鬼神の秘密

'05~'06オセロ世界チャンピオン 為則英司のブログです。

WOC2005予選編(第4ラウンド後編)

2006-06-03 11:00:44 | WOC2005
'05世界選手権の予選第4ラウンド、ニッキー・V・ヴィゲラー(オランダ代表)戦は29手目まで進み、下記の局面を迎えました。

F5D6C3D3C4F4E6B3E2C5D7E3D2F6F3F2G3G4H5C1E1G1C2B1F1D1B6E7B5
/ A B C D E F G H
1+○○○○○○+
2++○○●●++
3+○○●●●●+
4++●●○○●+
5+◆●●○○+●
6+●+●○○++
7+++●○+++
8++++++++
次、白番 (30手目)

白の私の直感では、下辺へのA打ち・C8が浮かびました。30手目C8以降、31 G6、32 G5、33 F7となると、左辺と下辺の処理が厄介になる上、黒はH6(あるいはH4)に余裕手を持った形(下記盤面)になるので、形勢不明と考えました。結局、私はこの進行を避けるため、30手目でC8を却下し本譜H4を選択しました。

30をC8に打った場合の予想図
/ A B C D E F G H
1+○○○○○○+
2++○○●●++
3+○○●●●●+
4++●●●●●+
5+●●●○●○●
6+●+●●●●+
7+++○○◆++
8++○+++++
次、白番 (34手目)

30手目H4以降35手目まで進んで下記局面を迎えて、私は悩みました。私の第一印象ではB4が良さそうに見えました。36手目をB4に打った場合、黒の37はA4(E4の種石を消して白がC6に打てないようにする狙い)、38 A6を予想しました。以下の予想図をご覧下さい。

F5D6C3D3C4F4E6B3E2C5D7E3D2F6F3F2G3G4H5C1E1G1C2B1F1D1B6E7B5H4H3G6G5H6H7
/ A B C D E F G H
1+○○○○○○+
2++○○●○++
3+○○●○●●●
4++●●○○●●
5+●●●●●○●
6+●+●●○●●
7+++●○++◆
8++++++++
次、白番 (36手目)

予想図の形は明らかに白が優勢だと思いましたが、一点だけ問題がありました。それは、上辺の白の山が中辺(2筋)が白一色のきれいな山になってしまうため、G2にX打ちして右辺の黒のウイングを攻撃できなくなることです。また、右上に白から手を付けにくい奇数空き(3個空き)ができてしまうため、終盤で負担になることを恐れました。大事に行こうという気持ちが強すぎて「手が縮んでいる状態」に陥っていたのかもしれません。以上の思考の結果、私は36で最善手B4を避けて、緩手C6を選択してしまいました。

36をB4に打った場合の予想図
/ A B C D E F G H
1+○○○○○○+
2++○○○○++
3+○○○○●●●
4●●○●●●●●
5+○○●●●○●
6◇●+○●○●●
7+++●○++●
8++++++++
次、黒番 (39手目)

白の緩手36以降、試合は大混戦に突入し、下記局面(黒番)を迎えました。私が恐れていたのは43でA2に打たれることです。将来、黒がH1の隅を取った後、左上で黒がA1とB2に連打できる形になるため、かなり厳しい形勢になることを覚悟しました。しかし、ニッキーも43で最善手A2を打ち切れず、平凡にF7に打ったため、勝機を逃しました。

F5D6C3D3C4F4E6B3E2C5D7E3D2F6F3F2G3G4H5C1E1G1C2B1F1D1B6E7B5H4H3G6G5H6H7C6B4G2F8C8D8C7
/ A B C D E F G H
1+○○○○○○+
2++○○●○○+
3+○○●○○○●
4+●●●○○○●
5+●●○○●○●
6+●○○○○●●
7++◇●●++●
8++○●+●++
次、黒番 (43手目)

そして、この試合の最大のハイライトである44手目を迎えました。白が勝てる手は一つしかありません。どこが最善か考えてみてください。

/ A B C D E F G H
1+○○○○○○+
2++○○●○○+
3+○○●○○○●
4+●●●○○○●
5+●●●○●○●
6+●○○●●●●
7++○●●◆+●
8++○●+●++
次、白番 (44手目)

44の正解は本譜A5です。この手は中辺の石を3つも返してしまうため、序盤、中盤の手筋では壁づくりの悪手となるところですが、この局面ではここしかありません。44手目A5の狙いは2つあり、一つ目はd5の黒石を白に変えてブラックラインを白の通しにすることです。二つ目はB列の中辺にB3以外にも白石を乗せておくことで、将来、黒がH1の隅を取った後A1に回ってきたときに黒が右上でA1,A2,B2に三連打出来ない形を作っておくことです。

ちなみに44をA5以外に打った場合、例えばA4だと黒にA6に打たれて白の手が無くなりますし、A6だとE2の黒石が白になるため黒にH2、H1に連打されて負けてしまいます。

そして、白にとっては最後の関門となった48手目を迎えました。きれいに勝てる手は一つしかありません。さて、どこでしょうか?

F5D6C3D3C4F4E6B3E2C5D7E3D2F6F3F2G3G4H5C1E1G1C2B1F1D1B6E7B5H4H3G6G5H6H7C6B4G2F8C8D8C7F7A5A4A3A7
/ A B C D E F G H
1+○○○○○○+
2++○○●○○+
3○○○●○○○●
4○○●●○○○●
5○●●○○●○●
6+●●○●●●●
7◆+○●●●+●
8++○●+●++
次、白番 (48手目)

48の最善手はB7です。黒が49でA6に打ってブラックラインを切っても、白が50でE8に打つとC6の黒石を白に戻せるので、ブラックラインの通しを維持できます。49以降、白(私)はブラックラインの通しを守りきり、20石差で勝利しました。

/ A B C D E F G H
1+○○○○○○+
2++○○●○○+
3○○○●○○○●
4○○●●○○○●
5○○●○○●○●
6+○○○●●●●
7●◇○●●●+●
8++○●+●++
次、黒番 (49手目)

勝負どころでキッチリと最善手を打てたのは良かったのですが、中盤の打ち回しが少し縮んだ感じで何となくぎこちなかったため、中盤の打ち方に修正が必要と感じました。