環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

広島平和祈念式典:広島市長の「平和宣言」、総理大臣の「挨拶」、そして、米国債 初の格下げ

2011-08-07 12:43:01 | 原発/エネルギー/資源
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 昨日のブログで「広島原爆の日」の祈念式典で行われた松井一実・広島市長の「平和宣言」と菅総理大臣の「あいさつ」から、原発に関する部分を紹介しましたが、昨日の朝日新聞の夕刊に「市長の平和宣言」と「総理大臣のあいさつ」全文が掲載されていましたので、将来の議論のための資料として保存しておきます。

 広島市長の平和宣言(全文)
 また、東京電力福島第一原子力発電所の事故も起こり、今なお続いている放射線の脅威は被災者をはじめ、多くの人々を不安に陥れ、原子力発電に対する国民の信頼を根底から崩してしまいました。そして、「核と人類は共存できない」との思いから脱原発を主張する人々、あるいは原子力管理の一層の厳格化とともに再生可能エネルギーの活用を訴える人々がいます。日本政府はこのような現状を真摯に受け止め、国民の理解と信頼を得られるように早急にエネルギー政策を見直し、具体的な対応策を講じていくべきです。

 総理大臣のあいさつ(全文)

 そして、わが国のエネルギー政策についても白紙からの見直しを進めていきます。私は原子力については、これまでの安全神話を深く反省し、事故原因の徹底的な検証と安全性確保のための抜本対策を講じるとともに、原発への依存度を引き下げ、原発に依存しない社会をめざして参ります。今回の事故を人類にとっての新たな教訓と受け止め、そこから学んだことを世界の人々や将来の世代に伝えていくこと、それが我々の責務であると考えています。


 そして、もう一つ、昨日の大きなニュースとして「米国債 初の格下げ」というのがありました。


 この記事によりますと、米国は現在、約14.6兆ドル(約1100兆円)の巨額債務抱えており、米政府の債務削減計画が格付けを維持するには不十分だとして、米国の格付け会社「S&P」は1941年に米国債を「AAA」に格付けし、70年間維持してきたのだそうです。その格付けが1段階下がって 「AA+」となったというのですから、大ニュースというわけです。

 この記事の中央に、主要各国の格付け(S&P)という表がありますが、もう少し詳しい資料がないものかとネット上ですこし調べてみました。そして、見つけた第一商品の「Future24 REPORT」によりますと、最上位「AAA」にランクされているのは、英国、ドイツ、フランス、カナダのほかに、オーストラリア、オランダ、シンガポール、スイス、スウェーデン、香港、ルクセンブルクの7カ国あることがわかりました。ちなみに、最近、国際経済記事にしばしば登場するポルトガルは「BBBマイナス」、ギリシャは「CC」でした。

 スウェーデンの格付けは「AAA」で、健全であると判断されているようです。


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再掲 古くて新しい問題 「高校野球」と「原発」

2011-08-06 13:25:53 | 原発/エネルギー/資源
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今日、8月6日は「第93回全国高校野球選手権大会の開幕日」です。そして、被爆66年を迎える「広島原爆の日」でもあります。

 午前8時から始まった「広島平和記念式」で、松井一実・広島市長が読み上げた「平和宣言」の中に、原発について、次のような文言が入っていました。

X X X X X
 また、東京電力福島第一原子力発電所の事故も起こり、今なお続いている放射線の脅威は被災者をはじめ、多くの人々を不安に陥れ、原子力発電に対する国民の信頼を根底から崩してしまいました。そして、「核と人類は共存できない」との思いから脱原発を主張する人々、あるいは原子力管理の一層の厳格化とともに再生可能エネルギーの活用を訴える人々がいます。日本政府はこのような現状を真摯に受け止め、国民の理解と信頼を得られるように早急にエネルギー政策を見直し、具体的な対応策を講じていくべきです。
X X X X X


 一方、菅総理大臣の「あいさつ」には、原発について、次のような文言が入っていました。

X X X X X     
 そして、わが国のエネルギー政策についても白紙からの見直しを進めていきます。私は原子力については、これまでの安全神話を深く反省し、事故原因の徹底的な検証と安全性確保のための抜本対策を講じるとともに、原発への依存度を引き下げ、原発に依存しない社会をめざして参ります。今回の事故を人類にとっての新たな教訓と受け止め、そこから学んだことを世界の人々や将来の世代に伝えていくこと、それが我々の責務であると考えています。
X X X X X


 そこで、今日のブログでは、2007年8月7日および8日に掲載した記事を再掲することにしました。当時よりも今日のほうが「私の20年来の主張」をおわかりいただけるだろうと考えたからです。


 古くて新しい問題 「高校野球」と「原発」 ①  2007年8月7日 

 いよいよ、明日8月8日から甲子園球場で第89回全国高校野球選手権大会が始まります。この時期になると、私がいつも思い出すのは古くて新しい問題である「夏の甲子園 高校野球と原発」という話題です。炎天下の高校球児の大活躍に私たちはテレビに釘つけとなり、電力会社は落ち着かない日々を迎えることになります。

 そこで、今日は「高校野球」と「原発」の話題をお届けします。私の手元に、「徹底討論 地球環境」(福武書店 1992年4月)という本があります。



 この本は環境ジャーナリスト石弘之さん(朝日新聞)、岡島成行さん(読売新聞)、原剛さん(毎日新聞)の3人による「地球環境」について討論を収録したものです。3人とも、現在は大学に籍を移し、活躍しています。この本の中に、私の発言が出てきます。その場面(p218~219)をリライトします。

 日本は問題が起こったときに、それをうまくその場で糊塗していく対処療法はうまいが、構造的に問題の根っこを潰していく価値観と方法論はこれだけ公害殺人を犯しても、なお身についていない。この間あるシンポジウムでスウェーデン大使館の環境・科学担当の小沢さんがスウェーデン社会との比較論でそのことに言い及んだ。日本は夏の電力ピーク時に甲子園で高校野球大会があって電力がもうギリギリにきていると騒ぐ。日本ではだから原発をもうひとつつくろうという話になってしまう。
スウェーデンの解決法は簡単だ。高校野球を9月にやればいいじゃないかって言ったんだ。会場のお客さんが僕の顔をにらんでいるから、違うぞ、夏の全国大会は毎日新聞じゃなくて朝日新聞がやっているんだぞって言ったら大笑いになりましたけれどね。僕んとこは寒いときにやっているんだ。クーラーなんかいらないときに(笑)。

 そうそう。ですからすべて供給の論理、電気がいるから原発をつくるんだっていう論理でしょう。われわれ消費者もこの論理にがっちり組み込まれているわけですよ。

 変えればいいというんですよ。暮らし方、ライフスタイルをね。

 われわれ消費者にも責任がある。生活を変えないままに、必要なものだけを要求する。誰だって電力がこの増加率で供給し続けられるとは思っていない。でも、当面は供給の論理のすべてのツケが環境に回されてくる。ですから、こんなバカげた量的な拡大はもうええじゃないか。「いち抜けた」という、脱落の論理が必要なんですよ。
 電力会社も、エネルギー資源の将来、環境へのツケ回しを考えたら、もうこれ以上電力供給は保障できませんと宣言するしかない。あるいは、欧米の1部の消費者と電力会社が面白い協定を結び始めましたが、「夏のピーク時にはエアコンの使用を自粛する代わりに、電気料金を特別割引する」というようなものがある。あるいは、エアコンを簡単に使えないように多額の税金をかけるなり、エアコン電力特別料金を考えるなり工夫がなさすぎますよ。

岡島 それは必要ですね。

 石油だって有限なんですから、いかに二酸化炭素の効果的吸収法が確立したって資源は着実に減っていくわけです。

岡島 なくなってしまいますね。

 このような状況は15年経った現在でもほとんど変わっていません。2月17日のブログ「経済、エネルギー、環境の関係」 に電力の推移を示す図がありますので、ご覧ください。電力は確実に増加しています。2005年の発受電電力量は過去最高を記録しました。

 夏の甲子園と原発の関係で特に重要なのは、高校野球の会期(今年の場合は8月8日から22日までの15日間)中のそれぞれの日が記録する「最大電力」と「供給力」の関係です。東京電力(株)はこの関係を大変わかりやすい 「TEPCO でんき予報」 で公表しています。この「でんき予報」は高校野球の会期を含めて7月9日(月)~ 9月7日(金)の期間中、予想される電力の需給概況について毎朝情報を提供しています。

 今年は特に、7月16日に起きた新潟県中越沖地震によって東京電力柏崎刈羽原発にかなりの損傷が認められ、原子炉7基がすべて停止していますので、これまでになく電力の送受電には困難が伴うものと思います。



