白夜の炎

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部品納入業者の大赤字で稼ぐトヨタ

2013-04-19 18:19:31 | 産業
 トヨタが業績を回復させている。また安部首相の賃金引き上げの求めに応じて給与を引き上げ、関係者全員がハッピーなように見える。

 これは大ウソである。

 トヨタに部品を納入している業者で黒字を出しているところは稀であろう。

 先ごろ-といってもだいぶ前だが-ルネサスの破綻と経営再建が世間をにぎわせた。

 考えてもらいたい。

 ルネサスは自動車用半導体のシェア世界一である。

 その企業の経営がなぜ成り立たないのか。

 それは日本の自動車メーカー、なかでも支配的なトヨタがまともに支払わないからである。

 トヨタ社員の賃金引き上げは、部品納入会社の大赤字によって賄われている。そしてその赤字は、リストラ・再編によって賄われているのだ。

 そして忘れてはならないが、ルネサスに投入される2400億円の税金によっても賄われている。


 今トヨタ車など日本車の製造原価率は20%からどんなに高く見積もっても30%弱だという。

 標準的な小型車のエンジンなど、本当に数万円かかるかどうか、という値段になっているという。

 そのことは部品メーカーを消耗させ、技術開発力や品質維持の力を低下させている。

 もともとトヨタ本体に技術力があるわけではないから、部品メーカーの力の低下は直ちにメーカーの車の品質低下をもたらす。

 頻発する日本車のリコールの原因はそこにあるといってよいだろう。

 このままでは日本の産業の基盤は、大メーカーの会計上の黒字を積み上げるために破壊されてしまう。

 トヨタは日本の「問題」である。

中国-新たな「帝国」?

2013-04-19 18:06:37 | アジア
「【北沢洋子の世界の底流】ダーバンでBRICS首脳会談(その1)  新興経済国による市場分割戦か


 今年3月26~27日、南アフリカのダーバンで、BRICS5カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)の首脳会議が開かれた。会議の結論は、① 米欧の多国籍企業に比べて、BRICSはインフラ、鉱山、石油、農業などにより良い投資をすることを公約した。② BRICSサミットに、18カ国のアフリカの首脳が招かれた。(その中には、悪名高い独裁者が含まれている)。③ BRICS5カ国が500億ドルを出資して、「BRICS開発銀行」を設立する、などに合意した。

1.BRICS開発銀行の設立

 議論の中で、ロシアが出資を他の4カ国よりも少ない額を申し出、また南アフリカがBRICS銀行の所在地の候補として名乗りあげが、賛成したのは中国だけだった。結局、ダーバンでは、国別の出資額、銀行の所在地など詳細な項目について決まらなかった。今後、実務者間で協議を行う。

 これまで、「BRICS銀行」の設立を唱えてきたのは、中国であった。所在地がワシントンに置かれ、米国が主導してきた世界銀行やIMFが、融資先の途上国の意向を無視して、融資の条件として一方的に構造調整プログラムを押し付けてきたことに不満の声があった。とくに、アフリカの資源開発と市場開拓を狙っていた中国が、以前から世銀・IMFに代わるものを模索していた。

 今回のサミットで、BRICS開発銀行の設立の合意をみた。これは、BRICSが、自ら出資し、運営する開発銀行の設立である。サミットの主催国である南アフリカのズマ大統領は、サミットの会場で、「アフリカには、向こう5年間で、4,800億ドルのインフラ需要がある」と述べた。中国は、BRICS銀行は、「融資に特別な条件をつけるべきではない」と語った。

 BRICS開発銀行は、政府の拠出金と金融市場でのBRICS銀行債の発行で運営される。実は、01年10月、ナイジェリアの首都アブジャで開かれたAUサミットでNEPADが採択されて以来、総額640億ドルに上る20件の大型インフラの開発プロジェクト案.があった。

 02年7月、Anglo -American、BHP Billiton、Absa Banking Groupなどに率いられた187社が、NEPADのプロジェクトに出資することを約束した。しかし、その後2年経っても、投資した会社は一社もなかった。彼らの言い分は「アフリカの政治家の腐敗が片付かなくては、安全な投資が出来ない」であった。
 こうして、NEPADは失敗した。そこで、「BRICS開発銀行」が登場したのであった。

