求項ごとに取り下げられたときは、第一項の訂正の請求は、当該請求項ごとに取り下げられたものとみなし、特許無効審判の審判事件に係る全ての請求が取り下げられたときは、当該審判事件に係る同項の訂正の請求は、全て取り下げられたものとみなす。
9 第百二十六条第四項から第八項まで、第百二十七条、第百二十八条、第百三十一条第一項、第三項及び第四項、第百三十一条の二第一項、第百三十二条第三項及び第四項並びに第百三十三条第一項、第三項及び第四項の規定は、第一項の場合に準用する。この場合において、第百二十六条第七項中「第一項ただし書第一号又は第二号」とあるのは、「特許無効審判の請求がされていない請求項に係る第一項ただし書第一号又は第二号」と読み替えるものとする。
〔解説〕
・1項(訂正の請求)
(1)特許無効審判が請求されたときは、無効理由を解消するために、所定の時期(新たな攻撃を受けたとき)に訂正の請求を認めることとした。
(2)訂正の請求ができる時期は、下記の5通りである。
(a)前条第一項→134条1項の答弁書提出期間内
(b)前条第二項→134条2項の答弁書提出期間内
(c)次条→134条の3の指定期間内
(d)第百五十三条第二項→職権無効理由通知に対する意見書提出期間内
(e)第百六十四条の二第二項→審決の予告を受けたときの指定期間内
・2項(請求項ごとに訂正の請求)
訂正の請求は、請求項ごとにできるが、特許無効審判が請求項ごとにされた場合には、訂正の請求は、請求項ごとにしなければならない。請求項ごとに可分的な取扱いとするためである。
・3項(一群の請求項ごとに訂正の請求)126条3項と同趣旨
一群の請求項に含まれる請求項を訂正するときは、一群の請求項ごとに訂正の請求をしなければならない。特許請求の範囲の一覧性を確保するためである。
・4項(副本の送達)
請求人に、訂正の要件について反論の機会を与えるためである。
・5項(職権訂正拒絶理由通知)
訂正の請求について請求人が反論しなかったときは、審判官は職権で訂正の要件を満たすかどうかについて審理し、訂正の要件を満たさないと判断したときは、審判長が職権で訂正の拒絶理由の通知をすることができる。
・6項(先の訂正の請求のみなし取下げ)
訂正の請求は、訂正の要件を満たす限り、複数回することができる。特許無効審判の請求書の副本の送達を受けたときは、特許権者は、答弁書提出期間内に訂正の請求をすることができる(134条1項、134条の2第1項)。その後、審判の請求人が請求書の請求の理由について要旨を変更する補正をした場合において審判長により補正が許可されたときは、手続補正書の副本が特許権者に送達されるが、特許権者は、答弁書提出期間内に再度の訂正の請求をすることができる(134条2項、134条の2第1項)。後の訂正の請求が先の訂正の請求と矛盾する場合には、訂正の請求の趣旨の解釈が問題となるが、特許権者の意思を最も良く反映しているのは後の訂正の請求であることから、先の訂正の請求が取下げとみなされる旨を明定し、手続の繁雑さを回避することとした。
・7項(訂正の請求の取下げ)
(1)訂正の請求の取下げは、特許無効審判の審理対象を変更する点において、訂正に係る明細書、特許請求の範囲又は図面の補正(17条の5第2項)と共通しており、訂正の請求の取下げと補正の時期的制限をそろえたものである。
(2)訂正の請求の一部取下げを認めないこととしたのは、かりに認めたとすれば、明細書等の一覧性を確保するという規定の趣旨に反する場合があり、取下げ後の訂正内容を把握するために、取下書や訂正前の明細書等を参照する必要が生じるなどの問題を生じることになるからである。
・8項(特許無効審判の請求の取下げと訂正の請求のみなし取下げ)
例えば、請求項1~3が一群の請求項である場合において特許無効審判の請求が請求項1~3について請求項ごとにされた。被請求人は、請求項1~3について一群の請求項ごとに訂正の請求をした。その後、請求人が請求項1のみについて特許無効審判の請求を取り下げた。この場合は、請求項1に係る訂正の請求はみなし取下げとなるが、請求項2と請求項3に係る訂正の請求はみなし取下げとなならない。特許権者の防御の機会を奪うのは適切でないからである。この場合は、請求項2と請求項3の訂正が認められる場合があり、特許請求の範囲の一覧性が確保できないこととなる。
