白夜の炎

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尖閣問題に関する沖縄タイムスの社説

2013-01-09 19:07:00 | 政治

社説[尖閣問題]共生の海へ外交発信を

2013年1月6日 09時30分

 正月番組で息をのむ映像に出合った。国際宇宙ステーションから超高感度カメラで捉えた地球の夜景だ。人類の技術の粋を目の当たりにし、あらためて感じたのは、こうした英知が人倫には及んでいない現実への歯がゆさだ。

 尖閣諸島の領有権をめぐって中国との緊張関係が続いている。岩のような無人島を紛争の火種とする愚かさは、多くの人が認識している。それでも回避する手だてが容易には浮かばない。軍事的なリスクにも向き合わざるを得ない現状だ。だからこそ今、求められているのは、軍事に軍事で対抗する悪循環を断つ大局観だろう。

 なぜこうなったのか。東京都知事(当時)の石原慎太郎氏が「尖閣買い取り」を打ち上げたのが発端であるのは論をまたない。自らの政治的地歩を固めるために「領土」を利用するのは許し難い。が、石原氏や民主党あるいはかつての自民党政権を批判したところで事態収拾にはつながらない。かといって、「中国が悪い」というだけで済む話でもない。内向きの姿勢から脱却し、日本が苦手としてきた自主外交力を養う局面だ。

 敵と味方を措定する冷戦時代の認識は通用しない。多元的でしたたかな手腕が求められている。そんな中、安倍政権は日米同盟強化を図り、中国への圧力を強める構えだ。では、その上で中国とどう向き合うのか。肝心の道筋が見えてこない。米国にすがるだけでは中国との関係は改善しない。「日米基軸」以外に外交目標が存在しない日本外交の弱みを露呈したかたちだ。

    ■    ■

 領土問題が浮上すると、日本にも中国にもナショナリズムが台頭する。これを拡大再生産しているのがメディアである。とりわけマスメディアの責任は大きい。偏狭な「領土ナショナリズム」に踊らされず、「国民の利益」を冷静に見極める能力が国民の側にも求められている。

 中国では尖閣国有化が近代日本の覇権主義の象徴あるいは延長線上の行為と捉えられている、との指摘もある。日本でも中国の覇権主義的イメージが定着しつつある。日本人の「嫌中」、中国人の「反日」の本質から目を背けず、丁寧に解きほぐす努力が欠かせない。

 対話を重ね、相互理解を深める中で、尖閣問題は領有権の棚上げを模索するのが賢明だろう。その上で、突発的な軍事衝突を防ぐメカニズムの構築と、漁業トラブルを回避するルールづくりを先行させるのが現実的ではないか。

    ■    ■

 沖縄は台湾とともに尖閣海域を「生活圏」として共有してきた利害の当事者である。問題解決にコミットする大義はある。近代日本の版図に包摂され、その帰結として地上戦の悲劇を被った沖縄の教訓は、日中の強硬路線の転換を促す触媒になり得る。

 どうすれば争いのない「共生の海」を長期的に維持できるのか。その解は、近代国家の「固有の領土」という価値概念からは見つかりそうにない。歴史的経験に基づき、平和の懸け橋となる万国津梁(りょう)の理念の提示こそ沖縄が果たすべき役割だろう。」

http://article.okinawatimes.co.jp/article/2013-01-06_43585


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