環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

テロ特措法

2007-09-16 22:59:24 | 政治/行政/地方分権
 

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「平成13年9月11日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法」というのが通称「テロ特措法」の正式名称なのだそうです。


今日の朝日新聞の朝刊が、「テロ特措法」の正式名称がなぜこんなにも長いのかという解説をしています。しばらくこの記事をご覧ください。


なんで、今日、このような記事を取り上げたかといいますと、いかにも日本的、しかもその極に極まれりと思ったからです。

9月3日のブログ 「なぜ先駆的な試みを実践し、世界に発信できるのだろう⑫ プライバシーの保護」で、日本の法律の名前が長いのはなぜか、「個人情報に関する法律」を例に、私の解釈を書いたからです。1973に成立したスウェーデンの法律が「Data Act」、15年遅れて1988年にできた日本の法律は「行政機関の保有する電子計算機にかかわる個人情報の保護に関する法律」でした。日本の法律の名前がこのように長いということはこの法律の適応範囲が狭められていると私は解釈しました。


もう一度、法律の重要性を繰り返しておきます。    

法治国家では法律が社会のシステムを構成する重要な要素の一つであり、国の機能、自治体の機能や国民が法に縛られることを考えますと、法のたて方、法の制定時期、法の内容などが重要です。日本は法治国家ではありますが、「治療志向の国」であるために、法律の制定が遅いこと、法の対象が狭いことが特徴と言えるでしょう。 

そして、もうひとつ、法律をつくることによって、新たに人間の活動が規定されること、その結果、資源とエネルギーの消費量が増加すること。たとえ 「社会の安心と安全を大義名分とする正義の戦争」であっても、私の環境論では、現代のテロや戦争が「環境への最大の人為的負荷であること」も・・・・・

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私の環境論9 環境への人為的負荷(1/19) 



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ライフスタイルの変更②

2007-09-15 08:02:36 | 社会/合意形成/アクター


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昨日のブログで、「ライフスタイルの変更は個人の自主的な取り組みに基づく行動であるから、その前に社会システムや慣習を改善すべきだ」と書きました。慣習は文化とのかかわりが強いので難しい面もありますが、国民の多くが認めているような「過剰包装」だとか「折々のつけ届け」など改善の余地はたくさんあると思います。

社会システム(社会の仕組み)を変えるという点では、スウェーデンの例をひとつ紹介します。例えば、スウェーデンでは1980年代に企業責任でアルミ缶の回収システムが作られました。85年に66%だったアルミ缶の回収率は、94年10月1日から「包装に対する製造者責任制度」が導入された時点では90%に達し、97年1月の環境保護庁の調査では92%になっていました。


関連記事

緑の福祉国家46 廃棄物に対する「製造者責任」の導入⑩ アルミ缶のリサイクル 


つまり、環境問題の本質は何かを十分理解したうえで、とにかく社会の仕組みを変えることが必要だと思います。
 
しばしば、日本の識者が標榜する日本の識字率や教育水準(進学率)の高さ、均質性、単一言語によるコミニュケーションの容易さなどを考えれば、日本は先進工業国の中で「社会の合意を作るための基本的な条件」が最も整っている国のはずです。環境先進国と言われるスウェーデンやドイツなどヨーロッパの国では人口に占める移民の割合が多く、この点では日本よりもはるかに不利な条件下にあります。米国も同様です。それなのになぜ日本では?????なのでしょうか。



要は、私たちが環境問題の本質を知り、「社会の仕組み」を変え、「不都合になった慣習」を改善し、行動に移せば、国民のライフスタイルは自ずから改善されるはずです。


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ライフスタイルの変更①

2007-09-14 20:56:07 | 社会/合意形成/アクター


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私たちは環境問題をこれまで、「公害」という認識でとらえられてきたために、環境問題への対応も技術的対応が主流でした。環境問題に対して技術的対応が難しいとわかったとき、 「ライフスタイルの変更」を唱える識者が現れました。この主張は正論ですので、多く異論をはさむつもりはありませんが、その前に社会システムや慣習を改善すべきです。


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2001年5月7日の小泉首相の所信表明演説(米100表の精神)、9月27日に2回目の所信表明演説

2007-09-13 22:00:40 | 政治/行政/地方分権


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今日は昨日よりも少し時間を遡って、小泉さんが首相に就任し、初めて国会で行った「所信表明演説」を検証してみましょう。2001年5月7日の朝日新聞夕刊がこの日の午後行われた所信表明演説の全文を掲載しています。


