
『MUD-マッド-』を吉祥寺バウスシアターで見ました。
(1)今度のアカデミー賞で主演男優賞を獲得したマシュー・マコノヒーが、本作に出演しているというので、見に行ってきました。
舞台は、アメリカ中部のアーカンソー州。
ある日、ミシシッピ川に流れ込む川の岸辺に住む少年・エリス(タイ・シェリダン)が、友達のネックと一緒に川の中の島に渡ったところ、そこで見知らぬ男・マッド(マッシュー・マコノヒー)と出会います。
マッドは、洪水で木の上に引っかかっているボートで暮らしているようですが、何かいわくありげの雰囲気。

エリスはなんとなくその男に魅力を感じ、あまり乗り気ではないネックを誘って色々サポートします(注1)。

少年たちはマッドと話す内に、彼が人を殺し、警察や殺された男の父親らに追われていること、そして恋人のジュニパー(リース・ウィザースプーン)と会いたがっていることなどを聞き出します(注2)。

しばらくすると、そのジュニパーが近くの町のモーテルに宿泊しており、そればかりかマッドを追いかけてきた者達もその町に来ていることがわかってきます。
さあ、マッドや、エリス、ネックは一体どうなるのでしょうか、………?
様々の問題を抱える多感な少年と主人公との交流が、ミシシッピ川中流域を背景に濃密に描かれていて、合わせてミステリー的な要素も加わり、長尺ながら(130分)観る者を最後まで惹きつけます。
アカデミー賞を獲った『ダラス・バイヤーズクラブ』の時とは打って変わって、マシュー・マコノヒーは野性味溢れる体つきをしており、ここでもその持ち味を遺憾なく発揮しています(注3)。
(2)本作の公式サイトの「Introduction」には、「現代版『スタンド・バイ・ミー』とも言われ」ているとあります。
確かに、エリスは、ネックと一緒になってマッドに関わっていくうちに、精神的に成長していきますから、『スタンド・バイ・ミー』における4人の少年の物語に類似していると言えるかもしれません(注4)。
とはいえ、映画『スタンド・バイ・ミー』では、専ら少年同士の関係が色濃く描かれているのに対し、本作では、少年と大人との関係の方に焦点が当てられているように思いました(注5)。
それでむしろ、本作は、『ペーパーボーイ』との類似性があるように思われます。
何しろ、同作にはマシュー・マコノヒーが、主人公ジャックの兄の役で出演していますし、映画の舞台が、本作と同じような雰囲気を持っているのです(本作ではミシシッピ川の流域が、『ペーパーボーイ』ではフロリダのスワンプという湿地帯が描かれています)(注6)。
それに、同作では、主人公ジャックは、奔放なシャーロット(ニコール・キッドマン)と関わることによって、女性に対する姿勢が変わっていきますが、本作でも、エリスは、マッドの恋人ジュニパーと接することによって、男女の愛というものに目が開けていきます(注7)。
(3)相木悟氏は、「重くも温かい、深い余韻の残るヒューマン・ドラマであった」と述べています。
また、稲垣都々世氏は、監督・脚本のジェフ・ニコルズが、「犯罪サスペンスに少年の冒険と成長、大人たちの優しさや男気など、盛りだくさんな要素をうまく絡ませ、一途で純粋な愛の物語をつづる」と述べています。
なお、この記事によれば、映画『スタンド・バイ・ミー』の原作者であるスティーブン・キングが、2013年映画の第3位に挙げているようです。
(注1)最初のうちは食料などですが、ボートを修繕するのに必要な機材(最後にはエンジンまで)も、いろいろ2人はマッドのために運び込むことになります。
(注2)マッドの話によれば、幼なじみで愛するジュニパーを階段から突き落として流産させた悪党を射殺したところ、その男の父親が長男と共に人を雇ってマッドを追っているとのこと。
マッドとしては、ジュニパーを連れて、修繕したボートでメキシコ湾に逃れ出たいと考えているようです。
(注3)本作では、エリスが住むボートハウスのある川岸の対岸に、“暗殺者”と言われるトム・ブランケンシップが独りで暮らしていますが、それをサム・シェパードが演じています。サム・シェパードは、最近では『デンジャラス・ラン』で見かけました。

