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高台家の人々

2016年06月10日 | 邦画(16年)
高台家の人々』をTOHOシネマズ渋谷で見てきました。

(1)予告編で見て面白そうだと思って映画館に行ってきました。

 本作(注1)の冒頭では、「昔々、伯爵令嬢のアン・ペドラーシャーロット・ケイト・フォックス)が日本人の高台茂正大野拓朗)と恋に落ちた。アンには、ふしぎな能力、人の心を読める力があった。その力は3人の孫に受け継がれ(注2)、また新しい恋が始まる」とのナレーションが流れます。

 次の場面では、TVのお天気ニュースから「関東地方は、日中よく晴れて、…」といった情報が流れている部屋(本棚には漫画本がぎっしり)のベッドで、木絵綾瀬はるか)が起き出します。
 木絵の声が、「風邪をこじらせて、4日間会社を休んだ。4日目の今朝は、風邪が治って会社に行けたのに、行かなかった」と流れ、そこから木絵の妄想(注3)が始まり、結局木絵は、ゴロゴロしてその日を過ごしてしまいます。



 5日目に木絵は出社します(木絵の声で、「社内の空気がいつもと違っているような感じ」)。
 総務部で隣の席の阿部堀内敬子)が、「高台光正様(斎藤工)が、ニューヨーク支社から来たの。高台王子は、名門の高台家の長男。お祖母様はイギリス人で、…」といろいろ木絵に教えてくれます。
 さらに阿部が、「王子は独身というから、木絵も当たって砕けてみたら?」とけしかけるので、早速木絵は、イギリスというところを起点に妄想にふけってしまいます(注4)。
 でも、それで注意が疎かになった木絵は、脇田課長(塚地武雅)に頼まれてコピーした紙を床にぶちまけてしまいます。すると、あろうことか、光正がコピー機のところにやってきて、散乱する紙を拾ってくれたのです!

 これが、光正と木絵との出会いのはじまり。さあ、続きはどうなることでしょう、………?

 本作は、妄想癖のある若い主人公がテレパスの青年と恋に落ちて、というファンタジー物ですが、主演の綾瀬はるかが主人公の役柄にピッタリであり、コミカルなシーンも多く描かれていて、主に若い女の子向きの作品なのでしょうが、年配者にもまずまず楽しめる映画になっていると思いました。

(2)本作で断然面白いのは、木絵の妄想でしょう。
 上記の(1)の注に少々書きましたが、他にも例えば、エレベーターで偶然光正と乗り合わせた木絵は、「エレベーターが突然止まったらどうしよう」と思った途端に妄想(注5)が広がり、その妄想を読んだテレパスの光正は吹き出してしまいます。でも、光正と知り合う前で事情がわからない木絵は、突然笑った光正に目を白黒。

 また、高台茂正Jr.市村正親)と由布子大地真央)との間の子ども―光正、茂子水原希子)、和正間宮祥太朗)―の間の会話の場面も興味を惹かれます。なにしろ、テレパス同士の会話ですから、その場にいた木絵には何が話されているのかサッパリわかりません(注6)。



 このように、本作はラブストーリとはいえ、テレパスを取り扱ったSF物でもあります。
 そして、本作に登場するテレパスは、最近見た『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』に登場する仙石(野村萬斎)と同じように、相手の心の中を読めるという超能力を持った者ながらも、同作のような違和感を余り覚えませんでした。
 あるいは、同作では、物に付着した記憶を読み取るというあまり常識的ではない設定になっているのに対し、本作では、単に相手の心を読めるに過ぎない常識的な設定になっているからなのかもしれません(注7)。

 とはいえ、お腹の調子が悪い時に、トイレでの音がテレパスの光正に聞こえてしまうのではないかと気になったりしてきて、木絵は光正に心を閉ざすようになるのですが(注8)、テレパスには外部の客観的な音は伝わらないのではないでしょうか?
 それに、人の心は木絵の妄想のように面白いものばかりというわけではなく、ネガティブのものや、ずっとドス黒いものもあるはずです(注9)。