・9項(訂正審判の規定の準用)
(1)126条7項の準用→特許無効審判の請求がされている請求項について特許請求の範囲の減縮、誤記又は誤訳の訂正を目的とする訂正をしたときは、独立特許要件は、訂正の要件から除くこととした。訂正の要件の審理と無効理由の審理において二度も独立特許要件を審理することは、二重の審理となるからである。特許無効審判の請求がされていない請求項についても訂正の請求ができるが、この場合は、独立特許要件を訂正の要件として審理することとなる。
(2)133条1項、3項、4項の準用→訂正の請求書について補正命令がされ、補正命令に応じないときは、審判長は決定をもった訂正の請求書を却下する。
(特許無効審判における訂正の請求)第百三十四条の二
1 特許無効審判の被請求人は、前条第一項若しくは第二項、次条、第百五十三条第二項又は第百六十四条の二第二項の規定により指定された期間内に限り、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正を請求することができる。
ただし、その訂正は、次に掲げる事項を目的とするものに限る。
一 特許請求の範囲の減縮
二 誤記又は誤訳の訂正
三 明瞭でない記載の釈明
四 他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。
2 二以上の請求項に係る願書に添付した特許請求の範囲の訂正をする場合には、請求項ごとに前項の訂正の請求をすることができる。
ただし、特許無効審判が請求項ごとに請求された場合にあつては、請求項ごとに同項の訂正の請求をしなければならない。
3 前項の場合において、当該請求項の中に一群の請求項があるときは、当該一群の請求項ごとに当該請求をしなければならない。
4 審判長は、第一項の訂正の請求書及びこれに添付された訂正した明細書、特許請求の範囲又は図面を受理したときは、これらの副本を請求人に送達しなければならない。
5 審判官は、第一項の訂正の請求が同項ただし書各号に掲げる事項を目的とせず、又は第九項において読み替えて準用する第百二十六条第五項から第七項までの規定に適合しないことについて、当事者又は参加人が申し立てない理由についても、審理することができる。
この場合において、当該理由により訂正の請求を認めないときは、審判長は、審理の結果を当事者及び参加人に通知し、相当の期間を指定して、意見を申し立てる機会を与えなければならない。
6 第一項の訂正の請求がされた場合において、その審判事件において先にした訂正の請求があるときは、当該先の請求は、取り下げられたものとみなす。
7 第一項の訂正の請求は、同項の訂正の請求書に添付された訂正した明細書、特許請求の範囲又は図面について第十七条の五第二項の補正をすることができる期間内に限り、取り下げることができる。
この場合において、第一項の訂正の請求を第二項又は第三項の規定により請求項ごとに又は一群の請求項ごとにしたときは、その全ての請求を取り下げなければならない。
8 第百五十五条第三項の規定により特許無効審判の請求が請求項ごとに取り下げられたときは、第一項の訂正の請求は、当該請求項ごとに取り下げられたものとみなし、特許無効審判の審判事件に係る全ての請求が取り下げられたときは、当該審判事件に係る同項の訂正の請求は、全て取り下げられたものとみなす。
9 第百二十六条第四項から第八項まで、第百二十七条、第百二十八条、第百三十一条第一項、第三項及び第四項、第百三十一条の二第一項、第百三十二条第三項及び第四項並びに第百三十三条第一項、第三項及び第四項の規定は、第一項の場合に準用する。この場合において、第百二十六条第七項中「第一項ただし書第一号又は第二号」とあるのは、「特許無効審判の請求がされていない請求項に係る第一項ただし書第一号又は第二号」と読み替えるものとする。
〔解説〕
・1項(訂正の請求)
(1)特許無効審判が請求されたときは、無効理由を解消するために、所定の時期(新たな攻撃を受けたとき)に訂正の請求を認めることとした。
