2019年6月3日 弁理士試験 代々木塾 商7条の2の解説
(地域団体商標)第七条の二
1 事業協同組合その他の特別の法律により設立された組合(法人格を有しないものを除き、当該特別の法律において、正当な理由がないのに、構成員たる資格を有する者の加入を拒み、又はその加入につき現在の構成員が加入の際に付されたよりも困難な条件を付してはならない旨の定めのあるものに限る。)、商工会、商工会議所若しくは特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)第二条第二項に規定する特定非営利活動法人又はこれらに相当する外国の法人(以下「組合等」という。)は、その構成員に使用をさせる商標であつて、次の各号のいずれかに該当するものについて、その商標が使用をされた結果自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているときは、第三条の規定(同条第一項第一号又は第二号に係る場合を除く。)にかかわらず、地域団体商標の商標登録を受けることができる。
一 地域の名称及び自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する文字のみからなる商標
二 地域の名称及び自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表示するものとして慣用されている名称を普通に用いられる方法で表示する文字のみからなる商標
三 地域の名称及び自己若しくはその構成員の業務に係る商品若しくは役務の普通名称又はこれらを表示するものとして慣用されている名称を普通に用いられる方法で表示する文字並びに商品の産地又は役務の提供の場所を表示する際に付される文字として慣用されている文字であつて、普通に用いられる方法で表示するもののみからなる商標
2 前項において「地域の名称」とは、自己若しくはその構成員が商標登録出願前から当該出願に係る商標の使用をしている商品の産地若しくは役務の提供の場所その他これらに準ずる程度に当該商品若しくは当該役務と密接な関連性を有すると認められる地域の名称又はその略称をいう。
3 第一項の場合における第三条第一項(第一号及び第二号に係る部分に限る。)の規定の適用については、同項中「自己の」とあるのは、「自己又はその構成員の」とする。
4 第一項の規定により地域団体商標の商標登録を受けようとする者は、第五条第一項の商標登録出願において、商標登録出願人が組合等であることを証明する書面及びその商標登録出願に係る商標が第二項に規定する地域の名称を含むものであることを証明するため必要な書類を特許庁長官に提出しなければならない。
〔解説〕
・1項(主体的要件、客体的要件)
(1)主体的要件→出願人が組合等であること
(a)事業協同組合その他の特別の法律により設立された組合(法人格を有しないものは除く)
(b)当該特別の法律において、正当な理由がないのに、構成員たる資格を有する者の加入を拒み、又はその加入につき現在の構成員が加入の際に付されたよりも困難な条件を付してはならない旨の定めのあるものに限る。
ある地域のある組合等が地域団体商標について商標権の設定の登録を受けた後、当該地域における事業者が事後的に当該組合等に加入して地域団体構成員として地域団体商標を使用できる途を確保するためである。
(c)商工会、商工会議所、特定非営利活動法人
(d)これに相当する外国の法人
(2)その構成員に使用をさせる商標であること
地域団体商標の商標登録を受けようとする商標が、団体によって使用されており、その構成員に使用させないものである場合は、1項柱書の規定により登録を受けることができない。
(3)1号~3号のいずれかに該当する商標であること
各号は、通常の商標登録出願をした場合には、3条1項3号で拒絶されるようなものを規定している。
3号の産地に付される文字の例→「本場」「特産」「名産」
3号の提供の場所に付される文字の例→「本場」
3号の商品の産地又は役務の提供の場所を表示する際に付される文字とは認められないもの→「特選」「元祖」「本家」「特級」「高級」
(4)その商標が使用をされた結果自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていること
(a)比較的低価格であり、日常的に消費されること等から、比較的広範囲の地域で販売され得る商品について(野菜、米、食肉、水産食品、加工食品等)
需要者の範囲は比較的広範囲に及ぶと考えられるが、その地域が属する都道府県を越える程度の範囲における多数の需要者の間に広く認識されていれば足りる。
(b)高価であること等から、生産地では販売されず、主として大消費地で販売され尽くすような商品について(高額で市場取引される高級魚等)
主たる需要者の範囲は大消費地等の大都市に限定されるなど、地域的な広がりが限定的と考えられる場合には、少なくとも販売地が属する一都道府県における多数の需要者の間に広く認識されていることを要する。