古くて新しい問題 「高校野球」と「原発」②  2007年8月8日

 今日8月8日は、第89回全国高校野球選手権大会の開幕日です。15日間にわたる熱戦が期待されます。

 昨日のブログで、 「夏の電力ピーク時と高校野球」の問題について私が15年以上前に考えていたことを紹介しました。現状を変えずに、電力会社だけでこの問題に対応するのであれば発電設備を増設することになりますが、主催者である日本高校野球連盟と朝日新聞社が社会全体の問題としてこの問題の解決策を考えれば、電力ピーク時を避けて開催することも可能ではないかと考えたのです。

 試みに、1990年から2007年までの18年間の開幕日を調べてみますと、8月6日が3回、8月7日が2回、8月8日が12回、8月10日が1回(1992年)でした。1992年の開幕日が8月10日となったのは、8月8日がバルセロナ・オリンピック閉会日とぶつかったために開幕日を2日遅らせたからなのだそうです。

 ついでに、1970年から今年2007年までの38年間の開幕日と会期を調べてみると、8月6日が3回、8月7日が5回、8月8日が26回、8月9日が2回、8月10日が1回と8月11日がそれぞれ1回ずつでした。このことは「開幕日が8月8日で会期は15日」が原則となっているものと想像できます。

 それでは、来年の第90回大会の開幕日はいつなのでしょうか。次の記事によれば開幕日は2008年8月2日、会期は2日延長して17日だそうです。開幕日を前倒ししたのは北京五輪と開幕日が重なるからだそうです。


 このことは、90年にもおよぶ伝統の「夏の甲子園」も主催者の話し合いで開幕日の変更が可能であることを意味しています。

 昨日と今日、私が敢えて「夏の電力ピークと高校野球」の問題を取り上げたのは、国民に共通する問題については技術による解決だけではなく、制度や仕組みを変更することによって問題を解決できる可能性があることをお伝えしたかったからです。

 すべての資本主義国の中心的課題である「経済成長の必要性」と「地球の有限性」との間には20世紀には想定されていなかった21世紀の大問題「経済活動の適正化」 が存在します。気候変動(日本では地球温暖化)をコントロールするために、「経済成長」を各国間で分かち合わなければならなくなったとき、何よりも重要な手段は「技術」ではなく経済的、政治的にどう対処すべきかということです。

 私たちが直面している地球温暖化をはじめとする地球規模の環境問題は、その国の伝統行事の変更さえ迫るものなのです。

 

毎日新聞 福島1号機 東電ベント不調報告

2011-07-22 12:18:32 | 原発/エネルギー/資源
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今日の毎日新聞朝刊が一面トップで、東京電力が3月12日午後に福島第一原発1号機で格納容器の圧力を下げる目的で行ったベントの成否について疑問を呈しています。この問題は非常に重要ではありますが、当事者以外にはわからない問題ですので、将来の議論のために記録に留めておくことにします


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もし、福島第一原発の原子炉格納容器にスウェーデンの「フィルトラ・システム」が設置されていたら(2011-07-20)



もし、福島第一原発の原子炉格納容器にスウェーデンの「フィルトラ・システム」が設置されていたら

2011-07-20 18:47:24 | 原発/エネルギー/資源
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 スウェーデンは「科学技術」と「社会制度」のバランスがよくとれた懐の深い国です。日本のスウェーデン研究者の間では、「スウェーデンと日本の両国民の資質には共通な部分がかなりある」と言われますが、両国が長年にわたって築き上げてきた「 現実の社会(制度)」 「将来に対する見通し」には、雲泥の差があります。自然科学や社会科学に基礎を置く理念のもとで、適正な技術、ほどほどの精神、現実へのすばやい対応など、スウェーデンが20世紀後半に実践してきた行動や考え方は、21世紀の「安心と安全の未来」への道を開くことになるでしょう。

 このような認識から、私はこのブログでは両国の共通点よりも、むしろ意識的に相違点に注目してきました。

 さて、 「予防志向の国」スウェーデンと「治療志向の国」日本、あるいは「あべこべの国」日本とスウェーデンという判断基準に基づいて原発の安全性に対する両国の技術的対応の相違を検討してみましょう。ここでは、細かい技術論は専門家にまかせて、誰にでもすぐわかる「原子炉格納容器のベント」に注目します。

 1979年のスリーマイル島原発事故を教訓にスウェーデンは、原子炉の安全性を一層高めるために、世界に先駆けてデンマークに近いバルセベック原発の1号機および2号機の原子炉格納容器に「フィルトラ・システム」 を設置しました。

 これは、何らかの理由で原子炉格納容器内の圧力が高まり、格納容器の破壊が予測された場合に、 「格納容器内の圧力を逃がすベント作業」(原子炉格納容器の弁を開けて放射性物質を含む蒸気を大気に排出する作業)に伴って大気へ放出される大量の放射性物質を封じ込める装置です。

 この装置は1985年よりバルセベック原発1号機および2号機で稼働を始め、1989年までに残りの10基の原子炉格納容器すべてに類似のFILTRA-MVSSが設置されました。このシステムは日本でも一部で設置の検討が行われましたが、いまだ設置には至っていません。日本の原子力関係者の表現に従えば、原子炉の一層の安全性を高めるために「原発の多重防護(具体的には五重の防護)」に、さらにもう一重の、つまり六重の防護が施されたことになります。

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東日本大震災:東電会長 廃炉認める(朝日新聞 朝刊)、  放射能封じ 長期戦(朝日新聞 夕刊)(2011-03-31)



 岩波書店の雑誌「世界」の7月号が東日本大震災・原発災害の特集を組んでいます。この中に「安全な原発などありえない 技術と安全の思想を問う」と題する座談会記事があります(p54~67)。


 発言者は小倉志郎さん、後藤政志さんおよび田中三彦さんの3人。編集部の司会者が次のようなテーマで質問を投げかけています。

    ●原発に関わった技術者として
    ●事故の状況をどう見るか
    ●地震国で原発を集中立地する愚かさ
    ●フィルターを着けていれば・・・・・・
    ●地震に耐える基準はあるのか取り返しのつかない原子力事故

 私が特に注目したのが、「フィルターを着けていれば・・・・・・」 というテーマです。司会者は次のように問うています。

放射性物質が首都圏まで含めて降り注いだのは、格納容器の破裂を避けるために圧力を逃がすベントが行われたことが最大の要因のようです。格納容器に、ベントの際に放射性物質を濾し取るフィルターが設置されていたら、結果は違いましたか。

後藤さんの答え:決定的に違ったでしょう


 報道によれば、3月12日午前10時17分に福島第一原発の1号機で、格納容器内の圧力を逃がすために弁を操作し、放射性物質を含んだ高温の水蒸気を外部に放出する「ベント作業」が始まりました。3月13日午前9時20分に3号機の「ベント作業」が行われました。3月15日午前0時頃、2号機のベントが行われました。これら1号機~3号機のベント作業により、3月12日から15日かけて大量の放射性物質が環境に放出されました。

 そして、今日(7月20日)の朝日新聞朝刊によれば、政府と東京電力は19日、東京電力福島第一原発の事故収束に向けた工程表の改訂版を発表し、「福島第一原発の1~3号機の外部への放射性物質の放出量は、炉心の冷却が進んで、事故直後に比べて6月末時点で200万分の1に減少している」としています。


 これらの事実と後藤さんのお考えを合わせて考えれば、もし福島第一原発の原子炉格納容器のベントにフィルターが着いていたなら、つまり、スウェーデンが設置したフィルトラ・システムのような装置が設置され、それらが正常に稼働していたなら、今私たちが直面しているような環境の放射能汚染は最小限に食い止められていたと思われます。

 「予防志向の国」スウェーデンと「治療志向の国」日本の原発に対する技術的な対応の相違が日本の大惨事を招く結果となり、日本の将来に禍根を残すこととなってしまったといっても過言ではないでしょう。



 この座談会の記事とは別に、2ヶ月前の5月19日(木) に行われた「新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会(平成23年度第1回)」の議事録がネット上で公開されています。この議事録の19~20ページに、スウェーデンのフィルトラ・システムに触れたところがありますのでご覧ください。

(吉川委員)

 残りの二点のうち、次はベントについての質問です。昔、シビアアクシデント対策として他の国ではベントの仕方について随分検討されました。そのままサプレッションプールに落とすのではなく、グラベル(砂利)層のある水中を通して出すフィルター付きベント方式を検討され、スウェーデンではBWR 発電所には実際に設置されています。少しでも放射能が外に出るのをフィルターして出せば、ベントしなければならない事態でも周辺地域には少しは安心ですけれど、そういう方式を昔、検討されたのか?ベント対策は他国にはありますが、日本では検討していないのではないか?

