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ソーシャル・ネットワーク

2011年02月06日 | 洋画(11年)
 すでにグラミー賞の4冠を獲得していて、さらにアカデミー賞の最有力候補ともされていますから、早目に見ておこうと、『ソーシャル・ネットワーク』を吉祥寺のバウス・シアターで見てきました。

(1)この映画はFacebookの創始者であるマーク・ザッカーバッグ氏のことを中心的に取り上げていますから、実在する人物を主人公にしたreal story物と言えるかもしれません。

 といっても、まずもって、マーク(ジェシー・アイゼンバーグ)が作り上げたFacebookがどんなものであるかについては、映画で全く解説されませんし(アメリカ人なら誰でも知っているからなのでしょう)、ウィンクルボス兄弟が営んでいる「ハーバードコネクション」との違いがどこにあって、どうしてFacebookの方があれほどの人気を集めたかについても、映画からは全然わかりません。
 さらには、この映画において、マーク・ザッカーバッグの成功譚を描く際のよりどころとなっている訴訟の話にしても、ごく漠然としたことしかわかりません。映画で描かれている場所は何なのか、弁護士と一緒になって双方は何を議論しているのかなど、はっきりとしないのです。
 それに、いったいどうして、ウィンクルボス兄弟に多額の和解金を支払わなくてはいけないのでしょうか、また長年の親友であったエドゥアルド・サベリンは何をマークに要求したのでしょうか(注)?

 そこで、この映画は、マークの業績というよりも、むしろその人となりをある程度事実に即して描き出した作品と見ることができるかもしれません。
 でも、女子学生とのお付き合いは、冒頭でこそ大層印象深く描き出されてはいるものの、そして、付き合っていたエリカ(ルーニー・マーラ)に「最低な人物」と言われて、逆に「くそ女」とかブラジャーのサイズなどをパソコンで書き綴ったことがFacebookにつながってくるわけですが、それ以上のことはありません(ラストで、彼女のページを開いてパソコンを見つめているマークの思わせぶりな姿を映し出してはいますが)。



 では、マークの友人関係はというと、エドゥアルド・サベリン(アンドリュー・ガーフィールド)はギリギリまでサポートしてくれますが、結局は離反するに至ってしまいます。



 逆に、Napsterで有名なショーン・パーカー(ジャスティン・ティンバーレイク)の考え方に共鳴して、一緒に事業の拡大を図るものの、ショーンは薬物所持疑惑により逮捕されてしまい、マークのもとを去ることになってしまいます。



 こうして見ると、マークの周囲にいる人たちはみな彼から離反してしまうように見えます。そうだとすれば、なにもわざわざ映画にするような人物とはとても思えないところです(彼に、何か他に特別魅力的な才能があるようには描かれてはいませんし)。
 ただ、実際のところは、彼の築いたFacebookに全世界で5億人もの人が参加しているわけですから、彼をどこまでも支えた人たちが存在したことでしょう。ですが、そういった人たちは、この映画からは十分にうかがえないところです。
 といったところから、この映画でマークの人となりがうまく描かれているかというと、あまりそんな感じを受けません。

 それでは、この映画で描かれているのは一体何なのでしょうか?
 何だかよく分からないながらも、この映画は大層面白く、最後まで退屈させません。
 そこで、レトリックめいた言い草で恐縮ですが、映画自体が“Facebook”の機能を演じているのではないのか、Facebookが面白いのと同じような具合でこの映画が面白いのかもしれない、と言ってみたくなります。
 マークが付き合っていたエリカがボストン大だったことから、Facebookの範囲がハーバード大だけでなく、周辺の大学にまで拡大し、マークがロスアンジェルスに居を移すころはスタンフォード大も取り込まれ、さらにウィンクルボス兄弟がイギリスでレガッタをやる頃、ちょうどオックスフォード大とかケンブリッジ大にまで範囲は拡大しています。
 マークを含めて人々があちこちに激しく動き回ることで、付き合う人の範囲、いわば人脈がどんどん拡大するのと軌を一にして、Facebook自体も拡大しているように見えます。まるで、マークらは、パソコン内を高速で飛びまわる信号のようです。

