12月1日(日)
17日前のこと。
オンラインで大学院のコースを取っている。この日はチャットルームを用いたセッションがある予定だった。
前もって予習用の資料が与えられており、月末に締め切りであるはずの課題もあらかじめ自分なりに済ませておく、というのが参加の条件であった。
だから自分なりに真面目に予習し、セッションの前日に課題も埋めてみた。
終わらせることが必須の課題に使う資料について教えて下さい、と私が学校の質問版で質問をした際も、
「課題を終わらせておかないと参加できないから絶対に済ませるように」とセッション担当ではないD教授から再度言われる念の押し様だった。
「終わらせることが必須の」とこちらが最初から言っているにもかからわず、「終わらせておかないと参加できない」とわざわざ重ねて言う(書く)この教授に、
この人はなんなのだろう?と不思議に思った。馬鹿にしてんのか?と。
しかし実際に課題に手を付けてみると、想像以上にやっかいであることが分かった。
下手するとくじけそうになった。
間に合わないかなぁ。
課題の〆そのものは月末なんだから、セッションは諦めようかな~。
まだ月半ばじゃん・・・。
しかし、あのD教授から重ねて念を押されたことを思い出して、根性でほとんどむきになって終わらせた。
「何?終わらなくて参加できない?あれほど終わらせろって言ったのに?」と思われるのが悔しかったからである。
念を押されたことで「馬鹿にすんじゃねーよ。」と思った自分のガラス細工のようなプライドが静かに震えた。
というのは大げさだが、要はまぁちょっと踏ん張ってみたくなったのだ。
セッションの担当教授はD教授ではなくK教授だが、どうせ先生たちの間では学生に関する話は筒抜けになっているに違いない、そう思ったのだ。
なんとか前日ぎりぎりに課題をK教授に送り、セッションへの参加許可も出た。
準備万端である。
当日。
セッションの30分前にはPCの前にスタンバイした私。
チャットルームに入室しておこうかと思ったが、入れない。
間違いなく正しいIDとパスワードを入れているにもかかわらず、パスワード無効の表示が出るのだ。
おかしいな?早すぎるのかな?
15分前になって再度試すが結果は同じだった。
パスワードが無効。
仕方がない。
私はパスワードをリセットすることにした。
「パスワードを忘れました」のボタンをクリック。
「パスワードリセットの案内をメールで送ります。ご確認ください。」というポップアップ。
スクールEメールを確認するが、来た気配はない。
その代わり、奇妙なEメールが届いていた。
「本日は〇〇セッションにご参加頂きありがとうございました!素晴らしい日をお迎えください!」
なんじゃそりゃ~?
セッションはまだこれからのはずである。
一体どうなっているのか?
業を煮やしてカレッジのITサポートデスクに電話をした。
そのまま待機。
前の利用者が複数つっかえているようだ。
機械の声によるメッセージが流れる。
「あと2名・・・。」
まじすか?
ひたすら待つ。
でも待つしかない。
「あと1名・・・。」
もうセッション開始の時間だ。
あら~、間に合わなかった。
しかし遅れてでもちゃんと参加しよう、そう思った。
さっきのメールが気にかかるけれど・・・。
「ITサポートです。」
男性オペレーターがやっと応答した。
正しいパスワードが拒否されるのでリセット依頼をしたが、リセット用のEメールが来ない、ということを話した。
すると男性はこちらのPCをリモートで操作したいという。
ソフトをインストールして、こちらに入る許可を出してくれという。
中を見てみないと状態が分からないからなのだそうだ。
リモート操作?
ただパスワードのリセットを頼んだだけなのに?
この人、本当に大丈夫なの?
怪しいやつじゃないだろうね?
でも私は間違いなく、大学のITサポートの番号に電話したのだ。
疑ってもしょうがない。
私は言われたとおりにソフトをインストールして、相手にこちらのPCに入る許可を与える操作をした。
時間はどんどん流れていく。
ITサポートの男性はチャットルームの状態を見て言った。
「あーこれは妙だ。あなたは本来はパスワードなんか入力しなくてもルームに入れるはずなんです。それがその状態になっていない。」
ITサポートの人は私に入力番号を教え、私はやっとのことでチャットルームに入室できた。
(その番号はk教授が送って来たセッションのリマインドメールの中に書かれてあった。
しかしチャットルームに入室するための番号だとは明記していなかった。
というか、本来なら何にも入力しなくてもいいはずだと言うではないか。
いったいどうなっているのだ?)
