眠りに落ちるのは速かったのだが、その割りには眠りは浅く、しばしば目が覚めてばかり居た。
長い旅に出たときの感覚特有の、親しみのない空気が周りを囲んでいる。
肩の辺りが寒くてその度に布団をかけ直しまどろむという繰り返しが無意識に続いた。
その内に部屋の壁全体が薄明るくなり始め、次ぎに目覚めたときには頭の明かり障子が輝いていた。
日が差し込んでいるようだ。
が、それにしては光が如何にも強い。
冷え込んだ空気に抗するようにして起き上がり、丹前を重ね着して、縁の薄く白いカーテンを引いて外の景色を見て驚いた。
山深く入り込んで辿ってきた夜の道の記憶が消し飛んでしまった。
空が一杯に広がっている。
片々とした白い雲が流れてはいるが、透き通った青い空が視界を占めているのだ。
意外な景色の展開に見とれていた。
ようやく目を下に落とすと、谷奥の宿にいるにも拘わらず明るいわけが分かった。
谷筋は東に流れていたのだ。
右手の尾根筋はなだらかに稜線を下げると共に少しずつ北に向けている。
と同時に、左手の山の斜面も揃えるかのようにして、向きを同じくし、その為に視野の殆どが青い天空になっていたのだ。
しかも右手尾根筋は黒々とした蔭でも対する左手斜面は銀色に眩しい。
所々光線の具合に因るのか金色も帯びている。
あまりにも予想外の光景に、時を忘れて暫く見入っていた。
どれくらい時間が経ったのだろうか、やがて下の階に幾人かの複数の物音と気配が耳に入ってきた。
長い旅に出たときの感覚特有の、親しみのない空気が周りを囲んでいる。
肩の辺りが寒くてその度に布団をかけ直しまどろむという繰り返しが無意識に続いた。
その内に部屋の壁全体が薄明るくなり始め、次ぎに目覚めたときには頭の明かり障子が輝いていた。
日が差し込んでいるようだ。
が、それにしては光が如何にも強い。
冷え込んだ空気に抗するようにして起き上がり、丹前を重ね着して、縁の薄く白いカーテンを引いて外の景色を見て驚いた。
山深く入り込んで辿ってきた夜の道の記憶が消し飛んでしまった。
空が一杯に広がっている。
片々とした白い雲が流れてはいるが、透き通った青い空が視界を占めているのだ。
意外な景色の展開に見とれていた。
ようやく目を下に落とすと、谷奥の宿にいるにも拘わらず明るいわけが分かった。
谷筋は東に流れていたのだ。
右手の尾根筋はなだらかに稜線を下げると共に少しずつ北に向けている。
と同時に、左手の山の斜面も揃えるかのようにして、向きを同じくし、その為に視野の殆どが青い天空になっていたのだ。
しかも右手尾根筋は黒々とした蔭でも対する左手斜面は銀色に眩しい。
所々光線の具合に因るのか金色も帯びている。
あまりにも予想外の光景に、時を忘れて暫く見入っていた。
どれくらい時間が経ったのだろうか、やがて下の階に幾人かの複数の物音と気配が耳に入ってきた。