都の東北を縄張りとするボス猫のムルが、皆様の悩みに勝手に答える「牡猫ムルの人生相談」。第1回は某国首相、続けて第2回は「憲法の話をしたい若いママ」の悩みを取り上げました。久しぶりの第3回は――自分の発言がなぜそんなに非難されるのか(実のところ)わからないという、お年を召した厚生労働大臣の悩みに答えます~。(ムルって何だと気になる方は、こいつを簡単に紹介したエントリをご参照くだされ)
【質問】きちんと謝ったのに、どうしていつまでもゴチャゴチャ言うんだ!?
私は厚生労働大臣であるが、実は先日、うっかり「失言」をしてしまった。少子化問題のことを話した時に、「産む機械、装置の数は決まってるんだから、ひとり頭で頑張ってもらわんと~」と言ったのだ。そしたらもう、ババア共、じゃなかったご婦人の皆様や、それどころか野郎共、じゃなかった男性達までがうるさいことうるさいこと。あたしゃね、別に女性の人格を無視したわけじゃあ、ありませんよ。差別意識なんてこれっぽっちもありませんよ。第一、私は自分の母親を尊敬しとるですしね。でもまあ、表現が適切じゃなかったかも知れない、と思って慌てて訂正したしね、申し訳なかったと陳謝いたしましたよ。それなのに、まだブウブウ言う輩が多くて、ほんとのとこ面食らっておるのだ。機械とか装置とかっていうたとえも、ここだけの話じゃが別におかしいとは思わんのだよ、わしゃ。単なるたとえじゃないか。キイキイ言う人間の気が知れんよ。でも、オンナ共、じゃなかった女性の反感買うと参院選も危ないとかって言われて、謝りましたよ。総理はそれで充分だって言ってくださったし、経団連会長だって「すぐ謝罪、訂正したんだからいいじゃないか」と言ってくれてますしね。それなのに、まだ「辞任しろ」という声が聞こえるのには正直言って腹が立つばかり。いったい何が不足なんだ。土下座でもしろって言うんですかね。
【回答】ゴメンですまない話なんだよ。あんた、わかってないね。
あーあ、こんな話、もう喋るのもうっとうしいんだよな(設定した華氏の奴、今度ずぇったい引っ掻いてやるぞ)。
あんた、「謝ったからそれでいい」と思ってるの? 華氏じゃないけどさ、「ゴメンですむ話ではない」 とおいらは思うぜ。形だけでもいいから謝れば、みんなチャラになる。水に流してもらえる。あんたらきっと、そう思って生きてきたんだろうなあ。口で謝ってダメなら、土下座すればいいか、ってさ。ほんともう、度し難い感性だよな。経団連も、馬脚あらわしちゃったよな。
ちょっとまずい表現しちゃった。だから謝って、言い換えればいいじゃん、とあんた思ってるだろ? それが変なんだって、あんた気がついてないんだよな……。あんたは「機械、装置」という言葉はさすがに不適切だったとかって言って、「産む役割の人」とか、そういう表現に言い換えたんだって? 同じじゃん。何処が違うのさ。ゾゾゾゾゾっと、おいらなんか鳥肌が立つよな。おいらは数にも入んない、生きようが死のうが世界とはなーんの関係もない野良猫だけどさ、「産ませる役割の存在」なんて言われりゃあマジで怒るぜ。国民はモノ、なんだよな。おかみの言う通りに「産めよ増やせよ」をやってろっていうんだよな。個々の人間の存在とか、歓びとか悲しみとかなんざ、ぜーんぶ、なーんの関係もなくってさ。そうゆう発想なんだよな、あんたら。働け、そして産め。国に奉仕せよ。
あんたは「美しい季節とは誰にも言わせまい……」のnizanさんが言うように、ノスタル爺かも知んない。ノスタル爺なら、それはそれでかまわねぇよ。勝手にやってな。でもさあ、それをいつまでも引きずって、それどころか若い層にまで押しつけようとするのは、やっぱしおかしいぜ。黙って消えて行きなよ、悪いこと言わねぇからさ。(だいいち、あんたがノスタル爺ぶりを振りまくと、迷惑に感じる人も多いと思う。反戦老年委員会さんとか、再出発日記さんとかも、絶対不愉快だと思うんだよな。こんな奴と、同世代じゃねえぞーって)
ちょびっとだけ言葉飾っても、衣の下から鎧がチラチラするっていうやつ。あんた見てると、ほんとそう思う。とくらさんって人もさ、「おばさんをお嬢様と言ってるだけの言葉に騙されない」と言ってるぜ。庶民てのはね、すこーし反応が鈍いかも知れない。周囲に気イ使っちゃって、つい口ごもったりするかも知れない。おいらの友人の華氏も、そういうヘタレな奴さ。でも、いつまでもいつまでも騙されちゃあいないんだぜ。いつまでもいつまでも黙っちゃあいないんだぜ。ぎりぎりまで行けば、やっぱしキレる。あたりまえじゃんか、生き物だもん。
ところで首相は「反省した上で職務をまっとうし、結果を出して欲しい」とか言ってるようだし、あんたも「全力を挙げて取り組む」とか言ってるんだよね? なーんかさ、あんたでなきゃ出来ない、みたいに首相は(本気かポーズかは別として)言い、あんたは「我こそは」って思ってるみたいだね。都知事流に言えば、余人をもって代え難い、ってやつかね。でもさあ、そんなこと、ゼーッタイにないんだって。いくらでも代わりはいるって。特にあんたと同程度の人だったら、自民党内には掃いて捨てるほどいると思うよ。それに気がつかない、あるいは気がつかないフリしてるってことが、そもそも問題だとおいらなんざ思うけどなあ……。
関係ないけどさ、「なだ いなだ」って人が筑摩書房のPR誌の『ちくま』だったかな、おいらよく覚えてないけど、ともかくどっかで「安倍首相は美しい国、美しい国と連発している。よっぽどこの国が汚いと思っているらしい」と吐き捨てていた。それ読んだ時は「晋三君にとっては、この国は汚ねぇんだろーな」と思っただけだけれど、あんたの発言聞いて、おいら、「けっ、やっぱりこの国は汚ねぇや」と思ったね。そーりだいじんとは、全然違う意味だけどさ。きったねぇ!!
例によって「コメント欄TB」で失礼します~。
柳澤先生、辞任してください
http://kihachin.net/klog/archives/2007/02/yanagisawa2.html
TBありがとうございました。コメントしようと思ったことが、本文にもう書いてあったので……。日だまりで寝そべるムルのひとりごとが聞こえてきました。
「今日は節分か、これからいよいよ恋の季節だ。例の大臣というのは恋をしたことあんのかなあ。ねえだろうな。あるとすればたぶん機械に恋しちゃったんだ。われわれ仲間にはバッテリー仕掛けのおもちゃの猫に恋する“どあほう”なんかいないもんなあ」
ムルの声を聞くとホッとするわ。
一つ前のお題で華氏さんが《ホワイトカラーエグゼンプション制度もまた、国を富ませるため、という理由付けのもと、国民を働く機械とみなすもの》という趣旨のことをおっしゃっていました。
気が重くなります。ですが僕もそう思います。
一つ付け加えさせてください。
あの新しい教育基本法もまた、根が同じだろう、と。