ビター☆チョコ

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ミス・ポター

2007-09-18 | 洋画【ま】行

舞台は1902年のロンドン。
今もなお世界中で愛されている、青いジャケットを着たうさぎ、ピーター・ラビットが人々の前に姿を現そうとしていた。
ピーター・ラビットを世の中に出そうとしてるのは、ビアトリクス・ポター(レニー・ゼルウィガー)。
ビアトリクスにとって、ピーター・ラビットやその仲間達は、単に想像の中の動物ではなく
幼い頃から遊び親しんだ、仲良しの友達なのだった。
 やっと出版にこぎつけたビアトリクスに、新米の編集者、ノーマン・ウォーン(ユアン・マクレガー)は親身になって協力する。
ノーマンもまた、ビアトリクスの描くピーター・ラビットの世界に深く魅せられていたのだった。
二人の間には、信頼だけでなく、愛情も育っていった。

まだ女が仕事を持つことなど考えられなかった時代です。
その中で、裕福な家の「お嬢様」として何不自由なく暮らしてきたビアトリクスが
アーティストとして生きていくために動き出します。
なぜ、彼女の描く世界が何年たっても色あせることなく誰にでも受け入れられるのか。
映画を観て、少し分かったような気がします。

幼い頃からの夢を持ち続け、その創造力を童話へと昇華させていくビアトリクス。
その過程では楽しいことばかりではなく、両親との気持ちの行き違い、
やっと巡り逢えた最愛の人との突然の別れ、がありました。
辛い時、哀しい時に、彼女の慰めになったのは、彼女が描くピーター・ラビットたちでした。
ピーター・ラビットの物語は夢や情熱や哀しみまで詰め込んだ
「ビアトリクス・ポター」のすべてだったのです。
その素直な情熱や夢が、いつまでも色あせることなく読者を魅了し続けるのかもしれません。

やがてビアトリクスは幼い頃から親しんだ湖水地方に移り住み、美しい自然を乱開発から守り抜きます。
そして、それは現在のナショナル・トラストに受け継がれて
今も、湖水地方は、ビアトリクスが過ごした頃の姿をとどめているようです。

観てる間中、鼻の奥が何度もツンとしました。

ビアトリクスはとても優しい女性です。
優しいだけじゃなくて、とても強い。
ちゃんと自分の価値観を持っている女性です。

まだ封建的だったこの時代。
女にとって、「年齢」というのは、とても大きなプレッシャーだったと思うのです。
仕事を始める時
やっと人生を共にしたいと思う人が現れたとき
きっとプレッシャーを感じてる女は急ぐと思うのです。

でも、彼女はちゃんと時期が来るのを待つ強さがある。
そして、その結果、どんなに哀しい出来事が起こっても
ちゃんと自分で立ち直っていく術を持っている女性です。
何かと時間に追いまくられ、先を急ぎがちな「今」と比べて
「待つ」ということに強さと美しさを感じました。

「待つ」というのは、どんなに信じていてもつらいことです。
「待てる」のは
自分の軸がちゃんとしてないとできないことだと思うのです。

ビアトリクスとノーマンの思い出の曲が



エンドロールで再び流れた時
今まで鼻の奥でツンとしていたものが、どっと涙になって流れました。



When You Taught Me How To Dance    Katie Melua

美しい湖水地方の風景と
この歌声が、しばらく忘れられなくなりそうです。