完全な遅刻である。
しかしすっぽかしよりはよい。
あんなに一所懸命に参加条件の課題をやったのだ。
「他にお手伝いできることはありますか?」とITサポートの男性。
私は先ほど送られてきた「本日は〇〇セッションにご参加頂きありがとうございました!素晴らしい日をお迎えください!」という謎のメールについて尋ねてみた。
「あなたに訊くべき質問なのかどうか分からないんだけれど。」と前置きした上で。
ITサポートはこう言った。
「そのEメールも奇妙だな。確認してみないと分かりません。」
私はもう1つ質問した。
そもそも今回のことはパスワードが効かなかったことが問題だったのだ。
これから先、私が同じパスワードでチャットルームに入ろうとしたら、また同じことが起こるのかどうかということ。
「それについても解明する必要があります。」
それが相手の答えだった。
これ以上この人にねばっても意味がないので、私は礼を言って電話を切った。
PC進入の許可はオフになっている。
そして私はいよいよセッションに参加するべくチャットルームに入って行った。
私が見たもの、それは次のメッセージだった。
「担当教授が未だ不在のため、セッションの開始が遅れております。しばらくお待ちください。」
まじすか?
教授が遅刻か。
時間はすでに開始時刻を15分以上過ぎていた。
私はそのままPCの前で待機した。
他のEメールをチェックしたり、やることは色々ある。
開始時刻から30分経ってもセッションは始まらなかった。
私はラップトップをダイニングに移動し、夕飯の支度をしながら待つことに決めた。
セッションの予定はだいたい1時間半といったところだ。
私はPCの画面を気にしながら、野菜を洗ったり刻んだりした。
夕飯の支度もあらかた済み、夫も帰宅した。
セッションはあと数分で終了する予定だったが、そもそも始まってすらいなかった。
そして始まらないまま終わりの時間を迎えた。
K教授はセッションをすっぽかしたのだった。
残されたのは、すでに済ませておいた月末〆のレポートと、出来上がった夕飯だった。
すっぽかされてもあまり嫌な気分にはならなかった。
結局ややるべきことはすっかり片付いたのだから。
しかし、K教授のセッションてどんな中身だったのだろう。
埋め合わせはあるのかな?
そう思った。
後日K教授より、課題についての電話でのアドバイスがあった。
あらかじめ送っておいたレポートに対してのフィードバックだ。
専門分野に関する、ためになるウェブサイトも教えてくれた。
そして私の担当教授であるB先生に無事提出したのであった。
さて、今回のことを振り返ってみた。
11月中は課題が2つ課されていた。
〆は月末である。
今回のセッションのことは、学生に課題の1つを月半ば辺りにあらかじめ終わらせておくための、先生たちの作戦だったのではないかと思っている。
不自然な念押しからすっぽかしまで、すべてが仕組まれていたことなのではないかと。
そもそもセッションはニセのおとりだったのではないかと。
でも証拠も確信もない。
本当にK先生が何らかの事情でセッションを開けなかったのかもしれない。
すべては謎のままだ。
仮に仕組まれたとしたらそれは、スケジュール調整に失敗して間に合わなくなる学生が出るのを防ぐためだろう。
11月の末には感謝祭の4連休がある。
短い月だったのだ。
締め切り間際に2つの課題を学生皆からいっぺんに送って来られると、先生たちも困るからというのもあるかもしれない。
学生は正式に学校に課題を提出する前に、担当の先生に見てもらえることになっている。
しかし先生にだってスケジュールがある。
ぎりぎりに大量のレポートが来ては返事が書けない。
・・・というわけで、
課題は計画的にお早めに済ませるのが一番であるということを学んだ月であった。
特に2つ宿題がある場合は。
今月課題が1つだ。
でもなるべく早めに終わらせるようにしよう。
何といっても、クリスマスと年末が控えているのだ。
水曜日に行われるD教授のセッションに登録済である。
出来るだけ課題を進めてみるつもり。
今回は課題を終わらせるのが参加条件にはなっていないが、やれるだけやっておくに越したことはないもんね。
終わり。