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奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール

2017年10月06日 | 邦画(17年)
 『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』をTOHOシネマズ渋谷で見ました。

(1)大根仁監督の作品であり、妻夫木聡が出演しているというので映画館に行ってきました

 本作(注1)の冒頭では、ギターを掻き鳴らす音がして、本作の主人公のコーロキ妻夫木聡)のナレーションが入ります。
 「俺があの人を認識したのは、TVのミュージックステーション」「タモさんが「Jパン汚れてるよ」と言ったら、「さっき、ラーメン屋でついた」と答えてた」「その日から、奥田民生はヒーローとなり、奥田民生のような編集者を目指している」。



 そして、場面は、雑誌『マレ(Malet)』の編集部が開いたコーロキの歓迎会。
 同僚となる吉住新井浩文)が「誰が好きなの?」と訊くと、中村李千鶴)が「ジ・インターネットに行った」と答えます。
 さらに、牧野江口のりこ)が「誰が好きなの?」と尋ねると、コーロキは「奥田民生です」と答えます。牧野が「中学の時に、ユニコーンを聞いていた」と応じ、編集長の木下松尾スズキ)も「俺、好きだ。いいものはいい」「インタビューしたことがある。丁度、彼がソロになった頃」と言うと、コーロキは「1994年」と口を挟みます。

 歓迎会は、編集長の「コーロキさん、『マレ』にようこそ」「かんぱい」でお開きになります。
 コーロキの声。「ライフスタイル雑誌に行けといわれて戸惑ったが、この編集長ならなんとかなりそう」。

 次の日の朝。
 アパレル企業「Goffin & King」のプレスのあかり水原希子)が「皆さん、お早うございます」と編集部に入ってきます。



 コーロキは、そんなあかりを見て、ポーッとしてしまいます。

 こんなところが本作の始めの方ですが、さあここから物語はどのように展開するのでしょうか、………?

 本作は、“奥田民生になりたいボーイ”である雑誌編集者の主人公と、“出会う男すべて狂わせるガール”であるアパレルのプレスの女のラブストーリーです。登場人物が最先端を行く人達のように見え、また全編に奥田民生の曲が流れていて、とてもポップで今風な感じがして、前々回取り上げた『ナミヤ雑貨店の奇蹟』とは真反対の作品のように思いました。

(2)本作は、大根仁監督の『モテキ』と類似するところがあるように思います(注2)。
 同作はニュースサイト、本作はライフスタイル雑誌というように部門が違うとはいえ、両作とも、時代の先端をいく情報機関の企画部門を描いています。
 また、同作の主人公の幸世(森山未來)がみゆき(注3:長澤まさみ)に一目惚れして追いかけ回すのと同様に、本作の主人公のコーロキもあかりにぞっこんになってしまいます。

 とはいえ、本作のコーロキはあかり一辺倒なのに対し、『モテキ』の幸世は「るみ子」(麻生久美子)に慕われたりしますし、唐木(真木よう子)も幸世のことを憎からず思っているようです。
 また、本作で流れる音楽は、ほとんど奥田民生のものですが(注4)、『モテキ』の場合は、くるりの『東京』など様々な曲が流れますし(注5)、幸世がPerfumeとダンスを協演する場面まで設けられています。

 本作と『モテキ』は類似するとはいえ、どうやら、本作がどちらかと言えば「2」(あるいは、“対”でしょうか)の世界であるのに対し、『モテキ』は「3以上」(あるいは、「群」でしょうか)の世界を描いているといえるかもしれません。

 さらに、本作で面白いなと思ったのは、まずは、リリー・フランキー演じるライターの倖田シュウです。



 なにしろ彼は、他の人に当てるべきコラム(注6)を奪い取って自分で原稿を書いてしまい、それが長すぎるとコーロキから文句を言われると、キレてコーロキを非難するツイッターを書きまくり、とうとうコーロキはあかりから抗議を受ける羽目になるのですから。
 そして、そんな性格のねじ曲がった感じのする特異なライターである倖田シュウを、リリー・フランキーは実に楽しそうに演じています(注7)。

 また、コーロキが担当する人気コラムニストの美上ゆう安藤サクラ)も、大層変わったキャラクターです。愛猫ドログバが見つからないと原稿が書けないと言うので、あかりと京都で週末に会う約束があるにもかかわらず、コーロキは、駒沢公園までドログバを探しに行き、やっと猫を見つけて美上に原稿を書いてもらったものの、約束の時間に大幅に遅れてしまい、あかりから「やっぱり合わないんだ、私達。別れよう」と言われてしまう出来事を引き起こします。

