白夜の炎

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原発ゼロシナリオが大半の支持を獲得

2012-08-27 15:18:39 | 原発
「 二〇三〇年時点の原発依存度をめぐる国民的議論の結果を検証する政府の第二回専門家会合が二十七日開かれ、パブリックコメント(意見公募)の集計結果が報告された。

 無効票を除いた八万八千二百八十件のうち、約七万六千八百件(87%)が原発ゼロシナリオ(案)を支持した。同一人物・団体が一つの案に誘導するために複数回にわたって意見を出したような形跡もほとんどないといい、15%案を模索していたとされる政府に大きな影響を与えそうだ。 (山口哲人)


 意見公募は七月二日から八月十二日まで、メールや郵送、ファクスで受け付けた。二十二日の初回会合では約七千件の集計経過が発表され、89・6%が原発ゼロ案を選択しており、全集計結果とほぼ同様となった。

 原子力の安全や健康被害に不安を抱く声も四万七千件超あった。政府が提示した原発依存度の選択肢のうち、15%案支持は1%、20~25%案は8%にとどまり、原発を維持する両案を足し合わせても全体の一割に満たなかった。

 意見公募は、行政機関が政令や省令などを制定する際、事前に案を公表して広く国民から意見や情報を募る手続き。公平性や透明性を確保するために行われ、案件によって寄せられる意見の集まり方に大きく差が出る。

 十~百件程度と少ない意見公募がある一方、「動物取扱業の適正化について」という意見公募には十二万件以上の意見が寄せられた。ただ、このケースでは同一人物か団体により文章の内容が複製された「コピペ」と疑われるものが八万件ほど含まれていたという。

 これに対し、今回の意見公募では「コピペ」とみられる文章はほとんどなかったといい「思いがそれぞれの言葉で書かれていた」(内閣府事務局)。「やらせ」ではない「原発ゼロ」の重い民意をどこまで政府が受け止めるかが、今後の大きな焦点となっている。
(東京新聞)」

孫崎享氏による領土問題の解説/再掲

2012-08-27 14:30:39 | 政治
「「 韓国の李明博大統領が8月10日に竹島を訪問した。その後も日本の影響力や慰安婦問題について強い発言が続いた。日韓関係はなぜ今、もつれたのか? 国際司法裁判所への提訴はどのような意味を持つのか? 元外交官、元駐イラン大使で、「日本の国境問題--尖閣・竹島・北方領土」の著書もある孫崎 享氏に解説していただいた。」


 以下が孫崎氏による解説。

 李明博・韓国大統領が8月10日、竹島を訪問した。韓国大統領による竹島訪問は初めてのことである。

 「韓国大統領による竹島訪問が、韓国の国内政治においてどういう影響があるか」と、「日本と韓国の外交関係において、いかなる意味があるか」を分けて考えてみたい。

 韓国は本年12月19日大統領選挙を迎える。李明博大統領自身は大統領選挙に出ない。けれども今は、与党セヌリ党(本年2月従来のハンナラ党から改名)が政権を維持するか、野党側が勝利するかを決める重要な時期である。どちらが勝利するかは、経済問題および南北問題をどう処理するか、その方向を大きく左右する。

 この時期、李明博大統領の支持率が急落している。2008年2月に大統領に就任した直後、支持率は57.3%に達した。しかし、次第に低下し、2010年は支持と不支持がほぼ拮抗。2011年に入ってからは不支持が増大し、2012年7月には不支持58%、支持30.5%となった。最近では17%にまで落ち込んだ時もあった。こうした状況において、韓国で支持率を回復させるには、対日強硬策を実施するのがもっとも手っ取り早い。

 ただし、対日強行策はこれまで、「禁断の政策」でもあった。韓国大統領が竹島を訪問すれば、日韓関係にマイナスが生じる。それゆえ実施できない、という共通認識があった。

 この点から見て、次の報道は興味深い。李明博大統領が竹島訪問後、「日本の国際社会での影響力は“昔と同じではない”と述べ、日本の国力が落ちたとの認識を示した」(8月13日付東京新聞)。李大統領は日韓関係が少しくらい悪化しても、日本の力が落ちた今、大した問題ではないと判断したのである。



