孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

原発関連の住民反対運動に、中国は即決で建設中止、インドは稼働を強行

2013-07-14 22:13:15 | 原発

(インド、クダンクラム原発稼働に反対する住民運動 “flickr”より By News Agency http://www.flickr.com/photos/44858852@N04/8413968544/in/photolist-dPvMHb

中国:住民反対で異例の建設中止
原発を推進する新興国、中国とインドで、原発施設建設を巡る住民運動と政府の対応に関する話題が2件。

先ず、中国の方は、住民の建設反対運動を受けて、異例の建設中止の判断が下されたというものです。

****核燃工場建設を中止 中国当局「デモの意見、尊重*****
中国広東省の鶴山市で計画中だった原子力発電用の核燃料製造工場の建設が、住民の反対デモを受け、中止になった。市政府が13日発表した。原子力関連の計画が住民の反対で変更されるのは、中国では極めて異例だ。

工場はウラン精製から核燃料ペレット製造まで行い、370億元(約6千億円)が投資される予定だった。中国政府が直接管理する企業グループ「中国核工業集団」が選考を進め、同市が他省の候補地と競争の末に誘致。用地として229万平方メートルを準備した。

市政府は今年3月に計画の概要を公表していたが、「クリーンエネルギーの工業地」としか説明していなかった。今月3日になって核燃料の製造を公表し、意見公募を始めたところ、事故による放射能汚染を恐れる住民の反対が強まった。

12日には建設反対デモがあり、千人近くの市民らが参加。横断幕を掲げて車道を歩いた後、鶴山市を管轄する江門市の政府庁舎前で抗議の声を上げたり、国歌を歌ったりした。参加者によると警察官が数百人出動し、庁舎前を柵で囲んで警備したが、衝突はなかった。横断幕には「反核」「原発は未来を絞め殺す」などと書かれていた。

鶴山市政府は発表の中で「意見公募で社会各界の反対が多かった。デモの意見も十分尊重し、計画立ち上げを(企業に)申請させないと決めた」と説明。市民の反核運動が中止の判断に影響したことを認めた。

中国では環境意識の高まりから、工場建設に反対するデモが頻発しており、昨年は四川省什ホウの金属精錬工場や浙江省寧波の石油化学工場が建設中止に追い込まれた。核関連施設を巡っては、東京電力福島第一原発事故が報道された影響などから、住民の懸念はより一層強かったようだ。

中国政府は原発建設を推進しており、現在8カ所で稼働中。建設中や計画中のものは35カ所にのぼる。建設中止で、今後の原発政策に影響がでる可能性もある。【7月14日 朝日】
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“鶴山市は突然、この計画を発表し、4~13日の予定で住民からの意見募集を実施。しかし、地元住民から反対意見が噴出し、12日に江門市政府前で1000人以上のデモが行われたため、意見募集期間が10日間延長されていた。”【7月13日 時事】というものですが、市当局の中止発表後も、これを信用しない住民の抗議デモが続いたようです。

****3日連続で核燃反対デモ=当局の中止発表信用せず―中国****
13日に核燃料加工場の建設計画取り消しが発表された中国広東省江門市で14日、当局の発表を信用しない市民数百人が再び反対デモを行った。香港のラジオが伝えた。デモは3日連続。

デモ隊は市政府前で「団結は力だ」などと叫び、建設中止を明確にし、別の名目で同様の施設を建設しないよう要求した。これに対して、市共産党委員会の劉海書記が現場で対応、「建設計画は完全に取り消した」と明言したことから、デモ隊は解散した。【7月14日 時事】
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なお、“人口が多い中国東南地方の沿海部でこの種の施設の建設は初めてだった。建設地はマカオから100キロ、香港から120キロに位置し、両地区でも懸念の声が出ていた。”【7月13日 時事】とのことです。

インド 「人々の幸福のために建てられた」 稼働強行
一方、インドでは長年の住民による反対運動で反原発運動の象徴ともなっていた大規模原発について、その稼働が原子力規制委員会によって許可されたとのことです。

