紫陽花記

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別館「銘茶処」

お坊様と踊る

2020-02-07 08:31:49 | 「とある日のこと」2020年度


お坊様と踊る

レッスン日がキャンセルとなって突然空いた日。考えた末に踊りに行くことにした。

 月1回程度お邪魔しているダンスホール。早い時間なので客はまばらであった。今日の予定表には、スタッフだけのはずだったが、受付で、「チャーターですか?」と聞かれた。

チャーターの男性は、中国地方からいらしたお坊様とのこと。ホールを見渡すと、窓際の席の端に、二十代半ばの五分刈り頭で細身の男性がいた。上下黒の服装である。

私は一旦、壁一面鏡張りの前の椅子に陣取った。チャーターに入れてもらうかどうか迷う。遠路はるばる来た人物らしいし、二度と踊る縁がないかもしれない。などと考え、チャーターの仲間に入れてもらうことにした。仲間は10人。右端から順に踊ってもらうのだが、自分のことはさて置いて、こちらは、やはりダンサーの技量を見定める目となってしまう。身長173cm位の立ち姿。背筋が伸び、ツンと突き出したヒップが如何にも技量の高さを予感させた。

ホールいっぱいにダンス曲が流れ始めた。3人のスタッフとチャーターしたお坊様のY氏が、それぞれの位置から踊り始めた。Y氏の背中のカーブと、崩れないホールドが、技量の高さを十分に示している。丁寧な踊り方と性格の良さそうなところが魅力。チャーター仲間はみな満足気だ。

 私の番になった。まずはワルツ。リラックスして踊ってもらうことができた。スタンダードは勿論だがラテンもしなやかな踊り方だ。仲間は皆楽しそう。アッっという間の時間。再度縁があると良いのだが。

私は想像した。きっと、黒の法衣姿も美しいに違いない。
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