 他方、韓国世論の反応を見てみたい。同じく8月13日付東京新聞は「世論調査機関は同日、竹島訪問を評価する人が66.8%、否定的な人は18.4%だったと明らかにした。韓国政府が依頼した別の機関の調査では評価が84.7%という」と報じている。

 李大統領が竹島を訪問したのは、日韓関係を若干犠牲にしても、支持率回復を優先させたということである。

竹島帰属に関する歴史的経緯

 竹島問題は歴史的に見ると、実に極めて複雑である。ここで幾つかの基本的事実を把握しておきたい。

(1)日本は1945年8月14日米英ソ中に対し「天皇陛下ニオカレテハ“ポツダム”宣言ノ条項受諾ニ関スル詔書ヲ発布セラレタリ」との通告を関連在外公館に発出した。

 ポツダム宣言は、「日本の主権は本州、北海道、九州、四国と連合国側の決定する小島」としている。本州、北海道、九州、四国以外の地は「連合国側が決定する」ことに従うとした。さらに9月2日、重光葵外相、梅津美治郎・参謀総長が東京湾のミズーリ艦上で署名した降伏文書には「ポツダム宣言ノ条項ヲ誠実ニ履行スル」と記されている。

2)連合軍最高司令部訓令(1946年1月)は、日本の範囲について「竹島、千島列島、歯舞群島、色丹島等を除く」としている。

(3)サンフランシスコ講和条約での扱い
 ここでは「第二章 領域、第二条(a)日本国は、朝鮮の独立を承認して、済州島、巨文島及び欝陵島を含む朝鮮に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する」としている。放棄の対象とする島として、竹島を明記してはいない。

 この点に関して、米ラスク国務長官が韓国大使宛に1951年8月10日に発した書簡がある。「我々は日本との平和条約に関する韓国側要請を受理した。独島を権利放棄の中に含めるようとの要請に関しては、応ずることは出来ない。我々への情報によれば独島は朝鮮の一部と扱われたことは一度もなく、1905年以降島根県隠岐島司の所管にある」。

 この時点では、米国は竹島を日本領と見なしている。

(4)米国に地名委員会がある。同委員会は1890年の大統領令及び1947年の法律により設置されたもので、外国を含め、地名に関する政策を扱う。2008年、ブッシュ大統領は訪韓する直前に、韓国大使と会談した。ブッシュ大統領はこの後、ライス国務長官に竹島について検討するよう指示し、同島を「韓国領」に改めた。米国地名委員会は今日でも竹島を、韓国側の名称である「独島」と記載している。

 この動きに対して同年7月31日付朝日新聞は「町村官房長官は7月31日の記者会見で、“米政府の一機関のやることに、あれこれ過度に反応することはない”と述べ、直ちに米政府の記述の変更を求めたりせず、事態を静観する考えを示した」と報じている。

 町村信孝官房長官は重大な過ちを犯した。第1に、これは「米国一機関のやっていること」と片付けられるような小さな動きではない。第2に、米国がどのように判断するかは竹島の帰属に深刻な影響を与える。

 以上を見ると、日本と韓国が各々自国領と主張する時にはそれなりの根拠を有している。

領土問題に対する8つの方策

 日本は隣国と「北方領土問題」「尖閣諸島問題」「竹島問題」を抱えている。我が国は領土問題にどのように臨んだらよいのであろうか。

(い)第1に相手の主張を知り、各々言い分がどれだけ客観的であるかを理解し、不要な摩擦は避ける。

(ろ)第2に、領土紛争を避けるための具体的な取り決めを行う。中国とASEAN諸国が2002年11月署名した「南シナ海の行動宣言」には「領有権紛争は武力行使に訴えることなく、平和的手段で解決する」「現在(当事国に)占有されていない島や岩礁上への居住などの行為を控え、領有権争いを紛糾、拡大させる行動を自制する」の項目がある。これが参考になる。