****新原発、数日中に稼働か=当初予定から6年、反発必至―インド****
インド原子力規制委員会は12日までに、南部タミルナド州にあるクダンクラム原子力発電所の稼働を許可した。当初の予定から約6年、運転開始が延期され続けてきた原発だが、数日中に運転が始まる可能性が高まった。しかし、環境や生活への影響を懸念する住民や活動家から強い反発を受けるのは必至だ。

地元政治家は時事通信の取材に、加圧水型のクダンクラム原発1号機(1000メガワット)の稼働に関し、規制委から報告を受けたことを認めた。一方、運転開始日時については「まだ聞いていない」としつつも、「早ければ2、3日中に始まるだろう」と語った。

クダンクラム原発は1988年、旧ソ連の支援で建設されることが決まったが、ソ連崩壊に伴う政治的混乱を受け、実際には2002年に着工された。
1号機は07年12月の稼働開始が予定されていたが、住民や活動家の激しい反対運動に遭った上、安全面での欠陥が指摘されるなどして延期された。【7月12日 時事】
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これに先立つ5月6日には、インド最高裁がクダンクラム原子力発電所の試運転を許可しましたが、その際最高裁は同原発について、「人々の幸福のために建てられた」ものであり、「政府は必要な手順を踏んている。原発の開発はインドにとって重要だ。われわれはより大きな利益と経済的必要性の間で、バランスを取らなければならない」と述べています。【5月6日 AFP】
建設地クダンクラムは、インド有数の巡礼地でもあるインド亜大陸最南端カニャクマリから北東へ24kmほど行った場所です。

反対運動の経緯は下記のとおりですが、これまでもインドの原発施設ではたびたび事故が発生していること、建設地は2004年のスマトラ島沖地震に伴うインド洋大津波の被災地であり、近くのマドラス原発では、その際冷却用の取水ポンプが津波で使用不能となる事故を起こしていることなどから、死者を出すほどに反対運動が激しいことにも理由があります。

****反対運動の経緯*****
計画当初から反対運動は行われていたが、2001年に地元出身の元大学教授ウダヤ・クマール氏らによるNGO団体、PMANE(People's Movement Against Nuclear Energy)が設立されることにより更に活性化した。

特に2011年の福島第一原子力発電所事故以降に1号機が試験運転を行ったことでより多くの住民が運動に参加した。8月以降連日1万人以上が参加し、津波と地震に対する安全性評価や、環境影響評価の開示などを求めて、集会、デモ行進、女性たちの道路封鎖、無期限ハンストなどが行われた。

9月22日、ジャヤラリター州首相は「住民の合意があるまで稼働させない」と表明し、シン首相に原発稼働断念を求めた。

しかし、2012年3月19日州首相は方向転換を発表し、稼働を許可、原発周辺地域を武装警官隊で封鎖し、物資の搬入を禁止、メディアの報道規制も行われた上、PMANE幹部への逮捕状を出した。23日にはデモなどを行った住民665人が逮捕された。

その後、高等裁判所が「封鎖解除、物資搬入許可」の緊急判決を下し封鎖は解除されたが、抗議行動は続けられた。
(中略)
2012年9月10日には約1,000人が参加したデモ隊に警官隊が発砲、1人が死亡、9月16日には約200人が警察に拘束されるなど弾圧が強まる中、原子炉に核燃料を入れる作業が9月19日から始まったと報じられた。
(中略)
なおこの海岸地帯は、インドでも12,407人が死亡した2004年のスマトラ島沖地震に伴うインド洋大津波の被災地であり、家を流された住民が現在も500棟の避難住宅で暮らしている。
また、北東約550kmにあるマドラス原発では、その際冷却用の取水ポンプが津波で使用不能となる事故を起こしている【ウィキペディア】
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日本の原発輸出に対する反発も
インドは安倍政権が原発輸出を進めようとしている国でもあります。

