ボクシング禍とボクシングの基本、さらにはマネージメント、プロモートについて古い漫画を読み返していたら感心するものがありました。
その漫画とは
『二匹のブル』(原作:瀬叩龍、作画:岩重孝)
ご存知の方はいらっしゃるかどうか?なにせ古い漫画であり(連載は1986年から1988年)掲載されたのもビッグコミックだし、文庫本も出ていないから若い方にはそれこそブックオフあたりでたまたまボクシング漫画を見つけて読んだら面白かった、という機会でもなかったら見る機会ないだろうしねえ…
ざっとまず概要を説明しときましょう。主役は写真の二人。右側がボクサーの太刀川瞭、左側が若きヤクザにして追ってジム会長兼プロモーターとなる玄海源である。この二人と二人をとりまく中で本稿に関係してくる主だった人たちについて書くと、
太刀川瞭:聖ヨハネ学園の学生時代にボクサーを志し、トレーナーのビルや本牧拳闘倶楽部の会長の下トレーニングをする。高校のボクシング大会で勝ちあがって神奈川県大会決勝で氷川銀二と激闘し、その後プロ入り。プロ初戦で世界ヘビー級タイトルマッチの前座で氷川と再戦。かろうじて勝利を得るも氷川はその時の傷で死亡。一度はボクシングを止める事も考えたが色々あって結局玄海らと共にアメリカに渡ってボクシングの修行を続ける。
玄海源:本牧拳闘倶楽部会長の息子で、「とてつもない器」の男。高校生にして不良の子分と玄海社という組織を作ってヤクザと対立。その結果関東成見連合総長波川老から横浜のシマを任せられる。その後、ボクシングのプロモーターで武器密売組織の手先ドン・ル・ロワ、フィクサー大利根(後に太刀川の父親と判明)とやりあいながら父の亡き後本牧拳闘倶楽部のオーナーに就任。太刀川をプロモートするべく共にアメリカに渡り、マフィアやUBC(アメリカのボクシング協会)を脅し従えていく。(汗)
氷川銀二:高校生ボクシング界で75戦75勝75KOの記録をもつが、「目標はあくまで世界チャンピオン。アマの成績なんて関係ない」とうそぶく男。ひょんなところから太刀川と知り合い、神奈川県高校生ボクシング大会フェザー級決勝で大激戦を演じて両者RSCで引き分けとなる。その後すぐプロ入りし、プロ第2戦で太刀川と再戦。当初は圧倒的に氷川が有利だったが、太刀川のカウンターで肋骨を故障、その後無理を押して戦い続けたために折れた肋骨が内臓を傷つけ、最中に倒れた後病院に運ばれるもそこで死亡した。
ビル:酔いどれ神父だったが太刀川のボクシングの才能にほれてトレーナーとなる。酔いどれとなりボクシングから離れていた理由はアマチュア時代にジムの同僚で親友だった男をリング上で事故とはいえ殺してしまったため。(ダウン時のロープによる頚椎骨折)
と、見ればわかるようにここには「ボクシング禍」で死んだ選手2人の話が出てくるんです。特に氷川は主人公太刀川のライバルでもあり、物語のハイライトで壮絶な倒れ方(リング上で仁王立ちして大声で笑った後昏倒)をします。その後、太刀川は思い悩んでボクシングを止めようと考え、また親友をリング上でなくしたビルは実際にボクシングから長い期間離れてしまいます。この2件のリング禍は脳の損傷とはことなりますが、ボクシングに潜む危険性をはっきり語っています。
その他にも、ジムの会長や医師の言葉などはしばしで大切なことが語られています。
(単行本4巻)両者RSCになった太刀川、氷川が運び込まれてきた病院の医者の言葉。
「アマチュアボクシングの場合、グラブが大きくて重いから一見パンチ力を殺して安全の用に思えるが、それはとんでもない間違いなんだぞ。」