(は)国際司法裁判所に提訴するなど、解決に第三者をできるだけ介入させる。

(に)緊密な多角的相互依存関係を構築する。

(ほ)国連の原則を前面に出していく。国連憲章第2条第4項は「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない」としている。

(へ)2国間で軍事力を使わないことを共通の原則とし、それについて、しばしば言及する。これによって、遵守の機運をお互いに醸成する。

(と)領土問題は、それだけで紛争に拡大することはない。しばしば、地下資源や漁業資源がからむ。従って、地下資源や漁業資源について合意し、それを遵守する。日中間には「日中漁業協定」がある。資源に関する共同開発などの話もある。これらを進め、これから対立が生じないようにする。

(ち)現在の世代で解決できないものは、実質的に棚上げし、対立を避ける。あわせて、棚上げ期間中は双方がこの問題の解決のために武力を利用しないことを約束する。

国際司法裁判所への提訴は、日本の平和姿勢を世界に伝える

 これらの幾つかの手段の中で、竹島に関しては、国際司法裁判所への提訴問題が浮上した。8月11日付毎日新聞は「日本政府は11日、竹島の領有権問題で約半世紀ぶりに国際司法裁判所に提訴する検討に入った」と報じた。

 国際司法裁判所は紛争当事者双方の合意がなければ手続きが始まらない仕組みである。8月11日付毎日新聞は「韓国外交通商省当局者は11日、島根県の竹島の国際司法裁判所への提訴について“一考の価値もない”と述べ、裁判開始に必要となる提訴への同意を拒否する考えを鮮明にした。韓国は応じない可能性が高い」と報じた。

 確かに国際司法裁判所への提訴は、相手国が応じなければ手続きが始まらない。しかし、日本側が提訴することは、次の2点を国際的に示す長期的な意義がある。(1)日本は領土問題を平和的に解決したい、と考えている。(2)日本側は「日本側主張が客観的に正しい」と信じている。領土問題を平和的に解決する方向を示すわけで、肯定的評価が与えられるべきと考える。

 日本政府が竹島について国際司法裁判所の判断をあおぐ方針を出したことは、将来、尖閣諸島の処理についても同様の方針をとることを示唆する。日本は竹島を実質的に管轄している韓国に自制を促している。これは、日本が尖閣諸島に対する自己主張を抑制すべきだとの論につながる。

米国は日韓の対立を望んでいない

 竹島問題で日韓の対立が深まったことを、米国は肯定的に見てはいない。中国の軍事的脅威が高まるなか、米国は、日韓が軍事協力を進展させることを望んでいる。竹島問題の先鋭化はこの流れに大きなマイナスとなる。」

(http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120816/235588/?P=1)」

「重重 中国に残された朝鮮人元日本軍「慰安婦」の女性たち 安世鴻写真展」

2012-08-27 14:27:22 | 報道
 慰安婦の問題についてあれこれ詭弁を弄する日本国内の愚か者たちへ。

 きちんと勉強しましょう。


「重重 中国に残された朝鮮人元日本軍「慰安婦」の女性たち 安世鴻写真展


  重重プロジェクト・安世鴻 日本軍「慰安婦」写真展実行委員会事務局の李史織です。

 6月26日に新宿ニコンサロンでは、皆さまの応援を受けながら、安世鴻は「仮」に写真展を開催することができました。しかし、ニコンによる様々な規制があり、ご来場者の方々の様々なご要望にほとんどお応えできませんでした。

  この度、練馬区を中心に東京都内に暮らす方たちが、この事態に深くこころを痛め、作品を落ち着いて観ながら、安世鴻と一緒に語り合う場をつくりたいと今回の『重重』市民でつくる写真展in練馬実行委員会を立ち上げてくださり、重重プロジェクトと共に写真展を企画することになりました。

