孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国経済、米中貿易摩擦で減速傾向加速 先行き懸念の中国と成果が欲しいトランプ大統領の妥協も

2019-02-03 23:18:08 | 中国

(【1月30日 WSJ】 中国はともかく、かつてアメリカで不動産を爆買いした日本はどこに消えたのでしょうか?)

【米中貿易摩擦の深刻化とともに低迷基調を強める中国経済】
中国指導部は一昨年来、目先の景気よりも過剰債務問題の解消といった構造改革を重視する政策をとってきました。問題が深刻化すれば金融危機という最悪の事態を招くことを懸念したためとされています。

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2008年秋のリーマン・ショック直後、中国政府は総額4兆元(約66兆円)もの大型景気対策を打ち出した。各地ではインフラ投資が大盛況となったが、銀行融資などの「借金頼み」だったため巨額の債務が積み上がった。

国際決済銀行(BIS)によると中国の金融部門を除く総債務の国内総生産(GDP)比は、08年に141%だったが17年には255%にまで拡大している。【2018年8月2日 産経】
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こうした“目先の景気より構造改革”という対応は、アメリカなどの外需による景気下支えを前提としていました。しかし、深刻化する対米貿易摩擦で外需頼みの景気の悪化が表面化しています。

中国の景気減速は昨年から指摘されていることですが、ここにきて統計数字(日本以上に信頼性には問題があるとはされていますが)でもそのあたりが明確になっています。

****中国の貿易黒字、2018年は前年比16.2%減****
中国税関総署が14日に発表した統計によると、2018年の中国の貿易収支の黒字は前年比16.2%減となった。輸入が前年比15.8%増加した一方、輸出は前年比9.9%増にとどまった。
 
輸出と輸入を合わせた貿易総額は4兆6200億ドル(約500兆円)で過去最高を記録し、前年比12.6%の伸びとなった。

ただ、輸出の伸びを輸入の伸びが大きく上回り、黒字額は3517億6000万ドル(約38兆円)と前年比16.2%減となった。 【1月14日 AFP】
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まあ、減少したとは言っても約38兆円の大幅黒字ではあります。
問題は、その黒字の大部分が対米貿易によるもので、しかもトランプ大統領が貿易不均衡批判に躍起になっているなかで、過去最大を記録していることです。

****中国、対米黒字が過去最大 18年は前年比17.2%増の約35兆円、米政権の圧力強化必至**** 
中国税関総署は14日、2018年の対米貿易黒字が前年比17.2%増の3233億ドル(約35兆円)だったと発表した。

米ダウ・ジョーンズ通信によると、対米黒字額は過去最大。米中間の貿易不均衡がさらに拡大したことで、中国に米国産品の輸入増を求めるトランプ米政権の圧力が一段と強まりそうだ。(後略)【1月15日 SankeiBiz】
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GDPは28年ぶりの低水準とのこと。絶対値の信頼性はともかく、減速しているは確かなようです。

****中国GDP、2018年は6.6%増 28年ぶり低水準****
中国国家統計局は21日、2018年の国内総生産を前年比6.6%増と発表した。米国との貿易戦争による景気低迷もあり、28年ぶりの低水準。中国政府が設定していた年間成長率目標の6.5%前後は上回った。
 
同時に発表された18年10〜12月期のGDPは前年同期比6.4%増だった。 【1月21日 AFP】AFPBB News
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景気拡大しているとは言われながらも、その実感がまるでない日本経済からすれば、6.8%が28年ぶりの低水準というのはうらやましい限りです。

もちろん、13億人民を支えなければならない中国指導部にとっては大問題です。

****米中貿易戦争で一段と進む中国の景気悪化*****
中国の景気悪化が一段と進んでいる。2018年末の上海株式市場は前年末比約25%安、12月の景況感指数は2年10カ月ぶりの低い水準となり、米中貿易戦争の顕在化は米アップルをも直撃している。

中国経済への逆風は今後さらに増すとの見方が強く、米国との貿易協議にも影響を与えているもようだ。
 
「1年を通じて低迷が続いた」
中国の経済メディア「東方財富網」は18年の上海株式市場をこう振り返った。

同市場の代表的な指数である総合指数の18年末の終値は2493.90と、前年末(3307.17)比で24.6%下落した。米中貿易摩擦の深刻化とともに低迷基調を強め、12月27日には終値が約4年1カ月ぶりの安値を記録している。
 