「いくらグラブを大きくしても、パンチ全体の持つエネルギーは変わらない。その変わらないエネルギーはズシリと体の内部に加えられる…」
「ちょうど、トウフの入った弁当箱をゆるすと弁当箱は壊れないが、中のトウフはつぶれてしまうのと同じ原理だ。」
「つまり… 弁当箱はきみ達の頭蓋骨で、トウフが脳みそだ!」
(単行本6巻)本牧拳闘倶楽部で練習する太刀川への玄海会長(父)のアドバイス
「太刀川よ。攻撃も大事だが、ガードの練習もみっちりやれよ。」
「日本のボクサーの最大の欠点は、ガードが下手なことだ。ガードがまともにできない奴は、リングに立つ資格はない。」
「日本のボクシングジム関係者は、どうも勘違いしている連中がおおくてな…」
「がむしゃらに攻撃をしかけるのをよしとして、ろくにガードを教えない…」
「ボクシングの要点は、相手に打たさず自分が打つことなんだ。相手のパンチを平気でもらうなんてプロじゃないよ」
(続けてビルの発言)「『肉を切らせて骨を断つ』なんて特攻精神だけじゃ、世界に通用しないからね。」
これらの言葉でも今でも至言だと思います。
実際のストーリーはボクシング6分のヤクザやマフィアとの抗争(汗)4分といった感じで、面白おかしく語られている部分も多いです。特に玄海源と横浜の暴力団との体を張った抗争や、源がアメリカの大物プロモーター、ドン・ル・ロワ(誰がモデルだかすぐわかりますよね?ルックスもあの通りです)を脅し、マフィアのドンの一人ジョルダーノを屈服させ、UBCのライレイ会長を叩きのめすところなんかは痛快です。
さらにいっちゃうと、(ボクシング禍からは離れますが)「世界チャンピオンの座」を取ることの大変さ、それについて必要なものについてもこの漫画は語っていて、世界で日本人が伍してやっていこうと思ったらこの玄海源くらいの行動力が必要な点について、太刀川の継父となった元警察官久坂がこう語っています。(単行本8巻)
「本来ならあの男が(ジムの)オーナーライセンスを取るなんて絶対に不可能なことなんだ。その不可能を可能にする意思と行動力、そして運気の強さ、これは大事だ。」
「いいかい… リョオ君がこれから「世界」を目指すとすれば、その挑戦権争い、開催地、ファイト・マネー等いろいろ厄介な問題が起こるに決まってる。また、そういう障害をはねのけなければ、リョオ君にどんなに実力があっても王座にはつけない。」
「奴は今度のことで(自分はそれを出来る運と実力があるということを)それを証明したんだ。」
う~~ん、確かにねえぇ~~(納得)
この作品の原作者「瀬叩 龍」って他で聞いたことがないんで調べたら、なんと大ヒット漫画「美味しんぼ」の原作者の雁屋哲氏なんですね。最近は「美味しんぼ」がメジャーになりすぎちゃったけど、この人は昔は池上遼一と組んで格闘漫画も多くやってましたし(『男組』は大好きです。『男大空』は途中から池上先生の画風が好きじゃなくなってしまった…あと、『風の戦士ダン』ね。島本先生最高♪)ボクシングについても随分勉強して書いたんじゃないでしょうか。『二匹のブル』には太刀川と氷川の実力を測る役目でモハメド・アリも登場しますからね。そこで、氷川をフォアマンに、太刀川をフレイジャーに比して双方の性質を語っています。
こんないい作品(娯楽性、実用性両方高い)が埋もれてしまうのはもったいないなあ…誰か文庫化しないんですかねえ… んで各ボクシングジムに常備、っと。(おいおい)
皆さんももし古本屋でみかけたら読んでみてくださいね。後の巻に行くほど面白くなります。
ではまた
皆さん、クリックお願いね♪↓
下のスポンサーサイトもクリッククリック♪♪
その漫画とは
『二匹のブル』(原作:瀬叩龍、作画:岩重孝)
