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人生の約束

2016年01月19日 | 邦画(16年)
 『人生の約束』をTOHOシネマズ渋谷で見ました。

(1)『ニシノユキヒコの恋と冒険』の竹野内豊が主演の作品だというので、映画館に行ってきました。

 本作(注1)の冒頭では、富山県射水市新湊地区の四十物町(あいものちょう)の町内会長・西村西田敏行)の声で、「この町で一番大切な曳山(注2)が、どうにも維持できなくなって西町に譲り渡されることになった。祭りが始まって以来の出来事。町は葬式のよう」との説明が。
 神社で開催された譲渡式において、四十物町の人たちが無念の思い出見送る中、曳山が西町の人たちによって運ばれていきます。



 西村が営む理髪店では、妻の好子室井滋)が夫に、「お父さん、見送らないでどうすんの?」と言いますが、夫は黙ったままです。

 四十物町総代の鉄也江口洋介)の家には若い漁師たちが集まってきて、「終わった」「(西町が)約束破った」などと騒ぐので、鉄也が「うるさい!もうゴタゴタ言うな、泣くな!」と叱りつけます。
 すると、中の一人が笑い出すものですから、鉄也が「なぜだ?」と訊くと、その若い漁師が「泣くなと言われたら笑うしかない」と答え、それに応じて皆も笑い出します。

 場面は変わって東京。
 IT関連企業のCEOの中原竹野内豊)が、「会社の負担になる」と反対する社員の沢井松坂桃李)に対し、「株式交換じゃダメだ」「オレが買えと言っているんだ」と企業の買収を強く指示します。



 そして、部下に、「次の役員会で沢井の処分を検討しろ」と命じます。

 そんな時に、中原の携帯に航平(会社を一緒に立ち上げた中原の親友だった男。今は会社を離れています)から電話がかかってきますが、「あいつにどんな話があるんだ?」と訝しく思いつつ中原は出ません。

 中原は、「(企業買収は)200億なら話がつきますが」と言う部下に対し、「もっと叩け、180まで叩け」と指示します。

 こんな中原ですが、航平からの電話が何度もあると、次第に気になってくるようです。
 さあ、中原と航平との間には過去どんなことがあり、そして、今なぜ航平から電話がかかってくるのでしょうか、………?

 本作の舞台となる富山県の港町の佇まい、そしてそこで催される祭りの様子の描写には素晴らしいものがあります。でも、それらを背景にして展開される本作の物語の方は、そうそうたる俳優が目白押しに出演しているにもかかわらず、都市と地方とのよくある図式から一歩も抜け出ておらず、登場人物も型どおりに描かれているにすぎないように思われました。まあ、『起終点駅―ターミナル』と同じように、新幹線開業とタイアップしたご当地物の一種といえるのではないでしょうか(注3)。

(2)本作では、舞台の港町から海の向うに大きく見える立山連峰の姿が何度も映し出されますが(注4)、大層立派な山容が見る者に迫ってくるようであり、また13本の曳山が巡行する「新湊曳山祭」(注5)の勇壮な様子もタップリと本作では映されています。
 また、北陸新幹線が金沢まで開通したことによって、東京と射水との距離が相当縮まったことも、本作を見るとよく分かります(注6)。

 とはいえ、そうしたことを背景として展開される物語に関しては、よくわからない点がいろいろあるように思います。
 例えば、中原が航平に会いに航平の故郷の新湊に行くと、航平が病気で亡くなったばかりですが(注7)、遺骨にお焼香をしようとする中原に対して、航平の義兄である鉄也などが随分と敵対的な態度をとるのです(注8)。



 確かに、航平は、中原と一緒に興した会社から3年前に追い出されたわけですが(注9)、その後の話からすれば、会社の経営方針が中原と違ってしまい、自分がいては会社がうまくいかなくなると考えて、むしろ自分から身を引いたような感じもひょっとしたらあるように思えます(注10)。
 自分のいない会社のことを気遣う気持ちが大きいとはいえ、少なくとも、新湊に戻って周りの人間に対して、中原のことを悪しざまに言うような人間ではないような感じがします(注11)。
 仮に航平が中原のことを酷く非難していたとしたら、彼の子供である(新人の高橋ひかる)が、何度も携帯で中原と接触しようとしたり、新湊にやってきた中原とすぐに打ち解けたりすることなど出来ないのではないでしょうか?

 そもそも、そんなに離反してしまうような中原と航平とは、どんな経緯で大学時代に親友となり、そして一緒に会社を起こそうとしたのでしょうか?
 それも、時代の先端をいくIT関連企業ですから、生き残っていくためには、中原のようにがむしゃらに突き進んでいくしか道はないようにも思えるところ、航平はこの企業に何を託そうとしたのでしょう?

 また、航平は、どうして瞳を10年以上も放っておいたのか、どうして妻と子どもを東京に呼び寄せなかったのか、何も説明がされていません。
 それに、中原の家族はどうなっているのでしょう(注12)?
 映画からすると、中原はずっと独身のままのように思えますが、あのように彼に絶えず彼のソバについて回っている秘書・由希子優香)のことをどう思っているのでしょうか(注13)?

