映画的・絵画的・音楽的

映画を見た後にネタバレOKで映画を、展覧会を見たら絵画を、など様々のことについて気楽に話しましょう。

シャーロック・ホームズ

2010年04月07日 | 洋画(10年)
 『シャーロック・ホームズ』を吉祥寺のバウスシアターで見ました。

 ジュード・ロウについては、『リプリー』以来、出演する映画のかなりのものを見ているので、今回の映画ではわき役のワトソンを演じているものの、やっぱり見てみようということになりました。

(1)シャーロック・ホームズ物というと、NHKで放映された『シャーロック・ホームズの冒険』が有名でしょう。私も毎回楽しみで随分と見ましたから、ホームズと言えば主演のジェレミー・ブレットの顔かたちが思い浮かぶほどです。
 ところが、今回の映画は、そういった定型的なホームズ像を根底からぶち壊そうとして制作されたもののように思われます。

 まず、ホームズ(ロバート・ダウニー・Jr)の格好が大変だらしないもので(髪の毛がボサボサ、無精髭が伸びている上、着ている服もヨレヨレです)、冷徹なインテリというこれまでのイメージからはほど遠くなっています。
 彼が籠る部屋も、酷く雑然として何ら整理整頓されてはいません(ただ、非常に珍しいもの―本など―が、アチコチに散らばっていて、一つ一つ確かめてみたい気にさせられます)。
 外に出れば、パブに設けられたリングで素手でボクシングをして、相手をノックアウトしてしまいます(ジェレミー・ブレットからは、とてもボクシングをする男のイメージは湧いてきません!)。

 ワトソン(ジュード・ロウ)については、外見的な面で意外性はないものの、ホームズの忠実な支援者というイメージではなくて、ホームズとの付き合いを切って婚約者の方に行きたいという願望を、ことあるごとに口にする人物とされています。

 このように思い切って斬新なイメージを身に帯びた二人が、元オペラ歌手のアイリーン(レイチェル・マクアダムス)を交えながら、邪悪な黒魔術を操るブラックウッド卿(原作には出てこない人物)と戦うというのですから、面白くないはずはありません。

 造船所での戦いで、大きな金属の塊が転がり落ちてくる場面は、『インディ・ジョ-ンズ』などでよくみかけるものですし、最後のホームズによる種明かしの説明は、取ってつけたような感じがしてしまうものの、映画全体から楽しさが溢れてこちらに伝わってきます。

(2)邦画でこの映画のようなことをやるとしたらと考えて、フッと思い浮かぶのは『K20 怪人20面相・伝』でしょう。



 これは、江戸川乱歩原作を下敷きにして書かれた北村想の小説をさらに監督の佐藤嗣麻子氏がもう一捻りしたものなのですから。たとえば、
・時代設定を1949年とし、それも第二次世界大戦が回避された「別の世界」としています。
 ですから、日本帝国陸海軍とアメリカ・イギリス軍との間で平和条約が締結されていて、東京は帝都と呼ばれ、華族制度も存続し、酷い貧富の差が生じている社会だとされています。
 最初に、この「帝都」を俯瞰する映像が流れますが、まさに『シャーロック・ホームズ』における19世紀末のロンドンを髣髴とさせるものです。
・そんな社会で、富裕層だけを狙って、美術品や骨董品を次々と盗み出す怪人20面相が、実は名探偵明智小五郎だというのですから驚かされます。
・そして、金城武扮する遠藤平吉が、今度は怪人20面相となって活躍しようとするところでジ・エンドとなります。

 今回の『シャーロック・ホームズ』は、この『K-20』のように探偵が実は犯罪者だったというところまでは突き進んでいませんから、ある意味では、邦画の方がはるかに先を言っていると言えるのではないでしょうか?

(3)概して評論家の受けはよく、
 岡本太陽氏は、「本作は子供から大人まで楽しめる易しい時代冒険活劇。続編が制作されるのも確実で、彼にとっては最も興行的に成功するであろう作品」だとして70点を、
 渡まち子氏は、「ブラックウッド卿の陰謀のからくりを、ホームズが知識と科学とユーモアで鮮やかに解き明かすプロセスは、娯楽映画ならではのテンポの良さで大いに楽しめる。しばしば暴走するホームズと良識派のワトソン。このアクション・エンタテインメントには、凸凹コンビの刑事ものの原点を見る思いだ」として65点を、
それぞれつけています。
 ですが、福本次郎氏は、「ガイ・リッチーによって新たに創作されたシャーロック・ホームズ像は、さまざまな顔を持つある種のスーパーヒーロー、しかし、映画はそんなキャラクターよりも圧倒的な見せ場の波状攻撃で見る者の興味をつなぎとめ」ていて、「期待した以上に斬新なホームズではあったが、彼の感情にも行動にもいまひとつ共感を覚えなかった」として40点と辛口の評点を与えています。
 とはいえ、こうした破天荒な映画に対しては、その主人公に「共感を覚える」かどうかはあまり重要な要素とは思えないところですが?