この所信表明演説は次のように構成されています。

●新世紀維新を目指して
●日本経済の再生を目指して
●経済・財政の構造改革
●行政の構造改革
●社会の構造改革
●21世紀の外交・安全保障
●むすび



次の図は上の図の赤枠の部分「新世紀維新を目指して」の冒頭の部分です。


次の図は演説の赤網をかけた部分、すなわち、「環境に関する部分」です。



そして、次は「むすび」の部分です。


この演説を読む限りは、小泉内閣は「20世紀型社会の改善内閣」の域を出ていません。21世紀の経済活動を大きく左右する要因である「資源」「エネルギー」については、「資源」という言葉は「新世紀維新を目指して」の項で「資源に恵まれないこの狭い国土で」という表現で一度登場するだけですし「エネルギー」という言葉は一度も登場しません。 


20世紀後半に明らかになった「少子・高齢化問題」「環境問題」は、20世紀の国づくりではまったく想定されていませんでした。しかし、21世紀の国づくりでは決して避けて通ることができない大問題です。このことは、「経済規模の拡大」を前提とする日本の21世紀前半の国づくりに大きな疑問を投げかけることになります。 「資源・エネルギー・環境問題」が、「これから50年後の社会のあるべき姿はいまの社会をそのまま延長・拡大した方向にはあり得ない」ことをはっきり示しているからです。 

ここで述べられている「環境問題」は「公害」の域を出ません。このことは、次の記事が報じている環境省の見解からも明らかでしょう。


この記事には、「担当の環境省内にさえ想像以上で正直驚いている。環境問題をこれだけの重要テーマにあげたのは『70年代の公害国会』以来ではないか(幹部)との声が上がった」と書かれています。


当時、私はこの記事を読んで、たいへん驚ろき、大ショックを受けると同時に、やはり、 「日本の政治家の環境問題に対する意識」への私の理解が誤ってはいなかったという印象を持ちました。この点では、日本とスウェーデン政治家の間に30年の落差がある(はっきり言えば、日本の政治家は30年遅れている)といっても過言ではないと思います。


余 談

小泉前首相が首相就任後初めて国会で行った「所信表明演説」のむすびの項に「米100表の精神」が語られています。私は、1週間前の9月6日夕方、長岡商工会議所で行われた私の講演会(主催:国立長岡技術科学大学)の機会に、長岡市内を散策しました。この日は台風9号が関東地方を直撃し、被害をもたらしましたが、なぜか新潟県は台風の影響を受けませんでした。

会場付近で撮った写真を2枚掲載します。「米100表の碑」と「米100表の幟」です。長岡駅西側大手通りに「米100表の幟」「常在戦場の幟」が交互にはためいていました。一昨日テレビを見ておりましたら、安倍首相の突然の辞任に伴う対応でなんと民主党の小沢党首が「常在戦場」という言葉を使っておられました。


 



さらに、2001年9月27日に小泉首相は2回目の所信表明演説を行いました。9月27日の毎日新聞(夕刊)に演説の全文が掲載されています。



そして、環境問題に関する部分(上の図の赤網をかけた部分)を拡大します。


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2002年2月4日の小泉首相の施政方針演説

2007-09-12 11:42:11 | 政治/行政/地方分権


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私は昨日のブログで、 「持続的な経済成長」という表現は、2002年2月4日の「小泉首相の施政方針演説」で用いられた表現そのままです、と書きました。今日は久しぶりに「日本あの日・あの頃」のカテゴリーで、2002年2月4日の「小泉首相の施政方針演説」を振り返ってみましょう。

この施政方針の中で示された「持続的な経済成長」という表現は一昨日の安倍首相の所信表明演説に引き継がれただけでなく、私の本「スウェーデンに学ぶ持続可能な社会 安心と安全の国づくりとは何か」(朝日選書 2006年2月)の論旨の展開の基礎の一つとなっているからです。

次の図をご覧ください。2002年2月4日の「小泉首相の施政方針演説」の全文です。


「はじめに」のところで、小泉首相は日本のめざす方向を次のように述べています。「我が国が持続的な経済成長を取り戻すためには」 「改革なくして成長なし」 という表現に象徴されるように、小泉首相のビジョン(政治目標)は 「持続的な経済成長」 (つまり、20世紀の経済社会の延長上にある「経済の持続的拡大」)です。その意味で、21世紀初頭に発足した小泉・連立内閣は 「行き詰まった20世紀経済を再生するための内閣」 といえるでしょう。  


