奇想庵@goo

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アニメ感想:イタズラなKiss

2008年10月03日 22時21分58秒 | 2008春アニメ
全25話だが、実は真ん中がすっぽり抜け落ちている。5話くらいまで見た後、見なくなり、23話から再び見始めた。

以前にも書いたが、原作は連載中に単行本で読んでいた。それだけに作者急逝の報を聞いて驚いた。今回のアニメ化の目玉は、未完となったこの作品の続きを作者の残した構想を元に描いて完結させることだった。そして、23話・24話がそれにあたるものだった。

今度こそ本当に妊娠したのでは、というシーンで終わった原作。当然琴子の出産が山場となる。そこに周囲のキャラクターたちも絡んで、ちゃんと終わらせたというのがアニメを見た印象だ。キャラクター主導の作品なので、続きが読みたいという強い思いが残るものではない。だから、それぞれのキャラクターが落としどころにきちんと落ち着いて終わらせるというのが大切だった。作品やキャラクターのイメージを壊さずそれを上手く描いたと思う。また、琴子と直樹の関係も見事に描き切ったと言えるだろう。
序盤の頃のストーリーを追っているという印象の強かったアニメが、最後はしっかりとアニメとして描けていると感じた。

最終話は原作にあったエピソード、琴子が直樹の母の実家へ行くという話を親子三人で再び訪れる中で振り返るという構成。原作を知っていても楽しく見ていられた。

いまこの作品をアニメ化した意義は今でもそう感じない。ラブコメのスタイルにも流行があり、当時でさえ古いタイプの作品だっただけに、単にアニメ化するだけでは当時の読者以外には受け入れられにくいものとなるだろうと思った。結果的にその心配は当たってしまったかなとも思う。新規の視聴者を引き込むだけの力が序盤の頃にあったようには思えない。
それでも私が見たラスト3話は当時原作を楽しみにしていた人にとっては素晴らしいものだったと思う。特別凄いというものではないが、ちゃんとした終わりを提示したことに意味があった。

原作はラブコメ史を語る上で貴重な作品だと思う。「イタキス」に初めて触れる場合はやはりアニメよりもコミックから入ることをお勧めする。アニメは原作を読んだ上でのおまけのようなもの。でも、上等の部類のおまけなので、ラスト3話は見る価値があると太鼓判を押そう。


アニメ感想:純情ロマンチカ

2008年07月05日 11時05分40秒 | 2008春アニメ
「お風呂にする? ご飯にする? それとも、オレ?」

とウサギさんに言う妄想をしてしまい悶絶する美咲萌え(爆)。

それはさておき、下手したら2008年最も面白いアニメと呼ぶかもしれない作品。バリバリのBLジャンルだし、キャラクターもそうオリジナリティがあるわけでもない。シナリオが絶品と言っていいだろう。演出も悪くない。

金持ちの御曹司で売れっ子作家の宇佐見(ウサギさん)とその親友の弟美咲との関係を描く「純情ロマンチカ」。宇佐見に想いを寄せつつその想いが届かないことも理解する上條弘樹と、突然彼の前に現れ猛烈にアタックする野分との関係を描く「純情エゴイスト」。そして、宮城庸と元妻の弟高槻忍との関係を描く「純情テロリスト」。この3つの物語がかなり独立した形で描かれている(各話ごとに主人公が異なる形)。始めはそうした描き方に違和感も覚えたがすぐに引き込まれた。

この純ロマでは、Hシーンの過激さもポイントだろう。映像的には濃厚なキスシーンなどはあったが、過激さをもたらしたのはセリフによるもの。その点では絵でいやらしさを追求した『かのこん』とは方向性が異なる。

この作品を見るたびに思うのは、「恋愛」を描くにはBLじゃないとダメなのかということ。
宇佐見と美咲は、美咲視点で美咲が女役。宮城と忍は宮城視点で忍が女役。上條と野分は上條視点だが、どちらが女役かとは断言しにくい(やや上條が女役)。男同士を描いてはいるが、普通に男女に置き換えてみることもできる。
BLだから面白いという部分もたくさんあるので、この作品を否定するつもりはないが、どうしても男女でこのレベルの恋愛を描く作品がつくれないのかという思いを抱いてしまう。

