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弁理士試験 代々木塾 特許法17条の2の解説

2019-04-21 08:03:32 | 日記
特許法17条の2の解説

(願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の補正)第十七条の二
1 特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる。ただし、第五十条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる。
一 第五十条(第百五十九条第二項(第百七十四条第二項において準用する場合を含む。)及び第百六十三条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定による通知(以下この条において「拒絶理由通知」という。)を最初に受けた場合において、第五十条の規定により指定された期間内にするとき。
二 拒絶理由通知を受けた後第四十八条の七の規定による通知を受けた場合において、同条の規定により指定された期間内にするとき。
三 拒絶理由通知を受けた後更に拒絶理由通知を受けた場合において、最後に受けた拒絶理由通知に係る第五十条の規定により指定された期間内にするとき。
四 拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求と同時にするとき。
2 第三十六条の二第二項の外国語書面出願の出願人が、誤訳の訂正を目的として、前項の規定により明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をするときは、その理由を記載した誤訳訂正書を提出しなければならない。
3 第一項の規定により明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をするときは、誤訳訂正書を提出してする場合を除き、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(第三十六条の二第二項の外国語書面出願にあつては、同条第八項の規定により明細書、特許請求の範囲及び図面とみなされた同条第二項に規定する外国語書面の翻訳文(誤訳訂正書を提出して明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をした場合にあつては、翻訳文又は当該補正後の明細書、特許請求の範囲若しくは図面)。第三十四条の二第一項及び第三十四条の三第一項において同じ。)に記載した事項の範囲内においてしなければならない。
4 前項に規定するもののほか、第一項各号に掲げる場合において特許請求の範囲について補正をするときは、その補正前に受けた拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについての判断が示された発明と、その補正後の特許請求の範囲に記載される事項により特定される発明とが、第三十七条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものとなるようにしなければならない。
5 前二項に規定するもののほか、第一項第一号、第三号及び第四号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶理由通知と併せて第五十条の二の規定による通知を受けた場合に限る。)において特許請求の範囲についてする補正は、次に掲げる事項を目的とするものに限る。
一 第三十六条第五項に規定する請求項の削除
二 特許請求の範囲の減縮(第三十六条第五項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)
三 誤記の訂正
四 明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)
6 第百二十六条第七項の規定は、前項第二号の場合に準用する。

〔解説〕
・1項(補正の時期)
・本文→拒絶理由通知前は、特許出願が特許庁に係属している限り、特許査定の謄本の送達があるまでは、明細書等について、いつでも補正ができる。
・ただし書→拒絶理由通知後は、1号から4号に掲げる場合に限り、明細書等について補正ができる。
・1号→最初の拒絶理由通知を受けた場合の指定期間内にするとき
 159条2項→拒絶査定不服審判において最初の拒絶理由が通知された場合
 174条2項→確定した拒絶審決に対する再審において最初の拒絶理由が通知がされた場合。
 163条2項→前置審査において最初の拒絶理由が通知がされた場合。
 最初の拒絶理由の通知→第1回の拒絶理由の通知は、常に、最初の拒絶理由の通知である。第2回以降の拒絶理由の通知であるときでも、補正がされていない請求項について出願当初から存在していた拒絶理由(進歩性がない等)を通知するときは、最初の拒絶理由の通知である。最初の拒絶理由と最後の拒絶理由を同時に通知するときは、最初の拒絶理由の通知である。
・2号→拒絶理由通知を受けた後、48条の7の事前通知を受けた場合の指定期間内にするとき
 拒絶理由通知前に、48条の7の事前通知がされたときは、2号の規定は適用されないので、事前通知に係る指定期間を経過した後でも補正ができる。
・3号→最後の拒絶理由通知を受けた場合の指定期間内にするとき
 最後の拒絶理由の通知とは、原則として補正によって生じた拒絶理由のみを通知するものをいう。拒絶理由通知書には「最後」の旨が明記される。
・4号→拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求と同時にするとき
 拒絶査定不服審判を請求するときは、請求と同時に限り、明細書等について補正ができる。この場合は、前置審査に移管する(162条)。

・2項(誤訳訂正書の提出)
(1)外国語書面出願について誤訳を目的とする補正をするときは、誤訳訂正書を提出しなければならない。
(2)誤訳訂正書→誤訳の理由を記載することが必要、誤訳手数料が必要
(3)手続補正書→補正の理由を記載することは不要、手数料は不要

