ウェスタナーズ・クロニクル No.28;バッド・ベティカー「決闘コマンチ砦」(1960年)
(注意)物語の結末に触れています。
『七人の無頼漢』にはじまるランドルフ・スコットとの連作(“レナウン・サイクル”)の掉尾を飾る作品。
コマンチのシマに単身乗り込んだスコットが身振り手振りで商談をする“サイレントふう”のオープニング。かれの目あては、コマンチに攫われ行方知れずになっている妻。けっきょく“買い戻す”ことができたのは別人の妻(ナンシー・ゲイツ)。かのじょを夫のもとに送り届けるための長い旅がはじまる。
「コマンチに囲われていた女を夫はどう思うかしら」。「愛があれば関係ない。それだけだ」と炉端を立つスコット。
停車場でコマンチの奇襲を受けた際に三人の無頼漢(クロード・エイキンスと純朴な二人の若造)と共闘、そのまま道づれとなる。エイキンスの狙いはゲイツにかかった多額の賞金。リー・マーヴィンやリチャード・ブーンほどの派手さはないが、かれら同様、善人とも悪人ともつかない典型的にベティカー的な無頼漢。
その後、若造の一人はコマンチの襲撃の犠牲になり(殺される場面は映さない)、いまひとりはエイキンスに仲間討ちにされる。そのエイキンスは岩場でスコットと一騎打ちに。背後から銃口をつきつけられたエイキンス。「おれがふりかえった瞬間、アマはおれのもの」と往生際のビッグマウス。制止を無視してふりむきざまに拳銃を抜いてスコットの銃弾をみずから浴び、おのれの強欲を呪いながら息絶える。
地平線の彼方にゲイツの家の赤い屋根が見えてくる。家に到着すると、ゲイツに走り寄る幼い息子のあとから杖をついた盲目の夫が姿を現す。「そういうことだとは知らなかった」とスコット。「じぶんで連れ戻しに来られない事情があるとは思わなかった?」とゲイツ。「ずっとそう思ってたよ」。『捜索者』のデュークそのままに、抱擁を交わす夫婦を見守りながら一人その場を後にするスコット。かれの旅はつづく。
撮影チャールズ・ロートンJr.。砂漠、山脈、奇岩、森。ピトレスクな自然がシネマスコープいっぱいに映し出される格調高い画面。
婀娜な年増ゲイツ。停車場でコマンチの奇襲をうける場面では、スコットに水桶に投げ込まれ、びしょぬれショットを披露。
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