関連記事

「成長一辺倒」の戦後60年、そしてこれからも?(2/16)


2001年4月の小泉・連立内閣発足以来、政府の「経済財政白書」のサブタイトルが、2001年の「改革なくして成長なし」に始まって、2005年が「改革なくして成長なしⅤ」であったことからも、この内閣が従来の経済拡大路線を着実に踏襲していることは明らかです。
 
関連記事

21世紀前半社会:ビジョンの相違② 日本のビジョン「持続的な経済成長」(7/26)


次の図は上の図の環境に関する部分(緑の網をかけた部分) 「美しい環境に囲まれ、快適に過ごせる社会」を拡大したものです。


私の本のもう一つのテーマであり、さらに大きな地球的規模の問題である「持続可能な開発」という、21世紀社会の最重要キー・ワードについてはたった一言、「9月に開催される『持続可能な開発に関する世界首脳会議』においては、環境保護と開発を共に達成すべきことを訴えてまいります」と述べたにすぎません。

ちなみに、持続可能な開発に関する世界首脳会議(環境・開発サミット、WSSD)は2002年8月26日から9月4日まで南アフリカのヨハネスブルクで開かれた国連主催の環境サミットで、1992年の「国連環境開発会議〈UNCED〉=地球サミット」後10年を期して開催されました。

新聞の一面をほぼ埋め尽くす1万2000字を超える施政方針演説は9本の柱からなっています。

はじめに
●経済財政運営の基本姿勢と金融安定化への取り組み
●構造改革断行の基本姿勢
●努力が報われる再挑戦できる社会
●民間と地方の知恵が活力と豊かさを生み出す社会
●人をいたわり安全で安心に暮らせる社会
●美しい環境に囲まれ快適に過ごせる社会
●子どもたちの夢と希望をはぐくむ社会
●安全保障と危機管理の基本姿勢
●外交の基本姿勢
むすび

しかし、小泉首相のこの所信表明演説の要旨は、「20世紀の社会が行き詰まっているので、それを改善した20世紀型の経済成長が今まで通りできる社会をつくろう」ということではないのでしょうか。

私がそう考えた理由は、環境問題に触れてはいるものの、21世紀の国づくりの大前提である「環境問題を十分踏まえた21世前半社会への展望」が見えないからです。このことは21世紀のキーワードである「持続可能性あるいは持続性」にかかわる言葉の使い方から明らかでしょう。この施政方針演説には「持続可能性あるいは持続性」にかかわる言葉が次のような表現で6か所登場します。

1. 持続的な経済成長(はじめに)
2. 効率的で持続的な財政への転換(経済財政の運営の基本姿勢と金融安定化への取り組み)
3. 特に医療制度は、厳しい医療保険財政の下、持続的な制度(人をいたわり安全で安心に暮らせる社会)
4. 「持続可能な開発に関する世界首脳会議」(美しい環境に囲まれ快適に過ごせる社会)
5. 年間500万台に上る使用済み自動車の持続的なリサイクルを行うための仕組み(美しい環境に囲まれ快適に過ごせる社会)
6. 両国の持続可能な経済成長を図るため「成長のための日米経済パートナーシップ」(外交の基本姿勢)

このように、地球温暖化に象徴される21世紀最大の問題である「環境問題」に対して、日本のリーダーの関心が極めて薄いということは、次の世論調査の結果が示すように、日本の市民の「環境問題への関心」が薄いことによるのかもしれません。




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2007年9月10日の安倍首相の所信表明演説 ハイリゲンダム 美しい星50

2007-09-11 22:00:26 | 政治/行政/地方分権
 

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安倍首相は昨日(9月10日)午後、衆参両院の本会議で所信表明演説を行いました。昨日の朝日新聞夕刊に、安倍首相の所信表明演説が掲載されていました。


「はじめに」の項に、安倍首相が強く主張する「戦後レジームからの脱却」について述べられた部分(上の図の赤枠部分)があります。その部分を拡大します。



所信表明演説の「持続的な経済成長」の赤枠部分と「環境で世界主導」の赤枠部分を拡大します。





持続的な経済成長」という表現は、2002年2月4日の小泉前首相の施政方針演説で用いられた表現そのままです。およそ4900字の今回の安倍首相の演説には、21世紀のキーワードである「持続可能な開発という言葉はまったくなく、「持続的」という言葉が「持続的経済成長」という表現で登場するにすぎません。つまり、安倍首相の21世紀論は「行き詰った戦後レジームを改善することによって、20世紀型の持続的な経済成長を再現する」ということに尽きるのではないでしょうか。