・3項(手続補正書による補正について新規事項の追加を禁止する規定)
(1)3項の規定は、手続補正書による補正に適用され、誤訳訂正書による補正には適用されない。誤訳訂正書による補正については、49条6号違反になったときに拒絶理由となる。
(2)通常の特許出願(外国語書面出願及び国際特許出願以外の出願)の場合には、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲を超える補正は、できない。
(3)外国語書面出願についての手続補正書による補正
 原則として、外国語書面の翻訳文に記載した事項の範囲内で補正ができる。
 ただし、誤訳訂正書による補正をした場合は、外国語書面の翻訳文と誤訳訂正書による補正後の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲(翻訳文+補正後の内容)内で補正ができる。誤訳訂正書による補正をした部分について再度補正をするときは手続補正書で補正ができる。
(4)新規事項の解釈
(a)願書に最初に添付した明細書等に記載した事項とは、当初明細書等に明示的に記載された事項だけではなく、明示的な記載がなくても、当初明細書等の記載から自明な事項も含まれる。
(b)周知、慣用技術についても、その技術自体が周知、慣用技術であるということだけでは、これを追加する補正は許されず、補正ができるのは、当初明細書等の記載から自明な事項といえる場合に限られる。
 請求項に「弾性支持体」と記載され、当初明細書には弾性支持体の具体例が記載されていないが、当初図面には弾性支持体として「つるまきバネ」が記載されているときは、請求項の「弾性支持体」を「つるまきバネ」に変更することは、新規事項の追加に該当しない。
(c)優先権の主張を伴う後の特許出願の明細書等について補正をする場合において、優先権の主張の基礎とされた先の出願の当初明細書等に記載されている事項であっても、後の出願の当初明細書等に記載されていない事項を追加することは、新規事項の追加となる。
(5)「第三十四条の二第一項及び第三十四条の三第一項において同じ。」
 外国語書面出願について、仮専用実施権を設定することができる範囲(34条の2第1項)と仮通常実施権を許諾することができる範囲(34条の3第1項)は、原則として外国語書面の翻訳文に記載した事項の範囲内である。

・4項(発明の特別な技術的特徴を変更する補正の禁止)
(1)特許請求の範囲の補正について適用される。
(2)補正前に受けた拒絶理由通知において特許性の判断が示された発明との間で発明の単一性の要件を満たすことが必要である。過去に複数回の拒絶理由通知を受けていた場合には、特許性の判断が示された発明のすべてとの間で発明の単一性の要件を満たすことが必要である。
(3)出願審査請求前にする補正については、審査がされていないので、4項は適用されない。
(4)37条の発明の単一性の要件を満たすこと
(a)発明の単一性の要件は、経済産業省令(特施規25条の8)に規定されている。
 特許法施行規則(特施規)25条の8
1 特許法第37条の経済産業省令で定める技術的関係とは、二以上の発明が同一の又は対応する特別な技術的特徴を有していることにより、これらの発明が単一の一般的発明概念を形成するように連関している技術的関係をいう。
2 前項に規定する特別な技術的特徴とは、発明の先行技術に対する貢献を明示する技術的特徴をいう。
3 第1項に規定する技術的関係については、二以上の発明が別個の請求項に記載されているか単一の請求項に択一的な形式によって記載されているかどうかにかかわらず、その有無を判断するものとする。
(b)同一の又は対応する特別な技術的特徴
 補正前に特許要件の判断が示された請求項のすべての発明と、補正後の請求項のすべての発明との間で、同一の又は対応する特別な技術的特徴を有することが必要とされる。
(c)特別な技術的特徴
 先行技術に対する貢献を明示する技術的特徴をいう。同一の又は対応する特別な技術的特徴とは、発明特定事項のうち新規性のある事項を意味する。補正前の請求項1の発明がABCであり、補正後の請求項1の発明がABCDである場合において、刊行物PにABが記載され、刊行物QにCが記載されているときは、両発明に共通する「ABC」は、新規性があり、先行技術に対する貢献を明示する技術的特徴に該当する。
(d)特施規25条の8第3項により、請求項が一つのみでも、発明の単一性の要件を満たさない場合があり得る。
(e)具体例1
 補正前【請求項1】発明イ(ABC) 進歩性なし
 補正後【請求項1】発明ロ(ABD)
 請求項1の発明イ(ABC)について刊行物P(ABが記載)と刊行物Q(Cが記載)を引用して進歩性がないとする最初の拒絶理由の通知を受けた。請求項1の発明イを発明ロ(ABD)に変更する補正をした。補正前の請求項1の発明イ(ABC)と補正後の発明ロ(ABD)とに共通する発明特定事項はABであり、ABは刊行物Pに記載されているので、先行技術に対する貢献を明示する技術的特徴に該当しない。この補正は、17条の2第4項の要件を満たさない。
(f)具体例2
 補正前【請求項1】発明イ(ABC) 進歩性なし
 補正後【請求項1】発明ロ(ABCD)
 請求項1の発明イ(ABC)について刊行物P(ABが記載)と刊行物Q(Cが記載)を引用して進歩性がないとする最初の拒絶理由の通知を受けた。請求項1の発明イを発明ロ(ABCD)に変更する補正をした。補正前の請求項1の発明イ(ABC)と補正後の発明ロ(ABCD)とに共通する発明特定事項はABCであり、ABCは刊行物Pにも刊行物Qにも記載されていないので、先行技術に対する貢献を明示する技術的特徴に該当する。この補正は、17条の2第4項の要件を満たす。
(g)17条の2第4項違反の効果
 17条の2第4項に違反する補正をした場合は、拒絶理由に該当する(49条1号)。ただし、異議申立理由とはならず(113条1号)、無効理由とはならない(123条1項1号)。発明の単一性の要件を満たさないことは、2以上の特許出願をすべきであったとする形式的瑕疵にすぎないからである。
(h)例外的取扱い(審査基準)
 補正前【請求項1】発明イ(AB)  新規性なし
 補正後【請求項1】発明ロ(ABC) 4項違反としない
 補正前の請求項1の発明イ(AB)について刊行物P(ABが記載)を引用して新規性がないとする拒絶理由が通知された。請求項1の発明イ(AB)を発明ロ(ABC)に変更する補正をした。補正後の請求項1の発明ロ(ABC)は、補正前の請求項1の発明イ(AB)の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの発明である。この場合は、まとめて審査を行うことが効率的である発明であるとして17条の2第4項違反とはしない。