  写真を見ながら、多くのゲストを迎え、広く交流できる空間を共有したいと考えております。是非会場に足をお運び下さい。

  新宿ニコンサロンが中止を通告した写真展・東京第2弾!!
「重重 中国に残された朝鮮人元日本軍「慰安婦」の女性たち 安世鴻写真展」

□会期:8月28(火)~9月9日(日)
12:00~20:00(最終日16:00)会期中無休
ただし、イベント中は写真のみの鑑賞はできません。
イベント時間をご確認ください。
□入場料:300円、大学生以下無料
□連続トークイベント開催(各回先着40名/要予約/詳細以下)
□ニコンサロン展示作品に加え、新たな写真も展示します。
□会場:ギャラリー古藤
東京都練馬区栄町9-16  千川通り」沿い、武蔵大学前
◆西武池袋線江古田駅南口徒歩5分
◆大江戸線新江古田駅A2出口徒歩7分
◆西武有楽町線新桜台駅2番出口徒歩6分
http://furuto.art.coocan.jp/

道順案内は080-4056-8490
□主催:『重重』市民でつくる写真展in練馬実行委員会&重重プロジェクト
実行委員会問合せメール jjteninfo@gmail.com
実行委員会問合せTEL 080-4056-8494
重重プロジェクトホームページ
http://juju-project.net/

深刻化するニート・フリーター問題/高齢化

2012-08-27 13:48:43 | 経済
「NHKが1月31日に放映した「無縁社会~“無縁死”3万2千人の衝撃~」が大きな反響を呼んでいる。

「身元不明の自殺と見られる死者」や「行き倒れ死」は、NHKの調べによると年間3万2000人。地縁や血縁、さらには会社との絆「社縁」を失った日本人の姿が浮き彫りとなった。「このままでは自分も……」と番組を見ながらぞっとした視聴者は少なくなかったことだろう。正月以来、ご無沙汰していた実家にあわてて電話をかけた人もいたかもしれない。

 だが、「無縁死ギリギリ」という事態に陥っているのは、家族のいない人々だけではないようだ。

 “家庭内無縁”に直面している人々の実態について、現場に聞いてみた。

親の介護中に死んだ
40代ニート

 真夏のある夜、地方都市の病院の救急搬送口に、ひとりの40代男性が運び込まれた。入浴後、脱衣所で体をふいていたとき、突然具合が悪くなり、救急車を呼んだという。診断結果は冠動脈疾患。病状はすでにかなり進行していた。

「そういえば1年ほど前から、時折ぎゅうっとこう……しめつけられるような胸の痛みがありました」

 男性はあとでそう語った。だが、病院には行かなかった。国民健康保険の期限はずっと前に切れていたからだ。

 中学を卒業後、就職もままならず、アルバイトを転々としていたという彼。だが、年齢を重ねるうち、仕事の口は減っていった。やっと職にありついても、職場の仲間は学生ばかり。いつのまにか親子ほどの年の開きができていた。

 そのうち、雇ってくれるところはまったくなくなってしまった。求人サイトを隅から隅まで探しても、自分の年齢や条件に合う就職口は見つからない。

 暗澹たる気持ちになった彼は、仕事を探すのをあきらめ、親の年金収入をあてに暮らすことにした。とはいえ、生活はどん底状態に。親子で食べていくのが精いっぱいで、当然自分の社会保険料など支払えるわけはない。運の悪いことに、やがて父親が発病。寝たきり状態となってしまう。

 父親を介護施設に入れれば、年金はその費用に消える。在宅介護をすれば、自分の就職のチャンスはますます遠ざかる。彼は悩んだが、とりあえず生活していくは後者の道を選ぶよりなかった。 

 治療は受けたものの、病状は急速に悪化。結局、男性はそのまま病院で息を引き取った。入院して4ヵ月後。あまりにあっけなく、孤独な死だったという。


貧困化する
“無保険ニート”の実態

 中高年ニートが急増している。

 東京大学社会科学研究所教授 玄田有史氏の研究によれば、15~34歳のニート人口は2002年時点で85万人だった。それから8年。今、「第一世代」と呼ばれる人々は、すでに40代に突入しているはずだ。

