華氏451度

我々は自らの感性と思想の砦である言葉を権力に奪われ続けている。言葉を奪い返そう!! コメント・TB大歓迎。

「息苦しさ」の一歩手前(UTSコラム再掲)

2007-05-29 23:51:18 | ムルのコーナー

 Under the Sun ではほぼ隔日の割合で、メンバー有志のコラムを載せております。ときどき更新があった方が覗いてもらいやすいから――という理由で始めたものですが、十人十色のコラムを楽しんでいただければ幸いです。今月のタイトルは「あつくるしいもの」。

 自分のブログのエントリ代わりに(さぼって)、そちらのコラムの冒頭部分を再掲しておきます。

◇◇◇◇◇

「トマよぉ、いるか?」
 築後20年以上経つらしい、かなりくたびれたマンションの1階の片隅。半ば開け放された窓から野良猫ムルが首を突っ込んで呼ぶと、トマシーナ(通称トマ)がすっ飛んで来た。
「あ、兄貴。こんばんは~。何か元気ないけど、どうしたの」
「今日は全然、食い物にありついてなくてさぁ。腹が減って腹が減って。シャケ弁の残りか何かあったら、ちょいと戴こうと思ってさ。華氏に聞いてみてくんない?」
「うーん。今はダメだと思うよ。机に向かって頭抱えちゃってるから。下手に近寄らない方がいい雰囲気」
「頭抱えてる? なーんでまた」
「Under the Sunのコラムの日だっていうこと、ころっと忘れてたんだって。で、慌てて唸ってるわけ」
「相変わらずバカだなぁ、おまえんちの華氏の奴。……頭抱えて唸ったって、何も出て来やしないから諦めろって言ってやんな。無から有は生じない。これ、天地開闢以来の真理だぜ」
「そんなこと言わないでよぉ。可哀想じゃん。できれば手伝ってやりたいけど、僕もなかなかアイデア湧かなくてさ」
「へえ……おまえも結構ヒトが……じゃないや、ネコがいいんだな」
「だってやっぱりさ、一応食わせてもらってる義理もあるしィ」
「へへへ、義理ときやがった。義理堅い猫なんて、何か『マルキシズムを信奉する王様』とか『老後の心配をする少年』みてぇだな。あるのかよそんなもん、てな感じ」
「いーじゃん。あ、そうだ。兄貴、考えてやってよ」
「げっ、なんでおいらが……」
「兄貴、ヒマでしょ? それにさ、兄貴のおかげでコラムが仕上がったら、喜んで何か食べるもの用意してくれると思うよ」
「うーん。ま、いいか。……ところであのコラム、お題ってやつがあるだろ。今月は何なんだい」
「あつくるしいもの、だってさ」
「きゃはははは。あつくるしきもの、無い知恵を絞ろうとして七転八倒する華氏。貧乏揺すりの膝が机の脚にぶつかる音、冷や汗で濡れた髪が額に貼り付くさまも、いとあつくるし」
「もう……少しは真面目にやってよぉ」
「わ、わかったわかった。ベソかくんじゃねぇよ」

……というわけで、今回は都の東北を闊歩する牡猫・ムルと、その腰巾着のトマがひねり出した「あつくるしいもの」でございます。え? そのコンビの方があつくるしいって? す、すみません……。

◇◇◇◇

 御用とお急ぎがなく、続きを読んでやってもいいぞ、という奇特な方がおられましたら、こちらへ。

 

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