(鈴木座長)
 
 どうぞ。

(東京電力_川俣部長)

 多分、スウェーデンでですね、フィルトラという名前だったと思うんですけれど、そういうフィルター装置があるということは承知しております。ただ申し訳ございません。私、その装置をどういう経緯でどのように扱ったか、今時点、知りませんので、これについてはちょっと持ち帰って当時の経緯を調べた上でご回答させていただければと思います。ただ、ご存知のように今日時点、今時点で東京電力は何らかのフィルター機能を持っているベントは設置していない。これは事実です。

(吉川委員)

 ベントする時に外に放射能が出ないとなれば安心ですね。そういう海外事例もありますので検討いただければと思います。それから最後の一つは先ほどから議論になっている事故データの解析です。

                   以下 省略


 東京電力の川俣部長の発言から、今時点で、東京電力は何らかのフィルター機能を持っているベントは設置していないことが明らかになりました。そうであれば、スウェーデンが1979年のスリーマイル島原発事故の教訓から1989年までにすべての原子炉格納容器のベントに設置したフィルトラ・システムのような対応が東京電力福島第一原発の原子炉格納容器になされていたら、今回のような大惨事に至らなかったのではないでしょうか。

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25年前に原発格納容器のベント用にフィルターを設置した国と、“安全神話”でいまだ設置ゼロの国(2011-07-20)


まさに、治療より予防をです。そして、このことが「不安でいっぱいだが、危機感が薄い国」日本と「危機感は強いが、不安は少ない国」スウェーデンの相違となるのです。


毎日新聞が報じた日米モンゴルによる「モンゴルに核処分場計画」 

2011-05-09 18:00:21 | 原発/エネルギー/資源
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 今朝の毎日新聞の一面トップは「モンゴルに核処分場計画 日米、昨秋から交渉」というショッキングなタイトルの記事でした。一方、今朝の朝日新聞の一面トップは「原発停止要請 浜岡のみ」で 、他のどの面にも毎日新聞が報じた関連記事が見あたりませんので、この記事はおそらく毎日新聞のスクープ記事なのでしょう。

 原子力発電所の稼働に伴って必ず排出される核廃棄物の最終処分場の問題は国際的な大問題ですから、この記事は資料として価値が高いので保存しておきましょう。

モンゴルに核処分場計画
日米、昨秋から交渉
原発ビジネス拡大狙い

 経済産業省が昨年秋から米エネルギー省と共同で、使用済み核燃料など世界初の国際的な貯蔵・処分施設をモンゴルに建設する計画を極秘に進めていることがわかった。処分場を自国内に持たない日米にとって、原子炉と廃棄物処理とをセットに国際的な原子力発電所の売り込みを仕掛けるロシアやフランスに対抗するのが主な狙い。モンゴルは主な見返りとして日米からの原子力技術支援を受ける。だが、東日本大震災による東京電力福島第一原発事故で日本政府は原子力政策の抜本的な見直しを迫られており、「核のゴミ」を第三国に追わせる手法に批判が出そうだ。


廃墟の村 原発の夢
見返りに技術支援
 
 日本と米国がモンゴルに国際的な核廃棄物の貯蔵・処分場を初めて建設する極秘計画が明らかになった。モンゴルは「核のゴミ」を引き受ける見返りに日米による技術支援で原子力発電所の建設などももくろむ。地下資源が豊富なモンゴルが国内初の原発を建設したいと切望する最有力候補地,中部ゴビスンブル県バヤンタル(豊かな草原の意味)村を訪ねた。 


比較のために、スウェーデンの核廃棄物の最終処分場に対する考え方と計画の概要をおさらいしておきましょう。


このブログ内の関連記事
読売が報じた、世界の最先端を行くフィンランドとスウェーデンの「核廃棄物最終処分場」建設現地からの報告(2011-01-26)



昨年11月29日の講演「スウェーデンの環境・エネルギー政策:原子力問題の捉え方」の動画配信のお知らせ

2011-01-29 23:03:06 | 原発/エネルギー/資源
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この1月に原子力に関するブログ記事を2本書きました。

①朝日が報じた「転機の原子力 『ルネサンス』に黄色信号」と、「スウェーデンの最新の原発に関する政策」(2011-01-09)

②読売が報じた、世界の最先端を行くフィンランドとスウェーデンの「核廃棄物最終処分場」建設現地からの報告(2011-01-25)

今日は、昨年11月29日に、東京のスウェーデン大使館で行われた私の講演「スウェーデンの環境・エネルギー政策:原子力問題の捉え方」のご案内です。この講演の動画が(財)ハイライフ研究所のHPを通して配信されています。

ご関心のある方は次のURLにアクセスしてご覧下さい。

講演 スウェーデンの環境・エネルギー政策:原子力の捉え方 


講演要旨は次の通りです。

日本ではなぜかスウェーデンの脱原発政策という表現が定着しています。これは間違いではないもこのの、事の本質を正しく表現したものではありません。正しくはスウェーデンのエネルギー体系修正政策と呼ぶべきものです。日本の政策担当者、学者、経済人も一般市民もそしてマスメディアもスウェーデンのエネルギー政策の本質が見えず、日本の関心事である原発だけに注目して、スウェーデンの脱原発政策という矮小化した認識のままで現在に至っています。今年9月19日にはスウェーデンで総選挙が行われました。この機会にスウェーデンのエネルギー政策に関する現在までの経緯を検証し将来を展望します。

会場 :スウェーデン大使館オーディトリアム
日時 :2010年11月29日(月) 18:00-20:30
主催 :(社)スウェーデン社会研究所
撮影・配信協力 :公益財団法人ハイライフ研究所  


追記:この講演のおよそ3か月半後の2011年3月11日午後2時50分頃、東北大震災が発生し、福島第一原発で炉心溶融の大事故が発生しました。 2011年3月20日 記す)

 

読売が報じた、世界の最先端を行くフィンランドとスウェーデンの「核廃棄物最終処分場」建設現地からの報告

2011-01-26 10:48:13 | 原発/エネルギー/資源
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私は、1月9日のブログで、次のように書きました。

スウェーデンが80年6月に「脱原発」の方針を打ち出してから30年が経過しました。スウェーデンの「エネルギー体系修正のための計画」を構成する「原発の段階的廃止をめざす電力の供給体系の修正計画」は当初の予定通り進んできたとは言い難いものでしたが、「原発から排出される放射性廃棄物の処分計画」は着実に進んでおり、この分野でもスウェーデンは世界の最先端にあります。

まるで、このブログの記事と呼応するかのように、1月25日の讀賣新聞が、オバマ政権により米国がユッカ-マウンテン計画を撤回した現在、世界の最先端を行くフィンランドとスウェーデンの「高レベル核廃棄物処分場」の訪問記事を掲載しています。資料として保存しておきましょう。ぜひご覧下さい。

解説スペシャル環境先進地・北欧を歩く

核最終処分場 建設着々と
●対話重ね、情報公開徹底
●「地道な説明必要」 日本の現状、


日本の原発推進派も、原発反対あるいは脱原発派もスウェーデンの「原発の廃止の動向」には興味を示します。この観点から見れば、この30年間で稼働していた12基の原子炉のうち2基を廃棄したに過ぎないのですから、「2010年までに12基の原子炉すべてを廃棄する」という1980年の当初の目標からすれば大幅な後退であることは間違いないでしょう。

しかし、スウェーデンの「原発廃止の動向」に強い関心を持つ人々がおそらく気づいていないのは、 「脱原発」という政治決断により投じられた予算と企業の努力により、 「省エネルギー」や「熱利用の分野」では大きな成果があったことです。特に「熱利用の技術開発の分野」ではスウェーデンはまさに世界の最先端にあります。

このような努力の結果から次のような成果が生まれています。 

脱原発の方向性を定めた1980年3月のスウェーデンの「国民投票の結果」とその結果に基づく同年6月の「国会決議」以降の両国の原発の利用状況をまとめてみますと、次のようになります。


1980年から2008年の28年間に、スウェーデンが2基の原発を廃棄したのに対し、日本は33基の原発を増やしました。

この間、スウェーデン京都議定書の基準年である1990年以降漸次、温室効果ガス(このうちおよそ80%がCO2)を削減し、2007年の排出量は9%減でした。一方、日本では、1990年以降、温室効果ガス(このうち90%以上がCO2)の排出は増加傾向にあり、2007年には過去最悪(9%増)となりました。日本では京都議定の基準年である90年以降15基もの原発を運転開始したにもかかわらず、CO2の排出量が増加している事実に注目して下さい。



スウェーデンでは96年頃から「経済成長」と「温室効果ガス」(そのおよそ80%がCO2)排出量の推移が分かれ始めています。このことは、「経済成長」と「温室効果ガス排出量」のデカップリング(相関性の分離)が達成されたことを意味します。ここで重要なことは、温室効果ガスの削減が「原発や森林吸収や排出量取引のような日本が期待している手段ではない国内の努力によって(日本では“真水で”と表現します)達成されたもの」であることです。スウェーデンは今後も、独自の「気候変動防止戦略」を進めると共に、EUの一員としてEUの次の目標である2020年に向けてさらなる温室効果ガスの削減に努めることになります。