 こんなことは単にそう見える程度の話かもしれませんが、とにかくそうでも考えないとこの映画がなぜ面白いのか、うまく言い当てられない気がします。
 とはいえ、そうだとしても実のところ、この映画がグラミー賞の4冠を獲得し、さらにはアカデミー賞を狙うほどの感動作なのかといえば、クマネズミには理解力が不足しているのでしょう、そうは思えなかったところです。


(注)映画の中では、エドゥアルドの収益を確保すべきという提案をマークが否定したりしていますから、Facebookの収益源がどこにあるのか、観客にとっては分からず仕舞いとなります。ただ、このサイトの記事を読むと、時点は若干古いながら、実際のFacebookは、やはりきちんと収益源を確保していることがわかります。


(2)映画の中で、ウィンクルボス兄弟は、マークが自分たちのアイデアを盗用したのではないかと訴えに、ハーバード大学の学長(ダグラス・アーバンスキー)に会いに行きますが、この学長は、クリントン政権で財務長官をやり、オバマ政権では米国家経済会議議長だった経済学者のローレンス・サマーズ氏をモデルにしています。
 学長は、兄弟の訴えに対して、実に尊大な態度をとり、学生間の争い事に対して学校側は介入しないと言って、全く取り合いません。映画で見られるこうした態度は、実際の人物を髣髴とさせるようです。
 ローレンス・サマーズ氏は、研究者として顕著な業績を上げていることもあるからでしょう、どこへ行っても尊大な姿勢は崩さず、その結果敵対者を多く作り出してしまい、ついには、学長であった2006年に、女性が科学で優秀な成績をあげられないのは素質の差だと受け止められてもおかしくないような発言をして大学の内外から激しい批判を浴び、ついには同年6月30日に学長を辞任しているのです(ここらあたりはwikiによります)。
 そんな彼が、知ってか知らずか、女子学生のランク付けから出発したFacebookに結果的に肩入れしたことは、興味深いことだなと思います。
 ちなみに、本年1月下旬にスイスで開催された「ダボス会議」に出席した際に、菅総理は、12人の「有識者」を招いた会合を持ちましたが、そのなかにこのサマーズ・ハーバード大学教授も含まれていました。

(3)渡まち子氏は、「ネット世代の若者の実体を、若手俳優のジェシー・アイゼンバーグが見事に演じてみせた。某大な量のセリフの中に、他人の痛みに無頓着で、時に幼児性さえ感じさせる難役。今までインディーズ作品中心に活躍していたアイゼンバーグが、意外なほどの底力で主人公の屈折と悲哀を演じき」っていて、「確かなのは、21世紀の反体制は、ネットの海の中で誕生するということ。同時代性こそ、この映画最大の魅力である」として、85点もの高得点を与えています。



★★★☆☆



象のロケット:ソーシャル・ネットワーク

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8 コメント

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こんにちは (ゴーダイ)
2011-02-06 10:03:09
>彼に、何か他に特別魅力的な才能があるようには描かれてはいません

同感です。
この映画にかかわらず、作り手がはっきりと描き切らずに含みを持たせた部分を、観客自身がそれぞれ補完する映画はヒットしていますよね。
なんというかかつてよりもインタラクティブ性の高いものが好まれているというか・・・

この映画の主役のマークについてもバッサリ意見が分かれていますよね。意図的に描き切っていないからだと思います。
Unknown (Erika A)
2011-02-06 11:40:34
はじめまして!TBありがとうございました!
そうですね、マークがいったい何者なのか?どうしてあれほど成功したのか?ということは、観客に判断を任せられていたような気がします。
結局、すごい天才でも人間関係の部分で何かが決定的に欠落しているのか?それで成功しても、ラストシーンのように、わびしい後ろ姿になってしまうのかな~?と私は思いましたが、でも、きっと見た人たちそれぞれが判断するしかないようですね!
私としては、今年の期待ナンバー1は「英国王のスピーチ」なので、これを見てから、どっちがよかったかな~と贅沢に悩んでみたいと思います☆
また遊びにきますね!
Unknown (リバー)
2011-02-06 12:07:28
TB ありがとうございます