 でもそんなことはどうでもいいことでしょう。本作は、何も考えずに、黙って楽しく見ることが肝心のように思います。
 でも、言わせてもらえば、ラストの方で、木絵が自転車を一生懸命に漕ぐシーンが描かれますが、そんな場面などを見ると、全体に少々古臭い感じが漂っているのでは、とも思ったところです(注10)。
 総じて言えば、ファンタジックでコミカルな前半の雰囲気が後半まで続けばという感じながらも(注11)、それでは物語が終りを迎えないでしょうから、まあ仕方がないのでしょう。

(3)渡まち子氏は、「この映画にいろいろと真面目にツッコミを入れるのもヤボ」とはいえ、「もともとがアリエナイ設定なのに、テレパスであることによる恋の障害が…と柄にもなくシリアスになる後半は明らかにトーンダウンしてしまう。高台家の家族それぞれのドラマも表層的で、駆け足すぎてがっかりだ」として40点をつけています。



(注1)監督は、『謎解きはディナーのあとで』の土方政人
 脚本は、『ヘルタースケルター』の金子ありさ
 原作は、森本梢子の漫画『高台家の人々』(集英社)。

 なお、出演者の内、最近では、綾瀬はるかは『ギャラクシー街道』、斎藤工は『無伴奏』、水原希子は『信長協奏曲』、大地真央は『R100』、市村正親は『テルマエ・ロマエⅡ』、夏帆は『海街diary』、茂子の友人役の坂口健太郎は『64 ロクヨン 前編』、塚地武雅は『アイアムアヒーロー』で、それぞれ見ました。

(注2)二人の間の子どもの高台茂正Jr.は、どうやらテレパスではないようです。当然のことながら、その妻の由布子も。



(注3)勤め先の会社が、10人の謎の集団に襲われ、機能停止になります。いや10人どころじゃありません、もっとです。とにかく木絵としては、会社の中に入ろうとしたのに、マシンガンを構える集団に阻止されてしまいます、…。

 なお、謎の集団は、後の妄想でドダリー卿とされる人物(脇田課長が扮しています)のたくさんのコピーで出来上がっています。そして、塚地武雅は本作で、脇田課長のみならず、他に8役を木絵の空想の中で演じています。

(注4)木絵は最初、バッキンガム宮殿の近衛兵に扮している光正を、次にシャーロック・ホームズ姿の光正を妄想しますが、最後には、イギリス王族の高台王子が陰謀に巻き込まれ、ドダリー卿に追われて日本までやってきて、…という妄想に行き着きます。

(注5)エレベーターはドダリー卿によって止められ、エレベーターのドアが開くと、向こう側では、ロープで縛られた脇田課長にドダリー卿が銃を突き付けています。ドダリー卿が「王子、姫を渡せ!」と叫ぶと、高台王子は姫(木絵が扮しています)をかばって、「姫は渡せない」と答え、「課長のことは諦めよう」と言ってエレベーターのドアを閉めてしまいます。後には、脇田課長の「エエッ!」という声が残るだけ。



(注6)例えば、脳内会話で、茂子は茂正に「(光正に片思いをしている獣医:夏帆)が結婚式に呼んで欲しいって」と話すと、茂正は「本当?」と聞き返し、和正も「現実を受け止めればいいんだ」と間に入ると、茂正は「それはお前だ。ずっと純のことだけ思っていたくせに」と言い返しますが、こうした会話の所々で3人が声を上げたりするので、その様子を見ていた木絵は「もしかして、みなさんはテレパス?」と言ってしまいます。

(注7)Wikipediaの記事によれば、「2001年にギャラップ社が米国で調査を行ったところ、アメリカ合衆国の36%の人々がテレパシーの存在を信じている、26%の人々が態度を決めかねる、35%の人々が信じない、との結果が出た」とのこと。

(注8)光正が木絵の心を覗くと、いつも同じパターンの風景が見えるだけで、木絵の姿が見えないのです。これでは、木絵が今何を考えているのか光正にはわからなくなってしまいます。
 とはいえ、このように人は自分の心をコントロールできるのでしょうか?特に、木絵の妄想癖は自分でも止められないのではないでしょうか?