一方、日本は1986年頃から、「経済成長(GDP)」と「CO2の排出量」とが、これまた見事なまでの相関関係を示しています。さらに困ったことに、日本では今なお、二酸化炭素税の導入がままならないばかりでなく、すでに述べたように、2007年度の温室効果ガスの排出量が過去最悪(およそ9%増)となったことです。

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緑の福祉国家15 「気候変動」への対応 ④(2007-01-26) 


ここで注意すべきは、原発は正常に稼働している限りは実質的に温室効果ガス(具体的にはCO2)を排出しない発電装置ではありますが、原発はCO2削減装置ではないことです。しかも、原発利用のフロント・エンド(ウランの採掘から原発建設完成・運転開始まで)から、運転期間を経て、<バック・エンド(運転終了から原発廃棄処分まで)までの全過程をLCAという手法を用いて調べてみますと、原発はフロント・エンドとバック・エンドの作業工程で相当量のCO2を排出することがわかっています。

ですから、たとえ正常に稼働している原発が運転時に事実上CO2を排出しないと見なしても、「原発がクリーンな発電装置である」というのは誤りだと思います。

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低炭素社会と原発の役割  再び、原発依存を強化する日本 vs 原発依存を抑制するスウェーデン(2009-10-08)



朝日が報じた「転機の原子力 『ルネサンス』に黄色信号」と、「スウェーデンの最新の原発に関する政策」

2011-01-09 12:52:03 | 原発/エネルギー/資源
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フィンランドでは、現在、4基の原子炉(ロビーサ原子力発電所で2基、オルキルオト原子力発電所で2基)が稼働しており、4基の合計出力は276万kWです。今日取り上げるのは建設中のオルキルオト原発3号機で、完成すればフィンランドで5基目の原子炉となります。

2日前の朝日新聞が科学欄で、フィンランドで建設中の「オルキルオト原発3号機」(EPR:欧州加圧水型炉、出力は世界最大の160万キロワット)が2005年に着工し、2009年5月に完成する予定だったが、相次ぐトラブルなどで3年半遅れる見通しだと報じています。当初約30億ユーロ(3244億円)だった建設費が、相次ぐ工事の遅れで27億ユーロ(2920億円)の追加費用が必要になったそうです。同記事はまた、米国では「カルバート・クリフス原発」の新設で採算がとれないとして計画の凍結を決めたとも報じています。

何はともあれ、この記事をご覧ください。

●転機の原子力 「ルネサンス」に黄色信号 新設の動き、各地で難航(朝日新聞 2011-01-07)

そして、次にネット上で見つけた次のブログをご覧下さい。

●「効エネルギー日記」 フィンランドの原発建設(2009-05-30)

このブログによれば、2日前の2011年1月7日の朝日新聞が報じた「フィンランドのオルキルオト原発3号機」のトラブルの様子がすでに、およそ1年半前の2009年5月29日付けの「ニューヨークタイムズ」紙で報じられていたことがわかります。内容はほとんど同じで、このブログの文脈から推測すれば、「ニューヨークタイムズ」紙のほうが2日前の朝日の記事よりも内容的にさらに詳しく報道されているような感じがします。


2009年5月29日の「ニューヨークタイムズ」紙がフィンランドの原発建設中のトラブルや米国の原発計画が必ずしも順調に推移していないことを報じて以来この1年半の間に、日本のマスメディアは原発についてどのような報道をしていたのでしょうか。朝日新聞は科学欄で「転機の原発 ルネサンス」および「転機の原子力 廃棄物処分場」をそれぞれ4回シリーズでまとまった記事を連載しておりました。

転機の原子力 ルネサンス① 原発導入、高まる機運(2010-04-02)

転機の原子力 ルネサンス② 燃料管理も処分も課題(2010-04-09)

転機の原子力 ルネサンス③効率と信頼性 どう両立(2010-04-16) 

転機の原子力 ルネサンス④中国、人材育成に躍起-最終回(2010-04-23)


転機の原子力 廃棄物処分場① 原発のごみ わが町に 「スウェーデン方式」(2010-11-05)

転機の原子力 廃棄物処分場② 候補地選び、信頼築く道は(2010-11-12)

転機の原子力 廃棄物処分場③ 数万年の安全、どう確保(2010-11-19)

転機の原子力 廃棄物処分場④ 千年以上先へ 伝える責任-最終回(2010-11-26)


次に、私のブログ内の原発関連記事からふり返ってみます。

またしても、ミスリードしかねない「スウェーデンの脱原発政策転換」という日本の報道(2009-03-21)

米、核再処理を断念 政策転換、高速炉の建設計画も取りやめの方針(2009-04-23)

21世紀の低炭素社会をめざして 原発依存を強化する日本 vs 原発依存を抑制するスウェーデン(2009-07-27)

日本の原発も高齢化、そして、「トイレなきマンション問題」も改善されず(2009-09-04)

「今こそ推進と規制の分離を」、元原子力安全委員会委員長代理が語る日本の原子力行政の問題点(2009-09-24)

民主党の原発政策に再考を促す投書(2009-09-27)

低炭素社会と原発の役割  再び、原発依存を強化する日本 vs 原発依存を抑制するスウェーデン(2009-10-08)

毎日新聞に掲載された「地球を考える会のフォーラム」(広告)に対する私のコメント(2009-11-06)

スウェーデン国会が高齢化した原発の「更新」に道を開く政策案を可決(2010-06-22)



この機会に改めて、スウェーデンの「最新の原発に関する政策」をまとめておきましょう。

2009年2月5日、ラインフェルト連立政権を支える与党中道右派の4党連合は「環境、競争力および長期安定をめざす持続可能なエネルギー・気候政策」と題する4党合意文書を発表しました。

この合意文書の原発関連部分の要点は「水力と原子力からなる現在の電力供給システム」に今後、第3の柱となるべき再生可能エネルギーを導入していく過程で、電力のほぼ半分近くを供給している既存の原発10基(このうち4基は70年代に運転開始、すでに40年近く稼働している)のいずれかの更新が将来必要になったときに備えて、更新の道を開く用意をすること」でした。

合意文書には「原子力利用期間を延長し、最大10基までという現在の限定枠の範囲で既存の原発サイトでのみ更新を許可する。これにより、現在稼働中の原子炉が技術的および経済的寿命に達したときに継続的に新設の炉で置き換えることができるようになる。」と書かれています。
 
スウェーデン国会は2010年6月17日、「2009年2月5日に与党中道右派4党の合意に基づく原発更新法案」を賛成174票、反対172票の小差で可決しました。

スウェーデンの最初の商業用原子炉は1972年運転開始のオスカーシャム1号機ですから、この原子炉が今後事故なく順調に稼働していけば、運転開始後50年(1980年の国民投票の時には、当時の原発の技術的な寿命は25年と見積もられていた。現在では原発の技術的寿命は60年程度とされている)、つまり更新時期を迎えるのは2020年頃なのです。

ですから、今回の「部分的な原発政策の修正(変更)」という決定が直ちに原発の新設という行動に移されるわけではありませんし、日本の原子力推進派の人たちが期待するような「原子力ルネサンスだ!」「地球温暖化対策にのために原発を推進」などという考えで、スウェーデンは原発依存を今後さらに高めて行くわけでもなければ、ましてや、「原発を温暖化問題の解決策」として位置づけているわけでもないのです。

一昨日の朝日新聞の記事「米国 新資源で競争力下がる」の最後に、「ルネサンス」とはいえ、米国ではもともと、実際に新設される原発は10基以下と見られており、当面は「延命」でしのぐところが多そうだとあります。そうであれば、スウェーデンの今回の行動は、「原子力エネルギーに対する世界最先端の考えに基づく現実的な行動」と言えるかも知れません

世界の原発の歴史を振り返れば、この分野でもスウェーデンの独自性は際立っています。西堂紀一郎/ジョン・グレイ著『原子力の奇跡』(日本工業新聞社 1993年2月発行)によれば「軽水炉技術を独自に開発したのはアメリカ、ソ連、スウェーデンの3カ国である。ドイツ、フランス、日本、そしてイギリス等の先進工業国が軽水炉の導入に当たり、アメリカから技術導入したのに対し、スウェーデンは果敢にも独自開発路線を選び、最初から自分の力で自由世界で唯一アメリカと競合する同じ技術を開発し、商業化に成功した。」と書かれています。つまり、スウェーデンは「原発先進国」であり、 「脱原発先進国」でもあるのです。

スウェーデンが80年6月に「脱原発」の方針を打ち出してから30年が経過しました。スウェーデンの「エネルギー体系修正のための計画」を構成する「原発の段階的廃止をめざす電力の供給体系の修正計画」は当初の予定通り進んできたとは言い難いものでしたが、「原発から排出される放射性廃棄物の処分計画」は着実に進んでおり、この分野でもスウェーデンは世界の最先端にあります。