ラブコメやハーレム系作品は再生産されるうちにどんどん薄っぺらくなってきたように思う。始めはそこに意味があったのにやがてそういうお約束となってしまう。お決まりな展開、ありがちな悲劇、受けを狙うだけの演出。そんなものばかりが積み重なってできた世界に見るものはない。
しかし、お決まりな展開、ありがちな悲劇、受けを狙うだけの演出があちこちにあっても純ロマは面白いと感じてしまう。キャラクターの心情をシナリオを通してきちんと描いているが故に、楽しめるのだ。

アニメは他のメディアと比べても規制が多いのは事実だ。だが、恋愛を軸にした作品だっていくらでも作れるはずだ。需要があるかどうかは分からないが。


補足:18禁PCゲームなどの原作で恋愛アニメは存在する。その手の作品はあまり見ていない。ただ、昔「願望充足小説」と呼ばれるものがあったが、恋愛ではなく「願望充足」アニメに感じてしまう。偏見かもしれないけれども。


アニメ感想:あまつき

2008年07月03日 11時24分04秒 | 2008春アニメ
今春スタートしたアニメの中では、『陰の王』と共に単純な勧善懲悪ではないユニークな作品となっている。人と妖怪という相容れない存在の対立の構図と、しかしその中で互いに共存する道を見つけようという想い。だが、それがようやく形になり始めたところで番組が終了した。
現在も原作は連載中の作品だし、1クールでこの物語にケリをつけるというのも無理な話だろう。ただここまで投げ出したような終わり方よりは、もう少し最終話的な構成にした方が良かったとは思うが。

女性キャラクターは少ないが、キャラクターは全体に多彩な印象を受けた。ようやくこれから話が動き出しそうというところでの終了なので、ストーリーについては評価できない。演出的には見せ方があまり上手くなかったのは確か。演出にもっと緩急があれば、より魅力的な作品になっていたかもしれない。
続編が作られれば楽しみではあるが、なかなか落としどころの難しい物語だけに期待半分不安半分だったりもする。


アニメ感想:仮面のメイドガイ

2008年06月30日 03時30分16秒 | 2008春アニメ
今年上半期ナンバーワンのバカアニメ。

メイドガイ・コガラシ始めキャラクターの個性は凄まじい。それがストーリーに十分生かせているとは言い切れないが、それでもそのインパクトは絶大だ。
メイドブームの中、傍若無人、空前絶後のキャラクターであるコガラシの存在感は圧倒的。彼の存在だけでいくらでも話が作れそうなほど。シナリオの切れは乏しいが、スピーディな展開で速度感を生み出している。

各話終了時にカウントダウンが流れるが、まだまだ期間をたくさん残しての番組終了となった。最終話で最大の敵の登場という展開も2期以降の存在を予感させる。
遺産相続を巡るメインストーリーよりも、日常を優先して描いた点は成功していると言えるだろう。『かのこん』でもそうだが、1クール全12話という中であれもこれもと欲張るより、キャラクターを生き生きと描くことを最優先にした判断は正しかった。

バカアニメらしく(?)、オープニング、エンディングも秀逸だ。特にエンディングはその映像と共に名曲と呼べるものだった。この作品の持つインパクトやメイドガイ・コガラシの禍々しさを端的に表現した素晴らしいものだ。


アニメ感想:かのこん

2008年06月29日 23時29分13秒 | 2008春アニメ
「ラノベ史上最強の寸止め作品」というキャッチフレーズがあるそうだが、アニメはよくある寸止め的な表現ではなく、ある意味突き抜けた感じでなかなか興味深かった。

ストーリーは典型的なハーレム系ラブコメ。積極的なちずるや望に主人公で奥手の耕太が振り回されるという内容。妖怪であるちずるや望にまつわるエピソードがストーリーを進めていくことになるが、むしろ日常描写を重視してそうしたエピソードは軽視されているように見えた。美乃里の存在などアニメだけだと何の意味があるのか全然分からない。
ストーリー的な進展よりも日常優先の描き方は、しかしこの作品には合っていたように思う。非日常的エピソードよりも日常描写に冴えを見せた。ちずるがパンツを穿くシーンなどささいな所をきちんと描いていて面白かった。