 親が元気で働いているうちはまだいい。しかし、定年に達すればその年金に頼らざるを得ず、親子ともども貧困に陥るケースも出てくるだろう。さらに、親が寝たきりや認知症になれば、子どもは頼るべき相手もないうえ、介護問題まで背負い込むことになる。まさに孤立“無援”の状態だ。

 問題は、社会制度からも切り離されてしまう人々だ。実際、全国の医療、福祉機関などが加盟する全日本民主医療機関連合会のもとには、冒頭のような事例も報告されている。

 ある病院のソーシャルワーカーは打ち明ける。

「非正規労働者で無保険という人は少なくありませんが、最近は親元で暮らす無職の人にも目立つようになりました。不況に加え、親が高齢化しつつあることも背景にありそうです。

 両親の入院費用の相談で訪れた際などに、打ち明ける人が多いですね。じつは自分も健康保険の期限がすでに切れているが、どうしたらいいか、と――。でも、そうやって話してくれる人はまだいい。無保険だから、と深刻な病気になっても病院に行かず、我慢している人が多いようです。早めに話してくれれば、それなりに打つ手はあるんですが」

 じつは、生活保護を受ければ医療扶助の適用となり、医療費は自己負担せずにすむ。だが、そうした知識がないために、多くのニートたちが悩みや不安をひとり抱え込んでいる。

 自宅で暮らしながらも、社会制度の外側で孤立している――そんな息子、娘たちが増えつつあるのだ。


広がる親子の断絶
子どもの経済的虐待も

「自分に何かあったらわが子はどうなるのか。障害者の親たちは昔からこうした悩みを抱いていましたが、今やニートの親も同じ。中には子どもの年金や健康保険料を払おうとする親もいる。ほとんどの子どもは拒否するようですが…」


10代からシニアまで、地域の人々が集まって若者の自立について考え、活動する「仕事工房ポポロ」。母体となったのは学習塾だった。
 こう話すのは長年、ニートや不登校児の支援活動を行う、NPO法人「仕事工房ポポロ」(岐阜市)代表、中川健史さん。一方で、「親が死んだら自分も死ぬしかない」などと考えている子どもも相当数いるようだ。

 このように経済的には依存関係にあり、強く結びついているニートの子どもと親だが、一方、精神的には深い断絶に直面している。

「もと企業戦士の父親と息子が家庭内で対立し、口もきかないというケースも多い。同世代の友人やかつての仕事仲間などと断絶しているうえ、家の中でも世代間で断絶してしまう。それが彼らの不安を強め、ますます心の闇を深くしています」(中川さん)

 経済的弱者の子どもが、身体的弱者の親を虐待するケースもある。

「親が同居している子どもにおカネを預けているが、要介護状態なのに面倒をみてもらえず放置されている」

「無職の子どもが老親の年金で生活をしているが、ホームヘルパーなどの在宅サービスは拒否、施設入所も認めない」

 日本高齢者虐待防止センターには、こうした事例が次々に報告されている。

「平成20年度 高齢者虐待防止法に基づく対応状況等に関する調査結果」によれば、家族による虐待事例、約1万5000件のうち約4000件は親の年金や貯金を勝手に遣うなどといった「経済的虐待」。およそ26%を占めている。

 同センター事務局長 梶川義人さんは説明する。

「以前から行われていたことだとは思いますが、問題意識が高まったこともあって、発見数が増えています。 とくに同居している場合は、自宅が“密室”と化すため、こうした問題が起こりやすいですね」

ニート親子に冷たい
日本の“ご近所”

 では、世の中と断絶してしまった親子が、ふたたび社会とつながる道はあるのだろうか。

 そのヒントを探るべく、東京都三鷹市にあるコミュニティベーカリー「風のすみか」を訪ねてみた。

「風のすみか」は、パンの製造から販売まで、ニートの若者たちの手でおこなわれるユニークな店だ。

 並んでいるのはいずれも天然酵母を使用した、保存料、添加物不使用のパン。山型食パンに、メロンパン、くるみパン――。50種類以上が並ぶ店内は、こうばしい香りがいっぱいに立ち込め、きびきびと立ち働く若者たちの姿がある。