****安倍政権の「原発営業」、インドから「NO」の声****
「日本の原発は安全」をセールストークに、原発メーカーの役員を引き連れて世界中に「原発営業」をかけている安倍政権。
政府レベルでは売り込まれたほうも歓迎しているようだが、当然のことながら国民は猛反発している。

インドもまた、原発セールスを積極的に行う安倍政権が有望視している国だ。
5月29にはインドのシン首相と会談、原子力協定を早期妥結することで合意した。

インドではすでに20基の原発が稼動しているが、今後20年で新たに34基の原子炉を造る計画があるという。
そんな日本の「原発輸出」のリスクを訴えるため、6月にインドから来日したカルーナ・ライナ氏はこう語る。

「インド政府は、現在の2.7%から’50年には25%へと原発比率を増やそうとしています。ところが福島の原発事故以降、各地で反原発運動が起き始めました。南部のクダンクラムでは600日以上が経過したいまも激しい抵抗が続き、日本の原発輸出に対する反発も起こっています」

クダンクラムの抗議活動はインドの反原発運動の象徴ともいわれる。現地団体と交流があるノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパンの佐藤大介氏は「特に昨年9月のデモ、治安当局による弾圧は激しかった」と言う。

「クダンクラム原発1号機に核燃料が装填されそうになったため、9月9日、3万人もの人々が原発を包囲しました。ところが、翌日数千人の警官が襲いかかり、警棒で殴りつけるなど激しい暴行を加えました。警官は女性や子供にも手加減せず、重軽傷者多数。男性1人が射殺されました。さらには家々を次々と破壊するなどの弾圧ぶりに、インド全土が大きなショックを受けたのです」(佐藤氏)。

インドでは、たびたび起きてきた原発トラブルが原発の不信感に繋がっている。
「’93年にナローラ原発で火災が発生、翌’94年にはカクラパール原発で浸水。同じ年、建設中のカイガ原発では、格納容器を形成するコンクリート150tが高さ75mから崩落し、作業中の14人が負傷しました。過去40年間で数え切れないほど安全性に問題のある事例があるのです」(ライナ氏)

一方、ビジネスとして考えてみても、インドへの原発輸出は他国へ輸出するよりもリスクが大きい。
その理由は厳しい原子力損害賠償責任法の存在だ。これにより、事故が起きればメーカーが汚染の被害を賠償する仕組みになっている。日本のように、国が助けてはくれないのだ。

「もし日本製の原子炉で大事故が起きれば、メーカーに対して莫大な損害賠償が請求されることも十分ありえます。住民の反対、安全性への疑問、事故時の賠償責任等、多くのリスクを背負ってまで日本は原発をインドに輸出したいのでしょうか。ドイツは、インドの再生可能エネルギー開発に向けて10億ドルを拠出しました。日本もそちらの方面に資金を振り向けたほうがよいのでは」(ライナ氏)

福島原発の事故収束もままならぬ中、原発を平然と売り歩く安倍政権及び日本の姿はどう見られているのか?【週刊SPA! 7月9日】
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安倍政権の成長戦略において重要な位置を占める原発輸出ですが、日本国内で安全性への疑問から未だ稼働できていない状態で、他国に売り込むことに関しては、日本国内においても素朴な疑念を感じる向きが多くあります。

このところの猛暑が今後も続けば電力需給がひっ迫し、原発反対の声など消し飛んでしまう・・・と、政権側は高を括っているのでしょうか。まあ、実際その程度のものではありますが。

インド初の100万kwを超える大規模原発という国家プロジェクトと、中国の地方政府の原発施設建設計画を同列で論じることには問題もあるでしょうが、人権侵害国家として悪名高い中国で即決の建設中止、世界最大の民主主義国インドで稼働強行という、対照的な反応が興味深いところです。

中国指導部が住民の直接抗議行動にピリピリ神経をとがらせている感がありますが、これも一党支配体制における中国流民主主義でしょうか。

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