華氏451度

我々は自らの感性と思想の砦である言葉を権力に奪われ続けている。言葉を奪い返そう!! コメント・TB大歓迎。

共謀罪――「目を付けられたら最後」

2006-04-28 00:34:53 | 憲法その他法律


共謀罪から、私がふと連想したものについてちょっと書いておきたい。連想したのは――「別件逮捕(別件拘留)」という言葉だ。本命の事件が逮捕要件を満たさない場合に、要件を満たす他の事件で逮捕・拘留する方法。別件は、多くの場合、軽微な犯罪である(むろん、そうでない場合もある)。

たとえば友人同士の賭け麻雀や街角の立ち小便。やった経験のある人は少なくないはずだ。普通はその程度で手錠を掛けられることはないが、一応「違法な行為」だから、その気になれば逮捕は可能である。ほかに飲み屋のツケを払っていないとか、職場の同僚の作業着をちょっと借りる気で持ち出してそのまま忘れていたなどの行為も、犯罪名をつけようと思えばつけられる。たとえばある大きな事件で、警察が誰かに嫌疑をかけた。だが証拠はないという時、そういう軽微な犯罪で引っかけたりする。そして誰でも――とまでは断言しないが、多くの人はいざとなれば逮捕される程度の些細な違法行為を犯しているはずだ。

「日本はアブナイ!」のmew-run7さんは、共産党員がマンションで議会報を投函していて逮捕された話等々を引いて、「国は自分の都合で法律を使う」と警鐘を鳴らしておられる。(http://mewrun7.exblog.jp/3311957)
また「とりあえず」のluxemburgさんも、かつてオウム真理教の信者が工具をポケットに入れていただけで逮捕されたなどの話を例にとって、「共謀罪が新設されると、このエンタテインメントはもっともっと派手になるだろう」と書かれていた。(http://luxemburg.exblog.jp/d2006-04-26)

私がまだ読んでいないだけで、おそらく多くのブログで、同様の危惧が表明されているのではないか。

別件逮捕というのは警察が目をつけた相手を、「普通は問題にされない程度の違法行為」や、「かなり無理矢理に違法と解釈した行為」で引っ張って行くということである。共謀罪が成立した場合、その適用は別件逮捕の場合の軽微な犯罪と似たものになるはずだ。

たとえば複数のサラリーマンが酒を飲みながら社長の悪口を言い、憂さ晴らしに「あの社長の真っ青になった顔が見てみたい」「あそこの子を誘拐して身代金を要求するってのはどう?」「あ、それおもしろい」と話していたとする。共謀罪が存在したとしても、いくら何でもその程度ですぐに逮捕されることはないだろう。だが、そんな話をしていたサラリーマン達が国の政策にとって都合の悪い市民運動などをしていたとすると、「共謀罪」で引っかけられるかも知れないのだ。9条の会に参加していたり、米国産牛肉輸入再開に反対している皆さん、危ないですよ。

企業が都合の悪い社員、たとえば企業にとって目障りな組合運動をしているとか、会社の方針に逆らうなどの社員を切るために、共謀罪を利用することも出てくるだろう。たとえば経営者側に意を含められた社員がその目障りな社員に近づいて「犯罪」の話を持ちかけ、合意があった時点で「通報」するとか……。まさか、と笑っていられるうちはよいのだけれども。

26日の「共謀罪に反対する大集会」(日弁連主催)で、『共謀罪 その後・第一話』と題するビデオが上映された。これはある週刊誌の編集部員の通報によって、編集長と副編集長、イラストレーターが「首相に対する名誉毀損の共謀」で逮捕されるという話。笑い事ではないと私などは顔が引きつった。そんな引っかけられ方をすれば、ほんの少しでも反権力の記事を載せていたメディアは息の根を止められる。

いずれにせよ目をつけられたら最後、いつ引っかかるかわからない「共謀罪」。目をつけられないよう、触らぬ神にたたり無し、と皆が息を潜めて暮らす世の中がもうすぐやって来る。

〈追記〉
共謀罪の本質やその恐ろしさについては大勢の方が書いておられるし、日本弁護士連合会などのサイトでは法律専門家の立場から綿密な解説と分析がおこなわれている。そういう所を読んでいただければよい。

共謀罪に関するTBセンター
http://utshome.exblog.jp/1887155
日弁連ホームページ
http://www.nichibenren.or.jp/

〈28日夜の追記〉
どうやら採決は見送られたようだが……ほっとしている場合じゃなーい!

〈29日の夜の追記〉
共謀罪、共謀罪と何度かブログに書いている。共謀罪については大勢の方が私なんぞよりはるかに読みでのある記事を書いておられる。それらを読んで戴いたり日弁連などのサイトなどを見ていただく方がよほどいいし(って……下にも書いてるなあ)、ウチのようなささやかなブログが何かの力を持つなどとも思っていないが、これはやむにやまれぬ庶民の悲鳴。窒息させてくれるな! やめてくれ!!……と、私は今日も「声なき声」をあげる。
コメント (5)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする