白夜の炎

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力関係は変わった/アルゼンチンによる石油国有化

2012-04-20 15:57:41 | 国際
 アルゼンチンがスペイン籍の石油会社の国有化(正しくは再国有化)を決定、スペイン政府とアルゼンチン政府の外交問題になっている。

 これが少し前の中東なら、アメリカが介入して政権をひっくり返せばよかったのだが、今度はそうもいかない。

 とりあえずは訴訟になりそうだが、かつてのスペイン植民地と宗主国の力関係の逆転を示しているようで興味深い。

 今EUは不景気でスペインやポルトガルからは、かつての植民地に出稼ぎに出る人々が少なくない。

 それは大きな力関係の転換の一部なのかもしれない。

「アルゼンチン最大の石油会社YPFは当初、中国企業が買収することになっていた。それでも十分驚きだが、アルゼンチン政府はもっと度肝を抜く行動に出た。

 フェルナンデス大統領が、スペインのレプソルYPFの子会社であるYPFの経営権を「接収」すると発表したのだ。

 アルゼンチン議会は、政府がYPF株式の51%を取得することを認める法案の審議に入った。フェルナンデスが所属する与党ペロン党は議会の過半数を維持しているので、法案は可決される見通しだ。

 当然、スペインは激怒し、外交問題に発展している。スペイン政府は駐マドリードのアルゼンチン大使を召喚。ラホイ首相は訪問先のメキシコで「深い憂慮」を表明した。イニーゴ・メンデスEU担当大臣は、アルゼンチンが「国際社会のならず者」になりつつある、と非難した。

 ヨーロッパ各国は今のところスペインの味方だ。欧州委員会のバローゾ委員長は、ヨーロッパ各国がアルゼンチン政府に対して「国際的な責任と義務を遵守するよう」期待している、と語った。

世界に広がるエネルギー国営化の輪?

 レプソルのアントニオ・ブルファオ会長は、アルゼンチン政府との戦いを宣言。必要なら訴訟も辞さない構えで、105億ドルの損害賠償を求めている。まるで傷口に塩をすり込むように、レプソルYPFの株価は急落している。

 だが、アルゼンチン国内のYPF国有化気運は高まる一方(厳密には「再」国有化だ)。93年に民営化されたYPFをスペインのレプソルが買収したのは99年のこと。この買収でレプソルは、世界で8番目の大きさの石油会社になった。

 フェルナンデス政権はエネルギー不足をYPFのせいにしている。増産のための投資を渋っているというのだ。原油不足を補うために財政支出も膨らんでいる。コンサルティング会社ユーラシア・グループの予測によれば、アルゼンチンの昨年のエネルギー輸入は前年比113%増加し、今年のエネルギー分野への補助金はGDPの4%を超える(YPF側はエネルギー不足の原因は政府の介入政策だと反論している)。

 問題を民間企業のせいにするのその主張は、ベネズエラの左派政権を率いるチャベス大統領にそっくりだ。「フェルナンデスはチャベス・モデルに近づいている」と、ニューヨークの投資銀行アナリスト、ボリス・セグラはクリスチャン・サイエンス・モニター紙の取材に語っている。

 フィナンシャル・タイムズ紙のブログが指摘しているように、こうした国家介入は最近増加傾向にある。エクアドルやモンゴルがそのケースに当たる。このブログはフェルナンデスのこんな言葉を引用する。


 アラブ首長国連邦は石油・ガス産業を100%管理している。中国、イラン、ベネズエラ、ウルグアイ、チリ、エクアドル、メキシコ、マレーシア、エジプトもだ。コロンビアは株式の90%を、ロシアはガスプロムの50%を(政府が)保有している。今回の対応はアルゼンチン政府がある日突然思いついたものではない。


 仲間が多ければ安心だということだろうか。

 政府のYPF買収がアルゼンチンのエネルギー問題を悪化させる可能性もあると、ユーラシア・グループのアナリスト、ダニエル・カーナーは言う。国有化して石油開発投資を増やしても、解決策にはなりそうにない。埋蔵量も生産量もこの10年間減り続けているからだ。

 カーナーは、今回の法案が1カ月以内に発効すると見ている。しかし訴訟になれば発効は延期されるかもしれない。アルゼンチンにプライドを踏みにじられたスペインは、そう簡単には引き下がらないだろう。  

(GlobalPost.com特約)」


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