ご存知の方はいらっしゃるかどうか?なにせ古い漫画であり(連載は1986年から1988年)掲載されたのもビッグコミックだし、文庫本も出ていないから若い方にはそれこそブックオフあたりでたまたまボクシング漫画を見つけて読んだら面白かった、という機会でもなかったら見る機会ないだろうしねえ…
ざっとまず概要を説明しときましょう。主役は写真の二人。右側がボクサーの太刀川瞭、左側が若きヤクザにして追ってジム会長兼プロモーターとなる玄海源である。この二人と二人をとりまく中で本稿に関係してくる主だった人たちについて書くと、
太刀川瞭:聖ヨハネ学園の学生時代にボクサーを志し、トレーナーのビルや本牧拳闘倶楽部の会長の下トレーニングをする。高校のボクシング大会で勝ちあがって神奈川県大会決勝で氷川銀二と激闘し、その後プロ入り。プロ初戦で世界ヘビー級タイトルマッチの前座で氷川と再戦。かろうじて勝利を得るも氷川はその時の傷で死亡。一度はボクシングを止める事も考えたが色々あって結局玄海らと共にアメリカに渡ってボクシングの修行を続ける。
玄海源:本牧拳闘倶楽部会長の息子で、「とてつもない器」の男。高校生にして不良の子分と玄海社という組織を作ってヤクザと対立。その結果関東成見連合総長波川老から横浜のシマを任せられる。その後、ボクシングのプロモーターで武器密売組織の手先ドン・ル・ロワ、フィクサー大利根(後に太刀川の父親と判明)とやりあいながら父の亡き後本牧拳闘倶楽部のオーナーに就任。太刀川をプロモートするべく共にアメリカに渡り、マフィアやUBC(アメリカのボクシング協会)を脅し従えていく。(汗)
氷川銀二:高校生ボクシング界で75戦75勝75KOの記録をもつが、「目標はあくまで世界チャンピオン。アマの成績なんて関係ない」とうそぶく男。ひょんなところから太刀川と知り合い、神奈川県高校生ボクシング大会フェザー級決勝で大激戦を演じて両者RSCで引き分けとなる。その後すぐプロ入りし、プロ第2戦で太刀川と再戦。当初は圧倒的に氷川が有利だったが、太刀川のカウンターで肋骨を故障、その後無理を押して戦い続けたために折れた肋骨が内臓を傷つけ、最中に倒れた後病院に運ばれるもそこで死亡した。
ビル:酔いどれ神父だったが太刀川のボクシングの才能にほれてトレーナーとなる。酔いどれとなりボクシングから離れていた理由はアマチュア時代にジムの同僚で親友だった男をリング上で事故とはいえ殺してしまったため。(ダウン時のロープによる頚椎骨折)
と、見ればわかるようにここには「ボクシング禍」で死んだ選手2人の話が出てくるんです。特に氷川は主人公太刀川のライバルでもあり、物語のハイライトで壮絶な倒れ方(リング上で仁王立ちして大声で笑った後昏倒)をします。その後、太刀川は思い悩んでボクシングを止めようと考え、また親友をリング上でなくしたビルは実際にボクシングから長い期間離れてしまいます。この2件のリング禍は脳の損傷とはことなりますが、ボクシングに潜む危険性をはっきり語っています。
その他にも、ジムの会長や医師の言葉などはしばしで大切なことが語られています。
(単行本4巻)両者RSCになった太刀川、氷川が運び込まれてきた病院の医者の言葉。
「アマチュアボクシングの場合、グラブが大きくて重いから一見パンチ力を殺して安全の用に思えるが、それはとんでもない間違いなんだぞ。」
「いくらグラブを大きくしても、パンチ全体の持つエネルギーは変わらない。その変わらないエネルギーはズシリと体の内部に加えられる…」
「ちょうど、トウフの入った弁当箱をゆるすと弁当箱は壊れないが、中のトウフはつぶれてしまうのと同じ原理だ。」