2.BRICSの外交

 BRICSは、外交の舞台では、ブロックになって急進的な発言、なかんずく「反帝国主義」のレトリックを使うことによって、国際社会を惑わしている。しかし、BRICSの本心は、先進国の仲間入り、あるいは補完物になろうとしている。決して、帝国主義・新自由主義と闘い、オルタナティブになろうとしているのではない。
また、BRICSの外交は一枚岩ではない。例えば、11-12年のIMF、世銀の総裁選挙、安保理常任理事国への立候補などでは、BRICS間は敵対した。安保理の常任理事国候補としてインド、ブラジル、南アフリカが立候補した。これに、常任理事国である中国とロシアが反対した。

 また、09年、南アフリカのノーベル平和賞受賞者のツツ大司教の80歳の誕生パーティに、同じくノーベル平和賞受賞者のダライ・ラマを招待した時、中国政府が、Nkozasana Dlamini-Zuma内相に、「ビザを発行しないように」と申し入れた。現在、内相が、「アフリカ連合(AU)」の議長であることを考えると、これは侮辱であった。

3.BRICSのアフリカ大陸への経済進出

 アフリカの経済成長が目覚ましいことを誰も知らない。実は、世界で急成長を遂げている上位10カ国の内、サハラ以南のアフリカが7カ国いる。

 アパルトヘイトが崩壊した94年、BRICSの対アフリカ貿易比率は5%であったのが、現在では20%に急増している。とくに中国の伸びは著しい。来る15年には、BRICSの対アフリカ貿易額は5,00億ドルに達し、その中で中国は60%を占めると予測される。この中で、重要なことは、GDPの成長率である。BRICSは、世界のGDPの成長率の半分以上を占める。

 BRICSの首脳たちが強調するのは、5カ国が世界の人口の42%、GDPでは世界の5分の1、世界貿易では15%、外貨保有高では40%を占めるという点である。

 しかし、BRICS間の貿易にも問題がある。
 南アフリカを例にとると、中国との貿易は、しばしば、南アフリカ経済にとってマイナスになっている。安い中国製品が南アフリカの中小企業の破産を引き起こしている。それにもかかわらず、Marius Fransman副外相は、「南アフリカは、外国投資のアフリカ大陸への入り口(Gate Way)である。今後、10年間、アフリカは、インフラ整備に4,800億ドルを必要としている」と語った。このようなインフラ投資プログラムは、資源収奪を目指した非持続可能な開発である。

 あまり知られていないことだが、南アフリカ企業の対アフリカ投資は、40%に上り、米国、EU、中国、インド、ブラジルの投資額を合わせたものより多い、ということである。これが、対「南部アフリカ共同体(SADC)」では、80%である。

 中国のアフリカ進出は目覚ましいものがある。

 Standard Bankによれば、中国とアフリカの貿易額は07以来2倍に増え、現在年間2,000億ドルに達しいている。投資額では200億ドルに上る。中国は、投資や融資に際して、西側のような構造統制プログラム、市場開放、民主化、汚職一掃などの条件を付けない。これが、アフリカ政府の歓迎を受ける理由である。
 また、昨年中国は2億ドルのアジズアベバのAU本部の建設を支援した。さらに、中国はアフリカのインフラと製造業に2,000億ドルの融資を申し出た。

 現在、アフリカに進出している中国企業は2,000社に上る。そのなかで、ザンビア、ニジェールで労働争議、スーダンとエジプトで誘拐事件、ナイジェリアとカメルーンで中国人経営者が殺された。中国政府はこれを「単なる理解の相違」だと片づけている。
 習近平新主席は、ダーバン・サミットの前に、タンザニアとコンゴを訪問した。彼はタンザニアで、総額160億ドルに上る経済協力協定2件に署名した。さらに中国招商銀行が、160億ドルに上るBagamoro港の建設プロジェクト融資に署名した。

 BRICSの対アフリカ投資は、必ずしも歓迎されていない。
ナイジェリアのLamido Sanusi中央銀行総裁は、3月11日の英紙『ファイナンシャル・タイムズ』に「中国はアフリカの工業化を遅らせ、低開発を助長している。中国は一次産品を収奪し、工業製品を売る。これは植民地主義と変わらない。アフリカにはBRICS5カ国に限らず、他の途上国も投資しているが、すべて自らの利益のためであって、アフリカの開発のためではない」と書いた。

 中国をはじめ、BRICSのリーダーたちは、「亜帝国主義」という批判に怒った。中国の忠建華アフリカ特別大使は、『ロイター通信』に、「中国とアフリカは植民地支配と闘ってきたという共通の歴史がある。中国は、アフリカを侵略したことはない。これは中国の優位であり、欧米には不利である。中国政府は、企業に対して、アフリカ人労働者の雇用を増やし、訓練し、労働者の不満に耳を貸さねばならない」と言っている。

