木曜日のプロボクシング、皆さん御覧になったでしょうか?
私は観ました。バイユーで、お客様方と一緒に。
世界タイトルマッチ2試合、プロボクシングを堪能そして満足されたでしょうか?
私は満足しました。極めて真っ当にボクシング、でした。そんなあたりまえのことさえ脅かされていた昨今でしたので嬉しい限りです。
嶋田雄大選手、これまでのキャリアの集大成となるリングで精一杯戦ったのではないでしょうか。結果はKO負けではありましたがこれまでのリングでの濃密な時間を感じさせてくれる戦いぶりでした。怪物王者バレロ選手の予想していない近距離から、しかもまっすぐの位置からのカウンターを何度もクリーンヒットさせ、時に僅かではありますがグラつかせもしました。ストレートを打つには近すぎるような短い距離からフック気味の軌道で、王者のアゴを的確に打ち抜いたのには驚かされました。バレロ選手が距離をとって打ち合うべきか否かを一瞬躊躇してしまうような展開。このまま終盤までいけば、もしや?と思わせてくれました。
立ち位置という距離感だけでなく、パンチの軌道による距離の掌握。どう相手をはぐらかすか?ではなくどうやって打ち合うべきか?にこだわったボクシングを見せてくれました。
残念ながら危険な序盤を無事に乗りきったあとは、タイミングや距離感に徐々に対応を見せ始めたバレロ選手との打ち合いに、そのままの前懸かりの流れでつき合ってしまい。空間支配のアドヴァンテージをチャンピオンの多彩な攻めによって少しづつ失い、なによりそのダイナマイト(カミナリ)パンチでダメージを蓄積され膝のバネをなくしていきました。そして結果は7RKO負け。
両者の戦歴から言えば順当な結果となったのでしょうが、ボクシングの深淵を覗こうかという手前くらいまでは魅せてくれて、なかなかに味わい深い一戦でした。嶋田選手本人いわく”最高の舞台”で存分に戦い、そして怪我なくリングを降りられたことを喜ばしく思います。
メインに登場した長谷川選手。これぞ世界チャンピオン!という戦いぶりを見せてくれました。挑戦者ファッシオ選手も南米では評価の高いファイターだったのですが、格の違いを見せつけました。1R開始1分くらいで、相手を見切ったようで完全に呑んでかかっていました。ゆったりとした構えから、スピードに溢れる的確なパンチ。あまりに圧倒的にリング上の時間を支配しているので
油断が恐いなと思ったくらいでした。それくらいに差のある1Rでした。2Rが始まると、長谷川選手は完全にファッシオ選手のパンチの出どころをすっかり把握してしまったことが素人目にも見てとれました。そしてそれを自在に支配できる圧倒的なスピード差。その気になれば12回全てを自らのポイントとするフルマークでの判定勝ちも可能であったと思います。しかし、スピードに絶対的な差があり、そして動きを見切っているのですから「油断」というレベルの話ではなかったのです。あっさり左カウンターで強烈なダウンを奪う。スピードとタイミング。目にもとまらぬ、とはこのことでテレビの前の我々には見えたけれどファッシオ選手には見えなかったであろうと思う。驚いたような顔で倒れている。結局難なくストップして、KOで6度面の防衛。噛み合わせの妙もあるが次元の違いを見せつけた。
世界王座を防衛して傷ひとつない長谷川選手を見て、かつて川島郭志選手がセシリオ・エスピノ選手に圧勝した時を思い出しました。現時点で長谷川選手は近年では川島選手や徳山選手とならぶA級の世界王者であり、今後の更なる飛躍を予感させるこの夜の試合でした。…でも「弱い相手だったなあ」と思う人もいるのかなぁ~。そんなことはなかったですよ。
この他にも東洋太平洋タイトル戦が1試合、贅沢なボクシング興行でした!