紫陽花記

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「とある日のこと」冬湖上

2017-12-14 16:22:55 | 「とある日のこと」2017年度
冬紅葉零れて湖面染にけり
(ふゆもみじこぼれてこめんそめにけり)
 
日帰りバス旅行で房総・亀山湖へ出かけた。
続いているバス事故のニュース。それに伴い、運転者の勤務体制が厳しくなり、4時間の運転時間の内30分の休憩を取らねばならない規則になったとか。往復の休憩地では15分ずつシッカリと休憩。命を預ける側としては有難い。

 亀山湖は、以前行ったことのある農溝の滝に近い場所。地図上で見る限りでは、山々の間を縫うような地形。一番広いところが観光地として整備されていた。オレンジ色のライフジャケットを着用し、バスの乗客17人と添乗員とで、24人乗り観光遊覧船に乗る。一列3人ずつ船の端から渡した一枚の板の椅子に座る。動くと怖いのでじっくりと腰を下ろす。日本でも最後に見頃になるという紅葉の名所。人造湖の水深25mの水面には近づけば美しい紅葉が映る。同じような船が行き交う。少人数用の舟や釣り目的の舟もチラホラ湖上に浮かんでいた。乗船30分の間写真を撮る。船上からは紅葉。水面には流木が見られる。湖底に沈んだ木々が腐って浮き上がってきているのだろうか。青緑の水藻が大きな面積で漂っている。水上が怖いはずの自分を忘れていた。

 昼食は館山市の『季の音』。百年の古民家を改装した店舗。以前は村長さんの屋敷。立派な門構えを入ると日本庭園が迎える。赤い毛氈の縁台があちこちに置かれていた。玄関は広く靴入れ完備。暗い色調の内装と障子の白。百年の歴史を壊さない工夫と現代人に沿う工夫が優しい。師走の献立で釜焚き飯のランチ。彩り豊かな御膳が美味。午後は、「千倉オレンジセンター」で蜜柑狩り。













「とある日のこと」秋望

2017-10-02 07:46:47 | 「とある日のこと」2017年度

秋望や石舟橋の宿衣

(しゅうぼうやいしぶねばしのやどころも)

 三列シートのデラックスバスで秋川渓谷へ7時45分出発。座席は私の短い脚を遊ばせる程ゆったり。高速道路の渋滞は無く快適な走り。まだ紅葉には早く、木々は青く、偶に薄紅葉を見ることが出来た。秋川渓谷は東京の奥座敷。撮影スポットと言われている秋川渓谷に架かる全長96mの赤い吊橋の「石舟橋」を渡り、温泉施設の「瀬音の湯」を目指す。

「石舟橋」は吊橋でありながら、その名の通り足場はガッチリとした資材で造られていた。なので、揺れは殆どない。渓谷の流れは、橋からの上流は緩やかで、橋から下流は落差のある岩場の流れで白く泡立ち大きな音を立てていた。

 渓谷を垣間見ながら、木々の間の遊歩道を上り「瀬音の湯」へ。温泉施設の駐車場は満杯。無料の足湯に浸かっている人もいた。土産物を買う。「新矢柄橋」まで行ってみることにした。「湯音やさしいもりのみやこー、らららららぁー、う、ふぅふぅ、う、う・・・」と聞こえてきた。それが何度も同じフレーズばかりを歌う。確かに、ずうっと瀬音が途切れなく聴こえている。誰の歌だったかなぁ。仙台出身の歌手だったはず「広瀬川流れる岸に・・・」だったかな。などと思っていると、鼻歌の主は、今朝我が家から一緒に出てきた人物ではないか。

 昼食は、築齢270年の庄屋屋敷、「黒茶屋」の山里コースランチ。熱いものは熱いままにテーブルに運ばれてきた。流石にどの料理も美味しい。特に鮎の塩焼きが絶品で大満足。

 復路は幸手市にある「権現堂公園」の曼珠沙華を見る。今年は全体的に早く咲きだしたとかで、終わりに近い咲き具合。それでも大勢の人々が千本の桜の下の花を愛でていた。

「とある日のこと」彼岸花

2017-09-22 06:54:58 | 「とある日のこと」2017年度

利根川の草魚の群れと彼岸花
(とねがわのそうぎょのむれとひがんばな)