関連記事

2002年2月4日の「小泉首相の施政方針演説」(9/12)

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進化してきた福祉国家⑨ 「現実主義の国」vs「現状追認主義の国」 


次の図は安倍首相の就任直後(2006年9月)の所信表明演説と今回の所信表明演説の変化を示した図です。



関連記事

所信表明演説が示す安倍首相の「環境認識」(1/7)

安倍首相の施政方針演説(1/27)

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7月の景気動向指数

2007-09-10 21:15:25 | 経済


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9月8日の毎日新聞が、内閣府が7日、「7月の景気動向指数(速報値)」を発表したと報じています。景気動向指数は毎月6日、7日頃、内閣府が発表するもので重要な経済指標の一つです。私は環境問題の視点からこの指標を重視しており、私のブログでも4月以来毎月取り上げてきました。今後も取り上げていくつもりです


1月23日のブログ「環境と経済は切り離せない」 と、2月19日のブログ「景気動向指数と長期間労働時間」 で、その基本的な問題点を取り上げました。この高度成長期に創設された現在の指数11項目を変えない限り、エコノミストや経済評論家には環境問題の本質や恐ろしさが見えないからです。

経済指標を21世紀の社会に向けて新しくすることにより、今まで見えてこなかった新しい局面がエコノミストや経済評論家にも見えてくるはずです。



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「出来ること (ところ) から始めること」 の危険性③

2007-09-10 05:39:35 | 社会/合意形成/アクター


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では、どうしたらよいのでしょうか。環境問題に対して、個人にできることはないのでしょうか。
 
私は、個人にできることはたくさんあると思いますが、「対処すべき環境問題の規模の大きさ」と「残された時間の短さ」を考えると、この種の発想は問題の解決をいっそうむずかしくすると思います。




私たちの社会では、さまざまな経済・社会問題が同時進行しています。そのほとんどは「相対的」であり「絶対的」ではありません。

ですから、これらの経済・社会問題の把握には、「全体」と「部分」、「目的」と「手段」、「長期」と「短期」、「質」と「量」、を混同しないこと、両側面を考えること、そして、「選択」と「優先順位の設定」です。



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「出来ること (ところ) から始めること」 の危険性②

2007-09-09 07:21:55 | 社会/合意形成/アクター


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ですから、市民の草の根的な運動だけでは環境問題の解決はおぼつきません。私たちがいまなすべきことは、経済拡大を目的とした古い考えや社会制度をそのままにして「身近なこと(ところ)から始める」「出来ること(ところ)から始める」ではなく、「現状をよく知ること」です。

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各人が「ことの重要性」に気づき、「出来ること(ところ)から始める」という考えは、日本ではきわめて常識的で合理的で一般受けする穏便な考えですので、とくに市民団体から好まれます。日本の社会の仕組みはきわめて強固で、目の前には困った状態が迫ってきているので、とりあえず「出来ること(ところ)から始める」とか、「走りながら考える」とかいった発想になりがちです。


この発想だと、むずかしいことは先送りすることになりかねません。このことはマスメディアが「政府の決定の先送り」を頻繁に報じていることからも明らかです。


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「出来ること (ところ) から始めること」 の危険性①

2007-09-08 21:41:31 | 社会/合意形成/アクター


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人類の歴史のなかで私たちが初めて直面する「少子・高齢化問題」「環境問題」への対応に、「共通のコンパスと最新の海図」がないまま、国民が国の将来を憂い、不安と焦燥感からそれぞれの立場で「出来ること(ところ)から始める」のはたいへん危険です。よかれと思ってやったことが、全体として、経済学者がいう「合成の誤謬)」を招きかねないからです。

自己啓発活動から 「魅力的なメッセージ」 が流れてきます。

「あなたが変われば、世界が変わる」「大海も一滴の水が集まってできる」「ちりも積もれば山となる」「千里の道も一歩から」「社会や政治が悪いという批判は誰にでもできることだが、自分は何ができるかを問える人は少ない」「私たち一人ひとりの力はほんとうにささやかであるが、そのささやかな力でも無数に集まれば、社会を動かすことができる。今までの社会の変革はすべて、ささやかな一歩の上に築かれたものであり、『そのささやかな思い』と『行動の集積の結果』がやがて、大きなうねりとなって社会に変化が起こる」などなど。

「気づき」が大切、そして「参加と行動」をそれぞれが出来ること(ところ)から・・・・

いま、皆さんは ほんとうに そうお考えなのでしょうか? 