日本の原発推進派も、原発反対あるいは脱原発派もスウェーデンの「原発の廃止の動向」には興味を示します。この観点から見れば、この30年間で稼働していた12基の原子炉のうち2基を廃棄したに過ぎないのですから、「2010年までに12基の原子炉すべてを廃棄する」という1980年の当初の目標からすれば大幅な後退であることは間違いないでしょう。しかし、忘れてはならないことは、「脱原発」という政治決断により投じられた予算と企業の努力により「省エネルギー」や「熱利用の分野」では大きな成果がありました。特に「熱利用の技術開発の分野」ではスウェーデンはまさに世界の最先端にあります。

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2010年9月19日の総選挙の結果、中道右派政権が2014年まで政権を続投することになりました。今後4年間の政権与党の「エネルギー政策」をウオッチしていく必要があります。

日本の20年先を行くスウェーデンの「高レベル放射性廃棄物の処分」の進捗状況

2010-11-21 16:21:23 | 原発/エネルギー/資源
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去る9月19日のブログ「今日はスウェーデンの総選挙、ドイツは原発回帰に猛反発デモ」を、私は次のように結びました。

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この機会に、原発を運転すれば必ず排出される「高レベル放射性廃棄物」に対する処分の現状を示しますので、合わせてご覧ください。米国のオバマ政権が2009年に、前政権が決定していた「高レベル放射性廃棄物処分計画」を適切でないとして計画変更を決めましたので、現時点では、最先端を行くフインランドとスウェーデンにフランス、ドイツが続くという構図となっています。

今後も原発推進を続ける方針を明らかにしている日本は、2009年に日本の資源エネルギー庁が作成した次の資料によれば、皆さんの期待に反して(?)、高レベル放射性廃棄物の処分の分野ではスイスやイギリスと共に、中国の後に位置づけられています。日本政府の原子力担当の行政機関である資源エネルギー庁が作成した最新の広報資料ですので、誤りはないでしょう。
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この事実を朝日新聞は、独自の取材によって検証していますので、ご紹介しておきましょう。先ずは、最近の次の3本の記事をご覧ください。

成功に導いた「スウェーデン方式」に、世界の熱い視線が注がれる。もう一つの候補地だったオスカーシャム市の地下研究施設には毎週、海外の政治家や原子力関係者が見学に訪れる。エストハンマル市幹部も毎週のように海外に招かれる。10月には、SKB社の幹部が経済産業省の招きで来日し、講演した。

転機の原子力 廃棄物処分場② 候補地選び、信頼築く道は 街頭調査やシンポで探る(朝日新聞 2010年11月12日)
今年8月、先行するスウェーデンを訪ねた秋葉悦子委員は「時間をかけ信頼関係を築いていくことが大切ではないか.スウェーデンでも時間がかかった。遠回りに見えるが確実な道だと思う」と話す。

転機の原子力 廃棄物処分場③ 数万年の安全、どう確保、公募、地学的特徴を問わず(2010年11月19日)
自治体の自発性を重視した全国一律の公募方式。新たな応募がない状況に、その限界を指摘する声も専門家の間にはある。「例えば、長期に火山の影響を受けにくい地域はある。本来なら、より安定性の高い地域を科学的に示すべきでは」と高橋正樹日本大教授は話す。

転機の原子力 廃棄物処分場④ (最終回) 千年以上先へ 伝える責任 処分 柔軟な手段も議論 (2010年11月26日)
現世代は半世紀近く原子力発電の恩恵を受けてきた。生じた廃棄物は世代を超え残り続ける。未来世代にかかわることを、どこまで現世代で決められるのか。こうした「世代間倫理」は、資源の枯渇や地球温暖化など原発を取り巻く様々な環境問題に共通する。
(注:2010年11月26日に追加)


ところで、最初の記事に書かれていますように、経済産業省資源エネルギー庁は10月にスウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)の社長とSKBインターナショナル社シニアアドバイザー(元SKB社フォルスマルク事務所長)を招き、東京で「地域と共に歩む、地層処分事業~スウェーデンにおける対話の取り組み~」と題するシンポジウムを開催しました。このシンポジウムは原発の運転に伴って排出される「高レベル放射性廃棄物」の処理・処分に関するスウェーデンの取り組みをテーマとするシンポジウムで、主催は経済産業省資源エネルギー庁、後援はスウェーデン大使館でした。

実はこのシンポジウムは昨年10月27日に浜離宮朝日ホール・小ホールで開催されたシンポジウム「地域と共に歩む、地層処分事業~スウェーデンの取組から学ぶ~」(主催:経済産業省資源エネルギー庁、後援:スウェーデン大使館)の続編でした。

今回のシンポジウムのプログラムは次の通りです。



第1部 基調講演
    わが国の地層処分事業について
    苗村公嗣(資源エネルギー庁放射性廃棄物等対策室長)    
    15枚のスライドを用いたプレゼンテーション「高レベル放射性廃棄物と地層処分について」

    サイト選定と理解促進の取り組みにおけるマネージメント戦略
    クラース・テーゲシュトローム(SKB社 社長)
    45枚のスライドを用いたプレゼンテーション

    地域社会における地層処分事業への関心喚起と信頼構築
    カイ・アールボム(SKBインターナショナル社 シニアアドバイザー)
    56枚のスライドを用いたプレゼンテーション

第2部 パネルディスカッション
論点1 信頼の構築

論点2 共生のための対話

論点3 メディアとの対話、反対派との対話


このシンポジウムに参加した私の推定では参加者はおよそ300人、会場は満席でした。私はスウェーデン大使館勤務の時から現在に至るまで35年以上、日本とスウェーデンの原子力行政をウオッチしてきましたので、第1部の基調講演についてはまったく違和感はありませんでした。

ところが、非常に違和感を覚えたのは第2部のパネルディスカッションです。前出の朝日の記事(2010年11月12日)に登場する苗村公嗣さん、秋庭悦子さんらが参加したパネルディスカッションは「論点1 信頼の構築」、「論点2 共生の為の対話」および「論点3 メディアとの対話、反対はとの対話」の3つの論点に沿って粛々と行われ、終始、日本のパネリストが質問を発し、それにスウェーデンのパネリストが答えるという一問一答の形で進められましたので、わかりやすく、それなりに良い成果が得られたと思います。

しかし、私が驚いたのは、パネリストによる日本側とスウェーデン側の質疑応答が終わった後、コーディネーターがフロアーからの質問を求めたのに対し およそ300人の参加者からはまったく質問が無く(ゼロ)、会場が一時しーんとした静寂に包まれたことです。参加者には原子力関係者も相当数いたはずですが、まったく発言がなかったのはどういうことなのでしょうか。このような場面は、私が環境論を講じているマンモス大学では、時々見かける現象ですが、多くが社会人の参加者と見られる今回のシンポジウムはその意味では異様な感じがしました。


関連記事
スウェーデンにおける高レベル放射性廃棄物(NUMO)

スウェーデン資料(NUMO)


今日のまとめとして、11月12日の朝日新聞の記事に掲載されていた図「高レベル放射性廃棄物処分の流れ」、このシンポジウムで配付された資料の中から、今日のテーマに関連する図2点「諸外国における放射性廃棄物の地層処分の状況」と「諸外国における高レベル放射性廃棄物処分の進捗状況」を抜き出して、ここに掲載します。





これら3枚の図が示唆していることは、日本の高レベル放射性廃棄物処分の進捗状況が、フィンランドやスウェーデンよりもおよそ20年遅れ 、スイスや英国と共に、中国より後に位置づけれらていることです。 つまり、日本は原発推進には熱心ですが、原発推進の結果必然的に生ずる「高レベル放射性廃棄物の処分」は原発利用国の中で極めて遅れていることです。なお、米国は上の図「諸外国における高レベル放射性廃棄物処分の進捗状況」では、最先端を走っていたようですが、図中の「*5」が示すように、ユッカマウンテン計画を2009年に撤回しました。


このブログ内の関連記事
日高義樹のワシントン・リポート2010-02-14: 次世代エネルギーの主役は太陽? 原子力?(2010-02-17)

雑誌 『WiLL』 にも、「スウェーデンの“高レベル放射性廃棄物”処分を語ろう」 という記事が(2010-02-18)

24年前の今日、スウェーデンのフォーシュマルク原発がチェルノブイリ原子力原発事故を特定(2010-04-27)

21世紀の低炭素社会をめざして 原発依存を強化する日本 vs 原発依存を抑制するスウェーデン(2009-07-27)

低炭素社会と原発の役割  再び、原発依存を強化する日本 vs 原発依存を抑制するスウェーデン(2009-10-08)

