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映画を見た後にネタバレOKで映画を、展覧会を見たら絵画を、など様々のことについて気楽に話しましょう。

「歌川国芳」展

2010年04月24日 | 美術(10年)
 日曜日に、“府中の森”にある府中市美術館で開催されている「歌川国芳展―奇と笑いの木版画」を見てきました(その日で前期が終り、火曜日からは後期が始まっています〔5月9日まで〕)。

 府中市美術館は、「府中の森」の北側隅にある比較的こじんまりした美術館ですが、時折大層興味深い企画展が開催されるので、何度か行ったことがあります。休日でもそれほど混雑せず、マズマズゆったりと展示品を見ることが出来るので、お薦めのスポットといえるでしょう。

 さて、3月2日のブログの記事で、神戸大学准教授・宮下規久朗氏の『刺青とヌードの美術史―江戸から近代へ』から、次のような引用を行いました。
 「18世紀後半の明和・安永期となると、侠客の間に刺青を誇示することが目立ってき」て、それに重要な役割を果たしたのが歌川国芳らの『水滸伝』の武者絵であり、これこそが「ワンポイントではなく、全身に大きな刺青を施すブームを作り出したといわれている」。

 ここで言及されている「『水滸伝』の武者絵」が、まさに今回の展覧会で展示されているのです!すなわち、「通俗水滸伝(または本朝水滸伝)豪傑百八人一個」というタイトルの大判(縦39cm×横26.5cm)の錦絵が、6点ほど前期では展示されています。
 それを見ることが出来るというので大きな期待を込めて出かけてきましたが、実際のところも、さすが言われることはあるなと思わせる、力強さに満ちたとても立派な浮世絵でした。



 面白いなと思ったのは、上記の「旱地忽律朱貴」(かんちこつりつしゅき)―梁山泊の対岸の入口に酒点店を構え、鏑矢で時事を知らせた―にもうかがわれますが、肌脱ぎになっている豪傑の背中にも既に立派な刺青がなされていることです(注)。とすると、こちらの絵にも豪傑が描かれていて、その背中に刺青がされていれば一体どうなるのかな、などとくだらないことを考えてしまいました。
 とはいえ、美術館側で用意したパネルとかカタログには、“刺青”とか“彫り物”といった用語はいっさい登場しません。まだまだそうしたものは反社会的だという観念が残っているのでしょうか?

 なお、この展覧会は、もちろん『水滸伝』の武者絵だけを展示するものではなく、国芳の幅広い画業をいろいろな角度から明らかにしようとしています。
 冒頭に掲げた「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ」は、しばしば16世紀イタリアの画家アルチンボルドの絵との関係で取り上げられることが多いので、ここでは「忠臣蔵十一段目夜討之図」に触れてみましょう。
 国芳が、伝統の画法のみならず、西洋画法にも習熟して、こうした絵の中に遠近法や陰影法を取り入れている様子がよく分かります。こうした前向きな姿勢を保ち続けたからこそ、冒頭に掲げたような面白い絵を描くことも出来、かつまた武者絵にも独創性を発揮できたのではないか、と思いました。




(注)恵文社BPというサイトの「日本刺青墨録」には、「これらの人物像を彫るということは、「二重彫り」ということになります。刺青している英雄豪傑をまた自分に刺青すれば、二重の刺青体験をしたという心理的な満足感を得られ、自分が施した刺青の英雄と連帯し、かつ同一化したという、己の憧憬と願望を満たすことになるのです」と述べられています。
 

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