この作品を語る上で外せないのが「エロ」である。
この作品はGyaOを始めBIGLOBEストリームや@nifty動画、バンダイチャンネルで無料配信されていたが、7話以降有料配信のみとなった()。AT-XでもR-15指定されており、そうした措置自体は批判することではない。
最近のラブコメの中では飛び抜けてエロいのは事実だろう。Wikiでも原作を「ジュブナイルポルノ的要素の強い」と評している。
ポルノの基準がSEXをするかしないかなら非ポルノだろうが、当然それは基準と呼べないものだ。アニメの『かのこん』は必要以上に性的表現が多いという意味では十分にポルノである。R-15の指定自体は妥当に感じる。地上波での放送がないという前提で作られたのかもしれないが、逆に地上波でこれを流せないとしたらそれもまた大きな問題に感じる。

少年誌系のラブコメではSEXを始め過激な性描写はほとんどタブーとなっている。一見当然にも思えるが、性表現だけを取り上げ、その背後にある、女性や性の描き方などへの視点がお座なりになっているようにも感じてしまう。
一方、少女誌系ではかなりSEXなどが当たり前に描かれるようになってきており、その一部が過激になりすぎたりもしている。ただ今のリアルを描こうとすれば、性描写なども避けては通れないというのが妥当なところではないか。
恐らく『純情ロマンチカ』でも再び触れると思うが、ラブコメから一歩足を踏み入れて恋愛をテーマに描こうとすれば、SEXは避けて通れない。元祖ラブコメとされる『翔んだカップル』や王道ラブコメ『イタズラなKiss』ではSEXもきちんと扱っている。軽いタッチのものならばなくても気にならないが、恋愛要素が強くなればなるほど歪みを感じてしまう。その歪みを明示した作品が『School Days』だった。

最後に軽い話題。『かのこん』と『仮面のメイドガイ』、『一騎当千Great Guardians』は2008年を代表する「乳」アニメだが、巨乳だけでなく貧乳も魅力的な点でこの作品がベストだろう(ぉぃ。


アニメ感想:紅

2008年06月25日 21時03分58秒 | 2008春アニメ
原作のラノベは未読なので、アニメ全12話を通しての感想を。

この作品を語る上でまず挙げられるのは音だろう。オープニングやエンディング曲、作中の効果音、そして声優の声。
オープニングは今期のアニメではベストと呼べるものだった。音楽もだが、それに合わせたポップな映像は、たいてい早送りで流してしまうアニメが多い中数少ない毎回見ようと思うオープニングとなっていた。エンディングも悪くなかったが、こちらには『仮面のメイドガイ』に秀逸なものがあるので次点だろう。
作中はそうしたポップさとは逆に、リアルを追求していた。キャラクターデザインや背景なども含め、それは徹底されていた。公式日記によると、プレスコ(声を録ってから絵を作る)によって作られていたそうで、作り手のこだわりが感じられる。
他のアニメとはまるで違う作りゆえに、導入部はなかなかとっつきにくいものだった。世界観が分かりにくく、セリフも聞き取りにくい。特に主人公の立ち位置が摑みにくい。しかし、この世界に浸るうちに他のアニメにはない魅力を醸し出してくる。キャラクターは厚みを増し、何気ない日常の一コマ一コマに思いを寄せることができるようになる。全12話という短い中でここまでのものを描いた点は高く評価したい。

これだけの力の入った演出は、非常にありえない世界を描くためにどうしても必要だったとも言える。他のアニメのように初めから絵空事として視聴者に委ねるのではなく、地に足を付けたリアルさを視聴者に感じさせることで「痛み」や「思い」を切実に伝えたかったからだ。
最終話まで見てそれが成功を収めたと手放しで評価することは残念ながらできない。
8話あたりまでは、真九郎と紫の日常の積み重ねが丁寧に描かれた。9話で紫の秘密が明かされ、彼女は九鳳院に連れ戻される。紫の喪失を描いた10話を経て、九鳳院との戦いが11、12話で描かれた。
8話までは素晴らしい。しかし、そこまで積み上げても九鳳院の非リアリティは覆せなかった印象だ。物語としては、幸福な状況から一転して絶望の状態に陥れ、そこから逆転してカタルシスを得る構図となっている。その安直な構図がこれまでのリアルな表現とマッチしない気がした。

