ビター☆チョコ

店じまい後も変わらずご訪問ありがとう。
新居をかまえましたので
お近くにお越しの際はお寄りくださいませ。

ブロークバック・マウンテン

2006-03-28 | 洋画【は】行
                   

1963年、ワイオミング州ブロークバック・マウンテンでイニス(ヒース・レジャー)とジャック(ジェイク・ギレンホール)は出会った。
二人は季節労働者として山の中でキャンプをしながら羊飼いをする。
陽気なジャックと寡黙なイニス。
初めはぎこちない二人だったが、山の過酷な生活が二人を近づけ二人は結ばれる。山を下りた後は会うこともなくそれぞれ家庭を持った二人だったが、4年後に再会して、お互いの存在の大きさ、自分が本当に求めていたものがなんだったのかを知るのだった。


因習と伝統に縛られて生きてきたカウボーイ二人。
ジャックはたぶん、自分がゲイであることをちゃんと認識していたのだと思う。
イニスは、幼い頃に父親が同性愛者を憎むあまりに殺人を犯し、その死体をわざわざ見せられたという恐ろしい経験をしている。
同性愛者を殺したイニスの父は、そのことで罰を受けた様子もないことから、この時代のゲイに対する偏見のすさまじさが伺える。

それでも好きになることに理由もなにもない。
たまたま好きになった相手が同性だった。。。
社会の目から逃れるように、わずかな時間を見つけて20年もの間、山の中で会い続ける二人。
自分の気持ちを隠せば隠すほど家族との溝は深まり、相手への思いだけが募っていく。。。

異性間の恋愛なら一応結婚という着地点があって、そこに生活や現実が絡んで愛情の形が穏やかなものへと変わっていく。
ただただお互いの愛情だけを求めて生きていくことのなんて辛いことか。
その先には憎しみあって別れるか、あるいはどちらかの死か、そのどちらかしかないのだろう。

そして、自分の夫がゲイだと知ったときの妻の驚き、悲しみ。
イニスの妻アルマ(ミシェル・ウィリアムズ)とジャックの妻ラリーン(アン・ハサウェイ)が対照的な態度で演じていた。
アルマは耐えて耐えて、耐え切れなくなってイニスに怒りをぶつける。
ラリーンは直接は語らないけど、たぶん自分の夫がゲイで、そしてそのために悲惨な結末を迎えたことを知っていたのだろう。
イニスと電話で話す時の目や口調に、静かな冷たい怒りを感じた。

すごく入り込んだってわけではないけど、重いせつなさは充分伝わってきた。
それなのになぜ、場内で笑い声が上がるのか。
イニスとジャックが再会し、物陰で激しく抱き合う。
アルマはそれを偶然見てしまってショックを受ける。
その場面はとても哀しくて、せつない。
人の感じ方はいろいろなんだろうけど、笑える要素はどこにもないはずだ・・・と思う。
他にもそんな状況が何ヶ所かあった。
国と時代は違うけど、人の意識はあの頃となにも変わっていないのかもしれない。