白夜の炎

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レーダーの照射問題をめぐって

2013-02-10 18:09:22 | アジア
 尖閣諸島において、中国のフリゲート艦が日本の自衛艦に対して火器管制レーダーを使用したか否かが大きな問題になっている。

 日本側は中国の艦艇が日本の自衛艦に対して火器管制レーダーを使用したとして、「武力による威嚇」に当たると抗議。

 これに対して中国側は国防部が事実関係を否定するとともに-火器管制レーダーではなく監視用レーダーを一定時間使用しただけと主張-、外交部報道官は、⑴日本側が事実をねつ造していること、⑵中国側は自国領域-尖閣周辺-で通常の行動を行っているのに対して、日本側が不当に艦船を派遣して行動している、と非難している。

 まず前者については日本側が証拠を示すと言っているが、これもおそらく決定打になることはないであろう。

 むしろ注目されるべきは第二点である。

 中国は尖閣は自国領土であり、日本側が「国有化」という措置によって、日中間の「棚上げ」という暫定措置を一方的に破棄した以上、中国側の艦船航空機がどう行動しようと自由だし、そのための措置を取るのは当然だ、という立場である。

 いまや日本側が長年主張してきた「実効支配」自体が揺らいでいるといえよう。

 このままの事態が進めば、やがては実効支配が覆されることになろう。、例えば海兵を上陸させ、標識を設置する…などとなった場合、なんらかの対抗措置がとれるのか。

 中国側が反撃したときどうするのか。

 とまあこのような心配すれば際限がない。どこかで妥協点を見出さなければならないのだが、その努力が欠けている。あるいは全く不十分だと思う。


 例えばこの件をめぐる日中両国内における世論の動向は全く逆方向である。

 私も含めて大半の人々は生のデータを確認したことはないわけであれ、またそれについて判断できるほどの専門的能力もないわけだが、どちらの国においても驚くほど-メディアも含めて-各々の政府の主張を信じてそれに従って判断している。

 日本側については日々のニュースなどを見れば一目瞭然なので、中国についてみるとたとえば以下のようなものがある。

 環球時報はいわば中国の産経新聞だが、その中には http://mil.huanqiu.com/game/diaoyudao.html というページがある。これはゲームで日本の艦船を沈めて得点が上がるというものである。

 どの程度のアクセスがあるのか分からないが、中国に行くと、日本兵を殺すウォー・ゲームがごく普通に人気を博している。その一環だろう。おそらく中国人にはさしたる違和感はないはずである。

 このほか様々な記事への読者の反応を見ても、例えば、日本はつい先日特使を派遣して友好と平和を呼びかけながら、すぐに中国を攻撃する、何と卑怯で信用できないやつらか、といった感じである。

 これが中国の世論のすべてというわけではないだろうが、同じ情報について、日中で全く見解が分かれ・対立しているというと。

 そしてその情報のもとはいずれも各国政府の主張に基づいているということ。

 これはかなり問題があるように思う。少なくとも日本のメディアはもう少しよく調べて報道すべきではないか。

 たとえばNHKや新聞社は防衛省の発表にどのような根拠があるのか、どこまで確認を取っているのだろうか。専門的な能力のある記者がどれほどいるのか。

 現状では日中両国の政府は尖閣の危機をあおり、それを決着させるつもりがないように思える。落とし所も見えない。

 今回のレーダー照射の件も-事実か否かは別として-山口公明党代表の訪中で日中和解の兆しが見えてきたことに対する、それをつぶす動きだったのかもしれない。そういった動きは、例えば小泉訪朝の後の、日朝国交回復つぶしの動きを思い出せば、決してないことではないように思われる。

 そういった観点から取材している記者はいないのだろうか。政治家の動きには大手メディアの政治部は詳しいはずだが、政治家たちの、そして官僚たちの動向がわからない。

 中国側の動向分析はもちろん重要だが、自国の政治と官僚機構がどのように機能しているのか、正確に伝えることこそめでぃの第一の仕事だろう。

 頭を冷やして、覚悟を決めて記事を書いてもらいたい。

安部政権への不信・日本への警告

2013-02-10 18:05:28 | アジア
「 今月に入って、安倍晋三首相に対する海外メディアの批判的な論調が目に付く。このうち、米『ロサンゼルス・タイムズ』紙一八日付の「歴史修正主義の東京的手法」と題した記事は、単に首相だけに留まらない日本の過去の無反省ぶりを告発する姿勢が顕著だ。