(注9)折角「日本一エロい男優」と言われる斎藤工と共演するのですから、綾瀬はるかが演じる木絵のドス黒い心の部分を暴きだしてみたら、それはそれで随分と興味深い作品になるでしょうが、本作とは趣旨が全然違ってしまいます!
 それでも、俗流精神分析によって木絵の妄想を検討してみると、その中にマシンガンとかピストル、剣といった“尖っているもの”“棒状のもの”が頻出している感じがし、これは男性器を象徴しているとしたら、木絵の無意識の状況がわかる、などという方向にも進むことができるかもしれません。
 あるいは、木絵と同様に妄想をたくましくすると、例えば、本作のラストの方で、木絵は携帯電話を持って実家の造り酒屋の屋根に登っているのですが、『アントキノイノチ』の瀬々敬久監督だったら、同作の冒頭で岡田将生にさせたことを綾瀬はるかに要求したかもしれない、などと想像してしまうのですが。

(注10)木絵が隠れている実家の造り酒屋に光正から連絡が入るくらいですから(木絵はそれに出ませんが)、持っている携帯で光正に簡単に連絡が取れるにもかかわらず、どうして木絵は自転車に跨って、田舎の道を走るのでしょう(尤も、こういうシーンがないと、ドーヴァー海峡横断につながらないのでしょうが!)?
 モット挙げると、木絵が会社でお茶くみとかコピーをしていたり、また高台家の食事の際に木絵がナイフとフォークを無作法に扱ったりしますが、なんだか一昔前の映画を見ているような感じを受けました。

(注11)劇場用パンフレット掲載の「Table Talk 脚本家✕プロデューサー 女性4人の座談会」には、「後半は映画オリジナルのストーリー」とあります。



★★★☆☆☆



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4 コメント

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Unknown (atts1964)
2016-06-10 15:20:40
妄想シーンは楽しかったですね。あのシーンを見ているのが視聴者だけでなくテレパスも見えるってことですよね。テレパス側でシャットアウトはできないもんかな?と思いましたが。
まあ余り突っ込む作品ではなく、妄想部分と綾瀬はるかを楽しむ作品でした。
ただ、ラストのところはもうちょっとスッキリ作ってほしかった。
こちらからもTBお願いします。
Unknown (クマネズミ)
2016-06-10 18:36:35
「atts1964」さん、TB&コメントをありがとうございます。
高台家の兄妹の誰かが、「家で脳内会話は止めることになっているのでは」と言っていましたから、「テレパス側でシャットアウト」することは可能なのではと思います。光正は木絵がどう考えているのか知りたかったので、何度も読もうとしたのではないでしょうか?
また、「ラストのところはもうちょっとスッキリ作ってほしかった」というのは木絵のドーヴァー海峡横断のことかなと思いますが、こうしたファンタジーではあのような収め方もありかなと思いました。
Unknown (ふじき78)
2016-06-23 06:49:03
自転車を漕ぐ事が単に象徴であって、どこか目的地に着く事ではない事にビックリしました。

後半にももっと妄想が欲しかったですね。大団円の後は綾瀬はるかの妄想が戻った楽しい生活が描写されてもいい筈だったし。
Unknown (クマネズミ)
2016-06-23 20:03:51
「ふじき78」さん、TB&コメントをありがとうございます。
綾瀬はるかの自転車は、まったく衝動的なものであり、どこかに辿り着く気配は全然しませんでした。ちょっとでも自分を見つめ直せば、携帯があることに気がついたでしょうに!
また、後半は漫画を離れているようで、そうなると作り手に妄想が浮かんでこないのかもしれません。

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