 本作で「表層的」(注8)に描かれるコーロキとあかりのラブストーリーは、まあそれほど変わったものではありませんが、いい気になってコーロキが更に一歩を踏み出そうとすると、あかりにスルッとかわされて、むしろ逆襲されてしまうのが特異な点かもしれません。そして、それがラストの驚くようなシーンに繋がるわけですが、それは見てのお楽しみとしましょう。

 なお、ヒロイン役の水原希子については、このところネットで様々に叩かれていますが(注9)、まあそんなことはどうでもいいと思わせる抜群の綺麗さでしたし(注10)、演技の方も本作にピッタリのように思えます(注11)。

 そして、ヒーロー役の妻夫木聡にとっては、『ジャッジ!』以来のコメディ映画の主演作ですが、同作でも本作でもなかなかの演技を披露していて、これからもコメディ作品への出演が期待されます。
 それに、同作ではCMクリエーターという先端的な職業を演じていて、本作でも雑誌の編集者ですから、あるいはそういう方面に似合っているのかもしれません。

(3)渡まち子氏は、「コーロキの奥田民生愛が感じられず、長い長いタイトルも含めて、すべてが表層的な作品になってしまったのが残念だ」として45点を付けています。
 前田有一氏は、「この長いタイトルの異色なラブコメ映画は、渋谷直角の原作漫画をある意味凌駕する出来栄えで、雑誌業界トリビアも満載で非常に面白いのだが、あとちょっと! と言いたくなる部分もまたある、惜しい一本である」として60点を付けています。
 森直人氏は、「半人前の青二才が繰り広げる悪戦苦闘は、現実への適切な距離感を身につけ、小器用な大人になってしまった「元ボーイ」の胸にこそグッとくる」と述べています。



(注1)監督・脚本は、『SCOOP!』などの大根仁
 原作は、渋谷直角著『奥田民生になりたいボーイ 出会う男すべて狂わせるガール 』(扶桑社)。

 なお、出演者の内、最近では、妻夫木聡は『愚行録』、水原希子は『ブルーハーツが聴こえる』、新井浩文は『銀魂』、松尾スズキは『シン・ゴジラ』、安藤サクラは『追憶』、江口のりこは『戦争と一人の女』、リリー・フランキーは『美しい星』で、それぞれ見ました。

(注2)『モテキ』と『バクマン。』と本作とで、大根仁監督の編集部物3部作とのこと。

(注3)なんと編集者なのです。

(注4)この記事を御覧ください。

(注5)この記事を御覧ください。

(注6)アパレル企業「Goffin & King」の社長・江藤天海祐希)が、島田晴雄か村上春樹に書いてもらいたいと言っているのです。

(注7)大根仁監督の『バクマン。』では、リリー・フランキーは、漫画雑誌の編集長役を演じています!

(注8)下記(3)で触れている渡まち子氏の映画レビューの中に出てくる言葉です。

(注9)経緯については、例えば、この記事をご覧ください。
 なお、水原希子は、この記事によれば、「在日韓国人の母親とアメリカ人の父親のもと、アメリカのテキサス州で1990年に誕生。本名はAudrie Kiko Daniel 。米国籍。一家は水原が2歳の時に日本に移り、以後、水原は日本で育つ。兵庫県で育ったため、関西弁。英語はあまり得意ではないと思われる。韓国語を話すかは不明」とのこと。

(注10)映画における水原希子は、クマネズミにとっては、『ブルーハーツが聴こえる』の第5話「ジョウネツノバラ」がその静的で冷たい美しさを描き出しているのに対し、本作は動的で体温を感じる美しさを映し出しているように思います。

(注11)「皆さん好みの女を演じていただけ」と最後に言うあかりは、韓国、アメリカそして日本の狭間にいるような感じの水原希子自身のようにも見えます。



★★★☆☆☆



象のロケット:奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール

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2 コメント

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Unknown (ふじき78)
2017-10-06 23:21:19
このリリー・フランキーが「バクマン」のジャンプ編集長だったら、ジャンプは「ガロ」路線になって売れなかったろうなあ。
Unknown (クマネズミ)
2017-10-07 05:38:32
「ふじき78」さん、TB&コメントを有難うございます。
おっしゃるとおりかもしれません。
そして、リリー・フランキーの編集長は、原稿が集まらないものだから、面白くもない自作漫画を大量に描いて自分で雑誌に掲載してしまい、すぐに廃刊になってしまうことでしょう。

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