 BRICSの対アフリカ投資は、市民社会から、原料資源の収奪、透明性の欠如、雇用増大につながらず、投資国に利益を還元しない、などの批判がある。これは、これまで先進国の企業に向けられてきた批判と同じだ。
 10年度の統計では、アフリカ大陸にある20の大会社の中で、すでにAnglo American、De Beers、SA Breweries、Old Mutualなどの巨大会社が、アパルトヘイト以後、ロンドンに移転した後でも、南アフリカ系の企業が17社に上っている。

 これらの企業は、新しい帝国主義だと非難され始めている。南アフリカのJeff Radebe法相によれば、アフリカでは、南アフリカの企業は、「現地の産業界、労働者、住民、そして政府に対してさえ、傲慢・不遜で、距離を置き、無視する態度をとっていると非難されている」と危惧を漏らした。

 南アフリカ政府は、「新アフリカ開発パートナーシップ(NEPAD)」、「アフリカ・ピア・レビュー・メカニズム(APRM)」、そして最近の「南アフリカ国家計画」などでもって、南アフリカの産業界のアフリカ投資を支援している。しかし、これらのプログラムは、ブッシュ大統領によって「哲学的」と褒められたが、実際にはほとんど失敗に終わっている。
 これらのプログラムを提唱したのは、南アフリカのムベキ前大統領であった。彼は、これらのプログラムを「アフリカのルネッサンス」と呼んで、自画自賛した。

 アフリカ大陸では、中国、インド、ブラジルなどの企業が、南アフリカ、米国、ヨーロッパ、オーストラリア、カナダなどのこれまでの企業による富の収奪に参加している。そして、上記のプログラムは、鉱山、プランテーション、石油ガスなどの資源開発に不可欠な道路、鉄道、パイプライン、港湾など植民地時代のインフラを整備拡張することが目的である。

 したがって、今回のBRICSのダーバン・サミットは、帝国主義列強がアフリカ分割を決めた「1885年ベルリン会議」の後続だと言えよう。

4.BRICS銀行の果たす役割

 「アフリカ開発銀行」の設立によって、BRICSのアフリカでの企業間の資源開発をめぐる争いは激しくなるだろう。すでに、ブラジルのVale、Petrobras、南アフリカのAnglo-AmericanBHP、 Billiton(それぞれメルボルンとロンドンに本社がある)、SASOL、インドのTata、Arecelor-Mittal、CoalIndia Ltd、中国の国営企業のCNPC、SINOPEC、ロシアのGazprom、Lukioil、などが、進出先のアフリカで、労働者や住民と紛争を起こしている。

 その例を挙げると、スイスのNGO「Public Eye」が、「ブラジルの巨大企業Vale社が、モザンビークで、数十億ドルの鉱山開発とインフラ投資をしているが、これは世界で類を見ないほどの環境破壊、人権侵害をしている」ことを暴露した。Vale社に対して、モザンビークの現地の住民が強制移住に抗議し、また労働者が賃上げを要求して、激しいデモを行った。Vale社のアフリカ担当のRicardo Saad取締役は、問題が起こっていることは認めたが、「新植民地主義と非難されるいわれはない」、「Vale社は、モザンビーク政府と契約を交わしている。不服があれば、政府にいってくれ」と語った。

 ダーバンでのNGOの対抗集会「BRICS-From-Below」で、ロシアのBRICSアナリストAnna Ochkinaが、アフリカの市場を「ブラジルは農産物の売り込み、中国は安い労働による工業製品の売り込み、インドはハイテク産業の安い知識労働力の提供、ロシアは鉱産物、石油、ガスなどの売り込み、南アフリカは鉱産物の売り込み先と見なしている」と述べた。

 旧植民地主義は地図に線を引いて、アフリカを分割して、領土とした。現在はアフリカは企業による市場分割になっている。これを「第2のアフリカ争奪」と呼んでいる。すでに、先進国が先乗りしているところに、新しくBRICSが参入しようとしている。BRICSの経済的規模を考えると、大きな影響力を及ぼすだろう。

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Yoko Kitazawa
url :
http://www.jca.apc.org/~kitazawa/」

http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201304181254594

中国の核戦力

2013-04-19 17:14:34 | 軍事
「国連軍縮研究所(UNIDIR)が、大変参考になる資料を発表しています。

[PDF] Tamara Patton, Pavel Podvig, and Phillip Schell, A New START Model for Transparency in Nuclear Disarmament Individual Country Reports, United Nations Institute for Disarmament Research, New York and Geneva, 2013.

