「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

              「お事はじめ」と「お事汁」

2013-01-09 07:41:42 | Weblog
明治26年生まれの亡母が元気だった頃、わが家では1月8日は「お事はじめ」で「お事汁」を食べる習慣があった。ここ数年その習慣は途絶えていたが、昨日老妻がそれを思い出しつくってくれた。(写真)大根、人参、サトイモ、こんにゃく、ゴボウを刻み、それに小豆を入れてごとごとと煮たお汁である。僕はこれまで深く、この日が何故「お事はじめ」で「お事汁」を飲むのか考えたことはなかったが、インターネットのおかげで80歳にして初めてそのいわれを知ることができた。

江戸時代から日本には「事の8日」という儀式があったそうだ。地方によって違うが旧暦の12月8日と2月8日に行われた行事で、12月8日は新年を迎えるにあたっての行事、一方2月8日は正月の行事が終わり、これから農作業が始まる「事はじめ」であった。わが家の「お事はじめ」が何故1月8日なのか不明だが、おそらく明治のはじめ旧暦から新暦に移行したとき、単純に1か月早まったのではないのだろうか。

亡母は東京の目黒川沿いの農家の出である。今はビル街になっているが、昔は地名が五反田からも判るように田園地帯であった。多分、亡母が幼かった明治時代には、まだ農村時代の行事が残っていたに違いない。亡母が1月7日の七草がゆの日にも台所で七草を包丁で刻みながら、調子を取り”七草なずな唐土の鳥が日本の土地に渡らぬ先にトントン、バがリ、トンバタリ”と歌っていたことが、懐かしく想い出された。

平成も25年、昭和、大正より前の明治は、はるか遠くになりにけりである。「お事はじめ」に「お事汁」を食べる習慣など今、残っている地方はあるのであろうか。