
『土竜の唄 潜入捜査官Reiji』を渋谷シネクイントで見ました。
(1)本作は、脚本・宮藤官九郎+監督・三池崇史で漫画を映画化したものながら(注1)、映画評論家の評価はあまり高くなく、それなら自分で確かめてみようと映画館に行ってきました。
確かに、本作は、『十三人の刺客』や『藁の楯』などの三池崇史監督らしく、酷くぶっ飛んだ作品となっています。ですが、クドカンらしくアチコチに笑いの要素が散りばめられてもいて、なかなか面白い映画に仕立てあげられているのではと思いました。
なにしろ、『脳男』で一皮むけた感じのする生田斗真が、さらにその上をいく演技を披露し、『地獄でなぜ悪い』でヤクザを演じて観客を唸らせた堤真一がここでもヤクザになりきり、さらに『凶悪』の山田孝之などの豪華俳優陣がそれぞれ頑張っているのですから、面白くない訳がありません(注2)。

(2)とりわけ、映画の「序」に相当する部分が面白いと思いました。
まず、谷袋警察署の酒見署長(吹越満)が、署員の菊川玲二(生田斗真)に向かって、「善良な市民で市会議員の先生に銃を向けたから、クビ」と決めつけます。
これに対し、玲二は「あいつはブタ野郎だ、お断りします」と反撃。
すると、署長は「おめでとう、合格だ!俺はこういう男を探していた。今からお前を潜入捜査官に命じる」と言うのです。
目を白黒させる玲二に対し、署長はさらに、「表向きはお前を懲戒免職にする。超極秘任務は、数寄矢会に潜入し会長の轟周宝(岩城滉一)を挙げることだ」と言い、「具体的なことは一美教官が教える」と付け加えます。
そこで、玲二は一美教官(遠藤憲一)のところに行くのですが、あれこれあった後、映画の冒頭場面(予告編でも)にあるような格好にさせられて、洗車機に突っ込まされます。
洗車が終わって出てきた玲二が、一美教官に向かって「殺せ!忘れないぞ、そのツラ」と叫ぶと、教官は「合格だ、これまで全員泣きを入れた。だがお前には根性がある」と言い、彼をその格好のママ数寄矢会の黒檜組の前に置き去りにしてしまいます。
玲二は組の事務所に連れて行かれ、組長から「組に入りたかったらここにいる潜入捜査官を撃ち殺せ」と強要されます。
ですが玲二は、ぎりぎりのところで形勢を逆転し、組長の口の中に銃を突っ込んで「動くと撃つぞ」と叫びます。
すると、酒見署長や一美教官が登場し「合格だ」と言い、組長を「厚労省の麻薬取締部の福澄課長(皆川猿時)だ」と紹介します。
要すれば、玲二は潜入捜査官になるための試験を3度受け、その全てに合格したわけです(注3)。
これを原作漫画で見ると、ここまで映画は原作漫画の第1巻をほぼ忠実になぞっていることがわかります。
確かに、原作も面白さに溢れています。
とはいえ、スピード感が漲る映像の中で、原作の登場人物を吹越満とか遠藤憲一などの芸達者な俳優が生田斗真を盛り立てながら巧みに演技するのを見ると、映画は映画なりの良さがあるなと感心してしまいます。
おまけに、本作の場合、玲二の合格を祝うかのように「土竜の唄」なる歌(作詞が宮藤官九郎)を、酒見署長、一美教官と福澄課長が歌うので、一層楽しくなります!

でも、本作に登場する女優の見せ場が余り多くないのは残念な気がしますし〔玲二の同僚警官の若木純奈(仲里依紗)が、『地獄でなぜ悪い』のミツコ(二階堂ふみ)くらいに活躍してくれたらというのは望み過ぎでしょうか〕、また玲二の潜入目的である轟会長逮捕という目的が達成されていないのは、続編絡みのためなのでしょうか?