「つまり… 弁当箱はきみ達の頭蓋骨で、トウフが脳みそだ!」
(単行本6巻)本牧拳闘倶楽部で練習する太刀川への玄海会長(父)のアドバイス
「太刀川よ。攻撃も大事だが、ガードの練習もみっちりやれよ。」
「日本のボクサーの最大の欠点は、ガードが下手なことだ。ガードがまともにできない奴は、リングに立つ資格はない。」
「日本のボクシングジム関係者は、どうも勘違いしている連中がおおくてな…」
「がむしゃらに攻撃をしかけるのをよしとして、ろくにガードを教えない…」
「ボクシングの要点は、相手に打たさず自分が打つことなんだ。相手のパンチを平気でもらうなんてプロじゃないよ」
(続けてビルの発言)「『肉を切らせて骨を断つ』なんて特攻精神だけじゃ、世界に通用しないからね。」
これらの言葉でも今でも至言だと思います。
実際のストーリーはボクシング6分のヤクザやマフィアとの抗争(汗)4分といった感じで、面白おかしく語られている部分も多いです。特に玄海源と横浜の暴力団との体を張った抗争や、源がアメリカの大物プロモーター、ドン・ル・ロワ(誰がモデルだかすぐわかりますよね?ルックスもあの通りです)を脅し、マフィアのドンの一人ジョルダーノを屈服させ、UBCのライレイ会長を叩きのめすところなんかは痛快です。
さらにいっちゃうと、(ボクシング禍からは離れますが)「世界チャンピオンの座」を取ることの大変さ、それについて必要なものについてもこの漫画は語っていて、世界で日本人が伍してやっていこうと思ったらこの玄海源くらいの行動力が必要な点について、太刀川の継父となった元警察官久坂がこう語っています。(単行本8巻)
「本来ならあの男が(ジムの)オーナーライセンスを取るなんて絶対に不可能なことなんだ。その不可能を可能にする意思と行動力、そして運気の強さ、これは大事だ。」
「いいかい… リョオ君がこれから「世界」を目指すとすれば、その挑戦権争い、開催地、ファイト・マネー等いろいろ厄介な問題が起こるに決まってる。また、そういう障害をはねのけなければ、リョオ君にどんなに実力があっても王座にはつけない。」
「奴は今度のことで(自分はそれを出来る運と実力があるということを)それを証明したんだ。」
う~~ん、確かにねえぇ~~(納得)
この作品の原作者「瀬叩 龍」って他で聞いたことがないんで調べたら、なんと大ヒット漫画「美味しんぼ」の原作者の雁屋哲氏なんですね。最近は「美味しんぼ」がメジャーになりすぎちゃったけど、この人は昔は池上遼一と組んで格闘漫画も多くやってましたし(『男組』は大好きです。『男大空』は途中から池上先生の画風が好きじゃなくなってしまった…あと、『風の戦士ダン』ね。島本先生最高♪)ボクシングについても随分勉強して書いたんじゃないでしょうか。『二匹のブル』には太刀川と氷川の実力を測る役目でモハメド・アリも登場しますからね。そこで、氷川をフォアマンに、太刀川をフレイジャーに比して双方の性質を語っています。
こんないい作品(娯楽性、実用性両方高い)が埋もれてしまうのはもったいないなあ…誰か文庫化しないんですかねえ… んで各ボクシングジムに常備、っと。(おいおい)
皆さんももし古本屋でみかけたら読んでみてくださいね。後の巻に行くほど面白くなります。
ではまた
皆さん、クリックお願いね♪↓
下のスポンサーサイトもクリッククリック♪♪
雁屋哲はもともとボクシング好きでしょ
浜田剛史が世界タイトル取る前から2人でTVや雑誌にでてたから
雁屋さんってそうだったんですか~~
不肖にして知りませんでした。情報有難うございます。
まああれだけ格闘モノ書いてましたからねえ