原作は未読だが、もっと格闘・バトル色が強いのかと思う。アニメではそれは中心に位置していない。それが中心に位置していないのに、どうしてもそれが中心となってしまったのが終盤の展開だった。作り手もそのズレに気づいているがゆえに、最後は紫に語らせることで中心を変えようとした。だが、いかに賢いといえども7歳の子供に語らせるには難しすぎるように感じた。
安直な構図を用意した以上、それを突き進み安易なカタルシスを見る者に与えてしまってもよかったようにも思う。ここまで築き上げた紫というキャラクターが素晴らしかっただけに、それに頼りすぎてかえって違和感を抱くようになってしまったこの結末がよかったのかどうか判断に迷う。格闘・バトルを出さずに九鳳院との戦いを描き切れればまた別のエンディングもあっただろうが。
9話以降の展開は決してベストではない。だが、ベターなものを模索した後は窺える。「傑作」と呼べる作品では決してないが、「見る価値のある」作品だとは言っていいだろう。今のアニメ界でこれだけのアプローチをした努力には心から敬意を表したい。


追記:
9話を見て、「やってしまった」感を持った。これは昨年の『がくえんゆーとぴあ まなびストレート!』で感じたものと同じ。こちらは原作付きなので仕方ないかとも思ったが。丁寧に丁寧に積み上げていっても、安易な展開に流れてしまえばそれまで積み上げたものは価値を失ってしまう。私としてはたとえ破綻しても最後まで作り手のあがく姿を見たかったが、現実的にはそれは無理なのだろう。実際、昨年一年を通して最後まであがき続けて描き切ったのものは『電脳コイル』のみだった。

さきほど『精霊の守り人』へのコメントに返信を書いて、『紅』との共通性にいろいろ感じるところがあった。子供を守るボディーガードが主役という構図は同じ。その子供が世間のことを知らないのも同様だ。作り手の熱意もともに強く感じる。
作品としての差を感じるのは、バルサと真九郎の描き方の違いだろう。この二人を並べることに躊躇うほどに技術的にも精神的にも二人には大きな差があるが、その差ゆえにバルサの心が見る者に届かなかったという面がある。バルサの心を見る者と共有できなかった点で『精霊の守り人』への評価が厳しくなってしまうのかもしれない。


アニメ感想:ドルアーガの塔~the Aegis of URUK~

2008年06月25日 18時37分17秒 | 2008春アニメ
第1話のインパクトから先は、フツー過ぎて特にこれといった評価もなく展開していった。最終話ようやく話も盛り上がり、Bパートに入ってようやく邪神ドルアーガとのリベンジ、そしてエンディングかと思ったら、思わぬ展開で物語は終焉せずに終わり、2009年第2期に引き継がれることが。

中身はスカスカだったけど、最初と最後だけ良くて記憶に残る作品となった。表1話はいわゆる夢落ちだが、これくらいやらないと「つかみ」としてのインパクトに欠けていただろう。RPG風の王道冒険ファンタジーなだけに、ネームバリューだけで目を惹くことは難しい。始めは「何これ?」と思ったがあまりのバカバカしさがその後も見続けようと思う要因となった。

中身の評価は王道だけに目新しさはほとんど感じなかったが、それでも元がMMORPGということで、複数のパーティの存在を前提に描かれている点はよかったと思う。まあオフラインRPGでもそうした視点は珍しくはないけれども。
ダンジョンの苛酷さの描写や、数多くのキャラクターの描写には物足りなさが強く残った。幾人かのキャラクターはよかったんだけね。全12話という短い枠の中では十分に描写できないのは仕方ないかもしれない。ライトな要素が多かったせいもあるし。好みの部分ではあるが、シリアスとギャグの切り替えなどはもっと落差が欲しかった。

