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ちょんまげぷりん

2011年02月16日 | DVD
 休日にもかかわらず雪の時は外へ出るのも億劫となってしまい、家でTSUTAYAから借りてきたDVDを見ることにしています。今回は、昨年評判だった『ちょんまげぷりん』を見てみました。

(1)こういう映画を見ると、仮に江戸時代の武士が現代に登場することがあり得たとしても、現代の日本人とこんな風にスムースなコミュニケーションが可能だとは思えないと言ってみたくなったり、安兵衛が遊佐ひろ子と友也と遭遇した時は大層空腹だとされていますが、その前に何よりトイレの問題はどうしたのか、などといった日常的なことが気になってしまいますが(注1)、そこはファンタジーなのだからとすべて目をつぶってしまえば、あとは大層楽しく映画を見ることができます。

 何しろ、それぞれが全然違った世界に属しているはずとは言いながら、同じ日本人の顔をして同じ日本語をしゃべるのですから(注2)、それにそれぞれの世界についてごく普通に想定されている範囲内で話題も提供されますから、それほど違和感なく受け入れることができます。
 たとえば、極めて礼儀正しい武士の世界と不躾極まりない現代の世相、男尊女卑の江戸時代と女性の社会的進出が著しい現代、などといった枠組みはお馴染みのもの、確かに指摘されるとその時はハッとはしますが、毎度聞き慣れていることゆえ、そんなお題目はスッと通り過ぎてしまいます。
 とにもかくにも、かる―い感じでおもしろがればそれで十分なのではないでしょうか?

 特に、江戸時代の武士である木島安兵衛が、ほかでもない実に現代的なスイーツ作りに関して天才的な才能を持っているという着想は素晴らしいものがあり、スイーツ作りコンテストに参加した安兵衛と友也が、立派な天守閣をこしらえて優勝してしまうというのも実に面白いストーリーだと思います。

 主人公の木島安兵衛を演じる錦戸亮は、NEWS及び関ジャニ∞のメンバーで映画は初出演・初主演とのことですが、それにしてはたいした演技力だと感心しました。『愛のむきだし』の西島隆弘に匹敵するとも思えるところ、西島の『スープ・オペラ』に相当する第2作目が期待されるところです。



 また、木島安兵衛を自宅で面倒を見るシングルマザーの遊佐ひろ子を演じるともさかりえについては、クマネズミは映画でほとんど見かけませんでしたが、こういう役柄もとてもうまくこなす女優さんなのだと見直したところです(注3)。





(注1)元々、安兵衛が江戸時代に戻ってプリンを作ったとしたら、歴史が変わってしまいますから、タイムトラベルに関する原理的な問題を抱えています。
 それに、日本では明治になるまで牛乳はほとんど飲まれていなかったようなので、プリンを作る上で重要な材料が簡単には入手できなかったのでは、と思われます。
 また、江戸時代の人が、どうしてスイーツ作りに関する才能をもっているのか謎ですし、仮にそうした才能があるとしたら、もっと独特なスイーツを作り出して現代人をアッといわせるということも考えられるでしょうが、そこまでの踏み込みはありません。

(注2)「マンガ大賞2010」と「第14回手塚治虫文化賞(短編賞)」を受賞したヤマザキマリ『テルマエ・ロマエ』(エンターブレイン)とは、この点が大きく異なります。と言うのも、後者では、ローマ時代の浴場技師のルシウスが現代の日本にタイムスリップするというのですから!平たい顔族の日本人とは、ラテン語しか話せないルシウスはうまくコミュニケーションが取れないのです。




(注3)同じように身長のある女優・吹石一恵が、『ゲゲゲの女房』などで成長著しいのと比べると、今一の感は免れませんが。


(2)この映画に関しては、登場人物として遊佐ひろ子とか安兵衛に着目しても構いませんが、少し友也を取り上げてみましょう。



 シングルマザー遊佐ひろ子の息子・友也には、次のような特徴があります。
・小学校に上がる直前(5歳~6歳)の子供。
・普段は幼稚園に行き、母親の会社から帰る母親を待って一緒に帰るという生活を送っています。
・何かというとすぐに泣いてしまうひ弱な子供。
・父親がいないせいか、安兵衛の毅然とした態度に却って親近感を持ってしまいます。
・ココゾというときは病身でも安兵衛を探しに行きます。