(注4)特に、行方不明の少年の死体を探しに4人が探検する森の様子は、マッドが隠れている川の中の島の様子と雰囲気がかなり似ています。
ただ、『スタンド・バイ・ミー』では、少年の死体を探すのが探検の目的ですが、本作では少年たちはマッドにすぐに出会ってしまいます。
(注5)少年たちとマッドらとの交流もさることながら、エリスには家族の問題があります。すなわち、エリスの父親は、川辺のボートハウスで暮らしながら、川で獲った魚を町で売ることによって生計を立てています。ですが、母親はこうした地味な生活が不満で、町で暮らす話を進めています。その場合には、二人は別れることになるでしょうが、川辺の生活を続けたいエリスはどうなるのでしょう(父親が面倒を見るわけにも行かないでしょうから)?
なお、ネックの方は、両親はおらず、川に潜って貝を採っている叔父さんと暮らしています。
(注6)そんなところから、本作からは『ハッシュパピー』や『偽りの人生』にも通じるところがあるようにも思いますが、そこら辺については、このエントリの(2)を御覧ください(『ハッシュパピー』の舞台のルイジアナ州は、本作の舞台のアーカンソー州のすぐ南側に位置します)。
なお、マーク・トウェイン作の『ハックルベリー・フィンの冒険』との関連性も指摘されているようですが、確かにミシシッピ川を舞台にしている点や、少年が登場する点などは類似するとはいえ、同作で注目される人種差別的な観点は、本作には見当たらないように思われます。
(注7)エリスは、マッドから、自分とジュニパーはお互いに愛し合っているのだと聞いています。にもかかわらず、ジュニパーは、ボートで一緒に逃げようとしてマッドが定めた時刻に姿を見せません。それで、少年たちが付近のバーに探しに行くと、彼女が他の男と親密にしている姿を見てしまいます。他方で、エリスは、マッドからの別れの手紙を読んだジュニパーが、ベッドに倒れ伏して泣いている姿をも見てしまいます。
両親が言い争いをしているのを見て、「夫婦なのに愛し合っていないの?」と言ってしまうエリスには、とても受け入れがたい光景だったことと思います。
なお、『ペーパーボーイ』のジャックは年上のシャーロットに惹かれますが、それと同じように、エリス(14歳)は年上のメイ(高校生)をgirlfriendにします。でもエリスは、メイの言葉を真に受けて、自分の権利を行使しようとしたら、メイにすげなく扱われてしまいます。
★★★★☆☆
(1)今度のアカデミー賞で主演男優賞を獲得したマシュー・マコノヒーが、本作に出演しているというので、見に行ってきました。
舞台は、アメリカ中部のアーカンソー州。
ある日、ミシシッピ川に流れ込む川の岸辺に住む少年・エリス(タイ・シェリダン)が、友達のネックと一緒に川の中の島に渡ったところ、そこで見知らぬ男・マッド(マッシュー・マコノヒー)と出会います。
マッドは、洪水で木の上に引っかかっているボートで暮らしているようですが、何かいわくありげの雰囲気。

エリスはなんとなくその男に魅力を感じ、あまり乗り気ではないネックを誘って色々サポートします(注1)。

少年たちはマッドと話す内に、彼が人を殺し、警察や殺された男の父親らに追われていること、そして恋人のジュニパー(リース・ウィザースプーン)と会いたがっていることなどを聞き出します(注2)。

