言の葉収集

思ったこと、感じたこと、出逢ったこと
いろいろ気ままに書きたいと思っています。

山行け、山行け。

2008-06-12 18:50:40 | Weblog
昔も今も、親が漁師である。

こどもの頃、奇妙な迷信と言うか、風習と言っていいのか、我が家のルールがあった。(あれは我が家だけだったのだろうか?今度調べてみよう。)

それは、午前中に「猿」と言わないこと。
何か話の中で「猿」と口走ってしまうと、母ちゃんとばあちゃんに叱られるのだ。

「あほっ、まだ朝やないか」

と言われ、続いて取り消しの呪文を唱えさせられる。

「山行け、山行け」(猿に言っている)と2回。

こどもの頃は、何で午前中に「猿」と言ったら駄目なのかが分からなかったが、今にして思うと、「猿」→「さる」→「去る」となり、魚がいなくならないようにゲンを担いだのではないか。
漁師の朝は早く、ほとんど午前中で仕事は終わる。家を守る女達は、沖に出て働いている男の為に、そこまで気を使っていたように思う。
そうすることで、不漁で帰って来ぬよう祈り、自分達を安心させていたのだ。

それが染み付いているものだから、私は今でも午前中「猿」と言うのを躊躇う。
しょうがなく言ったとしても、必ず心の中で「山行け、山行け」と唱えるのである。
最近は、妻と娘にも伝染して、同じように気を使っているから面白い。彼女達も「聞いてしまうと気になる」とすっかり信者だ(笑)。

先日、両親と食事をする機会があったので、その話をすると、

「おお、おお、昔はそんなこと言うとったなあ」と笑っている。

現在は朝から平気で日常会話に「猿」が登場するらしい。
くそーっ、どうしてくれる。

「迷信に、潜む絆と思いやり」