華氏451度

我々は自らの感性と思想の砦である言葉を権力に奪われ続けている。言葉を奪い返そう!! コメント・TB大歓迎。

絵本『せかいでいちばんつよい国』

2008-01-20 23:59:23 | 本の話/言葉の問題

 明日久しぶりに古い友人に会うので、その子供への贈り物にするつもりで3冊ほど絵本を買ってきた。うち2冊は私が昔から偏愛している絵本だけれども、1冊は書店で見つけて衝動的に買ったものである。

 で、チビさんに贈る前に、自分で読んでしまった。題名は『せかいで いちばん つよい国』。作者はイギリスの絵本作家であるデビッド・マッキー。

 絵本はまず、つぎのような文章で始まる。

【むかし、大きな国がありました。大きな国の 人びとは、じぶんたちの くらしほど すてきなものはないと、かたく しんじていました。この国の へいたいは、たいへん つよくて、たいほうも もっています。そこで 大きな国の だいとうりょうは、いろんな国へ、せんそうを しにいきました。「せかいじゅうの 人びとを しあわせにするためだ。われわれが せかいじゅうを せいふくすれば、みんなが われわれと おなじように くらせるのだからな」 】

 そのまんま、である。そう、現実に存在する大国に……。あまりのストレートさに、腹を抱えて笑ってしまうほどだ。

 そして――

【ほかの国の 人びとは、いのちがけで たたかいました。けれど どの国も、さいごには まけて、大きな国に せいふくされて しまいました】 

【しばらくたつと、まだ せいふくされていない国は、たったひとつに なりました。あんまり 小さい国なので、だいとうりょうは、これまで ほうっておいたのです】

 でも一つだけ残っているというのも気分が悪く、「大きな国」の大統領はついにその国に軍隊を進発させた。

 その結果、どうなったか? ――興味を持たれた方は、ぜひ書店で手にとって下さい。何せ絵本だから、ゆっくり絵を味わいながらでも10分以内で立ち読みできる。御用とお急ぎのない時に、できれば感想なども聞かせていただきたかったりもする。

 私自身は、その経過や結末に対して、ほんの少し 牧歌的過ぎるような印象を抱いた。もっともっと陰惨な話の方が、心に迫る気がしたのかも知れない。

 だが考えてみれば、ひとが生きるということ、そして「命の倫理」というのは、そんなに複雑でややこしいものであるはずはない。千年杉のような揺るぎない野太い命の倫理、生き物のモラルともいうべきものを、我々はこまっしゃくれた小手先の知恵でいじり回しすぎているのかも知れない。絵本や童話の類は(私はそういうものがこよなく好きであるのだけれども)、妙に斜に構えることをカッコイイように感じるがゆえにともすればやせ細っていく根源的な知恵を、我々に思い出させてくれるように思う……。

◇◇◇◇◇

 ゴタゴタ続きでじっくり本を読めず、このところ斜め読みばかりしている。ここで紹介した絵本を読む前に目を通したのは山田風太郎『風来忍法帳』(読むのは確か三度目ぐらいだけど)。やっぱり風太郎、好きだなぁ。「いいや、伽羅のかたきだ」(『外道忍法帳』)って、私も言ってみたかったりして。

 一昨日、ちょっとした拍子に本の山が崩れた。私の家は本がオタクっぽく溜まっていて、古書店の倉庫みたいだといつも友人達に言われる。もっとも、そんなこと言うと古書店のオヤジは怒ると思うけど……我が家はほんと、脈絡なく積み上げているだけだからして。本棚に収めきれない本が廊下だの部屋の隅だのに積み上げてあって、それが大々的に崩れてしまったのだ……。その整理に、一日かかってしまった。とほほほほ。本に埋もれて死んだら本望?……な、わけないっ!!

『風来忍法帳』は、その整理の途中で「ありゃ、こんなところに」と見つけた本のひとつでありました。あっ、まだ読んでない王権関係の本が溜まってた……。 

コメント (12)
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