こうしたメッセージには、「異議なし」といいたいところです。しかし、こと日本の環境問題に関しては、あえて異議を唱えなければなりません。このような発想からは、「環境問題の規模の大きさについての認識」「時間の観念」完全に抜け落ちているからです。






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進化してきた福祉国家⑫ スウェーデンを軽視する日本 

2007-09-07 22:00:41 | 社会/合意形成/アクター

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一昨日、昨日とスウェーデンのパフォーマンスが20世紀の経済大国よりも相対的に優れた成果を提示しているにもかかわらず、このようなスウェーデンに学ぼうと考える人は、日本の政財界には多くありませんでした。

経済産業省・経済産業研究所の小林慶一郎研究員が「現代」(2002年12月号)で、スウェーデンに対する典型的な日本の反応を報告しています。


上の記事の中に「1930年代の世界恐慌をいち早く脱出することに成功した経験を持つ・・・・」という記述があります。この部分の状況を補足するために、岡沢憲芙さんの著書「スウェーデンの挑戦」(岩波新書177 1991)の序章の当該部分を紹介します。当時のアメリカイギリスがスウェーデンをどのようにみていたか、その一端を知ることができます。今から70年以上も前のことです。




900万人と1億2000万人の人口の差、1%と16%の世界経済に占める割合の差は、たしかにスウェーデンが日本に比べれば、人口や経済の規模でまぎれもない小国であることを示しています。しかし、日本がいまだに処理しきれていない不良債権問題が、スウェーデンでは1年で解決したのは、「スピード」「政党間の協力」「透明性」があったからでこれらは明らかに日本にはなかった要因です。
 
「同じ種類の問題」を同じ方針や手段で解決しようとするときには人口が少ない小国のほうが有利なのは当然です。しかし、こと不良債権処理に関しては、スウェーデンには、日本にはなかった発想や方法論や手腕がありました。似たようなことはアスベスト問題でも、原発問題でも、温暖化問題でも、ゴミ問題でも同じです。このようなときに、人口規模が違いすぎるとか、経済規模が異なるという表面的な言い訳は、成り立ちません。このような言い訳をする人の論理的思考の欠如が疑われます。


余談になりますが、スウェーデンも日本も議会制の民主主義の国です。900万人と1億2000万人の人口の差は紛れもない事実です。しかし、実際に両国の「国の政策決定」に携わるのは900万人でも、1億2000万人ではありません。

日本の憲法では、国会は「国権の最高機関」であって、「国の唯一の立法機関」と位置づけられています。日本の国会は、衆議院と参議院の二院で構成され、両議院は「全国民を代表する選挙された議員(国会議員」(衆議院議員参議院議員)で組織すると定められています。現在の(2007年の)衆議院議員の定数は480人で、うち300人は小選挙区制によって、180人は比例代表制により全国を11に分けた各選挙区から選出されます。 参議院議員の定数は242人で、うち96人は比例代表制によって、146人は都道府県を単位とする47の選挙区から選出されます。

一方、スウェーデンの国会は、現在、1院制です。1970年(昭和45年)、スウェーデン国会は1866年(慶応2年)以来の伝統を持つ二院制(第一院:150人 任期8年、第二院:230人 任期4年)を一院制(350人 任期3年)の直接・比例代表選挙に切り替えました。1976年の選挙から定員を1人減らして、349人に変更し、現在に到っています。

関連記事

スウェーデンの国会議員の投票率の推移(1/9)


ですから、現在の両国の国会議員の数は、日本が衆・参合わせて722人、スウェーデンは349人、つまり、 「国の政策決定」に携わる国会議員の数は、おおよそ日本2に対してスウェーデン1ということになります。



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進化してきた福祉国家⑪ スウェーデンについて私たちが、最近知ったこと

2007-09-06 06:28:15 | 社会/合意形成/アクター

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昨日のカテゴリー「スウェーデンあの日あの頃」では、「スウェーデンについて私たちが知っていることというテーマで書きましたが、今日の「スウェーデンあの日あの頃」では、「スウェーデンについて私たちが、最近知ったこと」と題して、2000年以降、この7年間の世界的な大きな流れの中でのスウェーデンの行動を書いてみようと思います。


