映画的・絵画的・音楽的

映画を見た後にネタバレOKで映画を、展覧会を見たら絵画を、など様々のことについて気楽に話しましょう。

サンシャイン・クリーニング

2009年08月16日 | 洋画(09年)
 渋谷のシネクイントで「サンシャイン・クリーニング」を見てきました。

 この映画のプロデューサーが携わった「リトル・ミス・サンシャイン」が大層面白かったこともあり、これもきっと良い作品に違いないという期待感をもって映画館に出かけました。

 実際に見てみますと、殺人とか自殺の凄惨な現場を清掃するという、普通には思いつかないような3Kの仕事に乗り出す若い姉妹のことが描かれていて、なかなか面白い映画でした。
 と言っても、前田有一氏のように「アメリカ版おくりびと、といえなくもない」と書くまでのことはありません。何しろ、姉妹の母親を除いて死人はマッタク登場しないのですから!

 この映画では、理由は不明ながら母親が自殺してしまい、父親と共に貧しい暮らしを余儀なくされている姉妹が、何とかその境遇を克服しようとしてハウスクリーニング業に就いているものの、それくらいでは多寡がしれています。そこで、姉のローズの愛人のアドバイスもあって特殊な清掃事業に乗り出しますが、云々という具合に話は進みます。

 その母親の死について、前田有一氏は、「姉妹がおちぶれた原因について、いかにもそれらしいトラウマ設定があったりするが、そうした「説明」は感情移入したい側にとってはむしろ邪魔。 人々が、ダメ人間になる事に理由など要らない。…、単に「ダメだから負け組になった」でよかった。人は誰しも弱い面を持ち、その弱さを肯定するところにルーザームービーのキモがある。この最重要ポイントをはずしていないだけに、この詰めの甘さは少々惜しかった」と述べています。

 ですが、姉のローズは、昔から「負け犬」だったわけではなく、かってはチアリーダーとして学園のアイドルだったのですから、その彼女がなぜ「負け犬」に落ちぶれてしまったのかについての説明は必要でしょう。
 
 それに、リンという献血センターで働く女性に妹のノラが近づくキッカケも、その母親の写真を手にしたからです(トラウマがなければ、そんな写真を後生大事に取ってはおかなかったでしょう)。

 加えて、ローコウスキ(Lorkowski)というファミリー・ネームから、外国(ポーランド?)からの移民の子孫ではないかと推測され、だから(?)一家がかなり貧しい暮らしをしてきた設定になっています。たぶんローズは、高校で成績も良かったのでしょうが、家の事情もあって大学に進学できず、それもあって満足な職にも就けずにいたところ、事件現場の清掃という新しい事業がうまくいきそうになり、「ベビーシャワー」(出産前のお祝いパーティ)で友達を何とか見返してやりたいという気持ちからノラだけを清掃作業に送り出し、…というようにストーリーが展開するのですから、「単に「ダメだから負け組になった」でよかった」で済ますわけにはいかないのではと思われます。

 なにより、「ダメ人間になる事に理由」をつけることが、どうして「詰めの甘さ」に繋がるのか理解できないところです。きちんと構成された細部までも読み取るのが映画評論家の役割であって、それを放棄してしまえばタダの素人に過ぎないのではないでしょうか(映画「おくりびと」も、本木雅弘とその父親との関係が一つの核になっていました〔ラストのシーンには問題はあるものの〕)?

 とはいえ、「リトル・マイ・サンシャイン」と同様に、ワゴン車(前作ではミニバス)でアチコチ走り回ったり、父親役のアラン・アーキンが前作と同様の雰囲気を醸し出していたりと、随分見所が多く、前田氏が85点を与えているのも肯けました。

 なお、こんな商売は日本ではどうなのかと考えてみたところ、これが成立するには銃が簡単に入手出来るという環境が必要であり、日本ではとても事業にならないのではと思えます(電車の人身事故の際の処理については、その数の多さから、東京に限ってあるいは仕事になるのかもしれませんが)。
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3 コメント

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お姫様の転身 (たばこの葉)
2009-08-18 13:44:01
 かつて友誼のあった知りあいの訃報がときに舞い込むようになったものの、これまでは事件絡みのものはなかったようだ。だから、日本では、まず健康に気をつけて過ごせば、かなりの長寿がもたらされることになるが、最近の天候にかぎらず、従来以上に厳しいほうへのフレがある社会事情が自殺の増加をもたらしているのは気にかかる。
  わが国の風土や社会事情がアメリカと大きく異なっているのは、幸いなことと思わざるをえない。そうした実感をもたせてくれた映画でもある。アメリカ社会の実態が映画では多少とも戯画的に悪く描かれていると思いたいが、そうしたなかで、落ちこぼれ気味の状況にある姉妹たちがそれなりに奮闘するのだから、アメリカ女性の逞しさを明るく表現していると肯定的に受け取っておくのがよいのだろう。
 姉妹を演じるのが「魔法にかけられて」のお姫様のエイミー・アダムス、「プラダを着た悪魔」のエミリー役のエミリー・ブラントで、この綺麗どころ二人が、「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」で共演したチャーリーズエンジェル役から、一転して汚れ役で出てくるのも、面白いところか。同じハリウッド風でも、ロボットや動物などへの変身ものよりははるかにマシなものであり、「少しだけ笑顔になれる」という評が見られるくらいだから、それなりに評価できる仕上がりという感じか。
お礼 (クマネズミ)
2009-08-19 06:28:49
「たばこの葉」さん、ハリウッド映画の流れで捉える視点と社会的な視点とがミックスされた素晴らしいコメントをありがとうございます。
それにしても、おっしゃるように、日本の自殺者の多さは随分と気にかかるところです。なにしろ、ここ10年以上にもわたって自殺者数は3万人を越えており、自殺率でも米国の倍以上なのですから!
トラウマ設定 (Alcyone)
2018-08-30 18:39:08
GYAO字幕版で最近観ました。私も前田氏のトラウマ不要説には賛同できませんでした。

私は、母の自殺はトラウマとして何かの障害になっているというよりも、「欠落」として描かれているように思いました。ローズにとっては「幸せのお手本」が欠落しており、ノラにとっては「生きるお手本」が欠落していると。

ラストの「室井さん聞こえるか?」風のシーン、字幕だと「ママが居なくて残念だわ」みたいになってしまってるんですが、実際の台詞だと「オスカーがノラとお店のアーケードゲームでハイスコアを出してASSって登録して店長から怒られた。ママはそういう何気ないけど素晴らしい瞬間を見逃してるからとっても損してる。」と、母の自殺をきっぱり否定してるんですね。

普通はお手本であるはずの母の人生はなぜ間違ってるのか、どうすれば幸せになれるのか、欠けていた物の答えを見つけたというシーンになっています。

また父が貧し目というのは移民というのもあるでしょうが、「資産は消費じゃなくて投資するんだ」と言うように、地道なブルーワーカーを否定して大きく儲けたいというこだわりが大きいように思いました。想像するとそれは妻の自殺というより、妻が芸能界で大きく稼いで、もしかしたらイケメン金持ちプロデューサーと一夜の過ちなど犯したりして、双眼鏡くらいしか贈れない自分が惨めに思えた、というようなトラウマではないだろうかと。

ローズはご推察の通り大学へ進学できたようには思えず、一方マックは制服警官ではなく刑事ですから大卒と思われそこで世界が違ってしまった感は想像できますね。
と色々想像を膨らませられるのも、しっかりとした設定と演出があっての事で、良作だなぁと。コメント欄に長々すみません。

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