白夜の炎

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安倍政権に関するもう一つの見方/WSJより

2013-01-10 18:09:22 |  北米
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【オピニオン】アジアの行く末を左右する強大な国

By RICHARD FONTAINE, DAN TWINING

 復活したアジアの国がタカ派のナショナリストを権力の頂点に据えた。近隣諸国との領有権争いは世界的に重要な貿易航路に近い海域での軍事衝突のリスクを高めている。同国が偉大だったころの記憶は、地域の覇権争いに加わるんだという政府高官たち決意の源になっている。同国の再浮上により、アジアの地政学的地図は塗り替えられることになるかもしれない。

 いや、中国のことではない。世界を驚かし、この地域を大きく変えようとしているのは日本である。多くの人がその影響力を見限る原因にもなった経済的衰退からの逆転を果たせればの話だが。

 昨年12月26日に総理大臣に就任した安倍晋三氏が、これまでの首相とは比較できないほどの難題に直面していることは事実である。日本の人口は世界最速で高齢化しており、2011年の東日本大震災と福島第一原発事故の影響は今も色濃く残っている。政治は行き詰ってばかりで、自信にあふれた中国からの増大しつつある挑戦にもさらされている。

 米国人の中には中国をアジアの未来、日本はアジアの過去と見なし、変貌を遂げた世界では日本との同盟は時代錯誤、あるいは厄介なものとさえ考える向きもある。しかし、日本を単なる友好国と軽視するのは誤りである。米国にとって日本は今もアジアにおける最も強固な同盟国であり、世界の勢力バランスにおいても重要な役割を果たすだけの世界屈指の能力を備えている。

 日本政府は、アジア地域の勢力図を塗り替え得る新たな戦略的関係を築こうと特異な発想で取り組んできた。国家意識をめぐる議論の高まりにより、アジアにおいて平和主義的だった同国の態度はより断固としたものへと変化していくだろう。

 驚くかもしれないが、日本の回復力の根底にあるのは経済だ。日本は最初のアジアの虎であり、その数十年にわたる成長は今日の中国のペースに匹敵した。国内総生産(GDP)で中国が日本を追い越せたのは、13億の国民の生産力を活用したからだが、人口がその10分の1以下の日本が同水準の生産力を示したことも忘れてはならない。多くの経済的問題を抱えているのは確かだが、日本は将来の成長の原動力となり得る卓越した技術を保持し続けてもいるのだ。

 日本政府はそうした経済力を外交活動に反映させてきた。世界有数の対外援助国である日本は、イラクの復興支援のために約4350億円を、アフガニスタンにも米国に次ぐ支援額となる約6100億円の拠出を約束している。数十年に及ぶ軍事政権下で放置され、ずたずたになっていたミャンマーのインフラや人材の再建においても主導的役割を果たしている。また東アジアの安全保障の要である5万人近い駐留米軍には基地と巨額の受入国支援を提供している。

 日本は自国の軍事力も増強してきた。あまり知られていないが、同国には幅広い作戦任務で米国軍と緊密に連携できるほど高度な技術を持った軍隊がある。日本の軍事支出は世界第6位で、その海軍の能力は米国の同盟国の中で最も高く、高度なミサイル防衛技術も持っている。また軍事能力の質も高く、いくつかの分野では中国軍をしのいでいる。

 積年の自制的態度を改めた日本は、その軍事力の行使をますます拡大している。この10年間に日本は、アフガン戦争支援を目的としたインド洋における艦船への給油活動、イラクへの自衛隊派遣、津波の被害を受けたインドネシアの復旧活動への参加、ネパールへの停戦監視要員の派遣、インド・オーストラリア・韓国・米国の海軍との合同演習、国連ハイチ安定化ミッションへの参加、ソマリア沖海賊対処のための艦船派遣などを実施してきた。

 日本は国内の軍需産業への足かせとなっていた武器輸出に関する規制も緩和し、東南アジアの軍事能力強化を拡大させた。日本政府はオーストラリアやインドと軍事協定を結び、米国政府・インド政府とは三カ国間戦略的パートナーシップを形成した。

 こうした動きは、日本の政治の水面下で巻き起こっている将来の安全保障の原則に関する国内の激しい論争を反映している。そのきっかけとなったのは中国の急激な台頭と、近隣諸国への強硬な戦術である。安倍氏の総理就任と日本維新の会のような国家主義的な新組織の勢いは、中国の挑戦に直面している米国のリーダーシップにも広範に影響を与えかねない日本の政治情勢の右傾化を反映したものである。

 アジアへの戦略的リバランスに着手した米国政府にはできるだけ多くの友好国が必要となるが、日本ほど信頼できる同盟国など他にない。米国の成功は、経済を軌道に乗せ、戦略的な外交政策を練り上げ、政治の行き詰まりに収拾をつけるという日本の新政権の決意に密接に関係してくるだろう。1945年以前のアジアでは問題視されていた日本の強大な国力だが、21世紀ではそれが解決策の一部にもなり得るのである。

[リチャード・フォンテーン氏は米シンクタンク、新米国安全保障センター(CNAS)の所長。ダニエル・トワイニング氏は米シンクタンク、ジャーマン・マーシャル・ファンドのアジア担当上席研究員]」

http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324828304578218642884252794.html?mod=WSJJP_opinion_LeadStory


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