中国経済では消費の冷え込みが目立つ。中国政府が先月中旬に発表した11月の消費動向を示す小売売上高の伸び率は、03年5月以来15年半ぶりの低水準。

過去の景気対策の反動もあって消費者の財布のひもは固くなっており、18年の中国の新車販売台数は1990年以来28年ぶりの前年割れになるとの見通しを中国メディアが伝えている。(中略)
  
悪影響は製造現場にも広がる。政府が昨年末に発表した12月の景況感を示す製造業購買担当者指数(PMI)は49.4と、好不況の節目の50を割り込んだ。2016年2月以来2年10カ月ぶりの低水準だ。
 
習近平指導部は急速な景気悪化を懸念し、減税措置など景気刺激策を積極化。今月4日には中国人民銀行(中央銀行)が預金準備率を引き下げる金融緩和措置を発表したが、米ブルームバーグ通信は「最近の刺激策にも関わらず、(中国)経済が近いうちに底を見つけるという見方はほとんどない」と伝えた。(後略)【1月12日 産経】
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【米商業不動産市場からのチャイナマネー撤退 中国国内での不動産「神話」の崩壊】
こうした景気悪化を反映して、春節で日本にやってくる中国人観光客の消費支出も減少し、かつての“爆買い”もうすれてきている・・・・と、先ほどのTVニュースでやっていました。

もちろん、以前から言われている変化ですが、ただ、インタビューでは日本旅行中の買い物予算が“200万円”という中国人もいたりして・・・いまだ“爆買い”健在の印象も。

また、某眼鏡店の方が「以前は勧めたら何でも買ってくれたが、最近は吟味するようになった」といった趣旨の話をしていましたが、それって異常な消費行動が正常化したということでもあります。

同じような傾向が、アメリカの商業不動産市場からのチャイナマネーの撤退傾向にも見られるようです。
数字としての撤退傾向は間違いありませんが、上記“爆買い”同様に、異常な不動産投資が正常化した側面もあるように思われます。

****中国マネー、米商業不動産市場からの撤退加速****
2018年の中国による米商業不動産の純購入額は、2012年以来の低水準に落ち込んだ。これは中国政府が経済成長の鈍化を背景に、自国投資家に国内への資金還流の圧力をかけ続けているためだ。
 
調査会社リアル・キャピタル・アナリティクスによると、2018年第4四半期には、保険会社、多国籍企業、その他の中国本土を基盤とする投資家らの米商業不動産売買は8億5400万ドル(約930億円)の売り越しとなった。中国投資家の米不動産の売り越しは3四半期連続。これほど長期にわたって中国投資家が売り越したのは、これが初めてだ。
 
2018年の傾向は、それ以前の5年間からの著しい逆転と言える。中国の投資家らはそれまで猛烈な買いあさりを見せ、米国の象徴的不動産の買い付けで、しばしば競争相手を易々と打ち負かしていた。

ニューヨークのウォルドーフ・アストリアのような高級ホテルやシカゴの超高層ビル開発事業、カリフォルニア州ビバリーヒルズの豪華な住宅開発プロジェクトなどに数百億ドルもの資金を投じていたのだ。

現在、海外不動産を投資対象とする中国大手投資家の多くは、こうした戦利品のような不動産について、一部を売却するか、少なくとも新たな投資パートナーへの持ち分売却によってリスクを減らすなどの行動に出ている。
 
昨年の方向転換は、中国政府による通貨安定化、企業債務削減、経済成長鈍化の抑制に向けた海外投資制限などの政策努力を反映している。

中国の一部開発業者は現在、国内で厳しい資金調達環境に直面するなか、米国に保有していた不動産の一部を売却することで代替資金を調達しようとしている。
 
アナリストらによれば、一触即発状態となっている米中間の貿易面や政治面の対立もまた、中国企業にとって米国を居心地の悪い場所にしている。(中略)

中国による米不動産市場からの撤退は、世界第2の経済大国の成長鈍化が世界に影響をもたらし、金融市場を混乱させ、企業利益を少なくさせていることを示す新たな兆候だ。

中国は最近、18年の経済成長率が6.6%だったと発表した。これは年成長率としては1990年来最悪の数字であり、中国政府の予想を超える減速であることを示している。
 
中国当局は当面は資本規制を緩めそうにない。このため、アナリストは2019年も、中国人投資家が米不動産を売却する流れが続くとみている。(中略)