 こんなところで、少し前にDVDで見た映画『縞模様のパジャマの少年』(注4)に登場する少年ブルーノと比較するのはお門違いも甚だしいとは思いますが、彼については次のような印象を受けました。



・主人公の少年ブルーノは8歳(友也より少し大きいだけ)。
・強制収容所長に就いた父親の関係で、人里離れた収容所近くの邸宅に引っ越したため、友人はおらず、いつも一人で遊ぶしか仕方ありません(幼稚園で皆と遊ぶ友也とは、その点で環境が酷く異なります)。
・社会的なことに少しずつ関心を持ち出しますが、父親は自分の仕事のことにつき一切話をしようとしません(とてもできたものではないでしょうが)。
・元々は冒険物語が大好きなことから、家族に黙って裏庭から塀の外に抜け出し、森を通って、農場と思った建物(実は強制収容所)に近づきます。そこで、仲間のもとを離れているユダヤ人の子供シュムエルと有刺鉄線越しに友達となりますが、……。

 この二つの物語で描かれている子供について大きな違いを言えば、
・友也の方は父親的な存在を求めているのに対して、ブルーノにとって父親は、権威的ですごく煙たい存在でしょう。
・また、友也はまだ幼稚園生ということで社会的な関心はほとんどありませんが、ブルーノは次第に社会に対して目を開いていくようになります(といって、説明を大人に求めても、誰も何も説明してはくれません。それがのちに大きな悲劇をもたらすことになります)。

 でも、友也は、自分にとって安兵衛が大切な存在だとなれば、熱があるにもかかわらず彼が働くお店まで電車を使って探しに行くという一途なところがあり、また他方のブルーノも、友達のシュムエルの父親が行方不明になったとわかれば、一緒になって懸命に探そうします(それが大変なことになるとは何も考えずに)。

 こうやって比べていくと、それぞれの映画がどうして今頃になって制作されたのか、といった点にも興味がわき、欧米の事情やわが国の事情などにも目が向きますが、そんなことはトテモ手に余りますのでここらでひとまず打ち切りといたします(注5)。



(注4)イギリス・アメリカ合作の映画『縞模様のパジャマの少年』(2009年公開)については、渡まち子氏が、「真実に目をふさぐ偽りの平和は、やがて取り返しのつかない悲劇によって裁かれる。この映画の結末には思わず言葉を失った。主人公の少年二人はオーディションで選ばれた無名の新人だが、その匿名性が戦争の悲劇をより際立たせている」として65点を付けています。

(注5)欧米では、『ソウル・キッチン』を挙げるまでもなく、人種問題は絶えず人々の関心の的であり続けましたが、日本ではいかにも微温湯的な家族共同体的意識が現代でも横溢している、などといってみても今更めいて面白くありません。


(3)渡まち子氏は、「江戸から現代にやってきたお侍がお菓子作りに目覚めるというハートフル・コメディーには、現代人が忘れがちな“1本通った筋”がある」、「生活の描写にご都合主義のところはあるが、子育てと仕事の両立に奮闘するひろ子の生き方と、安兵衛が江戸から現代にやってくる不思議の理由が絶妙に重なる構成は上手い。テイストはあくまでもライト感覚。それでも物語はタイムスリップもの特有の楽しさにあふれていた」として60点を付けています。



★★★☆☆



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ともさか派 (ふじき78)
2011-02-16 23:23:49
ともさかの前にともさかはなく、ともさかの後にともさかはなし。幾つになっても女の子だった時代の甘い部分が残ってるみたいなトッポイ感じが曲がってる口とともに好きです。

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