2011年に米ロ間で発効した第四次戦略兵器削減条約(新START)の透明性向上のために、アメリカ、ロシア、フランス、イギリス、そして中国の核戦力の現状を端的にまとめた報告書です。

この中から、本稿では中国の核ミサイルについての章を紹介したいと思います。

当ブログではこれまでに何度も中国の核戦力について取り上げてきましたが、その材料はアメリカの公的機関やシンクタンクが発表した資料に依拠していました。今回の国連報告では独自に集めたデータが採用されているものの、やはり米国防総省や米中経済安全調査委員会などの資料を引用した部分も多く、目新しさはありません。

しかしこれは、米機関発表のデータが引用するに足るとUNIDIRが認めたために、結果として同じ数字を掲載することなったわけです。アメリカ発の資料を使うと何かと文句を言われがちですが、国連のクロスチェックが入った報告書に関しては、今後はより信憑性の高い数字として扱うことができるのではないかと思います。


中国は約240発の核弾頭を保有(備蓄も含めて)し、そのうち約180発が配備中(operational)。
運搬手段は、陸上発射型弾道ミサイルと爆撃機。
全核弾頭は、通常は保管庫にてミサイルと分けられて保存されるため、即応発射態勢にある核ミサイルはない。

新STARTでICBMと分類されるものは射程5,500km以上のもの。この定義に従うと中国が保有しているのは以下の3種類のICBM;

DF-5A:射程13,000km。固定サイロ発射型。
DF-31:射程7,400km。移動発射型。
DF-31A:射程11,200km。移動発射型。

各ミサイルの配備数、発射基数は以下の通り;

DF-5A×20(発射基×20、未配備発射基×5)
DF-31×20(発射基×20、未配備発射基×5)
DF-31A×20(発射基×20、未配備発射基×?)

潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)を開発中だが、現在未配備。
ICBMは計60発(発射基も60基)配備中。空いているICBM発射基(サイロ、TEL)はない。

戦略ミサイルの運用は第二砲兵が担っており、6つの基地のうち4つ(第53、第54、第55、第56)がICBMを配備。
サイロ型と移動発射型の両方を運用するのは第54基地と第55基地。
第53と第56は移動発射型のみ。


固定サイロ発射型ICBM

洛陽(河南省):DF-5A×10
第54基地。6個旅団で構成される。
DF-5A、DF-31、DF-4(新STARTではカウントされない)を運用している。
DF-5Aを配備したサイロが10基。
基地は2つの地域にあり、盧氏県に801旅団、洛寧県に804旅団。もう1カ所あるとみられるが未確認。
サイロ発射訓練施設もある。
核弾頭搭載中のICBMはない。


懐化(湖南省):DF-5A×10
第55基地。4個旅団で構成される(新STARTに関わるのはこのうち3つ)。
DF-5AとDF-31Aを運用している。
DF-5Aを運用するのは803旅団(靖州)と814旅団(会同)。両旅団の基地は近く、駐屯地や支援基地を共有している。
サイロ発射基地は803旅団に3カ所、814旅団に1カ所。
両旅団あわせたICBM発射サイロは10基。サイロ型発射訓練施設が1つあるため、それを含めれば11基。
核弾頭搭載中のICBMはない。


移動発射型ICBM

昆明(雲南省)
第53基地。6個旅団で構成される。
ICBM運用は玉渓市近くの1つの旅団のみ(建設中)。運用状況詳細は不明。
DF-31とDF-31Aを運用している。
2012年9月時点で配備中のICBMはないという分析。

洛陽(河南省):DF-31/31A×10
第54基地。
サイロ発射型と移動発射型の両方を扱うため、ひとつの部隊(813旅団)が2カ所のICBM基地に分かれて配属されている。
移動発射型ICBMの基地は2つあり、南陽と西峡。
南陽の813旅団はDF-31が初めて配備された部隊である。
配備中のDF-31と発射車両の正確な数は不明。少なくとも2両の発射基が確認されている。
西峡の詳細は不明。移動発射車両のための整備がされており、DF-31またはDF-31Aが配備されていると見られる。
洛陽に配備されたDF-31/31Aの移動発射車両は10基。
核弾頭搭載中のICBMはない。