 筆者のビル・グッテンターグ、ダン・スターマン両氏は、南京大虐殺を描いたドキュメンタリー映画『南京』の製作を手がけた。それだけに「安倍首相率いる保守層の大半が、日本が女性に性奴隷を強制した事実を否定」し、安倍首相が同職在任中以外に「(日本は太平洋戦争で)西欧植民地主義のくびきをアジア諸国がかなぐり捨てるのを助けた」などと唱える靖国神社に参拝したことを批判する。

 さらに、「驚くべきは日本の指導者や数は限られても声の大きい多くの市民たちが、自国の戦争の歴史について事実に基づかない認識を抱いている点だ。南京におけるレイプも議論になっていない」として、「多くの中国人にとり、選挙で超保守派の国家主義者が首相になったのは、一連の侮辱の最新版と見なされている」と述べ、他国への配慮のなさに呆れている。

 この歴史歪曲への警戒は、英『エコノミスト』誌五日号の「日本の新内閣 バック・トゥー・ザ・フューチャー」と題した記事でも目立つ。閣僚一九人の過半数が、「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」や、「戦時中の犯罪に対する“謝罪外交”を拒否する」右翼団体「日本会議」の系列議員である事実に注目。外交上、こうした「過去の亡霊」を党内だけに閉じ込めねばならないはずなのに、「安倍首相の新内閣でまず不可能になった」と結論付けている。

 独『シュピーゲル』誌一七日号(英語電子版)の記事「日本の首相が過去の危険を招く」は抑制的ながら、ドイツと同じ敗戦国の日本の首相が、「米国占領者によって平和的な憲法や比較的リベラルな教育制度、そして首相には全部気に入らない歴史認識を押し付けら」れたとか、東京裁判について「永遠に服従させるために侵略者の汚名を着せた」などと公言している点に驚きの目を向けている。

 同時に、「中・韓だけが、日本の新たな歴史修正主義の傾向を疑惑の目で見ているのではない」として、米国も「先祖返りのような政治家だらけの安倍内閣が、東アジアで緊張を高めないかと恐れている」と警告するのを忘れていない。

 その米国の『ニューヨーク・タイムズ』紙は元旦に、ドレーク大学のマリー・マッカーシー助教授(国際関係論)の論文を掲載。そこでは従軍「慰安婦」問題で謝罪を表明した「河野談話」を、「安倍晋三をはじめとする多くの保守主義者が決して認めず」、新内閣が「見直し」を示唆したことについて触れ、「こうした歴史修正主義がはびこる雰囲気は、日本と近隣諸国の関係を円滑にする上で最大の障害だ」と非難を加えている。

 さらに従軍「慰安婦」問題への安倍首相の態度は「東アジアで日・韓を最重要同盟国とする米国にとっても、深い懸念材料」と述べ、一歩踏み込んでこうした歴史認識が「日本の対外関係だけでなく、米国の戦略的利害にも関わる問題だ」とまで言い切っている。

 続いて同じ観点から首相批判に徹しているのが、同紙二日付の社説「日本の歴史を否定する別の試み」だ。冒頭、「アジアの安定のため、日韓関係ほど大事なものは他にあまりない」と強調しながら、首相が今総選挙前から『産経新聞』で「河野談話」のみならず、敗戦五〇年の節目で「植民地支配と侵略」を謝罪した「村山談話」の見直しも言明していると指摘。

 その結果、「安倍は今回の任期を、韓国との関係を炎上させ、協力をより困難にする大きな過ちからスタートしようとしている」と分析し、「犯罪を否定し、謝罪を薄めようとする」「安倍の恥ずべき衝動的行為は……地域における重要な協力関係を脅かす」と酷評している。

 こうした論調を反映してか、米ニューヨーク州議会上下両院では、日本軍の従軍「慰安婦」について、日本政府に公式に謝罪を求める決議案が一月一六日に上程された。

(成澤宗男・編集部、1月25日号)」

http://blogos.com/article/55749/