 原材料となる小麦や野菜の一部は、神奈川県韮尾根の畑で、やはりニートの若者たちが生産したもの。

 運営しているのはNPO法人 文化学習協同ネットワーク。代表理事の佐藤洋作さんは言う。 

「ティーンエイジャーから40歳くらいまで、年間400人近い人々がここの相談窓口『サポートステーション』を訪れています。8割は男性ですね。完全な引きこもり状態の人から、過労や人間関係がもとでうつになり、失業してしまった人もいる。

 公的な就職支援、職業訓練サービスにつなげることもありますが、必要に応じてここで実習を受けてもらっています。引きこもりで対人不安が強い人などは農業体験にチャレンジしてもらうことが多い。生活リズムを取り戻し、仲間と一緒に働きながら、少しずつ対人不安を和らげる。さらに、ベーカリーでの製パン作業、販売などを通し、自信をつけていきます」

 そんなトレーニングを重ねるうち、引き込もっていた人にもほんの少しずつだが、変化が生まれてくる、と佐藤さん。

「人前ではずっとうつ向きっぱなしだったのに、顔を上げて話せるようになった」

「つらくて怖くて、どうしても書くことができなかった履歴書を仕上げた」

「お昼時の保育園や会社などへ出かけていき、ひとりでパンを販売するようになった」

「何か特別なスキルを身につけて見違えるようになる、なんてことじゃないんですよ。ごくささやかなことなんだ。だけど、本人にしてみたらすごく大きな進歩なんです」

 地域にある福祉事務所や保育園、企業など10社の協力事業所で、インターンとして働くこともできるそうだ。地道な体験を積み重ねた結果、晴れて就職を果たす人も年間120~160人ほどいるという。

「たいていは、まず親御さんが相談にやって来てそれからお子さんが来る、というパターンだね。でもほとんどは近隣からではなく、もっと遠くから見えるんですよ。つまり、引きこもっていることを地域の人には知られたくない、ということだと思う。知られれば、『家庭環境が複雑だから』とか『親の育て方が悪かったから』などと見られがちだから」

ニートを増産する
現代社会の問題点

 だが多くのケースを見ていると家庭環境や育ち方などはほとんど関係ない、と佐藤さん。原因はむしろ社会の変化にあるのでは、という。

「たとえば昔なら実家の商売を継いだり、町工場に就職したりと、不器用で人付き合いの下手な若者でも、働ける場所はあったんです。企業も半人前の新人を採用し、一人前に育てるキャパシティを持っていた。だが、今はどこの企業も即戦力を問う時代。コミュニケーション能力の低い人材はまず排除されてしまう」

 ギスギスした職場にうまく馴染めず、自信を失ったり、心に傷を負ったりした人々が、耐えきれずに家庭に引きこもる。そのうち親とも断絶し、完全に孤独になってしまう、というパターンも多い。

 第一生命経済研究所の推計によれば、全国のニートは2015 年には109.3 万人。あと5年で100 万人の大台を突破する見込みだ。また、総務省の労働力調査(平成21年10~12月期平均 速報)では、1年以上失業状態にある人は99万人だ。3年前より10万人も増えている。こうした人々の中から、あらたなニート予備軍が出てきても不思議はない。

 ともすれば社会に背を向けていると思われがちなニートたち。だが、じつは社会のほうが貧困化し、いろいろな人々を受け入れられなくなっているのではないか。

社会の分断が招く
「ニート100万人時代」

 とはいえ、親の年金で暮らす中高年ニートたちにとって時間はそうない。社会から断絶された「家庭」という孤島は、遠からず水没する日がやってくる。脱出するには、親が少しでも元気なうちに、今ある社会資源をめいっぱい活用するしかない。

 たとえば、全国にある地域若者サポートステーション、国の就労・職業訓練プログラム、キャリア相談、保健福祉機関の支援などだ。NPOの中にも、ニートの支援事業を手掛けるところは多い。「仕事工房ポポロ」でも、印刷やデザイン事業を通し、ニートたちの仕事体験、研修をおこなうほか、日頃の思いや悩みをぶつけあう「学び座」を実施している。