日本の原発も高齢化、そして、「トイレなきマンション問題」も改善されず(2009-09-04)

原発を考える ⑤ エネルギーの議論は「入口の議論」だけでなく、「出口の議論」も同時に行う(2007-04-14) 




22年前にタイムスリップ  「広島の原爆資料館」と「竹原火力発電所」を訪問

2010-08-14 22:22:53 | 原発/エネルギー/資源
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広島被曝65年、広島は8月6日、被曝から65年の「原爆の日」を迎えました。平和記念公園で行われた「原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式」(平和記念式)には、潘基文・国連事務総長、米国政府代表としてルース駐日大使、英仏両国からは臨時大使がいずれも初めて参列したそうです。                          
一方、長崎は9日、65回目の65回目の「原爆の日」を迎え、平和公園では長崎市主催の「長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典」が開かれました。こちらの式典には英仏両国が初めて政府代表を送りましたが、米国の駐日大使は参列しなかったとのことです。

これらの一連の報道や関連の特集番組を見た後、私は20年以上前に、スウェーデンのエネルギー・環境大臣一行に随行して、広島を訪問したことを思い出しました。さっそくアルバムを取り出して、確認してみました。今日は当時へタイムスリップします。

1988年4月12日から18日まで、ビルギッタ・ダール環境エネルギー大臣一行が日本を訪問しました。4月16日の午前中に広島平和記念公園内にある原爆資料館を訪問し、当時の川本義隆館長から説明を受けました。






午後は、当時の日本の石炭火力の分野で最先端技術を誇っていた電源開発株式会社(現在のJ-POWER)の竹原石炭火力発電所を訪問しました。写真は当時完成したばかりの貯炭施設です。



この訪問期間中に、ダール大臣はいくつかの日本のメディアのインタビューを受けました。
その中から讀賣新聞、朝日新聞および毎日新聞のインタビュー記事を紹介します。今年2010年を最終期限とした 「当時のスウェーデン政府の脱原発政策」の一端を垣間見ることができるでしょう。

讀賣新聞 1988年4月19日の記事

朝日新聞 1988年4月19日の記事

毎日新聞 1988年4月19日の記事 


関連記事
判断基準の相違②: 「将来の電源」としての原発(2009-08-12)

2008年の温室効果ガス排出量:スウェーデンは90年比11.7%減、日本は7.4%増(CO2)+α(2009-12-19)



スウェーデン国会が高齢化した原発の「更新」に道を開く政策案を可決

2010-06-22 17:34:13 | 原発/エネルギー/資源
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6月19日付けの朝日新聞(朝刊)が「スウェーデン脱原発を転換 30年ぶり」と題する記事を掲載しました。


今回の報道は、前回(昨年2月6日)の報道に比べれば、かなり記事の内容の正確度が高くなりましたが、前回の日本の全国紙の各報道は日本社会をミスリードしたかもしれないほどのものでした。そこで、私は私の理解したスウェーデンの状況をこのブログにまとめておきました。今回の報道記事と前回の私のブログ記事の両方を合わせて読んでいただければかなり正確に「スウェーデンの原発に対する考え」を理解できるでしょう。

関連記事
またしても、ミスリードしかねない「スウェーデンの脱原発政策転換」という日本の報道(2009-03-21)

毎日新聞に掲載された「地球を考える会のフォーラム」(広告)に対する私のコメント(2009-11-06)


同じような趣旨の記事が同日の毎日新聞と讀賣新聞にも掲載されていましたが、日本経済新聞や産経新聞には関連記事がありませんでした。


日本ではなぜか「スウェーデンの脱原発政策」という表現が定着していますが、これは間違いではないものの、ことの本質を表現したものではありません。正しくは「スウェーデンのエネルギー体系転換政策」あるいは「スウェーデンのエネルギー体系修正政策」と呼ぶべきものです。私は20年前の1988年8月10日の朝日新聞の「論壇」(ここをクリック)で、このことを書きましたが、日本の学者も経済人も、一般市民もそして、マスメディアも「スウェーデンのエネルギー政策の本質」が見えず(あるいは、本質を見ず)、日本の関心事である原発だけに注目して、「スウェーデンの脱原発政策」という矮小化した認識で現在まで来てしまいました。

今回の記事は昨年2月6日の報道の続編で、その要点は「原子力と水力からなる現在の電力システム」(日本の発想で言えば“好ましい低炭素型発電システム”)に、今後第3の柱となるべき再生可能エネルギーを導入していく過程で、現在の電力のほぼ半分近くを供給している「既存の原発10基」(このうち4基は70年代に運転開始、すでに40年近く稼働している)のいずれかの更新が将来必要になったときに備えてあらかじめそれらの更新の道を開いておく用意をするというだけのことなのです。

スウェーデンの最初の商業用原子炉はオスカーシャム1号機(1972年運転開始)ですから、これが今後事故なく順調に稼働していけば、運転開始後50年になるのは2020年頃です。ですから、今回の「部分的な原発政策の修正(変更)」という決定が直ちに行動に移されるものではありません。

また、スウェーデンの福祉国家を築き、維持してきた比較第一党の社民党は、96年から20世紀型の「福祉国家」を21世紀型の「緑の福祉国家」へ転換しようと努力してきました。2006年の総選挙では現在の4党連立政権に僅少さで敗れ、下野しましたが、3ヶ月後に迫った9月の総選挙で政権奪還をめざしています。21世紀の「緑の福祉国」の構築」をめざす社民党の綱領には「エネルギーの使用には、環境的な配慮による制約がある。原子力は廃止し低下なければならないし、同時に化石燃料の使用は減少させなければならない。」と明記されています。

つまり、今回の現政権による「原発政策の部分的修正」は原子力の利用期間を延長し、最大10基までという現在の限定枠で既存の原発サイトでの更新を許可する。これにより、現在稼働中の原子炉が技術的および経済的寿命に達したときに、必要であれば、継続的に新設の炉で置き換えることができるようにするということなのです。
  
ですから、スウェーデンは「原発への依存」を今後さらに高めていく方針でもありませんし、ましてや「原発」を地球温暖化問題の解決策として位置づけたわけでもありません。地球温暖化問題の解決策としては「化石燃料の使用を削減する以外に有効な方法がないこと」が既に国民の間で共有されているからです。

スウェーデンの「この高齢化(老朽化)した原発の更新の問題」は、たとえ原発事故が起こらず、安全に運転されていても、これから20年間の「日本の原発推進政策」でも間違いなく再現される大問題です。ですから、今回スウェーデン国会で僅少さ(賛成174 対 反対172)で可決されたスウェーデンの「原発に関する新たな政策」、「原発ルネッサンス」だとか、「地球温暖化対策のために原発推進を!」などという日本の浮かれたお粗末な原発推進議論とは明らかに一線を画すものです。


ご参考までに、30年前の朝日新聞((1980年6月11日))の記事を掲げておきます。






24年前の今日、スウェーデンのフォーシュマルク原発がチェルノブイリ原子力原発事故を特定

2010-04-27 13:34:44 | 原発/エネルギー/資源
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24年前の昨日、4月26日は旧ソ連(現在のウクライナ)で史上最悪の原発事故が発生した日でした。チェルノブイリ原発事故です。朝日にも読売にも産経にもまったく関連記事がありませんでしたが、日経には次のコラム記事がありました。


このことは、事故のニュースそのものは時間の経過と共に風化しつつあることを示していますが、一方この記事の最後の部分にあるように、事故現場では24年を迎えた今なお事故の後遺症に対応するために莫大な費用が必要であることを示しています。

この事故の発生現場を最初に特定したのはスウェーデンの放射線モニタリング・システムでした。この日、スウェーデンのフォーシュマルク原発は異常に高い放射線レベルを観測したので、スウェーデン国防研究所(FOA)と共同作業で、当時冷戦構造にあった西側の原子力施設として最初にチェルノブイリ原発事故を、特定したのです。事故の発生の翌日には事故の発生場所が特定されたのです。

次の記事では、事故の被害救済対象者数が480万人とされています。この人数は当時のスウェーデンの人口の半分以上(現在の人口は930万人)に相当します。もしこのような事態がスウェーデンで起こったならば、スウェーデンの福祉制度は崩壊したかもしれません。

昨日は、私が環境論を講じている大学で、授業の冒頭にこの問題を話題として提供しました。学生の反応の一部を記録しておきましょう(原文のまま)。

●1986年の今日の話は初めて聞いたことだったので、そんなことがあったなんて驚きでした。最近、北欧の環境(エコ)に注目があつまっているけれど、当たり前のことではあるけれど、ポット出たエコ精神じゃなく、ずっと続けて来た歴史がある節約だったり、省エネ対策だからこそ、世界が注目しているんだなと思いました。(2年女子)