20世紀のスウェーデンは他のほとんどの先進工業国と同じように、豊かさの向上、貧困や格差などの社会問題は経済が成長することで解決できると考え、フォアキャスト的手法で、「福祉国家(人にやさしい社会)」を建設し、維持してきました。

1972年にローマクラブが「成長の限界を」発表したちょっと前、1968年ごろに環境問題の重要性に気づき、72年には 「第1回国連人間環境会議」 の開催に漕ぎつけました。

1980年代後半からはそれらの経験と教訓から「持続可能な社会」の模索を始め、以後、地球の限界(地球の有限性)が科学的に明らかになってくると、他の先進工業国に先駆けてバックキャスト的手法を用いて「生態学的(エコロジカル)に持続可能な社会」への道筋を考え、96年には20世紀の「福祉国家」を「緑の福祉国家」(環境に十分配慮した福祉国家)を建設するという新たな政治的なビジョンを掲げたのです。

2000年以降、経済のグローバル化の進展が高まるにつれて、国際機関で様々な国際比較が行われ、それらのデータに基づいて、国際ランキングが公表されるようになりました。ランキングの生命は「判断基準の的確さ」ですので、国際的に試行錯誤がなされ、改善が加えられています。

2000年以降に公表された国際ランキングの事例のいくつかを、ご参考までにあげておきましょう。一般に、21世紀の社会を左右するようなデータのランキングでは、スカンジナビア3国を先頭に北欧の国々の活動が目立つようになってきました。2000年以降の国際社会におけるスウェーデンの経済的パフォーマンスは、例えば、

●2001年10月 国際自然保護連合(IUCN)の「国家の持続可能性ランキング」(180カ国)
1位スウェーデン、ドイツ12位、日本24位、米国27位

●2004年、2007年 OECD30カ国の「持続可能性ランキング」
2004年 1位スウェーデン、 米国30位
2007年 1位スウェーデン、 米国30位

●2004年 UNDP(国連開発計画)の「一人当たりのCO2排出量」(先進工業国)
1位スウェーデン(2000年5.3トン、日本9.3トン) 

●2005年1人あたりGDP 内閣府
7位米国、8位スウェーデン14位日本

●2006年 民主主義の成熟度ランキング(Economist Intelligent Unit EIU)
1位スウェーデン、13位ドイツ、17位米国、20位日本

●2006年のODA実績(GNI比:ODA額の国民総所得比) 
 OECD(開発援助委員会DAC)
1位スウェーデン、ドイツ13位、18位日本、21位米国

●2006年 世界競争力ランキング(世界経済フォーラム WEF:ダボス会議)
3位スウェーデン、6位米国、7位日本、8位ドイツ

●2007年「世界IT報告書」 IT活用世界ランキング(世界経済フォーラム WEF:ダボス会議)122カ国ランキング
2位スウェーデン、7位米国、14位日本

●2007年 温暖化対策(CO2削減と国の政策)ランキング German Watch
1位スウェーデン、5位ドイツ、26位日本、53位米国

関連記事

温暖化対策実行ランキング:スウェーデン1位、日本42位(12/9)


●RCI(Responsible Competitiveness Index)ランキング 2007
グローバルな市場における持続可能な開発ランキング(英国のAccounfAbility 社によるCSR国際ランキング)
1位スウェーデン、11位ドイツ、18位米国、19位日本
  
さらに様々なランキングのデータを、インターネット上で見つけることが可能でしょう


現在は20世紀型の「経済規模の拡大」から21世紀の「経済の適正規模化」への時代の転換期ですので、判断基準の変更によって20世紀の経済大国(具体的にはG8の国々)がランキングの順位を落とす現象も見られるようになってきました。



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進化してきた福祉国家⑩ スウェーデンについて私たちが知っていること

2007-09-05 11:54:08 | 社会/合意形成/アクター

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ところで、私たちはスウェーデンという国について、どんなことを知っているのでしょうか。まず、今年4月、前期の講義の初日に、大学生75人に聞いてみました。彼らの回答は次のようでした。


上の図で、青字のものはスウェーデンではなく、ノルウェーやフィンランドと関連します。

マスメディアを通じて断片的に紹介されるスウェーデンの姿を、次の図に示しました。この図は私の本 『スウェーデンに学ぶ持続可能な社会』(朝日選書 2006年2月発行) の13ページに掲載されているものと同じです。