(2)訂正の請求ができる時期は、下記の5通りである。
(a)前条第一項→134条1項の答弁書提出期間内
(b)前条第二項→134条2項の答弁書提出期間内
(c)次条→134条の3の指定期間内
(d)第百五十三条第二項→職権無効理由通知に対する意見書提出期間内
(e)第百六十四条の二第二項→審決の予告を受けたときの指定期間内
・2項(請求項ごとに訂正の請求)
訂正の請求は、請求項ごとにできるが、特許無効審判が請求項ごとにされた場合には、訂正の請求は、請求項ごとにしなければならない。請求項ごとに可分的な取扱いとするためである。
・3項(一群の請求項ごとに訂正の請求)126条3項と同趣旨
一群の請求項に含まれる請求項を訂正するときは、一群の請求項ごとに訂正の請求をしなければならない。特許請求の範囲の一覧性を確保するためである。
・4項(副本の送達)
請求人に、訂正の要件について反論の機会を与えるためである。
・5項(職権訂正拒絶理由通知)
訂正の請求について請求人が反論しなかったときは、審判官は職権で訂正の要件を満たすかどうかについて審理し、訂正の要件を満たさないと判断したときは、審判長が職権で訂正の拒絶理由の通知をすることができる。
・6項(先の訂正の請求のみなし取下げ)
訂正の請求は、訂正の要件を満たす限り、複数回することができる。特許無効審判の請求書の副本の送達を受けたときは、特許権者は、答弁書提出期間内に訂正の請求をすることができる(134条1項、134条の2第1項)。その後、審判の請求人が請求書の請求の理由について要旨を変更する補正をした場合において審判長により補正が許可されたときは、手続補正書の副本が特許権者に送達されるが、特許権者は、答弁書提出期間内に再度の訂正の請求をすることができる(134条2項、134条の2第1項)。後の訂正の請求が先の訂正の請求と矛盾する場合には、訂正の請求の趣旨の解釈が問題となるが、特許権者の意思を最も良く反映しているのは後の訂正の請求であることから、先の訂正の請求が取下げとみなされる旨を明定し、手続の繁雑さを回避することとした。
・7項(訂正の請求の取下げ)
(1)訂正の請求の取下げは、特許無効審判の審理対象を変更する点において、訂正に係る明細書、特許請求の範囲又は図面の補正(17条の5第2項)と共通しており、訂正の請求の取下げと補正の時期的制限をそろえたものである。
(2)訂正の請求の一部取下げを認めないこととしたのは、かりに認めたとすれば、明細書等の一覧性を確保するという規定の趣旨に反する場合があり、取下げ後の訂正内容を把握するために、取下書や訂正前の明細書等を参照する必要が生じるなどの問題を生じることになるからである。
・8項(特許無効審判の請求の取下げと訂正の請求のみなし取下げ)
例えば、請求項1~3が一群の請求項である場合において特許無効審判の請求が請求項1~3について請求項ごとにされた。被請求人は、請求項1~3について一群の請求項ごとに訂正の請求をした。その後、請求人が請求項1のみについて特許無効審判の請求を取り下げた。この場合は、請求項1に係る訂正の請求はみなし取下げとなるが、請求項2と請求項3に係る訂正の請求はみなし取下げとなならない。特許権者の防御の機会を奪うのは適切でないからである。この場合は、請求項2と請求項3の訂正が認められる場合があり、特許請求の範囲の一覧性が確保できないこととなる。
・9項(訂正審判の規定の準用)
(1)126条7項の準用→特許無効審判の請求がされている請求項について特許請求の範囲の減縮、誤記又は誤訳の訂正を目的とする訂正をしたときは、独立特許要件は、訂正の要件から除くこととした。訂正の要件の審理と無効理由の審理において二度も独立特許要件を審理することは、二重の審理となるからである。特許無効審判の請求がされていない請求項についても訂正の請求ができるが、この場合は、独立特許要件を訂正の要件として審理することとなる。
(2)133条1項、3項、4項の準用→訂正の請求書について補正命令がされ、補正命令に応じないときは、審判長は決定をもった訂正の請求書を却下する。