(3)渡まち子氏は、「ヤクザに潜入した警察官の奮闘を描くバイオレンス・コメディ「土竜の唄 潜入捜査官 REIJI」。テンション高すぎ!バカやりすぎ!」として50点をつけています。
前田有一氏は、「「あまちゃん」大ヒットで絶好調の脚本家・宮藤官九郎が三池崇史監督とタッグを組んで送る新作アクションコメディということで期待半分、不安半分だったが、結果的には後者の予感が当たった形だ」、「ヤンキー枠の消費物映画だからといって、省エネがバレバレなつくりは個人的にはいただけない。映画というならば、どんな小さなものでもどこかしら少なくとも一点には妥協なしの本気を見たいものである」として20点しかつけていません。
稲垣都々世氏は、「徹底したバカらしさで虚構を強調し、観客を映画の世界に引きずり込む。この衝撃に耐えると後は慣れ、こわばっていた顔がほころんで笑えるようになる(だろう)」と述べています。
(注1)高橋のぼる作(小学館)。ネットには、期間限定ながら無料で読めるサイトが設けられています。
(注2)この他、関東の数寄矢会と対立抗争する関西の蜂乃巣会に所属する猫沢に、ナイナイの岡村隆史が、またそのヒットマン・黒河に上地雄輔が扮していますが、それぞれ持ち味をよく出していると思います。
(注3)映画では、いよいよここから、玲二が、ヤクザに潜入すべく、数寄矢会の阿湖義組の営む闇カジノに乗り込んでいきます。
★★★★☆☆
象のロケット:土竜の唄
(1)本作は、脚本・宮藤官九郎+監督・三池崇史で漫画を映画化したものながら(注1)、映画評論家の評価はあまり高くなく、それなら自分で確かめてみようと映画館に行ってきました。
確かに、本作は、『十三人の刺客』や『藁の楯』などの三池崇史監督らしく、酷くぶっ飛んだ作品となっています。ですが、クドカンらしくアチコチに笑いの要素が散りばめられてもいて、なかなか面白い映画に仕立てあげられているのではと思いました。
なにしろ、『脳男』で一皮むけた感じのする生田斗真が、さらにその上をいく演技を披露し、『地獄でなぜ悪い』でヤクザを演じて観客を唸らせた堤真一がここでもヤクザになりきり、さらに『凶悪』の山田孝之などの豪華俳優陣がそれぞれ頑張っているのですから、面白くない訳がありません(注2)。

(2)とりわけ、映画の「序」に相当する部分が面白いと思いました。
まず、谷袋警察署の酒見署長(吹越満)が、署員の菊川玲二(生田斗真)に向かって、「善良な市民で市会議員の先生に銃を向けたから、クビ」と決めつけます。
これに対し、玲二は「あいつはブタ野郎だ、お断りします」と反撃。
すると、署長は「おめでとう、合格だ!俺はこういう男を探していた。今からお前を潜入捜査官に命じる」と言うのです。
目を白黒させる玲二に対し、署長はさらに、「表向きはお前を懲戒免職にする。超極秘任務は、数寄矢会に潜入し会長の轟周宝(岩城滉一)を挙げることだ」と言い、「具体的なことは一美教官が教える」と付け加えます。
そこで、玲二は一美教官(遠藤憲一)のところに行くのですが、あれこれあった後、映画の冒頭場面(予告編でも)にあるような格好にさせられて、洗車機に突っ込まされます。
洗車が終わって出てきた玲二が、一美教官に向かって「殺せ!忘れないぞ、そのツラ」と叫ぶと、教官は「合格だ、これまで全員泣きを入れた。だがお前には根性がある」と言い、彼をその格好のママ数寄矢会の黒檜組の前に置き去りにしてしまいます。
玲二は組の事務所に連れて行かれ、組長から「組に入りたかったらここにいる潜入捜査官を撃ち殺せ」と強要されます。
ですが玲二は、ぎりぎりのところで形勢を逆転し、組長の口の中に銃を突っ込んで「動くと撃つぞ」と叫びます。
すると、酒見署長や一美教官が登場し「合格だ」と言い、組長を「厚労省の麻薬取締部の福澄課長(皆川猿時)だ」と紹介します。
要すれば、玲二は潜入捜査官になるための試験を3度受け、その全てに合格したわけです(注3)。
これを原作漫画で見ると、ここまで映画は原作漫画の第1巻をほぼ忠実になぞっていることがわかります。
確かに、原作も面白さに溢れています。
とはいえ、スピード感が漲る映像の中で、原作の登場人物を吹越満とか遠藤憲一などの芸達者な俳優が生田斗真を盛り立てながら巧みに演技するのを見ると、映画は映画なりの良さがあるなと感心してしまいます。
おまけに、本作の場合、玲二の合格を祝うかのように「土竜の唄」なる歌(作詞が宮藤官九郎)を、酒見署長、一美教官と福澄課長が歌うので、一層楽しくなります!