戦闘描写自体はまずまずだったが、独創性は感じなかった。それでも主人公ジルが盾役として振舞う姿はなかなかのもの。
で、ここからは『ドルアーガの塔』とは全然関係ない話。
やっぱり敵の攻撃を受け止める盾は格好良く映る。それなのに、ああそれなのに。FFXIじゃ避ける盾が基本になってしまった。ナイトよりも忍者や赤魔道士が盾っていう世界。ナイトが盾でもサポ忍者で避けてるし。もう今更それをどうこうすることはできないかもしれないが、やっぱりこういう映像を見ると避ける盾って異常だと思う。
MMORPGの『ドルアーガの塔 The Recovery of BABYLIM』についてはシステム等全然知らないけれど、アニメと連動した企画というのはなかなかユニークに思う。アニメのようにプレイできなければ逆に不満が高まるかもしれないが。
ただ魔道士好きとしては、魔道士が圧倒的な力を持ったMMORPGとかならやってみたいけど……って感じ。FFXIにせよ他のMMORPGにせよ物理アタッカー優遇感が強いしね。


イタズラなKiss

2008年05月26日 03時05分37秒 | 2008春アニメ
多田かおるの『イタズラなKiss』は、連載中にコミックスで読んでいた。それだけに作者急逝の報を聞いたときは愕然とした。それが1999年のこと。
その後、コミックス全巻を読み返したこともあったが、ここ数年、いや、7、8年くらいは読むことはなかったと思う。

アニメ化は意外だったが、アニメを見て改めてコミックスを読みたくなった。そして、読んでみて自分の記憶の不確かさを実感することとなった。
『イタズラなKiss』はヒロイン琴子のパワフルさが強い印象に残っていた。いつしか、最強のヒロインによる少女漫画らしいラブコメディというイメージが築き上がっていた。だが、読み直してそのイメージが虚像だと気付いた。

琴子は確かにパワフルではある。しかし、思い描いていた、どんな困難にも負けないくじけないヒロイン像ではなかった。落ち込んだりめげたりすることも少なくない。少女漫画のラブコメの典型的ヒロインと言ってもいいくらいだ。ただ、強烈なトラブルメーカーであることが他と区別される彼女の特徴だろう。
どう間違って思い込んでいたか簡潔に述べると、「成長」するヒロインと思っていたが、実際は「成長」しないヒロインだったと言えるだろう。これは決して非難ではない。むしろ「成長」させないまま描く強さが感じられた。安直にヒロインを成長させてしまうのではなく、トラブルメーカーで失敗を繰り返しながらも、それでも最後は立ち上がる力強さが琴子の魅力となっている。
改めて知った彼女のトラブルメーカー振りに唖然としながらも、それでも彼女に惹かれるのは一途さがあるからだろう。「成長」して得た強さではなく、「成長」しなくてもへこたれない強さ。最近では目にしないタイプのキャラクターと言えるだろう。

もう一つ、この作品を読み返して驚いたことがある。コミックス23巻にて絶筆となったが、琴子が入江直樹と結婚したのは10巻でだった。つまり、23巻中半分以上が結婚後の出来事である。
『イタズラなKiss』は正統派のラブコメディであり、ラブコメディは主人公たちがくっつくかどうかのやり取りが話の展開の軸となる。結婚はそう考えればゴールのはずだ。けれども、結婚後もラブコメであり続けた。端から見てつりあわないカップルだからという面もあるし、お互いの目標のために離れて暮らすといったこともある。周囲が二人を振り回したり、琴子が周囲を振り回したりしながら、その後もますます興味深い展開が続いていた。
今も数多くのラブコメが描かれているが、ワンパターンにしか見えないことも多い。確かに、新しい読者に向けたラブコメはそれでもいいのだろう。でも、こうした傑作と比べると、作り手の怠慢が透けてしまうこともある。

アニメ『イタズラなKiss』は作者急逝によって失われたその後まで見据えているという。楽しみでもあり、不安でもあるけれど、まずはそこまでをいかに描き切れるかが大切だ。原作同様に安直なラブコメの枠を乗り越えて欲しい。


アニメ感想:『隠の王』と『×××HOLiC◆継』、ほか

2008年05月08日 22時10分51秒 | 2008春アニメ
森羅万象という絶対的な力を巡り、主人公たちと敵である灰狼衆の熱血バトル、ではなく、そうした善対悪の構図に落とし込まない努力が見て取れる作品が『隠の王』だ。
主人公・六条壬晴や風魔小太郎といったクセのあるキャラクターがいい味付けになっている。第5話では、雲平先生の語る「キレイ事」を小太郎がバッサリと切るあたりが非常に良かった。
壬晴も「命がけで守られる」ことに覚めている点が特徴的だ。人々の思い・思惑の中で、それぞれの信じる・求めるもののために戦うという構図をどこまで描き切れるのか。