たしかに 何がと言われると 難しいですが
最後まで引き込まれました

作品の完成度が高かったのもあると思います
おもしろかったけど (KGR)
2011-02-06 12:19:59
いつもどうも。

面白かったけど、大絶賛と言うほどではなかったです。
やな奴ばっかりに描かれていた気もします。
正直みなさんの評価が高い理由がよくわかりません。

そんな中で、ウィンクルボス兄弟と学長のやり取りは意外でした。
こんにちは♪ (愛知女子)
2011-02-06 14:58:28
クマネズミさん、拙ブログにトラバありがとうございます!
学長のその後を調べられたのですね。さすがです。
専門的な事は素人の私には分かりませんでしたが、訴訟になった原因と結末までがしっかり描かれているので話は分かり易かったです。事実は知りませんが…。
まだ若い現役バリバリの人物を主人公にした作品は珍しいですね。クマネズミさんの記事で色々知らない事を発見させていただきました。
こちらからもトラバを送らせていただきましたので、よろしくお願い致します。

Unknown (vic)
2011-02-06 23:49:11
私はこの映画、すごく面白いと思いました。

マークは、ハグが嫌いとか、冒頭の女の子とのやり取りを見ても、人付き合いがものすごくヘタなことがよく分かります。

そんな彼が生み出したのが、友達作りをサポートするフェイスブック...というのがまず、面白かったです。

そして、億万長者になり、世界中の人から羨望の眼差しで見られ、世界の人口の12分の1を、1つのネットワークで繋いで見せても

大切な友達と決別し
自分が一番心を寄せているエリカに、自分の気持ちを届けることが出来ない
その皮肉が好きでした。

私もブログやって、mixiやって、Twitterでつぶやいて、ネット上に入り込めば入り込むほど、何とも言えない空しさというか、寂しさ、孤独を感じてしまうことがあります。
ネットでつながればつながるほど、深まる孤独...そこに共感しました。
フェイス・オフ社会との関連 (月光仮面)
2011-03-16 16:53:20
  わが国社会の匿名性を感じるが故に、どうして欧米でフェイスブックが多くの人々を魅了するのか、訳が分からず、そうした関心からも見に行きました。そして、やはり分からないまま、帰ってきました。そして、最近のアラブ社会の変革、とくにエジプトの政治体制変革に関しては、フェイスブックが大きな役割を果たしたことを聞き、世の中の仕組みがいろいろ変わっていることも知りました。といって、自らがフェイスブックに登録する気は、毛頭起きません。露出過剰の怖さを実感してきたからです。日本人がこの仕組みにどのように関与していくのかという岡目八目的な興味もあります。

映画に関していえば、いろいろフィクションがあるのでしょうが、その辺がわからない身からすると、割合クールに当事者を描いている感じがありました。主人公もなんら美化されず、むしろ嫌味な人間のように描かれます。ということは、観客にとって、人間として魅力的でもなく、共感がわく存在でもありません。よく映画化を許したものだとさえ感じます。それでも、社会事象として見れば、興味ある部分がかなりあります。だから、映画大賞としてのアカデミー賞の候補作に取り上げたこと自体が不思議ですが、それは、この映画が価値のないものだと言っているわけではありません。こうした映画も、面白いものだと感じたら、映画の幅も広がっていくのでしょう。
面白さの拠って来たるところは? (クマネズミ)
2011-03-19 08:36:32
「月光仮面」さん、貴重なコメントをありがとうございます。
仮に東日本大震災が欧米で起きたとしたら、あるいは人々の安否確認にfacebookが活躍したのかも知れません。でも、日本では普及度が低くてそんなことは考えられないでしょう。といったこともあって、「月光仮面」さんがおっしゃるように、「どうして欧米でフェイスブックが多くの人々を魅了するのか、訳が分からず、そうした関心からも見に行」ったものの、同じように「やはり分からないまま、帰ってき」たところです。
この映画は、ですからfacebookがどんな仕掛けで、なぜそれが5億人もの人々の間に広まっていったのか、ということを描き出そうとしたものではなく、むしろそれを創りだしたマークらを描いているのかなと思うと、「月光仮面」さんがおっしゃるように、「割合クールに当事者を描いている感じがあ」り、彼らは「観客にとって、人間として魅力的でもなく、共感がわく存在でもあ」りません。というところから、ではこの映画を面白く感じるのはどうしてなのか、と考えてみる必要があるのではないでしょうか?

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