●今日がチェルノブイリの事故の日というのは知らなかった。チェルノブイリの事故は聞いただけだが、すごい大変な事故だったと思う。そしてスウェーデンの原発をなくす方針には驚いた。日本では原発をなくしてどうするのかという意見が多いが、日本と同じように、原発の代わりがないのになくすことに踏み切ったスウェーデンの方針には驚いた。(3年男子)

●原発に頼っていたスウェーデンだがチェルノブイリ原発の事故などで安全性に不安がもたれるようになった。そうしてスウェーデンで大事なエネルギーを得る原発も環境のことを考えたり、廃止する方向に行こうとするのはすごいと思った。使用済み核燃料を処理しきれていないのにこれ以上の原発を増やそうとしている日本は目先のことしか考えていないのではないかと将来が不安になった。(2年女子)

●チェルノブイリの原子力発電所の事故は、なんととなく知っていましたが、事情最悪の原子力発電所の事故ということは全くしりませんでした。その事故を最初に見つけたのがスウェーデンのモニタリング・システムだということは初めてしりました。(3年男子)


これらの反応を見ていると、チェルノブイリ原発事故が起きたのはこれらの学生が生まれる前の事故であったことに改めて気づく。日本の政策担当者は本当に現在のエネルギー体系の転換を真剣に考え、行動に移すべきだと思う。

古くて、新しい原発議論が「気候変動問題」への対応との関連で、再び高まってきました。ここで議論しておきたいことは、「原子力ルネッサンス」などという巧みなネーミングのもとに国際的にも国内的にも推進の動きが高まってきたように見える「原発のCO2削減効果に対する有効性」についてです。


関連記事
転機の原子力:ルネッサンス① 原発導入、高まる気運

転機の原子力:ルネッサンス② 燃料管理も処分も課題
       現在、高レベル放射生廃棄物の処分場や候補地が決まり、建設への手続きが進んでいるのはフィンランドとスウェーデンだけ。
  米国はネバダ州ヤッカマウンテンが唯一の候補地だがオバマ政権は計画を白紙にしている。      

チェルノブイリ事故24周年に当たって、今日はぜひ、皆さんに、もう一度、この大切な問題を考えて欲しいと思います。私たちの子どもや孫のために。私の考えは次の記事にまとめてあります。私の考えに対するコメントは大歓迎です。
 
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低炭素社会と原発の役割  再び、原発依存を強化する日本 vs 原発依存を抑制するスウェーデン(2009-10-08)



原子力学会が高校の教科書の原子力記述に注文

2010-03-19 20:58:51 | 原発/エネルギー/資源

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今朝の朝日新聞が「日本原子力学会が高校の教科書に出てくる原子力に関する記述について文部省に改善を求める提言を提出した」と報じています。この記事にスウェーデンが登場します。


私はこの記事を読んで、20年前にも似たようなことがあり、このブログでも書いたことを思い出しました。20年前の提言は改悪(次の関連記事を参照して下さい)であり、今回の提言はどちらかと言えば、記述が具体的になったという点で、「まあ改善かな」と思います。

日本のマスメディアや原発に関心のある方々は、賛成、反対を問わず、「スウェーデンの原発政策」あるいは「スウェーデンの脱原発政策」という表現を好みますが、私がここで敢えて主張しておきたいことは、それらの政策は「日本の関心事である原発」に矮小化すべきではなく、「20世紀の福祉社会を支えてきた原発を含むエネルギー体系(日本が大好きな言葉で言えば、「現行の“低炭素型”エネルギー体系」)」「21世紀にめざす緑の福祉国家(エコロジカルな持続可能な社会)を支えるエネルギー体系」に変えて行くための壮大な「エネルギー体系転換政策」への進化の過程だということです。

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原発を考える ⑫ 最終回 私の素朴な疑問(2007-04-23)


日本原子力学会は、日本の原子力の専門家集団として、高校の教科書の記述だけでなく、マスコミや原子力推進の立場に立つ識者の発言にも適切な提言をしてほしいと思います。次の関連記事を見ていただくとおわかりのように、日本のマスメディアや識者、著名人の「スウェーデンの原発に対する認識」はかなりひどい状況です。

関連記事
またしても、ミスリードしかねない「スウェーデンの脱原発政策転換」という日本の報道(2009-03-21)

毎日新聞に掲載された「地球を考える会のフォーラム」(広告)に対する私のコメント(2009-11-06)



雑誌 『WiLL』 にも、「スウェーデンの“高レベル放射性廃棄物”処分を語ろう」 という記事が

2010-02-18 15:20:28 | 原発/エネルギー/資源
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 昨日のブログで、2月14日のテレビ東京の番組「日高義樹のワシントン・リポート」で、スウェーデンの高レベル廃棄物(使用済み核燃料)の最終処分施設SFLが取り上げられていたことをご紹介しましたが、今日はもう一つ、雑誌 『WiLL』 の2010年1月号のp154~158の5ページに同じテーマが取り上げられていたことをお伝えしておきましょう。



 この記事は、2009年10月27日に浜離宮朝日ホール・小ホールで開催されたシンポジウム「地域と共に歩む、地層処分事業~スウェーデンの取組から学ぶ~」(主催:経済産業省資源エネルギー庁、後援:スウェーデン大使館)の内容を、取材協力:電気事業連合会で誌上録画したものです。

 内容的には、昨日紹介した「日高義樹ワシントン・リポート」と同じテーマですが、「日高リポート」が現地取材であるのに対し、こちらは、「スウェーデンの高レベル放射性廃棄物」の処分事業を行うスウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB)の社長クラース・テーゲシュトローム氏と最終選定に残った2つの自治体から責任者を日本に招いて、最終処分場がエストハンマルに決まるまでの経緯を話してもらうという趣向です。スウェーデンからの3人の出席者は、そのまま、第2部のパネルディスカッションに参加しました。第1部の3人による基調講演は次のとおりです。

●スウェーデンにおける地層処分事業とサイト選定手続きについて
 クラース・テーゲシュトローム氏(SKB社長)
●エストハンマルオスカーシャム自治体における理解促進及び地域共生の取組
 ヤーコブ・スパンゲンベリ氏(エスロハンマル市長)
 ラーシュ・ブロムベリ氏(オスカーシャム副市長)

この誌上録画では、掲載趣旨を次のように述べています。
xxxxx
 CO2の排出削減による“低炭素社会”の実現は、いまやグローバルな目標となった。

 発電にあたってCO2の排出が少ない主要電源の代表と言えば原子力。このため、原子力発電によって発生する放射性廃棄物の行方は、どの国にとっても重要な課題といえる。

 そのなか、世界に先駆けて高レベル放射性廃棄物の最終処分地を決定したのがスウェーデンだ。そして、この国から、処分事業に関わる事業者と自治体、その双方の代表者が来日。彼らを囲む形で「放射性廃棄物に関するシンポジウム」(10月27日・東京)が開かれた。

 サイトの選定はどのように行われたのか、候補地の周辺に住む人々に、“放射性廃棄物処分”の実態はどのように伝えられたのか。原子力立国をめざす日本として、知っておきたいことは多い。シンポジウムの内容を紹介しよう。
xxxxx

 この「地層処分 スウェーデンの“高レベル放射線廃棄物”処分を語ろう」の誌上録画の前後を構成している15本以上の政治・経済関係の記事(たとえば、総力大特集:小沢一郎とヒットラーなど)の騒々しさと比べると、この誌上録画には一服の清涼感が漂っているとさえ感じられる妙な違和感があります。どのような意図で、この誌上録画が編集されているのでしょうか。その意図がまったくわかりません。この誌上録画のテーマが地層処分ですから、他の威勢のいい記事の中に埋没されていて当然なのかもしれません。何か不思議な気がします。
 
関連記事
日本の原発も高齢化、そして「トイレなきマンション問題」も改善されず(2009-09-04)   

21世紀の低炭素社会をめざして、原発依存を強化する日本vs原発依存を抑制するスウェーデン(2009-07-27)



 

日高義樹のワシントン・リポート2010-02-14: 次世代エネルギーの主役は太陽? 原子力? 