(c)主として生産地でのみ販売される地産地消の商品やその地でのみ提供される役務について(伝統野菜、消費期限が短い生菓子等)
需要者の地域的な広がりは限定的と考えられることから、少なくともその地域が属する一都道府県における多数の需要者の間に広く認識されていることを要する。
(d)工芸品等の商品について(当該地域で生産される箪笥、壺)
需要者の地域的な広がりは限定的と考えられることから、少なくとも地域が属する一都道府県における多数の需要者の間に広く認識されていることを要する。
(5)3条の規定(3条1項1号又は2号に係る場合を除く。)にかかわらず、地域団体商標の商標登録を受けることができる。
地域団体商標の商標登録出願については、3条1項柱書、3条1項3号~6号、3条2項は、適用されない。
3条1項1号又は2号に該当する場合は、地域団体商標は拒絶される。
例えば、商標「さつまいも」は、商品「さつまいも」の普通名称である。
・2項(地域の名称)
(1)商標登録出願前から当該出願に係る商標の使用をしている→出願前から使用していなければ、地域の名称とは、認められない。出願後に使用を開始しても、地域の名称とは、認められない。
(2)1項各号の「地域の名称」には、現在の行政区画単位の地名ばかりでなく、旧地名、旧国名、河川名、山岳名、海域名等も含まれる。
(3)「商品の産地」
(a)農産物については、当該商品が生産された地域
(b)海産物については、当該商品が水揚げ又は漁獲された地域
(c)工芸品については、当該商品の主要な生産工程が行われた地域
(4)「役務の提供の場所」
温泉における入浴施設の提供については、温泉が存在する地域
(5)「密接な関連性を有すると認められる地域」
(a)原材料の産地が重要性を有する加工品については、その加工品の主要原材料が生産等された地域が1項に該当する。
「そばのめん」について、原材料「そばの実」の産地
(b)製法の由来地が重要性を有する工芸品については、当該商品の重要な製法が発祥し由来することとなった地域が1項に該当する。
「織物」について、伝統的製法の由来地
・3項(3条1項1号又は2号)
構成員のみが使用している場合には、3項の規定が存在しないと、3条1項1号又は2号を適用することができない。そこで、構成員のみが使用する商標であっても、3条1項1号又は2号に該当するときは、3項の読み替えによって、拒絶できるようにした。
・4項(方式要件)
補正命令に応じない場合→商標登録出願の却下(準特18条)
補正命令を受けないで商標登録がされた場合→7条の2第1項違反の無効理由となり得る。
(地域団体商標)第七条の二
1 事業協同組合その他の特別の法律により設立された組合(法人格を有しないものを除き、当該特別の法律において、正当な理由がないのに、構成員たる資格を有する者の加入を拒み、又はその加入につき現在の構成員が加入の際に付されたよりも困難な条件を付してはならない旨の定めのあるものに限る。)、商工会、商工会議所若しくは特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)第二条第二項に規定する特定非営利活動法人又はこれらに相当する外国の法人(以下「組合等」という。)は、その構成員に使用をさせる商標であつて、次の各号のいずれかに該当するものについて、その商標が使用をされた結果自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているときは、第三条の規定(同条第一項第一号又は第二号に係る場合を除く。)にかかわらず、地域団体商標の商標登録を受けることができる。
一 地域の名称及び自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する文字のみからなる商標
二 地域の名称及び自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表示するものとして慣用されている名称を普通に用いられる方法で表示する文字のみからなる商標
三 地域の名称及び自己若しくはその構成員の業務に係る商品若しくは役務の普通名称又はこれらを表示するものとして慣用されている名称を普通に用いられる方法で表示する文字並びに商品の産地又は役務の提供の場所を表示する際に付される文字として慣用されている文字であつて、普通に用いられる方法で表示するもののみからなる商標
2 前項において「地域の名称」とは、自己若しくはその構成員が商標登録出願前から当該出願に係る商標の使用をしている商品の産地若しくは役務の提供の場所その他これらに準ずる程度に当該商品若しくは当該役務と密接な関連性を有すると認められる地域の名称又はその略称をいう。
3 第一項の場合における第三条第一項(第一号及び第二号に係る部分に限る。)の規定の適用については、同項中「自己の」とあるのは、「自己又はその構成員の」とする。
4 第一項の規定により地域団体商標の商標登録を受けようとする者は、第五条第一項の商標登録出願において、商標登録出願人が組合等であることを証明する書面及びその商標登録出願に係る商標が第二項に規定する地域の名称を含むものであることを証明するため必要な書類を特許庁長官に提出しなければならない。
