映画的・絵画的・音楽的

映画を見た後にネタバレOKで映画を、展覧会を見たら絵画を、など様々のことについて気楽に話しましょう。

瀬々敬久監督作品

2011年01月12日 | DVD
 昨年の記事で瀬々敬久監督の『へヴンズ ストーリー』を取り上げましたが、その映画に大変感銘を受けたものの、同監督の作品はこれまで一つも見たことがなかったことから、少しDVDで見てみようと思い立ちました。
 といっても、瀬々監督は実に膨大な数の作品を手がけているようなので、その特色がよく出ているものを探し出そうとしても容易ではないでしょう(いわゆる「ピンク映画」が多いこともあり)!仕方ありませんから、ここでは、TSUTAYAで簡単に見つけ出せる作品を2つばかり見ることでお茶を濁しておきます(見る都度追加できればと思っています)。

(1)まず、『感染列島』(2008年)です。



 冒頭、いずみ野市立病院に診察を受けにきた患者が、簡単な風邪と診断されたにもかかわらず、急に容態が悪くなって血を吐いて死んでしまいます。
 ここから138分のラスト近くまで、映画の画面には、これでもかというくらい死体が溢れ返ります。なにしろ、1,000万人以上に死者が出たという謎の伝染病を巡っての物語なのですから!
 主役は、同病院の救命救急医の松岡剛(妻夫木聡)。それに、彼の恋人でWHOのメディカル・オフィサー小林栄子(檀れい)や、松岡医師の先輩医師の安藤一馬(佐藤浩市)などが絡みます。
 注目すべきことは、佐藤浩市は、『へヴンズ ストーリー』と同様に、もっと活躍するのかなと期待をもたせながらも、患者からの感染によって、前半でいともあっさりと死んでしまいます!
 むろん、ウィルスの蔓延により廃墟と化した日本列島も、最後には明るい世界に戻るものの、松岡医師の恋人も、また先生たる仁志稔教授(藤竜也)も次々に死んでしまうのです。
 この映画は、ラストまで見れば「死と再生」と捉えることもできるでしょうが、クマネズミには、人間の大量死の有様を描き出した作品という印象が強く残りました。

(2)もう一つ、『黒い下着の女 雷魚』(1997年)を見てみました。



 粗筋を簡単に言うとこんな感じです。
 主人公の紀子は、不倫相手に会おうとして入院中の病院から抜け出しますが、それができずに、かわりにテレクラで知り合った男とモーテルに行き、突然その男を刺し殺してしまいます。
 紀子は、警察の取り調べを受けるものの、ガソリンスタンドの店員による嘘の証言で釈放されます。ですが今度は、その店員と関係を持つようになり、挙げ句は自分を殺すように店員に求めます。店員は、紀子を絞殺した後、死体を小さな船に乗せてもろともに焼いてしまいます。

 とはいえ、こんな粗筋では、この映画の良さはマッタク伝わりません。実際のところ、ピンク映画とはトテモ思えないほどの真摯さで制作されていて(注1)、大層感銘を受けてしまいました。
 たとえば、水郷辺りで捕れる雷魚の様が、主人公・紀子の心情(あるいは存在そのもの)を象徴するかのように、巧みに描かれています(注2)。
 また、知的障害を持った女・節子(紀子と対照的な容姿と服装)が、紀子の行動を終始監視するように見ていて、最後はガソリンスタンドの店員と人混みの中に消えていくのですが、そのシーンも印象的です。
 実のところ映画では一切何も説明されず、すべては観客の方で読み取るほかないわけですが、現実に起きた殺人事件(注3)を下敷きにしていることからもうかがえるように、瀬々監督の死に対する拘りが様々な形を取って描き出されているように思われますし(注4)、そうした出来事を取り巻く水郷(注5)の風景の描写も、『ヘブンズストーリー』に劣らず素晴らしいものがあると思われます。


(注1)このサイトのインタビュー記事によれば、製作費は600百万、撮影は6日間。取り直しが1日、とのこと(ちなみに、『ヘブンズストーリー』は、撮影に1年近くかかっているようです)!
(注2)例えば、冒頭で、釣り人(ガソリンスタンドの店員)が釣り上げた雷魚を焼くシーンがありますが、これは紀子の死体を小舟もろともに焼いてしまうラスト近くのシーンと重なります。
(注3)上記注1のサイトの記事によれば、1987年の札幌ラブホテル殺人事件と、1993年の日野OL放火殺人事件。
(注4)ガソリンスタンドの店員は、その愛人に赤ん坊を殺されたことがあり、紀子に対して、人を殺すときの気分がどんなものなか聞き出そうとします。
(注5)病院から抜け出した紀子は、成田線小見川駅近くの電話ボックスから電話をかけます。

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