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「けいおん!!」空気系アニメと四コママンガ

2010年10月07日 01時21分08秒 | けいおん!
TVアニメ第1期がスタートしたとき、原作の四コママンガはメジャーとは言い難かった。著者のかきふらいにとって「けいおん!」はプロとして初の単行本だった。

私自身はTVアニメの第1期を見て原作に手を出した。そして、原作に対してさほど強い印象を持つことはなかった。

第1期は原作の1、2巻をベースに唯たちの入学、軽音部の結成、梓の加入、二度目の学園祭までを12話で描いている。(1期13話は番外編)
一方、第2期では原作の進行との兼ね合いもあり、オリジナルのエピソードが非常に多くなっている。2クールをかけて、唯たちが3年生として過ごした1年間を描いた形だ。

第1期は駆け足の印象を受けたが、原作にかなり忠実で、ストーリー性を強く打ち出したのは最終回に向けて唯の風邪のエピソードあたりくらいだった。それを除けば良くも悪くも肩の力が入っていないまさに「空気系」と呼ぶに相応しい内容だったと思う。更に完全なオリジナルであった番外編も、その点を強調したような作りだった。

2期になって違和感を覚えたのは、ストーリー性の匂いを感じたせいだろう。原作にないエピソードが増えるのは当然だが、そこに作り手の意図が透けて見える気がした。通常の物語であればそれが当たり前だが、空気系の場合興醒めしてしまう思いを抱いた。もちろんそれは通常の物語で見られるような強いメッセージではない。本当に微かなものだ。しかし、それを消し去らなければ独特の空気は漂わない。

原作の3巻は1期と2期の間に発売された。2期は原作を先行して読んだという立場で見ることとなった分、厳しい視線を注ぐことになったのかもしれない。原作に忠実であれと望んでいたわけではない。繰り返しになるが、原作にある力の抜け具合がTVアニメで感じられなくなってしまったことに戸惑ったのだ。

2期15話「マラソン大会!」あたりからようやく普通に見ることができるようになった。慣れたせいなのか、それとも作り手の肩の力が抜けたのか。そして、24話の最終回を経て残る2回の番外編の1回目「企画会議!」を見た後で最終巻となる第4巻を読んだ。

それはひとつの衝撃だった。

それまで私の中ではTVアニメ版が原作を上回っていた。原作をないがしろにしていたわけではないが、TVアニメによって原作の魅力が大きく膨らんでいたのは間違いないことと思っていた。いや、実際にそうだったのだ。
それが逆転した。
原作は最終回に向けて、それでも強い想いは込められず、淡々と、しかし、魅力的なエピソードを描いている。ものすごく腕が上がったというわけではないが、着実にステップアップしている。そして、今までの「けいおん!」の空気を壊すことなく、それでもぐっと来るような些細な描写を織り込んでいる。

大学受験、合格発表、そして、卒業式。これらのエピソードは先に見たTVアニメ版ではなく原作のエピソードによって上書きされた。
2期の制作スタッフは1期から継続しており、オリジナル色の強い話でも世界観を壊すようなことは決してなかった。原作の有無に関わらず、それぞれの回はよく出来ているのは間違いない。だが、結局2期は1期の時ほど心を動かさなかった。その差を分かつ要因がなんだったのかはまだよく分からない。ただ作り手が力を込めたからといって良くなるわけではないのも事実なのだ。

TVアニメよりも原作の方が良かったという構図を覆す存在が「歌のシーン」だ。
マンガは音を奏でられないがゆえに音楽を表現するのが難しいという「常識」があるが、私はそれは全く逆だと思っている。『のだめカンタービレ』の時にも語ったが、音が奏でられないがゆえに表現できる音楽があり、アニメでは音が奏でられるがゆえに表現しがたいものがある。
しかし、「けいおん!」に関しては「歌のシーン」の表現力においてTVアニメが圧勝している。これは四コママンガの制約でもあるし、著者の技量の問題でもある。もちろん、TVアニメのスタッフの優秀さが最大の理由であるが。

最後の放映時に劇場版の告知が行われたが、極端な話、映画が丸々ライブシーンであれば何が何でも見てみたいと思う。正直、空気系と映画は相性があまり良くないと思うから。映画は長丁場ゆえに緩急や抑揚が必要だ。けれども、空気系はそうした緩急や抑揚がないところからスタートするようなものである。もちろん、あくまで長編のTVアニメという考え方で貫くこともできよう。また、空気系としてうまく展開できなくとも最後は「歌のシーン」によってチャラにできる強みがある。

空気系アニメのほとんどすべて四コママンガを原作としている。四コママンガがストーリー性の乏しい空気系を描くのに適した表現手段であることは間違いない。TVアニメにおける空気系がそれを単に写し取っただけのものなのかどうか。今後の空気系アニメの登場を待たねばそれを否定できないのかもしれない。



コミック感想:けいおん! 1巻2巻

2009年07月06日 20時53分24秒 | けいおん!
けいおん! (1) (まんがタイムKRコミックス)けいおん! (1) (まんがタイムKRコミックス)
価格:¥ 860(税込)
発売日:2008-04-26
けいおん! (2) (まんがタイムKRコミックス)けいおん! (2) (まんがタイムKRコミックス)
価格:¥ 860(税込)
発売日:2009-02-26


コミックを買うのはすごく久しぶりだったけれども、薦められたということもあって買ってきた。この厚さでこの値段はちょっと高い気もしたが、それはともかく。

アニメを見てから原作を読んだので、違和感は特になし。アニメが原作のエピソードを思った以上に丁寧に描いているなという印象を受けた。全13話で、高校入学から2年の冬までというハイペースも、原作2巻までを忠実になぞっている。
一部、原作ファンからアニメオリジナルな部分への批判もあるようだが、むしろもっとオリジナル色が強くてもよさそうに感じられた。完全オリジナルで、日常のゆる~い情景をただ描くだけでもOKみたいな。

原作はアニメ以上にゆる~い感じ。アニメの演奏シーンのような見せ場もないので、本当にそのゆるい雰囲気を楽しむ作品と言えるだろう。いかにも”空気系”な、『あずまんが大王』の系譜に連ねる作品。
今後にも期待だが、描きたまるのを待ってるとアニメ2期はあるとしてもだいぶ先になりそうな気配だね。