 ちなみに厚生労働省の委託により全国でおこなう、合宿形式の職場体験「若者自立塾」は2009年度末で廃止となった。今後は「緊急人材育成・就職支援基金」事業を活用した新たな合宿型若者支援プログラムを実施していく。詳細は中央職業能力開発協会のサイトからチェックしてほしい。

 前出の前川さんは語る。

「危機感がいよいよ具体的になってきたとき、人も社会も初めて変われる。そこに大きなチャンスが潜んでいるんです」

“ニート100万人時代”の到来。その危機感は、日本の変革へのひとつのチャンスとなるのだろうか。

 もはや、ニートが社会適応するだけでなく、社会もまた彼らに適応すべき時代なのかもしれない。」

メガソーラー・不良債権化した工業団地に建設

2012-08-27 11:58:27 | 産業
「◇広大な敷地、送電設備も完備

 再生可能エネルギーの柱と期待される大規模太陽光発電所(メガソーラー)の建設用地として、景気低迷の影響などで“塩漬け”になってきた全国の工業団地を活用する動きが広がっている。万単位の発電パネルを敷き詰めるメガソーラー事業には広大な用地と送電設備が不可欠だが、工業団地はその両方を備えている。工場を誘致できずに不良資産化した工業団地の処理に頭を悩ませてきた地方自治体関係者からは「この好機を地域経済再生の活路にしたい」との声が上がっている。

◇再生エネルギー買い取り制度で加速

 メガソーラー建設ラッシュの背景には、電力会社による再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度がある。太陽光の場合、7月から1キロワット時あたり42円での買い取りが始まっており、ソフトバンクなど大手企業が事業への進出を加速させている。

◇地元はホクホク、歓迎の声

 宮崎県川南町では、造成から47年間、工場を誘致できずに未利用だった町営工業団地の一角に、地元ガス会社が主導するメガソーラー(2025キロワット)の建設が決定。13年3月稼働予定で、同町には年間約600万円の土地の賃料や、5000万円程度の固定資産税(20年間稼働を想定した試算)が入ることになった。メガソーラーの運営には数人程度が必要なだけで、雇用はほとんど生まないが、同町は「年間約60億円の予算規模の町にとっては税収増だけでも大きい」(総合政策課)と話す。

 栃木県内では、メガソーラー建設計画が進む9カ所のうち、4カ所が工業・産業団地。県が管理する矢板南産業団地には、ソフトバンクとシャープが進出した。造成工事などに40億円強かけ、約15年前に分譲を始めたが、47万平方メートルの約6割(27万平方メートル)が空いたままだった。メガソーラーは約10万平方メートルの用地を活用する可能性があるといい、県企業局は「環境対策を進める観点からも歓迎」と説明。再生可能エネルギー拠点への“変身”を期待する。

 広島県呉市にある県営安浦産業団地には、東京の倉庫会社が約6000キロワットのメガソーラー建設を決めた。06年に造成された同団地は、産業廃棄物の埋め立て地だったため地盤が弱く、大型工場建設には深いくいを打つ必要があるなどコスト高が難点だった。比較的軽量な設備のメガソーラーなら問題はないといい、同県県内投資促進課は「土地の条件にもフィットした」と喜んでいる。

◇東京ドーム3200個分が未利用

 財団法人日本立地センターによると、全国には約900カ所の工業団地があり、12年3月末現在、東京ドーム3200個分の約1億5000万平方メートルが未利用のまま。同センターの高野泰匡(やすまさ)産業立地部長は「長年使われず不良資産となった土地にとっては、メガソーラーが有効な活用方法になる」と指摘した。

 経済産業省によると、12年3月末時点で80万キロワットだった住宅用以外の太陽光発電量は、13年3月末には130万キロワットまで膨らむ見通し。中でも、発電容量の大きいメガソーラーへの期待度は高い。【竹地広憲】」