偶然見つけた彼岸花の群生地。25年ほど前に通ったことのある利根川に沿った道。近くへ駐車して散歩することにした。堤防の上は遊歩道。彼岸花を保護するように手入れが行き届いていた。川側の斜面は少ないが、反対側の斜面いっぱいに群れている。堤防に沿った道路の下は住宅地。桜の木のある公園のような所までも、自然と増えたのか、疎らに咲いていた。
遊歩道を歩きながら、ふと25年前の記憶が蘇った。
利根川に架かる橋を渡り千葉県側から戻ってきた車窓から、少しの間利根川の流れが見える場所がある。季節はいつだったか思い出せないが、文章の勉強会からの帰りだった。川の流れに夥しい数の魚の群れが遡上していくのが見えた。鯉より大きく、鮭ほどの大きさの魚影。一斉に川上を目指していた。これほどの大きな魚の群れを見ることなどなかった。ドキドキと心臓が震えたのを覚えている。
後日、勉強会の時に地元出身の先輩に話したところ「草魚なのではないか」と言った。
今回ネット上で検索してみたところ、以下の説明があった。
「草魚」とは、コイ目の淡水魚。全長1mを超える。鯉に似ているが口ひげがない。東南アジア原産。植物性の餌を好む。食用。戦前中国から移入された。利根川水系で繁殖。
 忘れていた疑問が解けた。
彼岸花の群生地を見つけたことで、来年からも楽しめる場所が出来たのと、また、草魚の群れを見ることが出来るかもしれないと嬉しくなった。

「とある日のこと」夏雲

2017-07-25 08:56:07 | 「とある日のこと」2017年度



夏雲や止まれ原発ウインドミル

(なつぐもやとまれげんぱつういんどみる)

『銚子電鉄レトロ列車と新鮮海の幸』と銘打った日帰りバス旅行へ出かけた。

 高速道路から眺める車窓には、幾分黄色味がかった青田が連なる。関東平野の米所を実感。所々の休耕田には太陽光パネルが設置されているのが見えた。数年前の原発事故以来増えている感がある。住宅地の空きスペースや、丘の斜面にも見ることができ、原発に頼らないエネルギー確保に傾いているように思える。銚子市に近づくにつれ、風力発電の大きな風車が沢山見えてきた。港近くにまで適度な間隔に立っていて、三枚の羽が回っていた。ここでも再生可能エネルギーの普及を見ることができた。

 バスは、創業385年を迎えた『ヒゲタ醤油』の工場へ。社の成り立ちを工場敷地内にあるミニ シアターで見た後、工場内を見学。現在は主に業務用醤油の生産が多いとか。工場内の広いスペースに、イタリア在住の画家、故坂田秀夫氏と妻の由美子夫妻による幅10m、高さ2,8mのフレスコ画が展示されていた。天、地、人の精神を元に、「銚子と江戸の繋がり、江戸と現代の繋がり」を表現した大作。その後、創業以来の商品や器具類の資料館を見学した。

 昼食は、銚子港近くの『鮪蔵』で岩ガキと刺身の海の幸ランチ。大変美味しかった。

 昼食後、銚子電鉄のレトロ列車に乗り込む。犬吠駅から銚子駅まで。一時は廃線に追い込まれたとか。熱心なファンに支えられての復活とか。財政的に問題の多かった路線。最後に、銚子電鉄、食品製造販売の「ぬれ煎餅」を焼く体験をし、土産として購入する。

しみじみ感じたのは、どのような職業でも、努力なしでは続けられないということ。

「とある日のこと」九輪草

2017-06-12 10:16:13 | 「とある日のこと」2017年度
森の精のささやく流れ九輪草
(もりのせいのささやくながれくりんそう)

 憧れの九輪草の群生地へ出かけた。日帰りバス旅行。6月11日(日)晴れ。日光・中禅寺湖畔の千手が浜へ。早めの昼食後、遊覧船「けごん」に乗って、水面標高1269m・水深163mの中禅寺湖の船上に、水の怖い私は、350人の観光客の一員として身を委ねた。

 船上から標高2486mの半分の男体山の姿が見える。船が進むにつれ角度が変わってくると、山肌に鋭くひっかき傷のような崩れた跡が見えた。ゆっくり船は進む。何十年ぶりかの中禅寺湖と周辺の風景は緑一色。船は菖蒲が浜に寄り、そして千手が浜へ。

 浜から森の奥へ進む。手つかずの森。倒木などはそのままにされ、道は最低限度の整備。中禅寺湖へ流れ込んでいる細い流れには、木製の橋や吊り橋が掛かっていた。流石に、吊り橋の揺れは怖く、両側に渡されているワイヤーロープに掴まって進んだ。九輪草がポツンと2,3株花をつけている。いよいよ九輪草の群生地に近づいたと心が躍った。

 九輪草の群生地は黄色の網で囲われていた。野生動物の侵入を防ぐ為でもあろうが、観光客の中にも無法者がいるかもしれない。なんて考えたのは私だけかもしれないが、手厚い保護のもと、九輪草は静かな森に、清らかな流れを取り囲むように、白から濃い紅色と中間色の、様々な色合いの花を咲かせていた。それは、夢の中のような空間で、私は目を瞬くことすら忘れてシャッターを切り続けた。

 千手が浜の桟橋の横で遊覧船の建造をしていた。九輪草の最盛期には、これからも観光客が増え続けるに違いない。また、この憧れの地へ再度訪れたい。