〔解説〕
・1項(主体的要件、客体的要件)
(1)主体的要件→出願人が組合等であること
(a)事業協同組合その他の特別の法律により設立された組合(法人格を有しないものは除く)
(b)当該特別の法律において、正当な理由がないのに、構成員たる資格を有する者の加入を拒み、又はその加入につき現在の構成員が加入の際に付されたよりも困難な条件を付してはならない旨の定めのあるものに限る。
ある地域のある組合等が地域団体商標について商標権の設定の登録を受けた後、当該地域における事業者が事後的に当該組合等に加入して地域団体構成員として地域団体商標を使用できる途を確保するためである。
(c)商工会、商工会議所、特定非営利活動法人
(d)これに相当する外国の法人
(2)その構成員に使用をさせる商標であること
地域団体商標の商標登録を受けようとする商標が、団体によって使用されており、その構成員に使用させないものである場合は、1項柱書の規定により登録を受けることができない。
(3)1号~3号のいずれかに該当する商標であること
各号は、通常の商標登録出願をした場合には、3条1項3号で拒絶されるようなものを規定している。
3号の産地に付される文字の例→「本場」「特産」「名産」
3号の提供の場所に付される文字の例→「本場」
3号の商品の産地又は役務の提供の場所を表示する際に付される文字とは認められないもの→「特選」「元祖」「本家」「特級」「高級」
(4)その商標が使用をされた結果自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていること
(a)比較的低価格であり、日常的に消費されること等から、比較的広範囲の地域で販売され得る商品について(野菜、米、食肉、水産食品、加工食品等)
需要者の範囲は比較的広範囲に及ぶと考えられるが、その地域が属する都道府県を越える程度の範囲における多数の需要者の間に広く認識されていれば足りる。
(b)高価であること等から、生産地では販売されず、主として大消費地で販売され尽くすような商品について(高額で市場取引される高級魚等)
主たる需要者の範囲は大消費地等の大都市に限定されるなど、地域的な広がりが限定的と考えられる場合には、少なくとも販売地が属する一都道府県における多数の需要者の間に広く認識されていることを要する。
(c)主として生産地でのみ販売される地産地消の商品やその地でのみ提供される役務について(伝統野菜、消費期限が短い生菓子等)
需要者の地域的な広がりは限定的と考えられることから、少なくともその地域が属する一都道府県における多数の需要者の間に広く認識されていることを要する。
(d)工芸品等の商品について(当該地域で生産される箪笥、壺)
需要者の地域的な広がりは限定的と考えられることから、少なくとも地域が属する一都道府県における多数の需要者の間に広く認識されていることを要する。
(5)3条の規定(3条1項1号又は2号に係る場合を除く。)にかかわらず、地域団体商標の商標登録を受けることができる。
地域団体商標の商標登録出願については、3条1項柱書、3条1項3号~6号、3条2項は、適用されない。
3条1項1号又は2号に該当する場合は、地域団体商標は拒絶される。
例えば、商標「さつまいも」は、商品「さつまいも」の普通名称である。
・2項(地域の名称)
(1)商標登録出願前から当該出願に係る商標の使用をしている→出願前から使用していなければ、地域の名称とは、認められない。出願後に使用を開始しても、地域の名称とは、認められない。
(2)1項各号の「地域の名称」には、現在の行政区画単位の地名ばかりでなく、旧地名、旧国名、河川名、山岳名、海域名等も含まれる。
(3)「商品の産地」
(a)農産物については、当該商品が生産された地域
(b)海産物については、当該商品が水揚げ又は漁獲された地域
(c)工芸品については、当該商品の主要な生産工程が行われた地域
(4)「役務の提供の場所」
温泉における入浴施設の提供については、温泉が存在する地域
(5)「密接な関連性を有すると認められる地域」
(a)原材料の産地が重要性を有する加工品については、その加工品の主要原材料が生産等された地域が1項に該当する。
「そばのめん」について、原材料「そばの実」の産地
(b)製法の由来地が重要性を有する工芸品については、当該商品の重要な製法が発祥し由来することとなった地域が1項に該当する。
「織物」について、伝統的製法の由来地
・3項(3条1項1号又は2号)
構成員のみが使用している場合には、3項の規定が存在しないと、3条1項1号又は2号を適用することができない。そこで、構成員のみが使用する商標であっても、3条1項1号又は2号に該当するときは、3項の読み替えによって、拒絶できるようにした。
・4項(方式要件)
補正命令に応じない場合→商標登録出願の却下(準特18条)
補正命令を受けないで商標登録がされた場合→7条の2第1項違反の無効理由となり得る。