Negative Space

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犬と豚と人間と:『暴動・島根刑務所』

2014-10-19 | 中島貞夫


 中島貞夫「暴動・島根刑務所」(1975年)

 『脱獄・広島殺人囚』のネタを提供した美能幸三の話にヒントを得て、大正時代の実話を終戦直後に置き換えた「実録」もの。

 脱獄し、山に籠る子分らしき川地民夫の小屋に逃げ込んだ松方。シェパードの品種改良を生業とする川地は妹を家政婦のようにこきつかっている。この妹に処女の牝犬の交尾を見せられた松方、傍らの処女にのしかかる。

 闇夜に兎跳びをさせられる全裸の囚人たちに無期懲役の田中邦衛が育てる豚のショットがカットバックされる。

 豚をとりあげられた田中、その場で投身自殺。これが看守への反逆と見なされ、二回分の食事が取り消しに。騒いだ囚人たちが派手な暴動を起こす。

 残虐な看守に佐藤慶、その同僚に戸浦、映画館に逃げ込んだ松方が「雪隠詰め」になる場面では小松方正と、大島組の面々。

 佐藤の裏切りによって網走(美能が服役中に『仁義なき戦い』の手記をしたためたところ)に送られた松方と北大路が手錠でつながれたまま逃走、汽車に轢かせて手錠を切るという展開は『網走番外地』?そのまま鉄橋の下の川に落ちた松方、『狂った野獣』の渡瀬みたいにどこへともなく泳いでいく。ストップモーション。終。

 「彼[松方]の演技は本当いうとリアリズムじゃないですよね。やっぱり彼芝居しているんですよ。だから一丁間違うと臭くなったり、時代劇なんかやるとたちまちそうなっちゃうんだけど、現代劇なんかやっていると、ぎりぎりのところでくるわけです。といって自然体で芝居してそうなるタイプではないんですね。彼は役者なんですよ」(『遊撃の美学』)。