2019年5月20日 弁理士試験 代々木塾 特許法68条の解説
(特許権の効力)第六十八条
特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。
ただし、その特許権について専用実施権を設定したときは、専用実施権者がその特許発明の実施をする権利を専有する範囲については、この限りでない。
〔解説〕
・本文(特許権は特許発明を独占排他的に実施し得る権利)
(1)業として→個人的、家庭的な実施を除き、広く事業としての意味である。
(2)専有する→独占排他的に実施できることを意味する。
(3)最高裁平成9年7月1日判決(BBS事件、国内消尽)
特許権者又は実施権者が日本国内において特許製品を譲渡した場合には、当該特許製品については特許権はその目的を達成したものとして消尽し、もはや特許権の効力は、当該特許製品を使用し、譲渡し又は貸し渡す行為等には及ばない。特許権者は、特許製品を自ら譲渡するに当たって特許発明の公開の対価を含めた譲渡代金を取得し、特許発明の実施を許諾するに当たって実施料を取得するのであるから、特許発明の公開の代償を確保する機会は保障されているものということができ、特許権者又は実施権者から譲渡された特許製品について、特許権者が流通過程において二重に利得を得ることを認める必要性は存在しないからである。
(4)最高裁平成9年7月1日判決(BBS事件、並行輸入)
日本国の特許権者又はこれと同視し得る者(子会社又は関連会社等)が国外において特許製品を譲渡した場合においては、特許権者は、譲受人に対しては、当該製品について販売先ないし使用地域から日本国を除外する旨を譲受人との間で合意した場合を除き、譲受人から特許製品を譲り受けた第三者及びその後の転得者に対しては、譲受人との間でその旨を合意した上特許製品にこれを明確に表示した場合を除いて、当該製品について日本国において特許権を行使することは許されない。すなわち、特許製品を国外において譲渡した場合に、その後に当該製品が日本国に輸入されることが当然に予想されることに照らせば、特許権者が留保を付さないまま特許製品を国外において譲渡した場合には、譲受人及びその後の転得者に対して、日本国において譲渡人の有する特許権の制限を受けないで当該製品を支配する権利を黙示的に授与したものと解すべきである。
・ただし書(専用実施権を設定した場合は特許権の積極的効力が制限)
(1)専用実施権を設定した範囲内では、特許権者は業として特許発明を実施できず、他人に通常実施権の許諾ができない。
(2)最高裁平成17年6月17日判決(特許権者の差止請求)
特許権者は、その特許権について専用実施権を設定したときであっても、当該特許権に基づく差止請求権を行使することができる。専用実施権の設定契約において専用実施権者の売上げに基づいて実施料の額を定めるものとされているような場合には、特許権者には、実施料収入の確保という観点から、特許権の侵害を除去すべき現実的な利益があるからである。
(3)特許権者の損害賠償請求
102条1項~3項は、専用実施権者に適用され、特許権者には適用されない。
専用実施権者の売り上げが減退して特許権者が受け取る実施料が減少した場合は、実施料の減少分は、特許権者の損害に該当し、特許権者は、民法709条により侵害者に対し損害賠償請求ができる。この損害賠償請求は、102条3項の実施料相当額の請求ではない。
(特許権の効力)第六十八条
特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。
ただし、その特許権について専用実施権を設定したときは、専用実施権者がその特許発明の実施をする権利を専有する範囲については、この限りでない。
〔解説〕
・本文(特許権は特許発明を独占排他的に実施し得る権利)
(1)業として→個人的、家庭的な実施を除き、広く事業としての意味である。
(2)専有する→独占排他的に実施できることを意味する。
(3)最高裁平成9年7月1日判決(BBS事件、国内消尽)
特許権者又は実施権者が日本国内において特許製品を譲渡した場合には、当該特許製品については特許権はその目的を達成したものとして消尽し、もはや特許権の効力は、当該特許製品を使用し、譲渡し又は貸し渡す行為等には及ばない。特許権者は、特許製品を自ら譲渡するに当たって特許発明の公開の対価を含めた譲渡代金を取得し、特許発明の実施を許諾するに当たって実施料を取得するのであるから、特許発明の公開の代償を確保する機会は保障されているものということができ、特許権者又は実施権者から譲渡された特許製品について、特許権者が流通過程において二重に利得を得ることを認める必要性は存在しないからである。
(4)最高裁平成9年7月1日判決(BBS事件、並行輸入)
日本国の特許権者又はこれと同視し得る者(子会社又は関連会社等)が国外において特許製品を譲渡した場合においては、特許権者は、譲受人に対しては、当該製品について販売先ないし使用地域から日本国を除外する旨を譲受人との間で合意した場合を除き、譲受人から特許製品を譲り受けた第三者及びその後の転得者に対しては、譲受人との間でその旨を合意した上特許製品にこれを明確に表示した場合を除いて、当該製品について日本国において特許権を行使することは許されない。すなわち、特許製品を国外において譲渡した場合に、その後に当該製品が日本国に輸入されることが当然に予想されることに照らせば、特許権者が留保を付さないまま特許製品を国外において譲渡した場合には、譲受人及びその後の転得者に対して、日本国において譲渡人の有する特許権の制限を受けないで当該製品を支配する権利を黙示的に授与したものと解すべきである。
・ただし書(専用実施権を設定した場合は特許権の積極的効力が制限)
(1)専用実施権を設定した範囲内では、特許権者は業として特許発明を実施できず、他人に通常実施権の許諾ができない。
(2)最高裁平成17年6月17日判決(特許権者の差止請求)
特許権者は、その特許権について専用実施権を設定したときであっても、当該特許権に基づく差止請求権を行使することができる。専用実施権の設定契約において専用実施権者の売上げに基づいて実施料の額を定めるものとされているような場合には、特許権者には、実施料収入の確保という観点から、特許権の侵害を除去すべき現実的な利益があるからである。
(3)特許権者の損害賠償請求
102条1項~3項は、専用実施権者に適用され、特許権者には適用されない。
専用実施権者の売り上げが減退して特許権者が受け取る実施料が減少した場合は、実施料の減少分は、特許権者の損害に該当し、特許権者は、民法709条により侵害者に対し損害賠償請求ができる。この損害賠償請求は、102条3項の実施料相当額の請求ではない。