その先を描いたのが『×××HOLiC◆継』。
四月一日(わたぬき)が蜘蛛の巣に絡まれ、それを百目鬼が壊した。それにより百目鬼は恨まれ、右目が見えなくなる。百目鬼を救うために四月一日は侑子さんに願い、自らの右目を差し出す。
一方的な献身が与える周囲への影響。百目鬼にとっては感謝して済む話ではない。四月一日の右目を取り返すために、蔵を調べて祖父の残した文献を漁りなんとかその方法にたどり着いたかに見えたが、「本の虫」によってその情報は失われてしまう。
四月一日の右目を女郎蜘蛛が持っていると知った座敷童子はそれを返してもらおうと赴くが囚われ、その邪気により命の危険にさらされる。カラス天狗たちは彼女を救うために侑子さんに秘宝を差し出す。四月一日は座敷童子を救い出すも、その右目は完全に失われてしまう。
友のための献身というある種美談めいた行動が広げた波紋。四月一日が「わかっていない事」を思慮を欠いた行為と糾弾できるのか。『隠の王』でも守られる側の視点から、命を賭ける事への指弾がなされた。『×××HOLiC◆継』では更に進んで、人の行為の因果まで描かれる。
すっきり楽しむものもエンタテイメントならば、こうしたドロドロと重く圧し掛かるものもエンタテイメントだ。この「×××HOLiC」はCLAMP・大川七瀬の特徴が強く出ているように感じる。人の想いが様々に絡み合う世界。人はそのしがらみから自由ではいられないし、またその全てを把握することもできない。それでもなお、それを知っていてもなお、人は自らの想いを抱いて行動する。それがCLAMPらしさであり、人々を惹きつける魅力である。

さすがに時間的な問題から、『ソウルイーター』、『ToLOVEる』、『クリスタル・ブレイズ』、『我が家のお稲荷さま。』をカット。
『二十面相の娘』は2話以降少し面白くなってきた。『ヴァンパイア騎士』はもう少し様子見。『かのこん』と『絶対可憐チルドレン』も当落線上だけど……。


2008春テレビアニメ 新番組インプレッション

2008年04月30日 23時55分00秒 | 2008春アニメ
1月の新番組はかなりさぼってしまい、最後まで見たのは、『ARIA The ORIGINATION』『【俗・】さよなら絶望先生』『みなみけ ~おかわり~』『のらみみ』の4作品のみ。『狼と香辛料』『シゴフミ』『君が主で執事が俺で』『PERSONA -trinity soul-』『GUNSLINGER GIRL -IL TEATRINO-』は録画しているものの、見る機会がない状況。他の作品も1~数話見て、見るのを止めたとはいえ、感想など完璧にサポってしまった。

それを反省して、春の新番組ではなんとか感想なども書きつつと思ったが、やはり時間が取れない。それでも1月の時よりはアニメ自体は見ることができているので、大雑把に感想を綴っておきたい。

■図書館戦争

関西地区では放映は2話までで、見たのは1話のみ。しかし、さすがに素晴らしい出来だった。原作は以前から読んでみたかったのだが、ハードカバーのためなかなか機会がなかった。フジテレビのノイタミナ枠、制作がProduction I.G。予算的にも非常にしっかりしている印象を受けた。リアルなキャラデザにも好感が持てる。全12話予定らしいが、密度的にもドキドキワクワクさせてくれそうな雰囲気が漂っている。

■仮面のメイドガイ

関西地区では放映は4話までだが、見たのは3話まで。裏番組との兼ね合いで今後はAT-X版で視聴予定。インパクトの強さでは今季ナンバーワンといっていいだろう。ヒロインにやや不満は感じるが、それでも文句なしに笑える作品だ。もっとパロディ色が強いのかと思っていたが、意外と薄い感じだ。それが独特の世界観を印象付けて悪くない。

