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映画を見た後にネタバレOKで映画を、展覧会を見たら絵画を、など様々のことについて気楽に話しましょう。

アマルフィ

2009年08月09日 | 邦画(09年)
 吉祥寺で「アマルフィ~女神の報酬」を見てきました。

 この映画は、フジTVが盛んにPRするので見る気が次第に失せてきていました。とりわけ「トリビアの泉」(7月18日放送)では、なんとこの作品が取り上げられていて、その中には、映画の冒頭のシーンだけで11回も取り直しが行われたこと(イタリア人ボーイの台詞回しに監督が気に入らなかったため)など、本当にトリビアなことがいくつも紹介されていました!

 しかしながら、友人がこの映画を見て、「「画面が綺麗なほかに、ストーリーが割合しっかりしていて、娯楽大作ということでは合格点を与えてよいのではないか」との感想を持ったとのことなので、それならば映画館に行ってみようと思った次第です。

 実際にこの映画を見てみますと、友人の意見の通りの感想を持ちました。

 さらに評論家の服部弘一郎氏は、「この映画のコンセプトは、織田裕二主演の和製ジェームス・ボンドかもしれない」として「このキャラクター設定はユニークなので、まだまだ新しい話が作れそうではないか」と述べていますが、この点についても同感です〔織田裕二扮する外交官・黒田のプロフィールが、今回の映画の中では殆ど描かれていないのは、今後のシリーズで小出しにしていく意図があってのことではないでしょうか?〕。

 そうだとしても、前田有一氏のように90点もの高得点を挙げるまでのことはないのではと思われます(せいぜいのところ70点くらいでしょうか?)。
 確かに、前田氏が言うように、「とにかくお話が面白くて、かつハイペース」であり、さらには「たくさんお金がかかったであろうイタリアロケや、そこで記録した素晴らしい景色に、なんとこの映画はまったく頼っていない」などの点は評価すべき思われます(アマルフィーがなぜ世界遺産に登録されたのかは、この映画からはそれほどハッキリとは分かりませんでしたから)。

 ただ、50点しか与えていない渡まち子氏が言うように、「途中でプツリと途切れる編集スタイル」は問題です。例えば、ラスト近くの日本大使館でのパーティーの場面も、終わり近くになってブツッと乱雑に切れてしまいますが、やはり余韻を残しつつフェードアウトしてもらいたかった気がします。

 それに、話の展開にドウカナと思われる点もないわけではありません。
 態々言挙げするまでもないトリビアな点ばかりですが、例えば、
・佐藤浩市扮する商社員の藤井がロンドンから駆け付けた場面で、観客の方では彼の挙措に何となく胡散臭さを感じますから、サスペンス的な興味が幾分削がれてしまいます。
・その藤井達の外務大臣襲撃の動機―大臣が嘗て主導した海外援助への恨み―ですが、大臣が藤井の妻らを自らの手で直接殺害したというのであればともかく、妻が殺されたのは援助を受けた軍事政権の仕業であり、大臣はその事実を隠蔽しただけだ、というのでは酷く回りくどい話であって、果たして動機になり得るのか疑問に思えます。
・藤井と一緒に大使館襲撃に参加した仲間達は、単に藤井を支援しようとするのではなく、自分らの家族も殺され藤井と同様に恨みを懐いていることからグループに加わったにもかかわらず、藤井が納得するとどうして彼らも手を引いてしまうのか、ヨク理解できないところです。
・映画のタイトルが「アマルフィ」とされているので、同地が映画の中で重要な役割を果たすのかなと思いきや、単に誘拐犯が指定した場所の一つにすぎず、確かに美しい港町だろうと は分かりますが、タイトルに掲げるまでもないのではと思いました(それに、なぜアマルフィが選定されたのでしょう?)。

 と言っても、40点しか与えていない福本次郎氏のように酷評する気はマッタク起こりません。
 福本氏は、「後半のあまりにも杜撰な展開に稚拙な脚本が馬脚を現す。無理やりなこじつけに近い犯人グループの計画には呆れてしまう」として、具体的に次のような点を挙げています。
・「犯人側の本当の狙いは日本の外務大臣なのだが、彼と紗江子母娘の訪伊スケジュールをどうやって合わせたのか」。
・「コンピュータのセキュリティを解除するために紗江子を(警備会社の中枢部に)送り込むなどというのは、もはや何をかいわんや。娘のためなら殺人も厭わない母の気持ちを犯人が利用するのはわかるが、一介の看護師に拳銃で警備会社を脅迫させるなど成功の可能性があまりにも低く、こんな不確定要素に頼りすぎの作戦に命をかける犯人たちの気がしれない」。
・「アマルフィには何しに行ったのだ?大臣の予定が一日延びたから時間つぶしをしたことになっているが、外交官の特権の如くロケ隊も予算を使い切りたかっただけなのでは」。