「ノーベル賞の国」「福祉国家」「森と湖の国」。これらは、多くの日本人が抱くスウェーデンのイメージです。このようなイメージとは裏腹に、スウェーデンは科学技術と社会制度のバランスがよくとれた懐の深い国です。図の中央の略図でスカンジナビア3国(スウェーデン、ノルウェー、フィンランド)の位置関係がわかります。

スウェーデンの福祉政策に詳しい訓覇(くるべ)さんによればこの3国は「社会保障国家」ではなく、 「福祉国家」です。

すなわち、他の欧米の先進工業国とは違ってすべての国民を対象とし、「一定の生活水準」を保証する というわけです。

スウェーデンの様々な社会事象が新聞、雑誌、テレビなどのマスメディアを通じて断片的に日本に紹介されています。その多くは好意的であり、福祉先進国(時には福祉大国:以下同じ)、環境保護先進国、原発先進国/脱原発先進国、人権先進国、科学技術先進国、開かれた民主主義の国、女性の社会進出が盛んな国など様々なイメージが登場します。

次の図はその一例を示したものです。前の図と内容的にはほとんど同じものです。毎年10月になりますと、「ノーベル賞の国」となります。これらの従来からのイメージに、1990年頃から、「出生率(合計特殊出生率)の増加」、国連の平和維持活動(PKO)の関連でスウェーデンの「国連平和維持軍」などの新しいイメージが新たに加わりました。



これらの表現方法は様々な社会事象を総合的に判断しないで、それぞれを個別的なテーマとして取り扱っているという点で非常に日本的だと思います。福祉、環境、原発、人権、科学技術、民主主義などは一見独立した事象のように見えますが、これらの事象ははたしてバラバラに起こるものなのでしょうか?

 実はそうではないのです。本来、これらはお互いに密接に関連しあっているはずです。多少の濃淡はあるものの、外交政策、経済政策、交通政策、農業政策、住宅政策などの国の重要政策も相互に関連しており、直接あるいは間接的に福祉政策、環境政策、エネルギー政策に連動します。

一般に、日本のスウェーデンに関する記事や書籍はテーマごとにその分野の専門家の記述によるものが多く、分析的で、社会事象全般を包括的にとらえるという視点に欠けています。このことは何もスウェーデンを理解するときの視点に限ったことではなく、日本の様々な社会事象を理解するときも同様です。

ですから、それぞれの事象を個別的にとらえるのではなく、この図に示したように、「福祉国家」という概念を中心として「それぞれの事象の多くが有機的に関連しあっている」と理解するのがよいと思います。スウェーデンが福祉国家だから、長年かかつて築き上げた福祉国家の維持・発展のために「環境保護」が必要であり、「原発先進国」と言われながらも「脱原発先進国」でもあるわけです。

240年を超えると言われる運用の歴史を持つ「情報の公開制度」、190年を超える「オンブズマン制度」に加えて、福祉国家建設の過程で醸成され 「開かれた民主主義」など、いずれもスウェーデンの現実主義から生まれたものです。福祉国家であるがゆえに、「人権尊重」の関心が高く、男女平等を含めた様々な「平等社会」を理想として掲げ、その実現のために努力してきたのです。 



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日本の地方分権:医療の広域化

2007-09-04 08:06:24 | 少子高齢化/福祉/年金/医療


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今日はまず、次の記事をとくとご覧ください。今日の朝刊に載った比較的小さな記事です。



次の記事がこの問題の背景伝えています。

この種の問題は全国どこでも起こりうる日常的な生活に密着した出来事です。ですから、今回の奈良県知事と舛添厚労大臣との面会の結果、舛添さんが示した「医療の広域連携強化」が、奈良県の問題の解消のためだけではなく、地方分権の強化の中で広く全国的に制度化されることを期待します。

このような事件に接すると、思い出すのがスウェーデンの「地方分権の理念」とその理念に基づいた制度の構築です。事件の起こる2日前の8月27日のブログ「地方分権 国と地方の役割分担」 で、次のように書きました。

スウェーデンは少ない人口にもかかわらず、世界で最も非中央集権的な基礎自治体(288のコミューン=市町村)があり、日常生活に密着した各種の責任を担っています。スウェーデンの地方分権の理念は、「行政の決定は、できるかぎりその影響を受ける人々の近くでなされるべきである」という点にあります。