 こうした事柄についてほんの僅かでも説明が与えられると、見る方も凄く落ち着くように思います(注14)。
 それに、登場人物の背景について殆ど触れられず、与えられた通り一遍の役柄でしか演じられていないと、登場人物の性格に深みがなくなって平板なものとなってしまい、映画に面白味が欠けてしまうように思います(注15)。

 でもまあ、こんなことをいくら書き並べても仕方ないでしょう。
 この映画を通じて、新湊曳山祭のすばらしさを初めて知り、さらに、富山県にはこの他にもいくつも曳山祭があると分かり(注16)、それだけでも儲けものと思った次第です。

(3)渡まち子氏は、「勇壮な祭りのクライマックス、主人公が渾身の力で祭りに対峙し、提灯山にいっせいに灯がともる瞬間の美しさが心に残った。派手さはないが、丁寧であたたかい作品に仕上がっている」として60点をつけています。



(注1)監督は、テレビドラマ界の巨匠とされる石橋冠

(注2)山車(だし)の一種で、場所によって「曳山」、「だんじり」(岸和田)、「山鉾」(祇園祭)などと言われるようです(Wikipediaによります)。

(注3)本作の出演者の内、最近では、竹野内豊は『at Home アットホーム』、江口洋介は『天空の蜂』、松坂桃李は『ピース オブ ケイク』、優香は『ギャラクシー街道』、新湊の女性漁師役の小池栄子は『ふしぎな岬の物語』、スナック・ママ役の美保純は『SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』、室井滋は『小さいおうち』、柄本明は『岸辺の旅』、刑事役のビートたけしは『龍三と七人の子分たち』、西田敏行は『ギャラクシー街道』で、それぞれ見ました。

(注4)港の南側に位置すると思い込んでいた立山連峰が、港の堤防の向こう側に見えるので「アレ?」と思いましたが、射水市は富山湾のどちらかと言えば西側にあり、また立山連峰は富山県の東側に位置するために、こうした構図になるものと思います。

(注5)Wikipediaによれば、「放生津曳山祭」とされる祭りであり、「毎年10月1~2日に行われる江戸時代中期より続く放生津八幡宮の秋季例大祭」とのこと。
 同じように曳山が町内を巡回する岸和田のだんじり祭ほどの激しさはないように思います。

(注6)東京で格別忙しいしい生活を送っているはずの中原やその秘書が、何度も新湊に現れるのです(最後の方では、沢井までも)。
 なお、東京から射水に行くには、例えば、北陸新幹線で新高岡まで行き、そこでJR城端線で高岡に(あるいは「あいの風富山鉄道」で富山から高岡に)、そして万葉線で射水市新湊庁舎前まで行くというルートが考えられますが、大体4時間かかります(多分、以前よりも1時間程度短縮されています)。

(注7)町内会長の西村の説明によれば、末期の肝臓がんだったとのこと。
 なお、航平の妻(鉄也の妹)は、3年前に事故で亡くなっています。

(注8)例えば鉄也は、「あんたなんかに線香をあげられても迷惑だ。航平に謝れ」と罵ります。

(注9)中原の秘書・由希子は、西村に、「塩谷航平氏は、会社の定款に従って解雇されました」と説明します。

(注10)沢井は、中原に、「塩谷(航平)さんは、辞める前から病気を隠していた」と秘密を明かします(病気がわかり身を引こうとしたとも考えられるところです)。

(注11)なにしろ、沢井が、「塩谷(航平)さんがいなくなって会社から失われたものは“心”だ」と言うくらいの人物なのですから。
 鉄也たちが、マスコミ情報などから中原を批判しているとしたら、想定される航平は、むしろ、それを否定しに回るような人柄なのではないでしょうか?

(注12)中原は、鉄也から「あんた、子どもは?嫁さんは?」と尋ねられ、「親父は顔も知らない、母親は大学生の時に」と答えるものの、自分の結婚については話しません。

(注13)秘書の由希子の方は、「社長と航平さんは車の両輪でした。お二人を尊敬してました。社長の下で働けて幸せでした」と言って、沢井とともに東京に戻ってしまいます。

(注14)その他にも、例えば、西町の町内会長(柄本明)は、中原から「曳山をいくらでもいいから買い戻す」と言われた時に、「生意気言うな!」と激しく怒りますが、自分は、新たに曳山を作らずに出物を買い取ったわけであり(そして、譲り受けの条件の約束を簡単に反故にしてしまう人柄なのです)、そうした申出を簡単に撥ね付けるとも思えないところです。
 また、瞳は、ずっと放っておかれて3ヵ月前に突然戻ってきた航平を簡単に「お父さん」と呼べずに「あの人」と言っていたところ、隠してあった母親の骨と航平の骨を一緒にすると、初めて「お父さん」と言います。でも、こうした描き方では、一昔前の人情劇のような芝居がかった臭みが漂ってくるのではないでしょうか?

(注15)都会にいる金銭亡者が、地方にいる“心”を持った人とか行事に偶然に出会い、失っていた“心”を取り返すという物語は、これまで語り尽くされてきたのではないでしょうか?

(注16)例えば、この記事をご覧ください。



★★★☆☆☆



象のロケット:人生の約束


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4 コメント

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Unknown (atts1964)
2016-01-25 08:31:59
ベテランプロデューサーの石橋監督の元に集まった豪華キャストでしたね。
丁寧な作りの中で、もうちょっとメリハリがあればもっと感動できた気がしますが。
こちらからもTBお願いします。
Unknown (クマネズミ)
2016-01-25 20:58:40
「atts1964」さん、TB&コメントをありがとうございます。
おっしゃるとおり「豪華キャスト」でしたが、ならばもう少し上手く使ってもらいたいものだと思いました。
こんにちは (ここなつ)
2016-03-01 16:25:50
こんにちは。
曳山は美しかったですね…。でも、あんなに勇壮なのに、何故か哀しい心持ちがしました。
お祭りってみんなそうですが、終わった後の寂寞感がたまらないものですね。
Unknown (クマネズミ)
2016-03-01 18:21:12
「ここなつ」さん、TB&コメントをありがとうございます。
「お祭りってみんなそうですが、終わった後の寂寞感がたまらない」と述べておられますが、まさにそのとおりだと思います。言わずもがなながら、芭蕉の「おもしろうてやがて悲しき鵜舟哉 」が思い出されます。

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