★★★★☆



象のロケット:シャーロック・ホームズ

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8 コメント

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Unknown (闘いうどん)
2010-04-07 08:00:44
はじめまして。悪と闘い正義を守る、闘いうどんと申します。TBありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。
TB、コメントありがとうございます。 (冨田弘嗣)
2010-04-07 08:04:26

原作をベースにしたまったく新しいユーモアとスピード感のあるホームズ映画をとても楽しみました。これまでのホームズ映画を期待したら、違うと思うかもしれませんね。

>破天荒な映画に対しては、その主人公に「共感を覚える」かどうかはあまり重要な要素とは思えないところですが
確かにそうですね。破天荒な主人公の破天荒な人生、破天荒な映画を素直に楽しみたいものです。

ときどき、拝読させていただいています。
これからもよろしくお願い申し上げます。
TBありがとうございます。 (KGR)
2010-04-07 10:16:29
>吉祥寺のバウスシアター
メンズデーがあるようでうらやましいです。

>「共感を覚える」かどうかはあまり重要な要素とは思えない
私も同感です。
この映画のテーマを取り違えているのでは。
楽しかったー。 (de-nory)
2010-04-07 22:38:53
クマネズミさん。こんにちは。
いつもありがとう。

そうなんですよね。
イメージとずいぶん異なるキャラなんです。
しかし、それが良い方に向いているから楽しかったー。
Unknown (かからないエンジン)
2010-04-11 23:56:31
TBありがとうございます。

キャラクターも良かったですし、アクションも盛りだくさんで普通に楽しめました。

>「共感を覚える」かどうかはあまり重要な要素とは思えないところですが?

確かに。
そもそも一口に「共感」とは言っても色々ありますからね。福本氏は「俺も同じ気持ちだ!」といったような「同情」っぽい感じの「共感」が足りないとおっしゃりたいんでしょうが、この映画の場合は「誰も思いつかなかった方法でピンチ乗り切るホームズすげえ!」といった感じの、ヒーローに対しての「憧れ」のような「共感」の方が要るんじゃないかと思いますし、それはちゃんと満たしていたように見えましたけどね。
ホームズとは何者? (ジェントルではない男)
2010-04-15 14:31:00
  本作の「シャーロック・ホームズ」は、騒々しい(若々しい?)ホームズということで、拳闘好きで、閑な時に部屋の壁に向かってピストルをぶっ放すという行動が描かれます。そうした行動傾向が原作のホームズにはあったようですが、こうしたイメージはどうもハリウッド映画的で、イギリスを舞台とした映画としては好きなものではありません。もっと知的で紳士的な行動をとるホームズなら別ですが、ずーっと遥かな昔にいくつか小説を読んだくらいだったので、この映画でイメージがかなり狂ってしまいました。
  ホームズに対しては、アクション映画は望まないので、別の配役で違ったイメージのホームズが出てきてほしい感じがあります。ホームズの多面性を教えてくれたのだと思いますが、私個人的には、これ以上は「ノーサンキュー」というところです。
楽しいホームズ (クマネズミ)
2010-04-16 05:31:27
 「ジェントルではない男」さん、コメントをありがとうございます。
 映画という娯楽を巡っては、誰もがいろいろの観点から好き嫌いを議論し合えるので、それがまた映画を見る楽しさの一つだと言えるでしょう。
 何しろ、一方で「ジェントルではない男」さんは、「イギリスを舞台とした映画」としてはこうしたアクション映画は「ノーサンキュー」とのことですが、他方でクマネズミは、ビートルズを輩出したイギリスで作られるからこそ、モリアーティ教授が登場するであろうこの映画の続編を今から楽しみにしているところなのですから!
ホームズがアットホームでなくても構わないけど (ふじき78)
2010-12-30 09:27:54
ダメだったですねえ。3回寝ちゃってますから。なんかガチャガチャうるさくて、アリバイ工作みたいに推理を付けてるのが凄くどうでもいい感じだし。

イメージの話で言うと、マッチョなホームズはちょっとイヤ。紳士はホームズの一面を誇張した感じだけど、麻薬をかじってる厭世家とマッチョは私の中では背反する。そういう可能性があったとしてもルパンがデブに描かれてたらイヤなのといっしょ。
オカルトっぽい敵役が「ヤング・シャーロック」のリメイクくさいですよね。

うんまあ、合わんかった。

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