2010-02-17 18:37:46 | 原発/エネルギー/資源
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 今日は、去る2月14日(日)に偶然目にしたテレビ東京の「日高義樹のワシントン・リポート 」(16:00~17:15)の概要をお知らせしましょう。テーマは「次世代エネルギーの主役は太陽? 原子力?」。バンクーバー五輪の熱戦を見ようとチャンネルを選択していましたら偶然、この番組に出会いました。チャンネルをテレビ東京(12チャンネル)に合わせたのが16:10ぐらいでしたので、リポートの導入部分がどのようなものだったかは不明です。番組終了後、ネット検索しましたら、この番組の概要が次のように書かれていました。

番組概要

 原油の値段が上がりつづけ、1バレル200ドルを超すという予測まで現れるなかで、世界的に原子力発電所の建設ラッシュが始まろうとしている。地球温暖化の原因になる物質を放出せずに大容量の電気を得ようとすれば、いまや原子力しかないという考え方が強くなり、急進的な環境保護勢力のグリーンピースまでが賛成に回っている。いっぽうアメリカのオバマ政権は、長期的なエネルギー源として太陽熱発電を、全力をあげて推進している。将来のエネルギーについて世界の指導的な国々がどう考えているか伝える。
 
 このリポートは5部構成で、各部の冒頭に、それぞれのテーマに関する最新の映像が数分映し出され、その後にインタビューがあり、最後はインタビューのまとめで締めくくられています。スウェーデン、ドイツ、米国の3カ国が登場します。


第1部 スウェーデンが地下岩盤に核廃棄物貯蔵所(約7分) 



1時間ほどかけて、発電所をみて回りましたが、地震がまったくないと言っていいスウェーデンで、地震に対する備えをしていることに気がつきました。この部分が建物の割れ目になっています。地震で建物が大きく揺れても、それぞれの部分が別に動いて崩壊することがないように作られています。(この部分は日高さんの語り)


(フォーシュマルク原発3号機の建屋内の1時間の視察を終えた後、建屋の屋上で)

 2009年6月4日、スウェーデン政府はこのバルト海に面した森林地帯に核廃棄物の貯蔵施設を建設することを正式に認可しました。このあたり、地下1kmのところにある幅が3km、長さ8km、高さが10kmの大きな岩盤をくり抜いて、廃棄物の貯蔵施設にするのが最も良いと判断されたからです。工事は2012年から始まり、2020年に完成する予定です。(この部分は日高さんの語り)

フォーシュマルク発電所のアンダース・マークグレン広報部長。

日高:なぜこの場所が選ばれたのですか?
マークグレン:岩盤が最適だからです。ほとんどヒビがない。水も含まれていない。核廃棄物を貯蔵する場所として最適なのです。

日高:調査に25年かけたと聞いています・・・
マークグレン:25年以上前に調査を始め、スウェーデン中を探して8カ所を選び、さらに2カ所に絞りました。ここフォーシュマルクとオスカーシャムです。その後、約10年調査を重ね、去年の6月ここフォーシュマルクに決まりました。岩盤が最も優れているからです。

日高:何年ぐらいここを使うのですか?
マークグレン:将来ずっと・・・核廃棄物は長期間危険です。10万年は貯蔵しておかねばなりせん。

日高:周辺住民から反対がありましたか?
マークグレン:ほとんどありませんでした。地域の住民にたずねましたが、80%以上が「岩盤が安全なら問題はない、建設しなさい」と答えました。

日高:反対のデモなどはなかった?
マークグレン:ありません。原子炉を建設した時にはありましたが・・・そのときにもこう言いました。「どうか何でも聞いて下さい。よく見て下さい。説明します。何を恐れているのか聞かせて下さい、説明します」と・・・

(建屋内に戻って、使用済み核燃料棒を納める銅製キャニスターを前にして)



マークグレン:これの重さは25トン・・・
日高:廃棄物が全てここに入る・・・?

マークグレン:そうです。重さが25トンあります。
日高:全体で25トン?
マークグレン核廃棄物を入れて・・・
日高:12ありますね・・・、核廃棄物が12個・・・

マークグレン:まとめて入れます。長さは4メートル・・・
日高:4メートル?



マークグレン:お見せしましょう。使用済み燃料が入っています.4メートルあります。パイプが見えますね・・・?
日高:核燃料・・・?

マークグレン:高放射性の使用済み燃料です。長期間、放射性を持つ廃棄物です。



ここまででインタビューは終わりです。インタビューのまとめはありません。


第2部 アメリカは太陽発電(約13分)

米太陽発電協議会会長 ジュリア・ハム会長

インタビューをまとめてみます。
●太陽エネルギー産業は大企業を巻き込んで急速に拡大している。
●太陽エネルギーからつくる電気の貯蔵技術の開発が望まれている。
●太陽エネルギー電気は2015年には1キロワット6~8セントになるだろう。


第3部 ドイツ人はいまだに核嫌い(約11分)

EU委員長エネルギー政策顧問 クロディア・ケムフェルト

インタビューをまとめてみます。
●ドイツの人々はチェルノブイリなどで起きた原子力発電所の事故を怖がっている。
●ドイツの人々は何にでも反対するという習慣がついてしまっている。
●ドイツの人は核を怖がって感情的になり過ぎている。


第4部 原子力発電政策がないアメリカ(約11分)

米21世紀エネルギー委員会委員長 カレン・ハバート

インタビューをまとめてみます。
●オバマ大統領は原子力エネルギー開発に冷淡で研究費用などを減らしている。
●オバマ政権の原子力エネルギー施策は明確でない。
●オバマ政権の支持勢力であるグリーンピースも原子力発電に賛成している。


第5部 原油高をもたらすオバマ・エネルギー政策(約13分)

米21世紀エネルギー委員会委員長 カレン・ハバート

インタビューをまとめてみます。
●オバマ大統領は石油や天然ガスの開発に熱心でない。
●石油企業に新たに800億ドルの税金をかけたのは間違っている。
●オバマ大統領は他のエネルギー源の開発を犠牲にして再生可能エネルギーの開発に力を入れている。
●経済を回復させるにはエネルギーを安くしなければならない。

 以下は、このリポート全体のまとめの部分です。日高さんの発言を忠実に再現しました。日高さんは、次のように、このリポートを締めくくっています。
xxxxx
 経済を拡大し、そして世の中を活性化するために、歴史的に見ても、あるいは、また、どこの指導者にとっても大切なことは、安いエネルギーを大量に供給することであります。この点で言いますと、アメリカのオバマ大統領はその政策に失敗しました。

 登場と共に、太陽エネルギーを提唱いたしましたオバマ大統領は画期的、そして野心的なエネルギー政策を打ち出したとして世界中から歓迎されました。しかしながら、1年たった今、太陽エネルギーの開発には予想以上に長い時間がかかる、そして、一方では石油企業との関係が芳しくないうえに、原子力発電政策についてもはっきりした態度を明らかにしておりません。

 こういったオバマ大統領のやり方は、かつてのカーター政権の石油危機の時代と同じであります。当時アメリカは石油が不足し、経済が混乱し、政治が大きく揺れました。オバマ大統領はエネルギー政策に失敗した結果、これから当分アメリカの景気も、そして政治も、私は回復が難しいだろうと思います。

 残念ながら、この経済すべてをアメリカに頼ってきた日本としては抜本的な政策の変更、世界のどこを相手にするか、どういうエネルギー政策をとるのか、新しいやり方を考えなくてはならなくなっていると思います。
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関連記事
米、核再処理を断念、政策転換、高速炉の建設計画も取りやめの方針(2009-04-23)


日高さんのこのリポートは5部構成ですが、このリポートの第1部になぜスウェーデンが登場するのか、そして、第1部で取り上げたスウェーデンの「着実な高レベル廃棄物(使用済み核燃料)処分計画」が第2部以下とどうつながっているのかよく分かりませんでした
 
 スウェーデンは、日本と違って、「使用済み核燃料の再処理」を行わず、「直接処分」の方式を選択していますので、原発からの核廃棄物処分施設としては低・中レベル廃棄物の最終処分場(SFR)、高レベル廃棄物の中間貯蔵所(CLAB)および高レベル廃棄物の最終処分場(SFL)の3つの施設が必要となります。SFRは1988年に完成、CLABは1985年に完成、あとは、SFLを2020年頃をメドに完成させる計画となっていました。
 
 日高さんがリポートしたのは、スウェーデンの核廃棄物の処分施設のうち、最後に残っていたSFL(高レベル廃棄物処分場)の建設を当初の計画通りのスケジュールで着実に進めているという話です。SFLが完成すれば、原子炉から取り出されて数十年間CLABに貯蔵されていた高レベル放射性廃棄物(使用済み核燃料)は順次SFLに移されます。

 マークグレンさんと日高さんの会話が何となくしっくりいかないのは、マークグレンさんが最初から「Spent Fuel(使用済み核燃料)」といっているのに、この言葉を聞いた日高さんが、銅製のキャニスターに入れるべき 「高レベル廃棄物」 の形状(使用済み核燃料集合体)を正確にイメージできていなかったからだと思います。

 私の環境論では、現在は「20世紀の経済規模の拡大」から「21世紀の経済規模の適正化」への転換時期ですので、このリポートの締めくくりに示された日高さんの判断基準 「経済を拡大し、そして世の中を活性化するために、歴史的に見ても、あるいは、また、どこの指導者にとっても大切なことは、安いエネルギーを大量に供給することであります。この点で言いますと、「アメリカのオバマ大統領はその政策に失敗しました」 は、20世紀の発想の域から一歩も抜け出ていないと考えざるを得ません。