 これらの点については、次のように思いました。
・第1の点に関しては、“ロンドンの藤井と連絡を取って、飛行機のチケットやホテルの予約もしてもらった”と紗江子が黒田に話していましたから、問題はないでしょう。
・第2の点に関しては、確かに、それまで手にしたはずのない拳銃を扱って警備会社を脅迫するなど、「一介の看護師」に出来ることではないと思われます。
 しかしながら、セキュリティ解除に成功したのを確認した上で藤井達は日本大使館に侵入するのであり、闇雲に突入するわけではありませんから、「不確定要素に頼りすぎの作戦に命をかける犯人」とはいえないでしょう(セキュリティ解除に失敗すれば、今回の作戦を中止するだけのことです)。
・第3の点に関しては、福本氏が言うように、「大臣の予定が一日延びたから時間つぶしをした」ためにアマフフィが登場したのでしょう。むろん、「大臣の予定が一日延び」なければそんな港町を藤井達が選定する必要はありません。これは「犯人グループの計画」の杜撰さと言うよりも、単に状況の変化に対する対応の仕方の問題でしょう。

 福本氏は今少し映画をじっくり見てから批評をすべきではないか、と思いました。

 とはいえ、福本氏が挙げる問題点の第3の点に関連し、上記でも触れましたが、「時間つぶし」の場所として、ミラノとかフィレンツェなどではなく、なぜアマルフィが選ばれたのかという疑問は残ります。

 劇場用パンフレットの冒頭には、「ギリシャ神話の英雄ヘラクレスは、愛する妖精の死を悲しみ、世界で最も美しいとされる場所に、その亡がらを埋め町を作った。彼女の美しさを、永遠のものとするために・・・。その町の名は、アマルフィ。英雄はこうして町を作り伝説になる。だが、そうではない人間はただ悲しみを背負って生きていくしかない。」と、わざわざ記載してあります。
 
 これからすると、制作するにあたってアマルフィが選ばれたのは、この作品が、子供を失った母の悲しみを描いている悲劇であることを暗示するため、と受け取られかねません。「愛する妖精の死」とは、誘拐された紗江子の娘は既に殺害されていることを、さらに「人間はただ悲しみを背負って生きていくしかない」とは、母親の紗江子が、娘を失ってしまった悲しみを背負って生きていくしかないことをそれぞれ意味している、とも読めてしまいますから。
 ですが、実際の映画では、むろんそんな事態にはなりません。

 となると、アマルフィーをわざわざ選定した理由、それにこのようなアマルフィに関わる文章をパンフレットの冒頭に掲載する理由がよく分からなくなってきます。
 まして、タイトルにある「女神の報酬」の意味については、様々に考えられて絞りきれません。

 ですが、本来的には娯楽として制作されている映画なのですから、細かな点まで明瞭な辻褄合わせを求めても仕方ないでしょう。一番重要なのは、ラストまで観客の興味をきちんと持続させることであり、その点ならこの映画は、大いに成功しているといえると思います。

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2 コメント

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妖精は妖精でよいのかもしれない (蜻蛉)
2009-08-20 13:22:37
  映画を観ようとするポイントが何なのかによって、その評価も分かれてくるが、本作品は娯楽映画あるいは観光案内映画だと割り切ってみれば、ストーリーがトントンとあまり無理なく展開するようにその場では感じるから、それなりに楽しめると思われる。日本ではあまりなかった一種ハリウッド風味の大型作品ということで、フジテレビもかなり資金をつぎ込んで作ったようだし、そのせいか、背景もかなり豪華で綺麗であって旅行気分も少し味わえ、結果として誰も死なないから、不快感・嫌み感もわかない。
見終わってから、一息おいて考えると、あれ!題名のアマルフィはあの程度の関わりなのか、副題の「女神の報酬」とはいったい何なのか、まるで関係がないのではないかということ等々から始まり、内容的にはアラもかなり多く出てくる。この辺はクマネズミさんとも同感でしょう。外交官が警察まがいのことをするはずがないし、できるはずがないが、その一方、つまらないことや儀礼的なことに拘り延々と会議をする様は、誰かが日本国大使館の内部事情を教えたのかと思うほど実態に近い。
先にも「天使と悪魔」というバチカン・ローマ舞台のハリウッド映画があったが、それに引き続く観光案内だと思えば楽しいし、夏休み上映なのだから、頭を休めて、固いことは言わずに目を楽しませましょうでいいのではないか。結局、これに帰ってくる。
アマルフィ海岸はスカーレット・ヨハンソンが出た映画「理想の女」の舞台だったとのことだが、そのときは船が出てきたのは覚えているものの、そんな地名など気に懸けなかったから、これで一つ、世界遺産の地名とギリシャ神話の勉強にもなった。事件関係者の恩讐も、サラ・ブライトマンの美声に吹っ飛ばされたというところか。
Unknown (クマネズミ)
2009-08-21 06:20:44
コメントありがとうございます。
それにしても、予告編で、「すべての真相はここにある」とか、「真実は世界で一番美しい場所にあった」、「アマルフィに隠された秘密」などと散々煽られて映画を見に行くと、「あれ!題名のアマルフィはあの程度の関わりなのか」ということでは、いくら「娯楽映画あるいは観光案内映画」としても、フジTV最高の制作費をかけた意気込みが、やはり空回りしているのではないでしょうか?

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