象の目つきをして

2007-07-23 | literature
或る日の「宮澤賢治」(一九二四、八、二〇)
              藤原 草郎

突拍子のリズムで賢さんがやつてくる
カーキ色の服をはづませてやつてくる
午前の国道街は気を付けいだ
あの曲がり角まで来た
雲の眼と風の変り様で
どっちへ曲がるかゴム靴に聞いて見ろ

草藪の娘から借りて来た帽子だ
野葡萄の香りがして来た
一体あのユモレスクな足どりは
おれの方を指してゐるではないか
それ用意だ
おれの受信局しつかりしろ

象の目つきをして戸口に迫つて来た
三日月の扉からまつげが二三本出てゐる
地球の切線の方へと向いてる前歯
唇でおひかくされるものか
アザラシに聞いて見るがいゝ

何だ挨拶などしてゐる
ほら
頑丈な手だ
スケツチブツクを振り廻してゐる
あゝ
その廻転速度を少しゆるめてくれ
その放射量を減らして貰ひたい
おれはすでにでんぐりかへつてゐる

八畳の部屋は賢さんで一ぱいだ
野良の風景であふれてゐる
よろしい聴かう
ブレストだつてヴイバアチエだつて構はん

あゝ
少し待つた
とてもたまらない
さう引つ張り廻されてはおれは分裂する

ぎらぎら光る草原を
プリズム色彩で歌はされる
松の葉の尖端を通り抜け
雲の変化形を一々描き分け
銀河楽章のフイナーレだ

おれのセロはうなり通しに疲れ
賢さんのタクト棒だつてへし折れてゐる
アメーバの感触と原生林の匂ひから
四次元五次元の世界へだ
とんでもない心象スケツチだ

賢さん行かう
ベエトウベエンの足どりで
イギリス海岸を通って行かう
イーハトヴの農場へ
トマトの童話でも聴きに行かう

(「岩手日報」昭和8・10・6改作)

宮澤賢治の親友、好漢藤原嘉藤治が賢治をうたった詩。
素晴らしいので、
「第4回 藤原嘉藤治パネル展 嘉藤治の文学」
(http://www.viewgarden.com/tenji04.htm)
から拝借。
草郎氏(「セロ弾きのゴーシュ」のモデル)、
気の毒に賢治から自作の詩を酷評されて、
以後詩を書かなくなったそうだが、上の詩など、
率直で素晴らしい。
「象の目つきをして」などやさしく秀逸な表現だ。

賢治が亡くなったのが昭和8年9月21日だから、
死の直後賢治を追悼して発表されたもの
ということになる。
あかるくかなしい。


はやくOki(岡島)を!

2007-07-23 | mlb


2勝1敗でむかえたホワイトソックス4連戦、7回まで8-1でリード、ここでウェークフィールドが崩れて降板。さらに2番手デルカーメンが四球連発で、4点を返され3点差。2アウト満塁。ここで岡島登板、3日前松阪を痛打した5番ピアジンスキーを空振り三振にとり、鮮やかな火消し。8回もそのまま無失点におさえ、9回パペルボン登板で、レッドソックスが勝ち、4連戦を3勝1敗で乗り切る。ヤンキースが追い上げているから、貴重な1勝。

3点差とされたところで、ボストンファンは「7点差あったゲームをおとすわけにはいかない、はやくOki(岡島)を!」と悲鳴状態、それにこたえる好投だった。ホワイトソックス、ギーエン監督のコメント。
"Okajima has been effective all year long," Chicago manager Ozzie Guillen said. "I think he's one of the biggest reasons that Boston is still in the fight."(Boston Globe)
たしかに、レッドソックスにとって防波堤ないし支柱のような活躍。コンスタントによい仕事を続けているのがえらい。

次は、クリーブランド4連戦。タフな相手だ。ガンの疑いから復活の(ガンではないという診断をうけた)23歳の左腕ジョン・レスターがカムバック、先発として第1戦に登板予定。昨年8月以来の登板に「エキサイトしている」とのこと。