そして、国と地方の力関係を示す「砂時計モデル」を紹介し、「医療については、その技術的水準を保つことが地方自治体(市町村)の規模ではむずかしいと考えられているので、全国20のレン(日本で言えば「県」)が対応している」と書きました。



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なぜ先駆的な試みを実践し、世界に発信できるのだろう⑫      プライバシーの保護

2007-09-03 21:44:33 | 社会/合意形成/アクター

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昨日のブログで、世界最初の「情報公開制度」をつくったスウェーデンでは、公開を制限される情報として、国家の安全、外交関係、民族関係および個人のプライバシーに関する情報などがあることをお話しました。

今日は、そのような中から個人のプライバシーを保護する法律についてお話しましょう。今日の話は、「スウェーデンあの日・あの頃」というカテゴリーに分類されていることからおわかりのように、15年前(1992年)頃までの話です。

工業先進国24か国で構成するOECD(経済協力開発機構)加盟の24か国のうち、17か国が1989年末までになんらかの形で個人情報を保護するための法律を制定していました。

1980年9月、欧州評議会で「個人データの自動処理に関する個人の保護のための条約」が締結され、スウェーデン、フランス、スペイン、ノルウェー、西ドイツの5か国がこの条約を批准しましたので、1985年10月にこの条約は発効しました。
 
加盟国24か国の先頭をきって、1973年にスウェーデンで「Data Act(データ法)」という法律が成立しました。ついで、アメリカで「Privacy Act(プライバシー法)」と呼ばれる類似の法律が作られ、その他の国々でも、相次いで、同様の趣旨の法律が制定されました。

日本では、スウェーデンに遅れること15年、1988年になってこの分野の関連法が制定されました。この法律は「行政機関の保有する電子計算機に係わる個人情報の保護に関する法律」という名前の法律で、法律の名前が他国の類似の法律に比べて、大変、長くなっています。


法律の名前が長いということはこの法律の適応範囲が狭められていることを意味します。法律の名前からおわかりのように、この法律は「規制対象を行政機関の保有するものでなければだめだ」と限定しています。

ですから、民間機関の保有するものはこの法の対象外なのです。それでは、行政機関が保有しているものはすべて規制対象になるのかといいますと、こんどは「電算機に入っていなければだめだ」と言っています。この様に、日本の法律は、一般に、問題が起きた後にその問題に対処するために制定されることが多く、運用中に新たな関連の問題が起きた時にはじめて、既存の法律を改正して規制対象を広げることになるのです。

スウェーデンでは法律の制定当時から行政機関の保有しているものと民間機関が保有しているものとを区別せず、両者に規制の網をかけています。私たちのプライバシーをこれまでに犯してきたものが何か、これから犯す恐れのあるものは何かを考えれば、当初から両者に網をかけるのは当然のことだろうと私には思えます。

一方、日本の法律では、行政機関の保有する個人情報のみがとりあえず規制対象になっておりますので、おそらく、何年かこの法律を運用している過程で、民間機関の保有している個人情報で私たちのプライバシーが犯された状況が生じた時に、つまり、何らかの犠牲者が出た時になって、はじめて法の規制対象に「民間機関の保有する情報」が追加されることになるのでしょう。

すでに、日本では予期せぬところからダイレクトメールが届くような状況にあり、近々、民間機関の保有する個人情報による様々な被害がでてきそうな徴候がすでにあると思います。このような心配をしておりましたら、1991年12月23日付けの毎日新聞に「生命保険の連絡票、通知票:個人データ原本、出回る 契約者リストも、都内の情報会社に」と題するニュースが掲載されました。今後、日本のプライバシーに関する法律がどの様に展開して行くか注目したいと思います。
 
以上の話は、15年前、つまり1992年ごろまでの話です。世界初の「個人情報保護法」(1973年成立、98年改正)を持つスウェーデンは、日本の近未来を考えるときにこの分野でも参考になるでしょう。ちなみに、日本の「個人情報保護法」が全面施行されたのは、2005年4月1日からでした。


法治国家では法律が社会のシステムを構成する重要な要素の一つであり、国の機能、自治体の機能や国民が法に縛られることを考えますと、法のたて方、法の制定時期、法の内容などが重要なことがおわかりいただけるでしょう。日本は「治療志向の国」であるために、法律の制定が遅いこと、法の対象が狭いことが特徴と言えるでしょう。


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