教団「二次元愛」

リアルワールドに見切りをつけ、二次元に生きる男の生き様 (ニコニコでは「てとろでP」)

「今、そこにいる僕」を作れない今

2009-12-24 00:00:17 | オタネタ全般
「今、そこにいる僕」というアニメがある。
AICの作品だ。

今でこそAICはヌルい萌えアニメ専業のようなイメージがある。
べつにここではヌルいからとか萌えだからとかアニオタ狙い撃ちだからといって批判するつもりはない。
むしろ積極的に肯定したい。
こういうアニメは見ていて心を癒されるし、心の奥底にある何かが暖まる感じすら味わえる。
かくいうわたしも近年のAICの作品では典型的なヌルい萌えアニメである「Candy boy」が一番好きだ。

しかし!

AICもかつては「冥王計画ゼオライマー」や「今、そこにいる僕」という、萌えないが濃ゆいアニメを作っていた。
今のAICからは恐らく出ないであろう作品群である。
わたしの個人的な感想では、AICの作品群のうち最も心に残るものは「今、そこにいる僕」だろう。



このアニメはWOWOWで放送された。
良くも悪くもWOWOWというと有料放送の代名詞のようなものだが、この「今、そこにいる僕」だけはノンスクランブル(つまり無料)で放送されていた。
これは、地上波TV放送に多いような子供向けのアニメばかりではなく、もっといい歳こいた人が見ておもしろい地上波にはない作品をWOWOWは放送できるんだと、そう宣伝したいからこそノンスクランブルにしたのかもしれない。

個人的にはとてもおもしろかった。
しかし話題にはならなかった。

この「今、そこにいる僕」には萌えはない。
アニオタ向きの絵というよりは、むしろ人物画だけなら良い子のアニメのほうに近いかもしれない。

かといって子供向けとは言いがたい。
殺伐とした戦争描写が多いし、ムリヤリ凹凸×したことを臭わせるシーンもある。

では「メカと美少女」の片割れたるメカ的なモノが映えるのかというとそうでもない。
題材からして十分映えるように描けそうなものの、どういうわけかそこら辺は控えめに作られている。

この作品をマサルさんや十兵衛ちゃんのようなギャグ調の作風がメインの大地丙太郎氏が手がけているというのもなおさら異色である。

「今、そこにいる僕」はおもしろい。
しかし華がない。
だからなのか、話題になることもなく歴史の闇に埋もれてしまった。



かつてOVA全盛期のころは、まだこういった映えないが地味におもしろい作品が見られたような気がする。
しかし昨今はそうではない。
現代では恐らくそういった作品は商売にはならない。

21世紀になっても最後まで映えないが地味におもしろい作品しつづけたGONZO、たとえば「シャングリ・ラ」や「スピードグラファー」を提供してきたGONZOも、今や自前でアニメをおこすこともかなわないような状況になってしまっている。
逆に時代が移りかわるのを敏感に察したAICはそういった作品を作るのをやめ、萌えアニメ専業となることで淘汰の波を生きながらえた。

これはAICの戦略のほうが正しい。
会社の存続を守り続け、戦略を変えたとしてもおもしろいアニメを作り続けられるAICのほうが正しい。

しかし残念に思うこともある。
キッズアニメかオタ向けのヌルい萌えアニメかのどちらかしか無くなるのは寂しい。
わたしは昔のAICが作ってくれたような、そしてGONZOが最後まで作ってくれたような、そんな萌えないが唸る作品も見たい。

ジャパニメーションは日本の誇る文化であると口に出すならば、我々アニオタはそういった作品を評価する眼を持ち合わせるべきだろう。



追伸:

「今、そこにいる僕」の英語タイトルは「Now and Then, Here and There」となる。
これを日本語訳すると「時折あちこちで」となる。
なぜそういう英語タイトルを採用したのか考えるものがある。
このナゾは作品を最後まで見てもナゾなままだ。
この作品はそういったような、なんでわざわざそんなように表現しているのか考えてしまうようなところが多いのも特徴だ。