でも、本作に登場する女優の見せ場が余り多くないのは残念な気がしますし〔玲二の同僚警官の若木純奈(仲里依紗)が、『地獄でなぜ悪い』のミツコ(二階堂ふみ)くらいに活躍してくれたらというのは望み過ぎでしょうか〕、また玲二の潜入目的である轟会長逮捕という目的が達成されていないのは、続編絡みのためなのでしょうか?
(3)渡まち子氏は、「ヤクザに潜入した警察官の奮闘を描くバイオレンス・コメディ「土竜の唄 潜入捜査官 REIJI」。テンション高すぎ!バカやりすぎ!」として50点をつけています。
前田有一氏は、「「あまちゃん」大ヒットで絶好調の脚本家・宮藤官九郎が三池崇史監督とタッグを組んで送る新作アクションコメディということで期待半分、不安半分だったが、結果的には後者の予感が当たった形だ」、「ヤンキー枠の消費物映画だからといって、省エネがバレバレなつくりは個人的にはいただけない。映画というならば、どんな小さなものでもどこかしら少なくとも一点には妥協なしの本気を見たいものである」として20点しかつけていません。
稲垣都々世氏は、「徹底したバカらしさで虚構を強調し、観客を映画の世界に引きずり込む。この衝撃に耐えると後は慣れ、こわばっていた顔がほころんで笑えるようになる(だろう)」と述べています。
(注1)高橋のぼる作(小学館)。ネットには、期間限定ながら無料で読めるサイトが設けられています。
(注2)この他、関東の数寄矢会と対立抗争する関西の蜂乃巣会に所属する猫沢に、ナイナイの岡村隆史が、またそのヒットマン・黒河に上地雄輔が扮していますが、それぞれ持ち味をよく出していると思います。
(注3)映画では、いよいよここから、玲二が、ヤクザに潜入すべく、数寄矢会の阿湖義組の営む闇カジノに乗り込んでいきます。
★★★★☆☆
象のロケット:土竜の唄
ことしは見放題パスで見るため、ブログにも映画アップが増えましたが、見ない方にはどんな物語の筋かさえ分からぬため消化不足でイライラ感を思います。
かくのごとく、こんかいも土竜の唄については、面白かったとコメントを残すだけです。
クマネズミのように、ある程度映画の内容がわかるように書くやり方でなくとも(それでも、本作の場合、玲二の潜入後の話には触れませんでした)、ブログの内容はどんなものでも構わないのではないでしょうか?当該映画をまだ見ていない人は、映画ガイドのサイトを覗けばいいわけですし、むしろ映画を見た人が、鑑賞後に「iina」さんのサイトで「物語りのさわりを何気にふれる」のを読んで共感を覚える、といったことの方があるべき姿なのかもしれません。
賛成。風俗嬢のカズミ、賭場の拳銃持たされる女性、仲里依紗とその同僚、みたいに綺麗どころはチョコチョコ出てるのに本筋に絡んで来ないですよね。
全体、役者さんは楽しそうで面白いんだけど、緩急とかが適当で映画としてはバッチコーイって感じに盛り上がんなかったみたいな感じです。チョコチョコ、ピンポイントで面白いんですけど、やっぱ長いし。
おっしゃるとおり、「全体、役者さんは楽しそうで面白い」ものの、如何せん、序の部分でエネルギーを出しきってしまったの感がありますね。