一部の中国人投資家は依然として米不動産市場に関心を持っている。ただ、高層ビルや豪華ホテルの取得を目指すのではなく、より堅実な運用益の得られる倉庫、コンビニエンスストアなどの小規模小売店舗など、より平凡な不動産に重点を置いている。(中略)

米不動産仲介大手クシュマン・アンド・ウェイクフィールド(C&W)の中国直接投資部門を担当するシニア・マネジングディレクター、シンイ・マッキニー氏によれば、10億ドルを超えるような取引は過去のものとなったが、3000万ドルを下回る規模の不動産開発には依然として中国系からの関心はあるという。
 
マッキニー氏は「投資家は以前、『ニューヨーク、あるいはサンフランシスコの中心部で最も高額なビルが欲しい』と言っていたが、現在はより運用利益を重視するようになっている」と語っている。【1月30日 WSJ】
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中国の国内不動産市場も冷え込んでいるようです。

****中国不動産市場に「異変」、売りたくても買い手見つからない「流動性リスク」=中国メディア****
不動産バブルが生じていると言われて久しい中国だが、中国共産主義青年団(共青団)の機関紙である中国青年報は27日、北京市や上海市、深セン市などの「一線都市」において、中古不動産市場の価格が下落し続けており、流動性リスクが顕在化し始めていると伝え、「中国の不動産市場は『買えば儲かる』という時代ではなくなりつつある」と伝えている。(中略)

記事は、(北京市や上海市など)一線都市であっても「高級不動産が投げ売りされていて、中古不動産も値引き合戦が見られる」と紹介する一方、それでも取引の成約数は低迷していると強調し、2018年下半期から現在にかけて、不動産市場の低迷はすでに中古市場へと波及していると指摘した。

さらに、中国ではこれまで「不動産は元本割れがない」、「不動産は買った時より高い値で売れる」という「神話」が存在したが、この神話はすでに終わったと強調。

「借金をして不動産を買っても儲かる」という黄金の時代は過ぎ去ったと伝え、売ろうとしても買い手が見つからないという「流動性の低下」が見られるとし、不動産ディベロッパーをはじめとする業界関係者は誰もが焦りを感じていると伝えた。(中略)

中国政府が不動産市場に対して行っている緊縮政策が今後緩和されることは考えにくく、中国の投資家にとって「資金を借り入れて、不動産を買う」という時代は、「おそらく二度と戻ってくることはないだろう」と伝えている。【1月30日 Searchina】
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日本のバブル崩壊を連想させる話ですが、実態はどうでしょうか。

【過剰債務問題といった経済リスクへの警戒から、大規模な景気対策の余地は限られている】
こうした景気減速傾向に対し、中国指導部は当然に景気対策を講じていますが、冒頭にも書いたように過剰債務問題といった経済リスクを抱えている状況で、景気対策にも限界があるようです。

****景気対策拡充に急ぐ中国…経済リスク警戒で限界指摘も****
中国政府が景気対策を急ピッチで拡充している。1月下旬に自動車や家電の購入を促進する消費刺激策を発表したほか、今年に入ってからだけでも金融緩和や減税措置、インフラ投資の拡大などが相次いで打ち出されている。

米国との貿易摩擦で進む景気悪化を食い止めるためだが、過剰債務問題といった経済リスクへの警戒から、大規模な景気対策の余地は限られているという見方が強い。
 
「消費政策の紅包(お年玉)が出た」。中国紙の経済日報(電子版)は、春節(旧正月)前の1月29日に国家発展改革委員会などが発表した自動車や家電の購入促進策を褒めそやした。
 
発表文によると、環境性能の低い旧型車から新型車に買い替える際に補助金を支給する。農村部での小型車への買い替えも補助するほか、中古車取引でも減税を実施。冷蔵庫や洗濯機、エアコンなどの家電についても、買い替えの際に補助金を支給する。
 
昨年来、個人消費の冷え込みは厳しさを増しており、特に自動車市場の悪化が目立つ。2017年末に小型車減税が打ち切られたことに加え、貿易戦争の激化を見込んで消費者の財布のひもが固くなっており、18年の新車販売台数は28年ぶりの前年割れに陥った。
 
消費刺激策以外にも中国政府は貿易戦争による景気減速への対策メニューを急ぎそろえている。1月4日には中国人民銀行(中央銀行)が、預金準備率を計1・0%引き下げる金融緩和措置を発表。同9日には小規模企業を対象に、当面3年間にわたり毎年約2千億元(約3兆2400億円)規模の減税が決まった。
 