・5項(所定の目的)
(1)適用の対象となる補正
(a)17条の2第1項1号(50条の2の通知を受けた場合に限る)
 50条の2は、分割出願制度の濫用を防止するために、分割出願において、もとの出願の審査において通知された拒絶理由が解消されていない場合には、その旨を併せて通知しなければならないとするものである。この場合は、5項により、最後の拒絶理由通知を受けた際の補正の制限と同様の制限を課すこととしたものである。
(b)17条の2第1項3号(最後の拒絶理由通知を受けた場合の指定期間内)
(c)17条の2第1項4号(拒絶査定不服審判の請求と同時)
(2)特許請求の範囲の補正
 明細書のみの補正の場合は、文理上は5項は適用されない。ただし、明細書に記載された発明特定事項の意味内容を変更することにより、特許請求の範囲に記載された発明特定事項の意味内容が実質上拡張又は変更するときは、17条の2第5項の趣旨に反するとして5項違反となる。
(3)所定の目的に該当すること
 5項の制限は、審査の迅速のために、審査のやり直しを防止するためのものであって、第三者の不測の不利益を防止するものではない。5項違反は、拒絶理由、異議申立理由、無効理由のいずれにも該当しない。
・1号→請求項の削除
 訂正審判においては、請求項の削除は、特許請求の範囲の減縮に該当するので、別途規定を設けていない(126条1項各号)。しかし、5項2号は、かっこ書があるので、請求項の削除は、2号に該当しない。そこで、1号において、請求項の削除を別途規定することとした。
・2号→特許請求の範囲の限定的減縮
 特許請求の範囲の減縮であって、発明特定事項を限定するものであって、補正前の発明と補正後の発明とが産業上の利用分野及び解決課題が同一であるものに限られる。
 発明特定事項の直列的付加(AB→ABC)は、発明特定事項を限定するものではないため、2号に該当しない。発明特定事項の全部又は一部を上位概念から下位概念に変更することは(AB→aB、aはAの下位概念)、特許請求の範囲の限定的減縮に該当する。
 補正前の一つの請求項に対して補正後の一つの請求項が限定的減縮に該当する場合に適用され、補正前の一つの請求項に対して補正後の二つの請求項がそれぞれ限定的減縮に該当しても適用されない。
・3号→誤記の訂正
 誤訳の訂正は、通常は、審査のやり直しとなるので、除外している。しかし、特許請求の範囲について誤訳を目的とする補正がまったくできないわけではない。5項及び6項の趣旨を逸脱しない場合には、誤訳の訂正も認められる。
 明細書のみについて誤訳を目的とする補正については、文理上は5項の適用はない。しかし、明細書のみについて誤訳を目的とする補正をすることにより、実質的に特許請求の範囲に影響を与えるような補正は、審査のやり直しを防止するという5項の趣旨を逸脱しているので、認められない。
・4号→拒絶理由に示す事項についての明りょうでない記載の釈明
 拒絶理由に示す事項以外の事項については、便乗補正はできない。
・6項(126条7項の規定を準用)
(1)特許請求の範囲の限定的減縮(2号)を目的とする補正の場合は、補正後の発明が独立して特許可能であることが必要である。
(2)独立特許の要件→29条、29条の2、32条、36条4項1号、36条6項1号から3号まで、39条1項から4項まで
(3)補正が請求項の削除のみの場合→6項の要件は判断されない。
(4)補正がされていない請求項について、進歩性がないことが判明しても、6項違反にはならない。この場合は、あらためて進歩性がないとする拒絶理由を通知しなければならない。