しばらくすると、そのジュニパーが近くの町のモーテルに宿泊しており、そればかりかマッドを追いかけてきた者達もその町に来ていることがわかってきます。
さあ、マッドや、エリス、ネックは一体どうなるのでしょうか、………?
様々の問題を抱える多感な少年と主人公との交流が、ミシシッピ川中流域を背景に濃密に描かれていて、合わせてミステリー的な要素も加わり、長尺ながら(130分)観る者を最後まで惹きつけます。
アカデミー賞を獲った『ダラス・バイヤーズクラブ』の時とは打って変わって、マシュー・マコノヒーは野性味溢れる体つきをしており、ここでもその持ち味を遺憾なく発揮しています(注3)。
(2)本作の公式サイトの「Introduction」には、「現代版『スタンド・バイ・ミー』とも言われ」ているとあります。
確かに、エリスは、ネックと一緒になってマッドに関わっていくうちに、精神的に成長していきますから、『スタンド・バイ・ミー』における4人の少年の物語に類似していると言えるかもしれません(注4)。
とはいえ、映画『スタンド・バイ・ミー』では、専ら少年同士の関係が色濃く描かれているのに対し、本作では、少年と大人との関係の方に焦点が当てられているように思いました(注5)。
それでむしろ、本作は、『ペーパーボーイ』との類似性があるように思われます。
何しろ、同作にはマシュー・マコノヒーが、主人公ジャックの兄の役で出演していますし、映画の舞台が、本作と同じような雰囲気を持っているのです(本作ではミシシッピ川の流域が、『ペーパーボーイ』ではフロリダのスワンプという湿地帯が描かれています)(注6)。
それに、同作では、主人公ジャックは、奔放なシャーロット(ニコール・キッドマン)と関わることによって、女性に対する姿勢が変わっていきますが、本作でも、エリスは、マッドの恋人ジュニパーと接することによって、男女の愛というものに目が開けていきます(注7)。
(3)相木悟氏は、「重くも温かい、深い余韻の残るヒューマン・ドラマであった」と述べています。
また、稲垣都々世氏は、監督・脚本のジェフ・ニコルズが、「犯罪サスペンスに少年の冒険と成長、大人たちの優しさや男気など、盛りだくさんな要素をうまく絡ませ、一途で純粋な愛の物語をつづる」と述べています。
なお、この記事によれば、映画『スタンド・バイ・ミー』の原作者であるスティーブン・キングが、2013年映画の第3位に挙げているようです。
(注1)最初のうちは食料などですが、ボートを修繕するのに必要な機材(最後にはエンジンまで)も、いろいろ2人はマッドのために運び込むことになります。
(注2)マッドの話によれば、幼なじみで愛するジュニパーを階段から突き落として流産させた悪党を射殺したところ、その男の父親が長男と共に人を雇ってマッドを追っているとのこと。
マッドとしては、ジュニパーを連れて、修繕したボートでメキシコ湾に逃れ出たいと考えているようです。
(注3)本作では、エリスが住むボートハウスのある川岸の対岸に、“暗殺者”と言われるトム・ブランケンシップが独りで暮らしていますが、それをサム・シェパードが演じています。サム・シェパードは、最近では『デンジャラス・ラン』で見かけました。

(注4)特に、行方不明の少年の死体を探しに4人が探検する森の様子は、マッドが隠れている川の中の島の様子と雰囲気がかなり似ています。
ただ、『スタンド・バイ・ミー』では、少年の死体を探すのが探検の目的ですが、本作では少年たちはマッドにすぐに出会ってしまいます。
(注5)少年たちとマッドらとの交流もさることながら、エリスには家族の問題があります。すなわち、エリスの父親は、川辺のボートハウスで暮らしながら、川で獲った魚を町で売ることによって生計を立てています。ですが、母親はこうした地味な生活が不満で、町で暮らす話を進めています。その場合には、二人は別れることになるでしょうが、川辺の生活を続けたいエリスはどうなるのでしょう(父親が面倒を見るわけにも行かないでしょうから)?
なお、ネックの方は、両親はおらず、川に潜って貝を採っている叔父さんと暮らしています。
(注6)そんなところから、本作からは『ハッシュパピー』や『偽りの人生』にも通じるところがあるようにも思いますが、そこら辺については、このエントリの(2)を御覧ください(『ハッシュパピー』の舞台のルイジアナ州は、本作の舞台のアーカンソー州のすぐ南側に位置します)。
なお、マーク・トウェイン作の『ハックルベリー・フィンの冒険』との関連性も指摘されているようですが、確かにミシシッピ川を舞台にしている点や、少年が登場する点などは類似するとはいえ、同作で注目される人種差別的な観点は、本作には見当たらないように思われます。
(注7)エリスは、マッドから、自分とジュニパーはお互いに愛し合っているのだと聞いています。にもかかわらず、ジュニパーは、ボートで一緒に逃げようとしてマッドが定めた時刻に姿を見せません。それで、少年たちが付近のバーに探しに行くと、彼女が他の男と親密にしている姿を見てしまいます。他方で、エリスは、マッドからの別れの手紙を読んだジュニパーが、ベッドに倒れ伏して泣いている姿をも見てしまいます。
両親が言い争いをしているのを見て、「夫婦なのに愛し合っていないの?」と言ってしまうエリスには、とても受け入れがたい光景だったことと思います。
なお、『ペーパーボーイ』のジャックは年上のシャーロットに惹かれますが、それと同じように、エリス(14歳)は年上のメイ(高校生)をgirlfriendにします。でもエリスは、メイの言葉を真に受けて、自分の権利を行使しようとしたら、メイにすげなく扱われてしまいます。
★★★★☆☆













続編が出来るなら「今度は男同士だ」で。
いきなり「男同士」までいかずとも、「男女の愛」にも、少年ジャックのうかがい知れないもっと奥深いところ(「ふじき78」さんの得意分野かもしれません!)がまだ残っているのではないでしょうか?