抑制傾向にあったインフラ投資も徐々に積み上がっている。中国紙、中国経営報(電子版)は1月3日、19年の鉄道投資額が過去最高の8500億元規模になるとの見通しを報じた。(中略)
 
ただ一連の景気対策は、08年のリーマン・ショック直後に打ち出した「4兆元景気対策」と比べると規模感は劣る。過剰債務問題や不動産バブルなどの経済リスクが横たわり、中国当局は手を縛られたような状態にあるためだ。

ロイター通信は「強い刺激策の余地は大きくなく、そして非常に大きなリスクがある」という中国情報筋の見方を伝えている。【2月3日 産経】
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【景気悪化が米中貿易交渉進展を後押し 目先の成果が欲しいトランプ大統領との間で妥協も】
鉄道投資額が過去最高・・・採算無視の「高速鉄道」をガンガン作ったことで、国営中国鉄路総公司の債務は約85兆円に膨れ上がっているそうですが【2月3日 NEWSポストより】、いいのでしょうか?

景気悪化を懸念する中国指導部、目先の“成果”が欲しいトランプ大統領・・・ということで、懸案の米中貿易問題の方は“進展”する可能性も大きくなっています。

ただ、アメリカの対中国強硬派が知的財産などで目指すところとは異なる、“目先の成果につられた妥協”となる可能性も。

****トランプ氏、賭けの外交 月末、中朝と首脳会談か****
トランプ米大統領が2月末に、中国の習近平(シーチンピン)国家主席と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長とのダブル首脳会談にのぞみ、「成果」を得ようとの姿勢を強めている。

メキシコ国境の壁建設は議会の抵抗を受けて挫折するなど、米国内は厳しい状況になり、外交・通商の目先の成果で巻き返そうと前のめりになっている。

 ■目先の成果追う 妥協の懸念も
 「これは、とてつもなくデカいディール(取引)だ」。トランプ氏は1月31日、大統領執務室に、中国の劉鶴(リウホー)副首相を招き、高揚感を隠さなかった。記者団の前で、習氏からの親書が朗読された。(中略)

トランプ氏は「美しい手紙だ」と絶賛。劉氏も、米産大豆を大量に買うことを約束し、「大統領と習主席の戦略的指導によって、成功に満ちたディールをまとめられる」と持ち上げた。中国の要請を受け、2月末をめどに首脳会談に臨む意欲も見せた。
 
トランプ政権の交渉責任者ライトハイザー通商代表や、ナバロ大統領補佐官ら「対中強硬派」にとって、この通商交渉は10年や20年先を見据えた覇権争いと位置付けられている。サイバー攻撃などで知的財産を盗まれることを防ぎ、先端技術分野で中国の台頭を抑える戦略を描いている。
 
一方、トランプ氏は中国との巨額な貿易赤字が不満で、中国が輸入を増やせば、勝ちという通商観がある。トランプ氏は、農産物の輸入拡大という国民に分かりやすい「アメ」に飛びついた。習氏との首脳会談で、中国が用意する成果に気をよくし、知的財産など長期的な問題で大幅に妥協してしまう恐れもある。(中略)
 
 ■内政不安が次々、打開狙う
トランプ氏が「目先の成果」にこだわるのは、国内で自らの足元がぐらついていることが背景にある。(中略)

 ■中国、警戒解かず
中国は今回の交渉で、米国が問題視してきた対中貿易赤字を解消するため、米国産の農産物やエネルギー産品の輸入を増やすことを表明した。(中略)中国は実績を求めるトランプ氏の足もとを見透かし、飛びつきやすいカードを示してきたともいえる。
 
事態を打開し、一刻も早い紛争の解決を望む事情は、中国も同じだ。
 
中国国内では米国との紛争が株安を引き起こし、同時に進んでいた金融引き締め政策と相まって高額品の消費が低迷。輸出も落ち込んでいる。(中略)
 
通商紛争の影響が深まろうとするなかで、今回の交渉で首脳会談の提案までこぎ着けられたことに、習指導部は一定の手応えを得ているとみられる。
 
ただ、(中略)かつて高官協議で合意した紛争の一時停止をトランプ氏がほごにした経緯もあり、今後のトランプ氏の出方への警戒は解いていない。【2月2日 朝日】
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