教団「二次元愛」

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転換社債は誰がどういう理由で発行するのか?

2014-03-13 23:58:42 | 経済/経済/社会
とある時事ネタで転換社債の話があるので、ついでだから書いておくことにする。



転換社債とは?

キホン的には社債なんだが、とある条件で株式に交換できる権利がついているという変な社債である。

ここでいう「とある条件で」とは、たとえば
「現在の株価が1株あたり100円だが、2年後の社債の満期になると(そのときの株価にかかわらず)1株あたり150円で株式に交換しても良い」
というような話になる。

もし2年後の満期のとき株価が180円だったとすると、その株を150円で買うことになるので、(金利のほかに)差額の30円が儲かる。
もし2年後の満期のとき株価が120円だったとすると、その株を150円で買うのはバカバカしいのでほっといて、単なる社債として100円を返してもらう(ので金利の分だけ儲かる)。

もし株価が暴騰すれば濡れ手に泡の大儲け。
株価が上がらなくても損はしない。
そんな投資家にとっていいことずくめの債権が転換社債なのだ!!

・・・とはならない(笑)。

なぜかというと、「運が良ければ大儲けできるかもしれない」という確率論的な部分にも値段がつくため、その分だけ時価が上がるからだ。

ふつうの社債は、たとえば
額面100円 金利2% 時価100円
というような扱いだとしよう。

ところが転換社債だと、たとえば
額面100円 金利2% 時価103円
というような扱いになる。

この例だと、「運が良ければ大儲けできるかもしれない」という部分に余分に3円のコストを払っていることになる。

このへんの話はオプションの理論を理解しないとホントのところは理解できない。
なぜかというと、転換社債とは、ふつうの社債とコールオプションの抱き合わせ販売であり、なんちゃってでもいいから自分でコールオプションの値段を見積もれるヤツでないとその値段が妥当なのかどうなのかがわからないからだ。

転換社債は満期になれば悪くてもほぼ満額帰ってくるし、良ければ大化けするかもしれない、そんなところが個人投資家の支持を得ているところがある。
だがホントにわかって買ってる個人投資家がいったいどれだけいるのかというのに疑問に感じる。



では、その転換社債は誰がどういう理由で発行するのか?

・・・という話をする前に、もう1つ前提がある。

会社のバランスシートの右半分は債務と資本(純資産)にわかれる。
これは、会社というのは、銀行から借りてる銭(債務)と、株主から借りてる銭(資本)とでできている、ということである。

(資本とくらべて)借金がかなり多い会社は、借入金利は上がるし銀行がうるさく口を出すしで、経営上あまりよろしくない。
そういう会社は役員からすれば(資本のコストにくらべて)債務のコストが高い。

その逆の場合もありうる。
(債務とくらべて)資本がかなり多く、かつ現金をしこたま持っていて、なのにあまり有望な投資先の見いだせないような会社は、金利は安いし銀行も愛想よく対応してくれるが、
資本あたりの利益(ROE)がさっぱり上がらないので、株主が「そんな使わない銭あるんだったら配当で配れ」とか「会社の成長戦略が全くないじゃないか」とか言いだして株主総会でイヤミを言われる。
そういう会社は役員からすれば(債務のコストにくらべて)資本のコストが高い。

でだ。
ようやくその転換社債は誰がどういう理由で発行するのか?…という話に入れる。

借金がかなり多い会社で、これから事業拡大や景気回復で株価が上がると思うなら、転換社債を発行する。
なぜなら、転換社債として発行した債務は、計画どおりにいけば資本に転換され、その債務は消えてなくなるからだ。

これは債務のコストが高い会社にとって債務のコストを下げる役割をする。
ただし、計画どおりにいかないと債務を満額返さないといけなくなり、あまりあてにしすぎていると資金ぶりに窮するというリスクがある。

その逆もありうる。
借金が少ない会社で、これ以上に株価が上がる余地はもう無いと思うなら、転換社債を発行する。
なぜなら、ふつうに社債として発行するより高い価格で売りつけられるので、場合によってはマイナスの金利で資金を調達できるからだ。

これは債務のコストが低い会社にとってさらに債務のコストを下げる役割をする。
ただし、想定外に景気が良くなるとそれが続々と株式に転換されることになり、ただでさえうるさい株主から「株式が希薄化されたんだけどどうしてくれるんだ!」とか「転換されているおかげで株価の上がりが鈍いんだけど?」とかイヤミをいわれるというリスクを負う。



ということは・・・?

会社の財務状況やプレスリリースを見て上のどちらのパターンに属するかがわかれば、会社の経営陣が株価が上がりそうなのかこれ以上上がらなそうなのか、そのどちらだと予測しているかがある程度は憶測できる、ということだ。

だいたいにおいて株式投資家よりも会社の役員のほうが賢い。
それはなぜかというと、単にアタマが切れるヤツでないと役員になれないという意味ではなく、ほとんどありとあらゆる人には言えないような内部情報や客先情報や業界情報を知り尽くしているのは会社の役員だけだというリクツからくる。

そいつらが今後どうなると見ているか・・・というのは極めて重要だ。


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