懐化(湖南省):DF-31/31A×10
第55基地。 第54基地と同じく、固定サイロと移動発射車両のふたつのタイプのICBMを運用する。
移動発射型ICBMを運用する805旅団の基地は邵陽市近く。
805旅団はDF-4運用部隊として配備された経緯がある。
DF-4からDF-31Aへの更新に伴い、805旅団の駐屯基地も通道トン族自治県から邵陽へと移った。
DF-31Aの正確な配備数は不明。ミサイルと同数の発射車両×10基があると見られる。
核弾頭搭載中のICBMはない。

西寧(青海省):DF-31/31A×20
第56基地。正確な場所は不明。8個旅団で構成される。
ICBM運用部隊は3つ;809旅団(大通県)、812旅団(天水市 筆者注:甘粛省)、もうひとつはデリンハ市にある模様。
2011年6月6日の衛星画像情報によると、大通県で6基のDF-31/31Aを809旅団が運んでいるのを確認。
移動発射車両が大通に常時配備されているのか、500km南東の812旅団のものが一時的に配備されたのかは不明。固定された発射車両が4基確認。
天水の812旅団はDF-31Aを運用。3基の固定された発射車両を確認。
デリンハには大規模な発射施設があり、かつては812旅団がDF-4部隊として使用していた。
812旅団はDF-4からDF-31Aへの更新にともない天水へ移動。現在デリンハの施設は訓練施設として使用されているとの情報もあるが、詳細は不明。どの弾道ミサイルが配備されているのか(いないのか)も不明だが、DF-31/31Aがあると指摘されている。
西寧には20基の移動発射車両があると見られる。
核弾頭搭載中のICBMはない。


潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)

中国の潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)は2種類;JL-1とJL-2。
092型夏級原子力潜水艦(SSBN)と094型晋級原子力潜水艦(SSBN)が発射プラットフォームとなる。
新STARTは「配備中のSLBM」の定義として「SLBM発射プラットフォーム(潜水艦)が配備されていること」が含まれているので、中国はSLBM未配備という扱いとなる。

夏級は12発のJL-1(射程1,770km)を搭載するが、1981年の就役以来パトロールに従事したことはなく、十分な稼働状態にない。
JL-1は就役後、訓練のために夏級に搭載されたことはあるが、現在SSBNに搭載されているかどうかは不明。

夏級の後継である晋級の詳細は不明。
米国防総省によると、2隻が就役中。1隻は北海艦隊に所属し、青島に近い姜哥庄を母港としている。もう1隻は南海艦隊に所属し、海南島の楡林を母港としている。
3隻目も建設中とされるが、進捗状況は不明。

晋級はJL-2(射程は7,400km)の発射プラットフォームとなる。
JL-2の開発は技術的な障害などを理由にはかばかしくなく、現在もステイタスは「開発中」のままである。
2012年1月と8月に晋級がJL-2の発射試験を行ったという報告がある。
米中経済安全調査委員会報告書(2012)によると、晋級とJL-2は2年以内に実戦配備されると見込まれている。
その予想とは裏腹に、JL-2はまだ大量生産状態になく、晋級の発射管は空のままだと見られる。

重爆撃機
中国空軍は少数のH-6中距離爆撃機に自由落下爆弾を搭載している。
H-6は戦闘行動半径が3,100km。新STARTでは重爆撃機には分類されない。(新STARTの定義における重爆撃機は、“行動半径8,000km以上あり、空中発射型長距離核巡航ミサイル(ALCM)発射能力があること” とされる)
射程1,500kmのDH-10巡航ミサイルを発展させ、H-6改修型に搭載する可能性も指摘されるが、DH-10に核搭載能力があるかどうかの評価が定まっていない。
2013年現在、長距離核ALCMを搭載した航空機は中国にはない。

◇ ◇ ◇

これまでも指摘してきたことですが、中国の核抑止の主役である戦略級弾道ミサイルに関しては量産されることもなく、数量的にはここ20年ほど抑制的に推移しています(短距離~準中距離級の弾道ミサイル増強は著しいですが)。なにより、普段は核弾頭をミサイルから外して保管しており、核兵器管理を厳にしていることがうかがえます。

国防総省をはじめとした米政府機関の報告書やFASなどのシンクタンクの資料でも従来から指摘されていた通り、中国によるアメリカの大都市に対する核報復攻撃能力は十分なものとは言えず、「最小限抑止」の範囲内にとどまっていますね。」

 写真はDF31A。移動式ICBMです。

http://blogos.com/article/60551/