■狂乱家族日記

AT-Xでは先行特番もあり、本編は現在2話まで視聴している。メイドガイが今季最強の男だとすれば、本作ヒロインの凶華は今季最強の女だ。まあどちらも、最強というよりも最凶が相応しいかもしれないが。シュールな世界観と、テンポの激しい演出はよく作り込まれている。でも、もっと押しが強い方が好みだ。今後どこまで凶華が暴走できるかに注目している。

■×××HOLiC◆継

第2期。放映は2話までだが、見たのはまだ1話のみ。前期は各話完結の物語が多かったが、今季は1話から続く展開となっている。ゲストキャラもなく、四月一日と百目鬼のやりとりに侑子さんが絡むといった流れ。1期を見ていないと話についていけそうにないが、それでいいのだろう。スタッフは1期と同じなので、安心して見ていられる。

■マクロスFrontier

マクロスらしさと今時のアニメらしさがうまく融合している感じだ。描き方も繊細で丁寧、演出は非常に巧み。昔からのシリーズのファンも、初めての視聴者にも受け入れられそうな上手さがあちらこちらで見てとれる。この先の展開が気になる一番の作品と言えるかもしれない。4話まで視聴。

■純情ロマンチカ

3話まで見た。いわゆるホモアニメで、Hシーンあり。しかし、面白い。1、2話は普通に物語が展開した。3話は主人公も変わってそれより過去の話となった。男同士だからかえって、ストレートに恋愛を描けている。逆にこれを男女にしたら、今のアニメでは描けないかもしれないと思った。『かのこん』や『ToLOVEる』などエロいアニメは数々あれど、H込みの恋愛を正面から描くわけではない。18禁PCゲーム原作のものならそれを描けそうだが、その手の作品は地に足が着いていない印象を受けるものが多い。結局こういう方法でしか描けないものがあるということを、痛切に感じる作品だ。

■あまつき

4話まで視聴。タイムスリップ妖怪ものではあるが、ストレートに作者の思いが伝わってくる作品だ。思い入れが先走りすぎて、演出面では物足りなさも残るが、それでも見かけだけの凡百の駄作より惹きつけられるものはある。ただし、アニメ作品として最後まで描き切れるかどうかは未知数という印象だ。

■紅

会話の演出が、アニメ的ではなくドキュメンタリーに近いものとなっている。会話が聞き取りにくい反面、強いリアリティを生んでいる。キャラデザなどを含め、そうしたリアリティへのこだわりは随所に感じられる。原作を知らない人間にとっては、不親切で分かりにくさが目立つ作りだ。細部に拘らずに話の流れに身を任せていると、徐々にこの世界に溶け込んでいくような印象を受けたが、最初のハードルは高かった。4話まで見て、ようやく馴染んできた。

■隠の王

放映4話のうち2話まで見た。主人公が少し個性的で、その点のみで見られるといった印象の作品。忍者もので、演出面でもありきたり感は拭えない。物語に何か引き込まれるような要素が出てくればいいのだけれど。

■イタズラなKiss

2話まで見たが、ここまでは原作を丁寧に描いている印象。2話で携帯電話が出てきたあたりはちょっと驚いたが。未だに強い想いを残す原作ファンとしては、今後どう描いていくのかじっくり見ていくほかはない。未完で終わった作品をいかに終わらせるのか。ファンの納得するものにして欲しいものだ。

■ドルアーガの塔~the Aegis of URUK~

4話まで。1話(表1話)の出来は秀逸だったが、2話以降はRPG的お約束の世界観が描かれている。ちょっとどうかなと思うようなところも多々見えるようになってきているので心配だが、まあお気楽に見るにはいいアニメでもある。

■アリソンとリリア

放映4話だが3話まで視聴した。悪くはないが、特別良くもない。面白くなりそうなのに今ひとつ乗り切れないのには、演出の拙さが原因となっている。物語を進ませるためだけの演出ではなく、ひとつひとつ積み上げるものが必要なのにそれが感じられない。簡単に言えば、主人公たちに協力してくれる人たちは何をもってそうするのかが伝わってこない。安直な言葉だけでそれを描こうとしても伝わらない。想いを積み上げる前に話が進んでしまっている。

■BLASSREITER

4話まで視聴。面白い作品だし、演出も悪くない。戦闘シーンはさすがという出来だ。ただ全体的に「遠いお話」になってしまっている。海外が舞台なのは構わないが、共感できる対象がない。最初にその対象だったレーサーはわずか2話で退場してしまった。視聴者が誰の視点から物語を追っていいのか戸惑っているのが現状だ。折角質の高いアニメなのだから、もう少し整理して欲しかった。

■かのこん

4話中3話まで見た。とりあえずエロさは抜群。それ以上の何かは今のところ感じられないと言ってもいいだろう。

■ソウルイーター

4話中3話まで。1話は悪くなかった。ヒロインの声を除けば。しかし、2話3話とダダ滑り状態。3組の武器職人を1話ずつ描いたわけだが、それなりにクールだった最初の組に対し、残り2組はガキ丸出し。一気に見る気が消失する思いだ。デザインなどが悪くないだけにもったいない思いが強いが、切るのも時間の問題となりそうだ。ヒロインの声もどうにかして欲しい。

■ToLOVEる

2話中1話のみ。まあエロいラブコメ、それ以上でも以下でもなそさうな感じだけれど。

■クリスタル・ブレイズ

クールな探偵ものじゃダメなのかね。助手のマナミの存在が非常にうざい。頭が悪く、独りよがりで、実力も無いくせに自分勝手に行動するキャラは大嫌い。物語を進めるために作られたキャラだけれど、世界観をぶち壊している印象を受ける。そんなキャラを使わずともスマートに物語を進める方法なんていくらでもあるだろうに。

■絶対可憐チルドレン

かなり微妙。4話まで見はしたが、止めるかどうか瀬戸際の状況だ。まあ『ハヤテのごとく!』も最初の評価は低く、それでも結局最後まで見続けたので、絶チルもまだ分からないが。ただストレートにつまらないのが辛いところ。

■ヴァンパイア騎士

3話まで視聴。ラブコメのようでシリアス。ラブコメのようでホラー。なんともつかみ所のない作品だ。3話のホラーっぽさはなかなか良かった。物語も急展開を迎え、もう少し先を見てみたいところだ。

■二十面相の娘

2話中1話のみなので、まだ評価は定まっていないとも言えるが、1話を見た限りではあまり期待できそうになかった。今後どういう方向に進むのかによって違ってくるかもしれないが。

■我が家のお稲荷さま。

ボケ役二人も必要か?というのはさておき、なんとも中途半端な作品。4話中3話まで見ている。「萌え」もいまいち、「燃え」もいまいち。戦闘に必然性を感じないし、戦闘シーンもつまらない。名の通った妖怪という割に強いのか弱いのかよく分からない感じだし。かといって、戦闘以外の部分が面白いかというとそれほどでもない。

□S・Aスペシャル・エー

2話まで見たが断念。白泉社系では、『ヴァンパイア騎士』『桜蘭高校ホスト部』など、学園ものにゴージャスな部分を加えるものが多い(白泉社系以外では『花より男子』『しゅごキャラ!』などにも見られるが)。しかし、それをしたからって面白くなるかどうかはまた別の話。それがよく分かる作品だ。こんな作品をアニメ化するならもっと他に……とまで思ってしまうが、非現実的な設定をどう活かしたいのかが全く見えてこないだけに評価しようがない作品となってしまっている。

□モノクローム・ファクター

1話のみ。見栄えはいいが中身は空っぽといった印象だ。テーマ性やオリジナリティは皆無で、ただかっこいい男の子が活躍する。まあそれはそれでいいのだろう。

□ゴルゴ13

1話のみ。『ゴルゴ13』は『ゴルゴ13』。それ以上でも以下でもない。1話見れば十分だ。


4月中に見たのは以上。『コードギアス 反逆のルルーシュR2』は第1期を見ていないので録画だけしている。そのうち1期から見れたらいいな。
『図書館戦争』を除くと、どうしても見たいと思わせる作品はあまりなかった。粒揃いではあるが抜けた存在がないといった印象だ。時間の都合上、今見ている分も半分くらいまで絞りたいところだが、どうなることやら。オリジナルで魅惑的な作品が少ないのも残念なところだ。